介護事業を運営するに当たっては、様々な書面が取り交わされています。
利用者との間の利用契約書、重要事項説明書の他、事業所建物の賃貸借契約書、職員との雇用契約書など、契約の種類は多種多様です。
このような契約書の締結にあたって、インターネット上で利用できる雛形などを、チェックをすることなくそのまま利用していないでしょうか。
契約は、定型的なものもありますが、契約締結の状況は当事者によって異なり、また、雛形が作成された時期によっては、必要な法令が反映されていない場合もあります。もし、このような契約書をそのまま利用してしまうと、後日、多額の報酬の返還を求められたり、契約の相手方から予想だにしなかった不利益な条件を突きつけられることもあります。
このような事態に陥らないために必要なのが、契約書のリーガルチェックです。
この記事では、リーガルチェックの意義やその目的、必要性について解説した上、リーガルチェックの方法やそれぞれの方法のメリットデメリットについて解説します。また、介護業界において最も有効なリーガルチェックの方法についても解説していますので、契約書のリーガルチェックを検討している事業所の皆さんは、ぜひ参考にしてください。
それでは、見ていきましょう。
この記事の目次
1.リーガルチェックとは?
まずはリーガルチェックの意義やその対象となる書面について、解説します。
1−1.リーガルチェックの意義
リーガルチェックとは、契約締結前に、契約書の内容に法令違反がないかや、不利益な条項がないかなどをあらかじめ検証することを言います。法人内の法務部等の部署で確認をすることもあれば、顧問弁護士等の弁護士に外注することもあります。リーガルチェックの類語として、他にも「法務確認」と呼ばれたり、「契約書のレビュー」と呼ばれることもありますが、意味は同じです。
もっとも、呼び方にかかわらずに「リーガルチェック」を外注するときには、どのような点に着目してチェックをしてもらうかについて、事前に確認をしておくことが必要です。
具体的には、リーガルチェックの範囲について、法令違反の有無のチェックで足りる場合もあれば、法人にとって不利益な条項の確認、修正のニーズが大きい場合もありますし、それ以上に確認を依頼したい部分もあるかもしれません。呼び方にとらわれることなく、しっかりと認識を共有するようにしましょう。
1−2.介護事業所でリーガルチェックをすべき書面は?
具体的に、介護事業所でリーガルチェックが必要な書面には以下のようなものがあります。
- (1)利用契約書
- (2)重要事項説明書
- (3)その他利用者に交付する書面
- (4)運営規程等の内部規定
- (5)外部業者との契約書(賃貸借契約書、売買契約書、業務委託契約書等)
- (6)労務管理に関する書面(雇用契約書、就業規則、誓約書等)
以下について、順に解説します。
(1)利用契約書
介護事業所は、利用者との間で必ず利用契約を締結します。利用するサービスが施設系サービスである場合は、「入居契約書」など、異なる名前である場合もあります。
利用契約書は、利用者との間の最初の約束であり、また、法令上盛り込むべき条項などもあるため、リーガルチェックをすることは非常に重要です。
(2)重要事項説明書
重要事項説明書は、利用契約締結時に、契約についての説明やその他重要な内容を説明するために交付するものです。通常は、利用契約書と併せて交付し、説明したことを証明するために利用者や利用者家族の署名、押印等をもらうことが多いです。
重要事項説明書も、法令上説明をすべき内容を盛り込む必要がありますし、今後の利用者との関係性の構築のために必要な約束事等を盛り込むことも重要です。そのため、リーガルチェックをする必要があります。
(3)その他利用者に交付する書面
利用契約時には、利用契約書や重要事項説明書の他にも、個人情報の取扱いについての同意書、預かり金等を預かる場合の預かり証などの他、リーフレットをお渡しするなど、様々な書類を交付します。
このような書類についても、今後の利用者との良好な関係性の構築のため、リーガルチェックを受けておくことが望ましいです。
(4)運営規程等の内部規定
