法律事務所かなめは相続問題・交通事故問題・労働問題などのお悩みを解決します

職務発明の手引き(中小企業向け・2)~法改正を踏まえて~

2016.04.08 | 投稿者:仁戸田 康平

前回に引き続き、平成28年4月1日から施行される、新しい職務発明制度についてご説明します。
今回は、職務発明制度への対応をご検討いただく前提として、「原始取得」と「承継取得」の違いという、この改正の基本事項をお伝えしたいと思います。
なお、説明の便宜上、A社の業務としてその従業員Bが発明を完成させた、という事案を前提とします。

「原始取得」と「承継取得」の違い

前回お伝えしたとおり、職務発明制度によって、A社は、あらかじめ労働契約や就業規則に一定の条項を設けていれば、A社の従業員が業務として完成させる発明について、特許を受ける権利(特許法33条1項)を取得できます。
このため、発明について特許を得たいと考える企業の皆様は、実務上、就業規則に付随する職務発明規程を作成しているのが一般的と思われます。

今回の法改正によって、A社は、一定の手続を経て就業規則(職務発明規程)を改定すれば、発明を行った従業員から特許を受ける権利を「原始取得」することが可能となります(改正特許法35条3項)。
従前からの「承継取得」との違いは、使用者が特許を受ける権利を取得するタイミングです。

以前の職務発明制度では、従業員Bが完成させた発明については、Bが一度は特許を受ける権利を手にし、就業規則(職務発明規程)で定めた時期に、A社が「承継取得」することのみが認められていました。

一方、今回の法改正で可能となった「原始取得」を選択すれば、Bが発明を完成させた瞬間、その発明についての特許を受ける権利を、A社が始めから取得することになります。

こうしてみると、一見、「原始取得」は使用者であるA社に有利な選択肢という印象を受けるかもしれません。
もっとも、今回の法改正後も、「原始取得」であろうと「承継取得」であろうと、発明を行った従業員には「相当の金銭その他の経済上の利益」を付与する必要があることには変わりません(改正特許法35条4項)。

このような「原始取得」という方式を導入することで、様々な紛争を予防できる効果も期待されています。
ただし、企業の皆様にとって「原始取得」のほうが好ましい選択といえるかは、そのデメリットも踏まえた上で、検討する必要がありそうです。

次回は、「原始取得」のメリットやデメリットについてご説明したいと思います。

※なお、本投稿では、可能な限り平易な説明を試みるため、用語を厳密には用いず、詳細な議論を割愛しています。個々の企業様における対策や法的紛争については弁護士にご相談下さい。