高齢者虐待のうち、高齢者を精神的に傷付けてしまう「心理的虐待」は目に見えにくく、発見が遅れてしまうことが多々あります。
しかしながら、心理的虐待を放置することで、利用者は無気力になったり、情緒不安定になり、認知機能への悪影響が懸念される他、職員間の関係の悪化など職場環境そのものを悪くし、ハラスメントや虐待が常態化するという負のスパイラルに陥りかねません。
介護事業所としては、可能な限り早期に心理的虐待に気付き、正しい対応をしなければ、虐待行為の深刻化、大きな介護事故や職員の離職等、取り返しのつかない事態にもなりかねないのです。
そこで、本記事では、「心理的虐待」に関して、その定義や内容、具体的事例について解説した上、心理的虐待を発見した場合に事業所としてどのような対応をすればいいのかについて解説します。
また、心理的虐待に早期に気付くために、その端緒についても解説しますので、心理的虐待が発生しない職場づくりを目指す事業所にみなさんにとっては、参考になります。
それでは、見ていきましょう、
【あわせて読みたい関連情報】高齢者虐待についての基本的な知識については、以下の記事で詳しく解説をしていますので、併せてご覧ください。
この記事の目次
1.心理的虐待とは?定義について
心理的虐待(emotional abuse)とは、脅しや侮辱などの言葉や態度、無視、嫌がらせ等によって精神的に苦痛を与える行為のことを言い、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(以下「高齢者虐待防止法」と言います。)第2条4項1号ハ(養護者)及び同条5項1号ハ(養介護施設従事者等)に規定されています。
また心理的虐待は、身体的虐待に対比して「精神的虐待」と呼ばれることもあります。
▶︎参照:高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待法)の条文は以下をご参照ください。
2.心理的虐待は増加してるのか?現状に関するデータ
心理的虐待を含んだ高齢者虐待は、近年メディア等で話題になることがあります。実際に、虐待は増えているのでしょうか?
実際の統計を確認してみましょう。
2−1.介護事業所で行われる虐待の中での心理的虐待の割合
「令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に 基づく対応状況等に関する調査結果」によると、介護事業所(養介護施設従事者等)での虐待において特定された被虐待高齢者1,232 人のうち、 虐待の種別では「身体的虐待」が641人(52.0%)、「心理的虐待」が321 人(26.1%)、「介護等放棄」が295 人(23.9%)でした。
心理的虐待は、身体的虐待についで2番目に多い虐待の種類であり、全体の4分の1以上を占めていることになります。
▶参考データ:高齢者虐待の種別の割合グラフ
・参照元:厚生労働省「令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」3頁抜粋
2−2.心理的虐待の件数
令和2年度の調査によれば、心理的虐待を受けたのは321人であり、施設等種別ごとの虐待種別の関係を見ると、グループホーム、小規模多機能型施設での心理的虐待が最も多くなっています。
▶参考データ:施設等種別ごとの虐待種別の関係データ
・参照元:厚生労働省「令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」6頁抜粋
2−3.心理的虐待は増加している?