事業所内の運営規程は、事業所が法令に従って行う必要があることのルールなどを定めているものですが、実際には実施しているのに運営規程上に記載がなかったり、実際には実施していないものが運営規程上に存在していたりすると、運営指導時等に行政から指摘を受けることもあります。
そのため、運営規程等の内部規定であっても、リーガルチェックは受けておくことが望ましいです。
(5)外部業者との契約書(賃貸借契約書、売買契約書、業務委託契約書等)
介護事業所は、事業所運営のために、様々な外部業者と契約を締結します。
例えば、事業所の建物について、運営法人が所有しているのであれば、購入の際に売買契約を締結しているでしょうし、建物を建てるために建築業者との間で請負契約を締結しています。事業所が賃貸の場合は、賃貸借契約を締結します。また、事業所内で提供する食事を、外部業者に委託している場合には、業務委託契約書を締結している場合もありますし、その他にも様々な契約を締結しているでしょう。
このような契約は、忙しい日々の中で、できるだけ時間をかけず、迅速に行いたい場合がほとんどかもしれませんが、契約締結を急ぐあまり、内容を十分に確認しなかった結果、介護事業所にとって不利益な内容となり、将来的に事業所運営さえ危ぶまれる事態も発生しかねません。
そのため、外部業者との契約の際には、リーガルチェックをしっかり受けておく必要があります。
(6)労務管理に関する書面(雇用契約書、就業規則、誓約書等)
介護事業所を運営するためには、職員を雇用し、業務にあたらせる必要があります。
介護事業所の中で発生する問題の中には、労働問題も非常に多く、円滑な事業所運営のためには、職員との関係を規律しておくことが非常に重要です。事業所の実態に応じた雇用契約の内容になっているか、必要な服務規律や懲戒条項などが定められているか、退職後のことも見据えた誓約や取り決めをしているかなど、確認しておくべき点は多くあります。
そのため、労務管理に関する書面についても、リーガルチェックをしっかり受けておく必要があるのです。
2.契約書などにリーガルチェックはなぜ必要?
それでは、以下ではリーガルチェックの目的と必要性について解説します。
2−1.リーガルチェックの目的
リーガルチェックの目的は、大きく分けて以下の通りです。
- (1)法令違反のチェック
- (2)事前のトラブルの防止
(1)法令違反のチェック
リーガルチェックの最も重要な目的は、法令違反の有無の確認です。
介護事業所では、3年に1度大きな法令の改定があり、その際に、利用者に説明すべきことを含め、事業所側で実施すべき業務が追加されることが多々あります。これらの追加された業務を、利用契約書、重要事項説明書、運営規程などに反映させること、また、反映されているかどうかを確認することは非常に重要となります。
(2)事前のトラブルの防止
もう1つの重要な目的は、事前のトラブルの防止です。
特に外部業者との契約の際には、契約の内容が、当方にとって著しく不利な場合もあり、交渉によっては、内容を改定できる場合もあります。
また、利用者との関係では、事前に「利用上の注意」として、禁止する行為を説明しておいたり、事業所側がとる行動指針などを示しておくことで、カスタマーハラスメントの防止にもつながりますし、職員との関係では、入職後、退職後に発生し得るトラブルを事前に想定した規定を設けておくことで、実際にトラブルになった際に、業務が滞らないように対策をすることもできます。
事前にトラブルを防止するためには、リーガルチェックが非常に重要なのです。
2−2.リーガルチェックの必要性
リーガルチェックには、以上のような
- (1)法令違反のチェック
- (2)事前のトラブルの防止
の目的がありますが、これらの目的は、事業所運営においての要となります。
仮に、利用契約書や重要事項説明書などに、法令上求められている条項等が欠けていた場合、事業所は、これまでに受領してきた介護報酬の一部を返還しなければならない事態に陥る場合もあります。
