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周知な商品等表示の混同惹起(1号)~ワシの店の看板やないか~

2017.03.03 | 投稿者:米澤 晃
依頼者:
私は、「畑山フグ料理屋」を営んでます。
私、あるとき思いついたんです。
でっかいフグの看板を店に付けたらおもしろいやろなあって。
それでね、店舗の正面にはフグの形をしたごっつい動く看板を掲げているんですわ。
遠くからでも私の店ってわかるんです。
今や大阪のシンボルですわ。
弁護士:
ほお、それは画期的ですね。
依頼者:
そうでしょう。
私はこのアイディアに自信を持っているんですわ。
ところが、私の店の前に新しくできた「米澤フグ料理屋」が、私の店の看板とそっくりな看板を使用しているんです。
私はこれを見たときこう思いました。
「それワシの店の看板やないか!」。
先生、これは特許権侵害じゃないんですか。
弁護士:
まあ、社長まずは落ち着いて下さい。

※カニ看板事件(大阪地判昭和62年5月27日無体栽集19巻2号174頁)を参考にしたフィクションです。実在の人物とは一切関係がありません。

1 特許権侵害について

特許権と認められるためには、特許庁に出願をし、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度」な発明であると認められる必要があります。
本件では、特許庁に出願をしていませんし、動くフグの看板は発明とはいえませんので、特許を取得することは難しいように思われます。

2 不正競争防止法について

この場合、不正競争防止法の周知な商品等表示の混同惹起に該当する可能性があります。
周知な商品等表示の混同惹起に該当するためには、
①商品等の表示であること
②需要者の間に広く認識されていること
③他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為であること
が必要です。
それぞれ見ていきましょう。

①商品等の表示

不正競争防止法上の商品等表示といえるためには、自他商品・営業識別機能又は商品・営業の出所表示機能が必要とされています。
要するにその商品を見れば誰の商品かがわかる必要があるということです。

また、商品の形態(今回のケースでは,フグの看板の形)は、通常、商品の機能・効用の発揮や美観の向上のために選択されるものであり、出所を表示するものではないことが一般的です。

そこで、商品の形態が、自他商品識別機能又は出所表示機能を有するといえるためには、❶特定の商品の形態が同種の商品と識別し得る独自の特徴を有し、かつ、❷それが長期間にわたり継続的にかつ独占的に使用され,又は短期間であっても強力に宣伝されるなどして使用された結果、自他商品識別機能を有することがあるとされています(東京地判平成15年7月9日判時1833号142頁等)

フグ看板事件では、フグの看板が、他に類を見ない奇抜性、新規性を有し、フグ料理店で一般的に使用されていないものであることから、自他営業識別能力を有すると判断されました。

②需要者の間に広く認識されていること

いわゆる周知性要件と呼ばれています。周知性は、全国的に認められる必要はなく、一地方において広く認識されているものであれば足りるとされています(最決昭和34年5月20日刑集13巻5号)。例えば、横浜を中心とする近傍地域や横浜駅ないし横浜市中区常磐町付近を中心とした周辺地域において広く認識されているとして、周知性が認められた裁判例があります(東京地判昭和51年3月31日判タ344号291頁、横浜地判昭和58年12月9日無体最集15巻3号802頁)。

今回のケースでは、「畑山フグ料理屋」の看板は、大阪のシンボルとして周知性を有すると考えられます。
仮に、「米澤フグ料理屋」が、関東地方にあり、「畑山フグ料理屋」が関東では周知でなかった場合は、周知性要件を満たさないことになります。

③他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為であること

混同とは、商品・営業の出所に関する誤認を意味します。
周知性のあるフグの看板を掲げていれば、「畑山フグ料理屋」だと誤認してしまうと考えられるため、今回のケースでは混同要件は満たされます。

混同要件が特に問題となるケースは、業種が異なる場合です。

裁判例では、ファッション雑誌の「VOGUE」とマンション名である「ラ ヴォーグ南青山」が誤認するのかが争われた事案があります。この裁判例では,「ラ ヴォーグ南青山」のマンションが「VOGUE」等の高級でファッショナブルなイメージで販売されること等を総合的に考慮すれば、誤認させるものと認められるとして、混同要件を認めました。

以上の要件を満たし、周知な商品等表示の混同惹起と認められれば、看板の使用差止め及び損害賠償を求めることができます。

3 意匠法について

ちなみに、フグの看板については、意匠法による保護が考えられます。
意匠法によって保護されるためには、特許庁に出願し、審査の結果、意匠登録が認められる必要があります。今回のケースでは意匠の出願をしていませんので、意匠法による保護は認められません。

また、「意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは」、原則として、意匠登録が認められません(意匠法第3条2項)。

したがって、フグの看板は、よほどデフォルメされた特殊な看板になっていない限り、意匠登録は認められないと考えられます。

4 まとめ

フグの看板を使ってフグ料理屋を経営されていて,店の前に同じ看板を掲げたフグ料理屋ができて困っている方がいらっしゃいましたら,是非弊所にご相談下さい。
もちろん、フグの看板以外の商品や看板を模倣されている方も遠慮なくご相談下さい。

参照条文
第2条1項1号
他人の商品等表示(人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し,又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し,若しくは電気通信回線を通じて提供して,他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為