(1)統計
心理的虐待については、令和元年度は養介護施設従事者等による虐待において特定された被虐待高齢者1,060人のうち、309人(29.2%)、平成30年度は、被虐待高齢者927人のうち251人(27.1%)、平成29年度は被虐待高齢者854人のうち261人(30.6%)であり、人数については増加傾向、割合については減少傾向にあります。
▶参照元:令和元年度、平成30年度、平成29年度の統計データは、以下の厚生労働省の調査結果資料になります。
・令和元年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に 基づく対応状況等に関する調査結果(pdf)3ページより
・平成30年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」 に基づく対応状況等に関する調査結果(pdf)3ページより
・平成29年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果(pdf)3ページ
(2)増加の背景
養介護施設従事者等による虐待の相談・通報件数と虐待判断件数の推移を見ると、相談・通報件数が令和元年まで増加し、令和2年度でも高止まりしている状況がわかります。
▶参考データ:養介護施設従事者等による虐待の相談・通報件数と虐待判断件数の推移データ
・参照元:令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結より抜粋
つまり、養介護施設従事者による虐待の相談・通報件数と虐待判断件数自体が増加しており、これにより、心理的虐待の件数も増加しているものと考えられます。
3.種類別よくある事例
以下では、心理的虐待の具体例について種類別に解説します。
3−1.威嚇的な発言、態度
心理的虐待の典型的な例の1つとして、威嚇的な発言や態度により、利用者を萎縮させるような態度をとることがあげられます。
このような言動をとられ続けることで、利用者は当該職員へ逆らうことができなくなるなど、行動に大きな制限を加えられることになります。
- 怒鳴る、罵る。
- 「ここ(施設・居宅)にいられなくしてやる」「追い出すぞ」などと言い脅す。
3−2.侮辱的な発言、態度
職員の中には、利用者が認知症等であることをいいことに、殊更に侮辱的な発言や態度をとる者もおり、これは立派な心理的虐待です。
日常的に侮辱的な言動をとられることで、利用者は尊厳を傷付けられ、無気力になるなどの重大な影響が出る可能性があります。
- 排せつの失敗や食べこぼしなど老化現象やそれに伴う言動等を嘲笑する。
- 日常的にからかったり、「死ね」など侮蔑的なことを言う。
- 排せつ介助の際、「臭い」「汚い」などと言う。
- 子ども扱いするような呼称で呼ぶ。
など
3−3.高齢者や家族の存在や行為を否定、無視するような発言、態度
利用者に対して、利用者ができないことを殊更に責めたり、利用者やその家族の存在や行為を否定し、無視するような言動をとることで、利用者は尊厳を傷付けられ、無気力になる、情緒が不安定になる、意欲をなくすなどの重大な影響が出る可能性があります。
- 「意味もなくコールを押さないで」「なんでこんなことができないの」などと言う。
- 他の利用者に高齢者や家族の悪口等を言いふらす。
- 話しかけ、ナースコール等を無視する。
- 高齢者の大切にしているものを乱暴に扱う、壊す、捨てる。
- 高齢者がしたくてもできないことを当てつけにやってみせる(他の利用者にやらせる)。
など
3−4.高齢者の意欲や自立心を低下させる行為
介護サービスは、利用者が現在の状態を維持し、または改善することで、少しでも長い間、健康で文化的な生活を送ることが出来るようサポートすることに目的があります。
それにもかかわらず、職員が、日々の忙しさや介護事故を恐れるあまり、利用者ができることや、やる意欲を見せていることをさせなければ、利用者は意欲や自立心が低下し、できていたこともできなくなってしまいます。
- トイレを使用できるのに、職員の都合を優先し、本人の意思や状態を無視しておむつを使う。
- 自分で食事ができるのに、職員の都合を優先し、本人の意思や状態を無視して食事の全介助をする。
など
3−5.心理的に高齢者を不当に孤立させる行為
利用者は、施設などに入所した際、どうしても孤独を感じやすく、外部にいる家族や友人達との関わりは、認知機能を維持するためにも非常に重要なものとなります。
それにもかかわらず、家族や友人達との関わりを、本人の体調等と関係なく不当に遮る行為は、利用者に孤独を感じさせ、無気力になってしまうなどの影響が考えられます。
- 本人の家族に伝えてほしいという訴えを理由なく無視して伝えない。
- 理由もなく住所録を取り上げるなど、外部との連絡を遮断する。
- 面会者が訪れても、本人の意思や状態を無視して面会させない。
など
3−6.その他
その他にも、以下のような言動が心理的虐待に該当し得ます。
- 車椅子での移動介助の際に、速いスピードで走らせ恐怖感を与える。
- 自分の信仰している宗教に加入するよう強制する。
- 入所者の顔に落書きをして、それをカメラ等で撮影し他の職員に見せる。
- 本人の意思に反した異性介助を繰り返す。
- 浴室脱衣所で、異性の利用者を一緒に着替えさせたりする。
など
4.心理的虐待発見の端緒
介護事業所としては、心理的虐待にいち早く気づくにはどうすれば良いでしょうか?