例えば、居宅介護支援事業所では、「公正中立なケアマネジメントの確保」の観点から、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十八号)第4条2項において、以下が定められています。
▶参照:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十八号)第4条2項
「あらかじめ、居宅サービス計画が第一条の二に規定する基本方針及び利用者の希望に基づき作成されるものであり、利用者は複数の指定居宅サービス事業者等を紹介するよう求めることができること、前六月間に当該指定居宅介護支援事業所において作成された居宅サービス計画の総数のうちに訪問介護、通所介護、福祉用具貸与及び地域密着型通所介護(以下この項において「訪問介護等」という。)がそれぞれ位置付けられた居宅サービス計画の数が占める割合、前六月間に当該指定居宅介護支援事業所において作成された居宅サービス計画に位置付けられた訪問介護等ごとの回数のうちに同一の指定居宅サービス事業者又は指定地域密着型サービス事業者によって提供されたものが占める割合等につき説明を行い、理解を得なければならない。」
説明を行い、理解を得たことを証明する一番効果的かつ簡便な方法は、契約締結時に交付する重要事項説明書にこの内容を記載し、確認した旨の署名押印等をもらうことです。
しかしながら、実際にはこの趣旨に沿った説明をしているにもかかわらず、重要事項説明書への記載がなかったことで、多額の報酬返還を求められるケースは全国的に頻発しています。たった1つの条項がないことで、これまでの真摯に行ってきた業務が全て否定されるような結果になることは、絶対に避けるべき状況です。
このような問題が発生しないように、リーガルチェックをすることは非常に重要なのです。
なお、上記の事例の場合、重要事項説明書に条項がなかった場合でも、行政に対して反論ができる場合もあります。詳しくは、以下の行政処分・行政指導の対応方法に関する記事でも簡単に解説していますので、併せてご覧ください。
また、リーガルチェックは、事前のトラブル防止のために必要なものであると同時に、事前に、この契約書にどのようなリスクがあるかを把握するために必要でもあります。
外部業者との契約の場合には、仮に当方にとって不利な条項であっても受け入れざるを得ないものもあり、必ずしも、全て当方にとって有利な条項へ改定することはできません。
しかしながら、このような場合であっても、「この契約にどのようなリスクがあるか」を事前に把握しておくことは、非常に重要です。このリスクを把握せずに、何の準備もせずにいざその場面になるのと、リスクを認識した上で、しっかり準備や検討を重ねた上でリスクに立ち向かうのとでは大きな違いがあるからです。
このように、リーガルチェックは、日々の事業所運営にとって必要不可欠なものなのです。
【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】
介護事業所の中には、利用契約書や重要事項説明書の他、様々な契約書類を、インターネット上で参考にできる雛形を利用して、作成しているところも多いのではないでしょうか。
雛形の多くは、最新のものであれば、法令には合致していることが多いですし、一から契約書類を作成することを考えれば時間短縮になりますので、雛形を利用すること自体は何ら問題はありません。
しかしながら、雛形はあくまで雛形であり、各事業所の実態に合致しているものではありません。例えば、記録の保管期間1つをとっても、地方自治体によって期間が異なりますし、実施している委員会の構成等は、事業所によって全く異なります。さらに、雛形がいつ作成されたのかを確認せずに利用してしまえば、最新の法令改正を反映していない場合さえあります。
そのため、雛形を利用して契約書類を作成している事業所こそ、しっかりとリーガルチェックを受けることが必要なのです。
3.リーガルチェックの方法
以下では、リーガルチェックの方法を、以下のように分けて解説します。
- ① 社内の法務部門や法務担当で実施する方法
- ② 弁護士などに外部委託する方法
3−1.社内の法務部門や法務担当で実施する方法
