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逆パワハラとは?判断基準や事例・正しい対処法をわかりやすく解説

逆パラハラって?判断基準や事例・正しい対処法をわかりやすく解説!
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皆さんの事業所に、少し注意をしただけで「パワハラだ!」と反発し、指導に応じない職員はいませんか。

そして、指導に応じないだけでなく、謝罪を求めたり、弁護士への相談や労働基準監督署への相談を仄かして、事業所に対して慰謝料の支払いなどなんらかの対応を求めてくるような職員はいませんか。

近年、このような、職員から管理者などの上司に対するパワーハラスメント、いわゆる「逆パワハラ」が増えています。

本来事業所は、使用者として、職員に対して当然に業務上必要な注意指導をする権限があります。

そして、介護事業所は、利用者の生命や身体を預かっており、職員の職務怠慢などにより利用者を危険に晒すことはできません。これに伴い、状況によっては、もちろん厳しい注意をすることもあるでしょう。

そのような場合に、職員が注意指導に応じないばかりか、逆に事業所側に責任を追及してくるようなことがあれば、事業運営に多大な支障を来します。

さらには、注意指導をする管理者等の上司の側としても、部下から激しい追及を受け、注意指導に法的責任があるかのような言動を繰り返されることにより、自信をなくし、精神的に追い詰められ、最悪の場合には精神疾患を発症して休職を余儀なくされることもあります。

このように、事業所にとって、逆パワハラは決して無視できない問題なのです。

そこで、この記事では、逆パワハラの特徴や事例を紹介し、事業所として具体的にどのような対処をすれば良いかについて解説します。

そして、最後まで読んでいただくことで、逆パワハラを恐れず、適切な注意指導ができる健全な職場環境を整えていくための方法を、知ることができます。

それでは、見ていきましょう。

 

なお、逆パワハラについては、以下の動画でも詳しく説明していますので、ご覧下さい。

 

 

▶参照:逆パワハラなどの問題を起こすモンスター社員については、以下の記事も参考にご覧ください。

モンスター社員!特徴と対応方法を事例付きで弁護士が解説【放置厳禁】

 

 

【関連情報】逆パワハラなどハラスメント関係でお困りの方へ!介護業界に強い弁護士をお探しの方は以下の情報もご覧ください。

介護施設など介護業界に強い顧問弁護士の選び方や費用の目安などを解説

 

1.逆パワハラとは?定義を解説

「逆パワハラ」とは、部下から上司に対して行われるパワーハラスメントのことを言います。

通常の「パワーハラスメント」は、上司から部下に対して、社内での優越的地位を背景に行われるというイメージがあります。

そのため、通常の「パワーハラスメント」とは「逆」のパワーハラスメントであると呼ばれているのです。

 

2.逆パワハラが増えている現状や原因について

次に逆パワハラが増えている現状について、その原因などを交えて解説いたします。

 

2―1.逆パワハラの現状

「逆パワハラ」をインターネットで検索すると、多くの記事がヒットします。

具体的な統計があるわけではありませんが、筆者が在籍する弁護士法人かなめの顧問先からも、

 

  • 「通常の注意をしただけなのに、パワハラを受けたと言われて労災申請をされている」
  • 「自ら辞職をしたはずの職員が、パワハラが原因であると言って弁護士をつけて慰謝料請求をしてきた」

 

などといった相談を聞くことが増えています。

 

2―2.逆パワハラが増えている原因

そもそも「パワーハラスメント」とは何でしょうか。

その定義を確認した上で、なぜ逆パワハラが増えているのかについて、見ていきましょう。

 

(1)そもそもパワーハラスメントとは?