以下では、心理的虐待発見の端緒について解説します。
4−1.心理的虐待は見つけづらい
心理的虐待の特徴は、身体的虐待の場合と違い、非常に発見が難しいところにあります。
身体的虐待であれば、体に痣や傷ができる、衣服に血液が付着するなど、日々の入浴や着替えの際に発見しやすい痕跡が残ることもあります。しかしながら、心理的虐待の場合は、明確にわかる痕跡が残りづらいため、職員としては、その端緒を見つけるためには、より注意深く利用者との関わりを持つ必要があります。
4−2.心理的虐待発見の端緒
では、具体的にどのような端緒がみられるでしょうか?
(1)利用者の状態
心理的虐待を受ける利用者は、以下のような態度を示すようになります。
- 特定の職員に恐怖心を示す
- 無気力、無意欲となる
- 元々できていた作業ができなくなる
- 表情がなくなる
- 言葉数が少なくなる
- 急激に認知機能が低下する
など、様々な症状が発生します。
特に体調面では問題がないのに、このような態度が見られた場合には、その動向を注視し、本人からの聴取や他の職員からの聴取、防犯カメラの確認などしっかりと原因の解明のための行動を取る必要があります。
(2)他の職員からの相談
例えば、職員から管理者等に対して、「○○が利用者に対して暴言を吐いている」などといった相談がされる場合があります。この場合、当該職員は、一緒に働いている同僚の問題行動を、勇気を持って管理者に進言しているのですから、決して無碍に扱わず、しっかりと話を聞き取る必要があります。
もしこのような相談を無視し、適切な調査を行わない場合、これによって利用者になんらかの被害等が発生すれば、管理者・法人の責任は免れません。同僚からの相談は、最も具体的でかつ信憑性の高い情報となり得ますので、しっかりと対応するようにしましょう。
【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】
心理的虐待の存在をリークした職員が、意向として、自分が話したことを知られたくないという場合、事業所としては細心の注意を払う必要があります。
なぜなら、勇気を持って進言してくれた職員が、虐待の事実を告げ口した「犯人」のような扱いを受け、これによって職場で嫌がらせを受けたり、居心地が悪くなるなどして、精神疾患を発症したり、離職につながってしまえば元も子もないからです。法人としては、勇気持って進言をしてくれた従業員を可能な限り大切に扱うべきです。
そのため、調査にあたっては、絶対に通報者の名前を出さないこと、可能な限り客観的証拠を集めた上で、当該通報者の通報内容を前提にしなくても良いような調査を実施することが重要となります。
もっとも、どうしても通報者からの通報内容を前提とした対応をせざるを得ず、それによって通報者が誰であるかわかってしまうような場合でも、事業所として、虐待の事実を見逃すことはできません。
虐待は、個人間だけの問題ではなく、事業所全体にとって重大な問題です。仮に、事業所ぐるみで虐待に加担していたと判断されてしまう場合、介護事業所としての指定の効力に重大な影響を及ぼす処分がされる場合もあります。
指定の効力に影響を及ぼす処分などについては、以下の記事でも具体的な説明をしていますので、併せてご覧ください。
▶︎参考:介護事業の指定取消し・指定の効力停止!処分内容や影響、争う方法を徹底解説
その場合には、当該職員に対し、対応の重要性と必要性をしっかりと説明し、その上で理解を求めるよう努める必要があります。
5.心理的虐待発生の原因
心理的虐待が発生するには、どのような原因が考えられるでしょうか?
5−1.心理的虐待の横行は職場環境悪化のサイン?!