(1)職員(企業内弁護士を含む)によるチェック
介護事業所を運営する法人の中には、法務部を置き、その中で契約書のリーガルチェックを行う場合があります。企業内弁護士を法務部の一員として迎えている場合もあれば、法学部出身者や法科大学院出身者などを職員として雇用している場合などもあります。
(2)リーガルチェックツールの利用によるチェック
また、法務部の有無にかかわらず、リーガルチェックツールを利用して、リーガルチェックを行う場合もあります。
例えば、最近では、AIに契約書を読み込ませることで、チェックすべき項目や、訂正案等が提示されるなど、リーガルチェックを支援してくれるツールもあり、法律の専門家がいなくても、ある程度のリーガルチェックが可能となっています。
【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】
リーガルチェックの支援ツールの中には、法務省から弁護士法第72条との関係について疑問視されているものもあります。
弁護士法72条は、いわゆる「非弁活動」と呼ばれる、弁護士にしかできない業務を、報酬を受け取って行うことを禁じるものですが、リーガルチェックを行うツールが、このような非弁活動にあたるのではないかと、問題視されているのです。
現時点で、結論が出ているものではありませんが、法務省は、契約書審査等にAIを利用することの有用性や、民間企業の法務部門におけるデジタル技術の活用拡大の重要性にも鑑み、どのような場合にAI等を利用した契約書等関連業務支援サービスの提供が弁護士法72条違反になるかについて、ガイドラインを公表しています。
▶️参照:法務省「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」(pdf)
また、実際にリーガルチェックの支援ツールを販売している会社等からは、「あくまでこのツールは、リーガルチェックそのものを行うものではなく、リーガルチェックの支援をするものである」との意見を述べています。
新しいツールの利用は、ビジネスを加速するものであり、喜ばしいことである反面、既存の法令等との関係でどのように位置付けていくかが難しいケースもあり、今後も動向を注視していく必要があります。
(3)社内でのリーガルチェックのメリットとデメリット
1.費用面
まず、法務部に所属する職員がリーガルチェックをする場合、少なくともリーガルチェックにかかる追加費用は不要です。
もっとも、法務部員を雇用するとなれば、毎月の給与や賞与、社会保険料等の様々な支出が必要となるため、法人運営そのものに大きく関わってくる検討事項となります。
また、リーガルチェックの支援ツールを利用する場合は、毎月の使用料等が掛かります。
2.スピード感
法務部に所属する職員がリーガルチェックをする場合や、法人内でリーガルチェックの支援ツールを利用してリーガルチェックをする場合には、外注する場合と比較して、速やかに検討結果が共有されることが一般的です。
3.リーガルチェックの精度
企業内弁護士が所属している場合は、外注をする場合と大きく変わりませんが、そうでない場合には、法律の専門家がチェックをするわけではないことに鑑みれば、リーガルチェックの精度はどうしても低くならざるを得ません。
もっとも、法人内の職員が内容をチェックするため、契約締結の趣旨や当事者同士の関係性などを理解した上でリーガルチェックをすることができ、実態に合致したチェックが可能となります。
また、リーガルチェックの支援ツールを利用する場合、各条項の網羅的なチェックにより、見落としが少なくなるというメリットはありますが、当事者同士の実態に応じたリーガルチェックは必ずしもできないため、やはり人の目によるチェックは欠かせません。
(4)社内でのリーガルチェックの依頼文例
法人内でリーガルチェックを依頼するにあたってのポイントは、以下の通りです。
- 誰と誰との間の、どのような契約であるかを明示する。
- 運営事業所が複数ある場合には、その事業所類型を明示する。
- リーガルチェックの期限を明示する。
- リーガルチェックにあたって、気になる点があれば事前に共有する。
