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退職と有給休暇と引き継ぎ①

2016.08.30 | 投稿者:畑山 浩俊
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「従業員が突然退職すると言ってきた。しかも、退職の効力が発生するまでの期間は、有給休暇を請求すると言っている。まったく引き継ぎをしないと業務に支障が出るので、せめて引き継ぎに必要な期間くらいは出社してほしい。どうしたらよいか。」

経営者からこの種の相談を頻繁に受けます。
たしかに、引き継ぎを全くせずに退職されてしまうと現場に混乱が生じますね。
従業員数の少ない事業所では、この問題はさらに深刻になります。
では、引き継ぎをきちんとしてもらうよう命じることはできるのでしょうか?

結論から言いますと、できません

従業員が有給休暇の申請をしてきた場合、使用者側の対抗手段として、時季変更権の行使が考えられます(労働基準法第39条5項)。
要するに、「今は会社の繁忙期だから、違う時期に有給を取得してくれ」と有給を取るタイミングをずらしてもらうということです。

一見、今回のケースでも時季変更権を行使できそうにも思えますが、これはできないと考えられています。
その理由は、時季変更権とは、他の時期に有給を与えることができるということを前提にしている権利だからです。従業員が退職することを前提にしている場合には行使できないのです。

では、有給休暇を強制的に買い上げることはできるでしょうか。

これも、できません

その理由は、有給休暇とは、心身の疲労を回復し、ゆとりのある生活を保障するために付与される休暇のことであり、現実に労働者を休ませることを目的とするものだからです。
ここは、従業員の協力を求めるしかありません。
例えば、「いつもより多めに給料を払うから、引き継ぎに必要な期間は来てくれないか。」と打診することです。

「勝手に突然辞められたら困る!」
という経営者の気持ちはとてもよく理解できるのですが、制度上、やむを得ません。
経営者には、いつ辞められてもよいように労働力の確保を意識的に行うこと、突然辞められないよう日頃から円満な労使関係を構築することが大切だといえるでしょう。
そうはいっても実際に突然辞められて現実に事業に支障を来すケースも散見されます。

次回は、「突然辞めた元従業員に損害賠償請求できないか」という点について考えてみましょう。