心理的虐待が横行している職場では、職員間でハラスメントが横行していたり、職員間の風通しが悪く、お互いに相談等ができないような環境であることがほとんどです。
その理由は様々ですが、1つは、職員間の関係が不良であることで、ストレスがたまり、その矛先が利用者へ向いてしまうことが挙げられます。
5−2.心理的虐待発生の原因
心理的虐待発生の原因には、主に以下のようなものがあります。
- 教育・知識・介護技術等に関する問題
- 職員のストレスや感情コントロールの問題
- 虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等
- 人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ
心理的虐待をはじめ介護現場で高齢者虐待が発生する原因について詳しくは、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧下さい。
6.心理的虐待を防止するための法令
次に、心理的虐待を防止するための法令や、心理的虐待に該当する具体的な行為が、犯罪行為に該当する場合にどのように罰せられるのか、について解説します。
6−1.高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律
心理的虐待を防止するための法令としては、まずは高齢者虐待防止法が挙げられます。
高齢者虐待防止法は、介護保険制度の普及、活用が進む中、一方では高齢者に対する身体的・心理的虐待、介護や世話の放棄・放任等が、家庭や介護施設などで表面化し、社会的な問題となったことを背景に制定されました。この法律は、高齢者の権利保護や、高齢者虐待の早期発見、早期対応の施策を国及び地方公共団体に整備させることを目的としています。
高齢者虐待防止法では、国及び地方公共団体、国民、保健・医療・福祉関係者、養介護施設の設置者、養介護事業者それぞれの責務を定め、さらに市町村、都道府県、国及び地方公共団体の役割について定めています。また、保健・医療・福祉関係者の責務も定められています。
高齢者虐待防止法について詳しい解説は、以下の記事をご参照下さい。
6−2.刑法
心理的虐待に該当する具体的な行為が、刑法上の犯罪行為に該当する場合には、刑法によって罰せられることになります。
例えば、利用者に対して、生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を伝えて強迫したような場合であれば、脅迫罪(刑法222条)が成立し得ますし、嫌がらせ行為等により、利用者が精神疾患に罹患するなど、心身への悪影響が出た場合には、傷害罪(刑法204条)や業務上過失致傷罪(刑法211条)などの犯罪が成立し得ます。
▶参考:「刑法222条・刑法204条:刑法211条」の条文について
(脅迫)
第222条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
(傷害)
第204条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(業務上過失致死傷等)
第211条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
・参照元:「刑法」の条文
7.心理的虐待を発見したら?対応について
実際に心理的虐待を発見した場合には、以下のような対応が必要となります。
- 利用者の安全確保
- 利用者家族との対応の検討
- 行政への通報
- 職員への注意指導、処分
順番に見ていきましょう。
7−1.利用者の安全確保
心理的虐待を発見したとき、最優先するべきは、まずは利用者の安全確保です。
まずは、心理的虐待をしていた職員を、直ちに利用者のケアから遠ざけた上、利用者の心理状態や認知機能の影響の有無等を早急に確認し、場合によっては医療機関を受診します。そして、なんらかの影響を受けている場合には、改善に向けた対応を検討する必要があります。
7−2.利用者家族との対応の検討
次に、心理的虐待を受けた利用者の家族に対して、どのように対応していくかが問題となります。
心理的虐待の場合、身体的虐待と違って明らかな外傷等がなく、利用者家族とのこれまでの関係性などからも、どの範囲で、どのタイミングで、そしてどの程度報告するべきか、という問題があります。
利用者家族との対応はケースバイケースですが、絶対に言ってはいけないのは、虚偽の事実です。調査中等の理由から、報告の範囲をしぼることは問題ありませんが、虚偽の事実を報告し、その後そのことが発覚すれば、利用者家族からは強い不信感をもたれ、交渉ができなくなってしまいます。
心理的虐待が発生した際の利用者家族への対応については、必ず専門家に相談しながら進めるようにしましょう。
7−3.行政への通報