▶参考:依頼文例
法務部**さま
お世話になっております。
居宅介護支援事業所「**」の管理者の**です。
来年4月に、法令が改正されることから、現在利用している利用者との間の利用契約書、重要事項説明書が、今後も利用できるかどうかのリーガルチェックをお願いしたいです。
契約の締結をし直す必要があるかもしれないので、遅くとも来年2月下旬には、改訂を完了させたいと考えています。
また、最近利用者の家族に、職員が罵声を浴びせられたり、本来提供するべきサービス以上のサービスを求めてくる方がおり、困っています。現在の契約書では、うまく対応できる条項がなく、今回の改訂に併せて、内容を見直せればと考えています。
本日時点で利用している利用契約書及び重要事項説明書を添付しますので、ご不明な点がございましたら、ご連絡ください。
居宅介護支援事業所「**」
管理者 **
3−2.弁護士などに外部委託する方法
(1)リーガルチェックの依頼の方法
リーガルチェックを外部の弁護士に依頼するにあたっては、スポットでの依頼と、顧問弁護士への依頼があります。
1.スポットでの依頼の場合
リーガルチェックの依頼方法としては、特定の契約書のリーガルチェックのみを依頼する場合があります。この場合、依頼先の弁護士に対しては、依頼時に、事業の内容や契約の趣旨などを、より丁寧にお伝えする必要があります。
2.顧問弁護士への依頼の場合
すでに顧問契約を締結している弁護士がいる場合には、顧問弁護士に対してリーガルチェックを依頼することが多いかと思います。この場合、依頼先の弁護士は、ある程度事業内容や契約の趣旨等を理解しているケースも多く、スムーズに依頼がしやすいことが多いです。
(2)リーガルチェックを外部委託する際のメリットとデメリット
1.費用面
スポットでリーガルチェックを依頼する場合、1通あたりいくら、という形で費用が決まることが多いです。費用は、どの程度の手入れが必要かどうか等で変動しますが、一般的には1通あたり10万円程度掛かり、契約書の難易度等によっては、さらに金額が上がります。
他方、顧問弁護士にリーガルチェックを依頼する場合には、簡単なものであれば顧問契約の範囲内でリーガルチェックを受けられる場合もありますし、ディスカウントを受けられる場合もありますが、基本的には、締結してる顧問契約の内容によるため、金額はケースバイケースとなります。
2.スピード感
スポット、顧問契約のいずれの場合でも、外部への依頼であることから、法人内でリーガルチェックをするよりも、やや時間が掛かる可能性が高いです。そのため、外部へリーガルチェックを依頼する場合には、ある程度期限に余裕を持って依頼をする必要があります。なお、どの程度期限が差し迫っているかによって、費用面も変動する可能性がありますので、注意が必要です。
3.リーガルチェックの精度
法律の専門家によるリーガルチェックであることから、一般的に法人内でのリーガルチェックに比べて、精度は高くなるかと思います。
もっとも、スポットで初めて依頼を受けた弁護士は、介護業界に明るくない場合などもありますし、法人内の実態を必ずしも把握できていません。そのため、精度の高いリーガルチェックをしてもらうためには、前提知識をしっかり共有する必要があります。
(3)リーガルチェックを外部委託する際の依頼文例
弁護士にリーガルチェックを依頼するにあたってのポイントは、以下の通りです。
大きくは、法人内でのリーガルチェックの場合と変わりませんが、外部への依頼ということもあり、費用面の確認は非常に重要です。
- 誰と誰との間の、どのような契約であるかを明示する。
- 運営事業所が複数ある場合には、その事業所類型を明示し、法人名も明記する。
- リーガルチェックの費用を確認する。
- リーガルチェックの期限を明示した上、期限によって費用の変動があるかを確認する。
- リーガルチェックにあたって、気になる点があれば事前に共有する。
- 依頼前の打合せにより、前提知識を共有する。
以下の依頼文例は、スポットでの依頼の例となりますが、顧問弁護士に依頼する際でも、同様に丁寧な依頼を心がけてください。
▶参考:依頼文例
