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経営者必見、「社宅」の落とし穴

2016.06.26 | 投稿者:畑山 浩俊
ご相談内容

生活に困っている社員がいたので社宅に住ませてあげていたが、問題行動が目についた為、退職してもらった。しかし、退職後も社宅から出て行こうとしない。どうすればよいのか教えてほしい。

回答

このご相談は非常に多く受けます。
従業員に安価で良質な住環境を提供し、福利厚生の一助にするとともに労働効率を向上させる目的で社宅を完備される企業は多く見受けられます。

素晴らしい取組みである反面、トラブルも頻発しています。
トラブルの例として多いのが上記のご相談内容です。

「手塩に掛けて育てたのに」「好条件で住ませてあげたのに」等、感情的になり、退職した従業員を直ちに退去させたいと要望される経営者がおられますが、果たして即明渡しを実行できるのでしょうか?

感情は理解できますが、ここは一旦クールダウンして頂く必要があります。
この場面で問題となるのが、「社宅の利用関係が賃貸借契約か否か」という点です。

賃貸借契約だと評価されると借地借家法が適用され,明渡しを求めるためには、①6ヶ月の期間を置いた解約申入れと②その解約の申入れに「正当の事由」が認められる必要があります(借地借家法第26条・第28条)。②「正当の事由」が認められる為のハードルは高く、明渡しが実現できるまでに長期間を要することになります。

社宅利用に関する規程を設けている企業もありますが、この規程が借地借家法よりも賃借人にとって不利益な内容である場合、その規程は無効となります(借地借家法第30条)。

では、社宅の使用関係が借地借家法の適用される賃貸借契約か、それとも使用貸借契約・企業が定めた社宅利用に関する規程に基づく特殊な契約類型かはどのように判断されるのでしょうか?

この点については、社宅使用料の額が重要なファクターとなります。

具体的には、社宅使用料が,維持費などを勘案して賃料と評価できないほど低廉でなければ賃貸借契約と評価されます。

この判断要素の他にも裁判例上、様々なファクターが勘案されますので、社宅制度を設けている企業においては退去時にトラブルにならないように、賃貸借契約であると評価されない制度を構築しましょう。