高齢者虐待防止法第21条1項は、「養介護施設従事者等は、当該養介護施設従事者等がその業務に従事している養介護施設又は養介護事業(当該養介護施設の設置者若しくは当該養介護事業を行う者が設置する養介護施設又はこれらの者が行う養介護事業を含む。)において業務に従事する養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。」と規定しています。
すなわち、介護事業所の職員は、高齢者虐待を発見した場合、速やかに市町村へ通報をする必要があります。
なお、介護事業者の職員の中には、「虐待通報をすると、職務上課せられている守秘義務に違反するのではないか。」と不安に感じ、行動に移すことを躊躇する人がいます。もっとも、高齢者虐待防止法第7条3項には、「刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前二項の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。」と定められています。
要するに、高齢者虐待防止法に基づく通報の場合は、守秘義務には違反しないと考えて差し支えありません。
7−4.職員への注意指導、処分
心理的虐待を行っていた職員に対しては、事業所として、事実関係をしっかりと調査の上、厳しい注意指導を実施する必要があります。
具体的には、心理的虐待の存在を何らかの方法で認知した後、本人からの聞き取りの前に、防犯カメラ映像、他の職員からの聞き取り、利用者本人からの聞き取りなど、可能な限り調査をします。
その上で、心理的虐待の程度にもよりますが、まずは注意指導を実施し、必要に応じて懲戒処分をする必要があります。
このような注意指導や処分の有無は、虐待に対して事業所が適切な対応したかを示す重要な事項ですので、この点をしっかり検討せず、心理的虐待を行った職員を野放しにしてしまえば、事業所による人格尊重義務違反があったとして、指定の効力停止や指定の取消しなど重い行政処分もあり得ます。
指定の効力停止、指定の取消しについては、以下の記事で詳しく説明していますので、併せてご覧ください。
また、以下の記事では、注意指導や懲戒処分について詳しく説明していますので、併せてご覧ください。
8.心理的虐待を防止するためには?対応策について
心理的虐待を防止するためには、職員が働きやすい風通しの良い職場環境を整え、虐待防止のための研修を定期的に実施したり虐待防止マニュアルを作成、運用していくことが重要です。
整理をすると、以下のような対応策が有効です。
- 1.職員のストレスケア
- 2.職場環境の改善
- 3.虐待防止のための研修の実施
- 4.虐待防止マニュアルの作成
- 5.職員による虐待報告窓口の設置
これらの対応策についての具体的な説明は、以下の記事でそれぞれ解説していますので、併せてご覧下さい。
9.弁護士法人かなめのサポート内容のご紹介
弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のような心理的虐待に関してのサポートを行っています。
- (1)心理的虐待発見時の対応サポート
- (2)虐待防止の研修
- (3)ヒヤリハット研究会
- (4)顧問弁護士サービス「かなめねっと」
9−1.心理的虐待発見時の対応サポート
弁護士法人かなめでは、心理的虐待発生時の対応サポートを行っております。心理的虐待が生じた時、介護事業所の職員は、その解決に向けて様々な取組みを行っていく必要があります。
- 高齢者虐待防止法に基づく行政への相談、通報
- 行政担当者のヒアリングへの対応
- 心理的虐待の加害者であるご家族(キーパーソン)への連絡
- 心理的虐待を行った職員への懲戒処分
等々、取るべき手続きは多岐にわたります。
介護事業所において、介護現場における通常業務を行いながら、上記のすべての対応を検討し、実施することは困難ですので、弁護士との連携が非常に重要です。
弁護士法人かなめでは、この全ての局面において、介護事業所のみなさまが日常業務に集中できるよう、心理的虐待が疑われたり発覚した初期段階から、徹底的にサポートする体制を整えています。
9−2.虐待防止の研修
令和3年4月1日より、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関 する基準等の一部を改正する省令」(令和3年厚生労働省令第9号)が施行され、 全ての介護サービス事業者を対象に、利用者の人権の擁護、虐待の防止等の観点か ら、「① 虐待の防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催すること」、「② 虐待の防止のための指針を整備すること」、「③ 虐待の防止のための研修を定期的に実施すること」、「④ 虐待の防止に関する措置を適切に実施するための担当者を置くこと」が義務づけられました。