**法律事務所
弁護士**先生
お世話になっております。初めてご連絡させていただきます。
私は、社会福祉法人**が運営する、居宅介護支援事業所「**」の管理者の**と申します。この度は、リーガルチェックのご依頼をお願いしたく、ご連絡させていただきました。
来年4月に、介護関係法令が改正されることから、現在利用している利用者との間の利用契約書、重要事項説明書が、今後も利用できるかどうかのリーガルチェックをお願いしたいと考えております。
契約の締結をし直す必要があるかもしれないので、遅くとも来年2月下旬には、改訂を完了させたいと考えています。
また、最近利用者の家族に、職員が罵声を浴びせられたり、本来提供するべきサービス以上のサービスを求めてくる方がおり、困っています。現在の契約書では、うまく対応できる条項がなく、今回の改訂に併せて、内容を見直せればと考えています。
本日時点で利用している利用契約書及び重要事項説明書を添付します。
これらの事情を元に、もう少し事業についてもご説明させていただきたいと思いますので、一度ご相談をお願いできますと幸いです。ご相談の費用、リーガルチェックの際の費用等についても、ご教示いただけますと幸いです、
どうかよろしくお願い申し上げます。
社会福祉法人**
居宅介護支援事業所「**」
管理者 **
【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】
リーガルチェックを弁護士に依頼する費用は、決して低額とは言えません。実際には、リーガルチェック後に返ってきた契約書を見ても、ほとんど手が入れられていない場合もあり、「これに10万円も掛かるの?」と訝しがる方もいるかもしれません。
しかしながら、これは大きな誤りです。リーガルチェックは、未来のための予防法務であり、今後発生し得る紛争を防ぐために行います。その際には、弁護士は、法令面でのチェックのみならず、法人の実態に合致しているかどうかなど、多角的な視点で契約書をチェックします。
つまり、結果的には、当初の契約書にほとんど訂正がなかったとしても、各項目について訂正の必要性を審査しているのであり、その審査には相当の技術や時間を費やしています。
リーガルチェックの費用は、どの弁護士に依頼するかを決める上で重要な要素ではあるかと思いますが、費用が安ければ良いということでは必ずしもありません。依頼をしようとする弁護士が、どのような観点から、どのようなリーガルチェックをしてくれるのか、介護業界に詳しい、または、しっかり勉強をした上でリーガルチェックをしてくれるのかなどを、事前打ち合わせの中でよく吟味した上で、依頼するようにしましょう。
▶参考:介護業界に精通した弁護士の探し方や選び方については、以下の解説記事をご参照ください。
4.リーガルチェックを顧問弁護士に依頼すべき理由
リーガルチェックは、弁護士、特に顧問弁護士に依頼することが、最も効果的です。以下では、その理由について解説します。
4−1.なぜ弁護士に依頼すべきなのか?
「2.リーガルチェックはなぜ必要?」で解説した通り、正しいリーガルチェックをしないと、将来的に、報酬の返還が発生したり、将来に向かって不利益な契約に縛られてしまうことになります。
法人内におけるリーガルチェックには自ずと限界があり、また、法務部を新たに設置し、企業内弁護士を置くことは必ずしも現実的ではありません。
また、弁護士は、様々な契約書のリーガルチェックをライフワークとして行っており、リーガルチェックへの多くの知見があります。
そのため、確実なリーガルチェックを実施するには、外部の弁護士の目を通すことが非常に重要なのです。
4−2.なぜ顧問弁護士に依頼すべきなのか?
加えて、外部の弁護士に依頼する場合には、顧問弁護士へ依頼することをお勧めします。顧問弁護士は、法律の専門的な知識に加え、顧問として事業所に関わる中で、事業所の内情等を、スポットの弁護士に比較してよく把握ができています。
そのため、事業所の内情や契約の実態を踏まえた、より有効なリーガルチェックが可能となります。
4−3.介護業界の契約書や重要事項説明書のリーガルチェックは介護特化型弁護士に!
介護業界は専門性が高い業種であることから、必ずしも、全ての弁護士が、介護事業所の内情を、法令を含めて理解した上対応できるわけではありません。実際に、重要事項説明書の条項を1つ欠くだけで、多額の報酬の返還が生じ得るなど、実情を知らなければ対応が難しい点もあります。
利用者との利用契約書や重要事項説明書など、介護業界に特有のものだけでなく、労働関係の契約書、外部業者との契約書においても、介護業界の実情を知らなければ、実情に応じた判断ができない場合もあります。
そのため、介護業界におけるリーガルチェックは、介護特化型弁護士に依頼することが肝要なのです。
▶参考:介護特化型弁護士については、以下をご参照ください。
5.リーガルチェックに関して弁護士法人かなめに相談したい方はこちら
弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。
- (1)リーガルチェックのスポット対応
- (2)顧問弁護士サービス「かなめねっと」
5−1.リーガルチェックのスポット対応
介護事業所で締結する契約書の中には、介護事業に関する専門的な知識を要するものも多数あります。
弁護士法人かなめでは、介護事業の専門知識をもった弁護士が、法令違反の有無はもちろん、カスタマーハラスメントの防止を目的とした条項の追加、さらには、改訂した契約書を締結する際の注意点のレクチャー等、介護事業に特化した視点でリーガルチェック、アフターフォローを行います。これにより、報酬の返還など、事業運営に多大な損失をもたらす事態を回避し、これに加え、日々の運営を円滑に進めていくことが可能となります。
(1)リーガルチェックの費用
まずは、お問合わせフォームからお問い合わせください。ご相談をお伺いした上、お見積もりを出させていただきます。
なお、費用の目安としては、1通10万円~となります。
5−2.顧問弁護士サービス「かなめねっと」
弁護士法人かなめでは、介護事業に関する総合的なサービスを行う顧問弁護士サービス「かなめねっと」を運営しています。
具体的には、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入し、事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。
そして、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。現場から直接弁護士に相談できることで、事業所内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。
顧問弁護士サービス「かなめねっと」について詳しくは、以下のサービスページをご覧ください。
(1)顧問料(料金体系)について
現在、弁護士法人かなめでは顧問契約サービス「かなめねっと」のご契約のみ受け付けています。
顧問料
- 箇条書き●月額8万円(消費税別)から
※職員の方の人数、事業所の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、お問合せフォームまたはお電話からお問い合わせください。
6.まとめ
この記事では、リーガルチェックの意義やその目的、必要性について解説した上、リーガルチェックの方法やそれぞれの方法のメリットデメリットについて解説しました。
リーガルチェックのとり得る方法は、法人の規模、予算等によっても異なりますが、介護業界において最も有効なリーガルチェックの方法は、顧問弁護士、特に介護事業特化型の弁護士にリーガルチェックを依頼することです。
弁護士法人かなめは、介護特化の法律事務所として、弁護士1人1人が、法令違反の有無のチェックだけでなく、カスタマーハラスメント防止のための条項の修正、追記、契約書改訂後のアフターフォローなど、将来発生し得るトラブルを未然に防ぐためのノウハウを持っています。
実際に、リーガルチェックを誰にどのように依頼するか悩んでいる事業所の皆さんは、ぜひ参考にしてください。
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社会福祉法人の研修担当者様へは、「職員の指導、教育によるスキルアップ」「職員の悩みや職場の問題点の洗い出し」「コンプライアンスを強化したい」「組織内での意識の共有」などの目的として、協会団体・自治体の研修担当者様へは、「介護業界のコンプライアンス教育の実施」「介護業界のトレンド、最新事例など知識の共有をしたい」「各団体の所属法人に対して高品質な研修サービスを提供したい」などの目的として最適なサービスです。
主な研修テーマは、「カスタマーハラスメント研修」「各種ハラスメント研修」「高齢者虐待に関する研修」「BCP(事業継続計画)研修」「介護事故に関する研修」「運営指導(実地指導)に関する研修」「各種ヒヤリハット研修」「メンタルヘルスに関する研修」をはじめ、「課題に応じたオリジナル研修」まで、介護事業所が直面する様々な企業法務の問題についてのテーマに対応しております。会場またはオンラインでの研修にご対応しており、全国の社会福祉法人様をはじめ、協会団体・自治体様からご依頼いただいております。
現在、研修講師をお探しのの介護事業者様や協会団体・自治体様は、「かなめ研修講師サービス」のWebサイトを是非ご覧ください。