当該規定は、令和6年4月1日から完全施行となり、今から準備しておくことが重要です。
特に大切な点は、「③ 虐待の防止のための研修を定期的に実施すること」の定期研修の実施です。心理的虐待は、発見が困難であることも多く、自分が心理的虐待をしていると認識していない職員さえいます。そして、1度研修を受けたとしても、知識や記憶はなかなか定着せず、職員の職務経験等によって、受ける印象や蓄積する知識も変わってきます。
定期研修をすることによって、日常業務の中で忘れそうになる基礎知識を定着させ、新たな知識を得続けていくことが重要となるのです。
弁護士法人かなめでは、実際に弁護士として介入した心理的虐待の事例を元に、心理的虐待に関する基礎知識、具体的な事例、その対応方法を学び、知識を定着させながら、常に知識をアップデートできる研修を提供します。
9−3.弁護士費用
弁護士法人かなめへの法律相談料は以下の通りです。
- 1回目:1万円(消費税別)/1時間
- 2回目以降:2万円(消費税別)/1時間
※相談時間が1時間に満たない場合でも、1時間分の相談料を頂きます。
※スポットでの法律相談は、原則として3回までとさせて頂いております。
※法律相談は、「1,弁護士法人かなめにご来所頂いてのご相談」、又は、「2,ZOOM面談によるご相談」に限らせて頂き、お電話でのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。
※また、法律相談の申込みは、お問合わせフォームからのみ受け付けしております。
※介護事業所の経営者側からのご相談に限らせて頂き、他業種の企業様、職員等一般の方か らのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。
9−4.ヒヤリハット研究会
弁護士法人かなめでは、顧問契約を頂いている介護事業所向けに、介護事業所の方々と共に、実際に生じた事例、裁判例を元にゼミ形式で勉強する機会を設け、定期的に開催しています。
実際に介護事業所の現場から得た「気づき」を参加者で共有し、それぞれの参加者の介護事業所の現場にフィードバックができる機会として、ご好評を頂いています。
9−5.顧問弁護士サービス「かなめねっと」
弁護士法人かなめでは、顧問弁護士サービス「かなめねっと」を運営しています。
弁護士法人かなめでは、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入しています。事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。
具体的には、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。
いつでもご相談いただける体制を構築しています。法律家の視点から利用者様とのトラブルをはじめ、事業所で発生する様々なトラブルなどに対応しています。
直接弁護士に相談できることで、事業所内社内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。
顧問弁護士サービス「かなめねっと」について詳しくは、以下のサービスページをご覧ください。
以下の動画でも詳しく説明をしていますので、併せてご覧下さい。
▶︎【介護・保育事業の方、必見】チャットで弁護士と繋がろう!!介護保育事業の現場責任者がすぐに弁護士に相談できる「かなめねっと」の紹介動画!!
(1)顧問料
●顧問料:月額8万円(消費税別)から
※職員従業員の方の人数、事業所の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、お問合せフォームまたはお電話からお問い合わせください。
10.まとめ
本記事では、「心理的虐待」に関して、その定義や内容、具体的事例について解説した上、心理的虐待を発見した場合に事業所としてどのような対応をすればいいのかについて解説しました。
また、心理的虐待は発見が難しいものの、その端緒は存在することから、この端緒や、この端緒を見逃さないことの重要性についても解説しています。
解説した通り、心理的虐待の横行する現場では、職員同士のハラスメントが常態化していることがしばしばあります。
職員同士がお互いの悩みや問題を相談できる、風通しの良い職場を作ることが、心理的虐待が発生しない職場づくりの第一歩になるのです。
11.【関連情報】心理的虐待など高齢者虐待に関する記事一覧
本記事では、「高齢者の心理的虐待とは?」のテーマについて詳しく解説しました。介護事業所における高齢者虐待については、本記事をはじめ記事内で紹介した関連記事以外にも、詳しく解説した記事が他にもありますので、以下もあわせてご参照ください。
・高齢者の経済的虐待とは?介護事業所で発生時の対応や防止対策を解説
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