2020年6月1日、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(以下、「労働施策総合推進法」/中小企業では2022年4月1日から施行)、いわゆる「パワハラ防止法」が施行されましたが、実は、パワハラの防止を義務付けたと言われているに条文は、以下のような内容となっています。

 

▶参考:パワハラの防止を義務付けたと言われているに条文

 

(雇用管理上の措置等)

第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

 

・参照:「労働施策総合推進法」の条文

 

 

見て頂くとわかる様に、実は、「パワーハラスメント」という言葉は、法律では使用されていません。

 

(2)厚生労働省が定義するパワーハラスメントの内容

労働施策総合推進法30条の2、第3項を見ると、厚生労働大臣が、「雇用管理上の措置等」に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものと規定されています。

この、労働施策総合推進法30条の2、第3項の規定が指す「指針」が、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)」です。

この指針では、「パワーハラスメント」を以下のように定義しています。

 

▶参考:「パワーハラスメント」の定義

 

職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの をいう。

 

・参照:「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和2年6月1日適用】」(PDF)

 

 

その上で、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」と、はっきりと規定しています。

さらに特筆すべき点は、この指針の2頁目に「逆パワハラ事例」も明記されていることです。

以下、該当箇所を抜粋します。

 

・ 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な 経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが 困難であるもの

・ 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難 であるもの

 

このように、厚生労働省は、「部下による言動」「部下からの集団による行為」についても、パワハラに当たり得ること、「パワハラは上司から部下への言動だけでは無い」ということを、この指針で広く国民に伝達する姿勢がうかがえます。

 

(3)なぜ逆パワハラが増えているのか?

現在「ハラスメント」に対して、「ハラスメントは受け手がどう感じたかで決まる。被害者がハラスメントだと感じたらハラスメントである」といった、主観を重んじる見解が横行しています。

これが、逆パワハラが増えている大きな原因の1つです。

しかしながら、実際には、厚生労働省による「パワーハラスメント」の定義には、職員の主観を考慮するような文言は入っていません。

モンスター社員は、「ハラスメント」の意味を独自解釈し、注意指導をする上司を「パワハラですよ!」などと責め立てることで、充分な注意指導ができない環境を作り出しているのです。

実は、この「パワーハラスメント」という言葉について、一人歩きを危惧する声は、平成24年から上がっていました。
平成24年1月30日に行なわれた「第6回職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」の議事要旨では、以下のような意見が出ていました。

 

▶参考:

 

「いじめ・嫌がらせ」を「パワーハラスメント」と表記すること自体に関して、多少違和感がある。「職場のハラスメント」としてはどうか。理由の1は、パワーハラスメントという言葉はこれまで、上司から部下へというイメージで報道や調査がされているので、この語感の強さはなかなか簡単にはぬぐえない印象がある。報告書(案)では、上司から部下に行われる以外のものもあると書いているが、上司から部下へのことしか頭の中に残らないぐらい語感が強い点は留意しなくてはいけない。上司から部下への問題だけではなくて、広くいじめ・嫌がらせを救おうとするのだったら、パワーハラスメントという言葉を再考慮するか、「逆パワハラ」という言葉を流行させるぐらいの覚悟で、上司から部下以外のものもありうるということを強く周知しなければいけない。

 

・参照:2012年1月30日 第6回職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ議事要旨(労働基準局労働条件政策課賃金時間室)

 

 

まさに、この会議において危惧された状況が、現在起きていることがわかります。

 

3,逆パワハラの要件

逆パワハラの要件

「逆」パワハラは、と言うものの、その実態は「パワーハラスメント」となんら変わるところはありません。

そうすると、逆パワハラの要件は、パワーハラスメントの要件と同様に、やはり以下の要件から判断することとなります。

 

  • 1.優越的な関係を背景とした言動であって、
  • 2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  • 3.労働者の就業環境が害されるものであり、
  • 4.「1」から「3」までの3つの要素を全て満たすもの

 

3−1.逆パワハラ認定の決め手

逆パワハラの場面では、この「1」ないし「3」については以下のような視点から判断されることになります。

 

(1)「1.優越的な関係を背景とした言動であって」について

  • 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
  • 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの

 

介護現場においては、職員それぞれが業務上必要な知識や経験を有しており、当該者の協力がなければ業務の円滑な遂行は困難な場合が多いと思います。

そのような場合には、部下からの言動であっても、「優越的な関係」を背景としていると言えるでしょう。

 

(2)「2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより」について

  • 業務上明らかに必要性のない言動
  • 業務の目的を大きく逸脱した言動
  • 業務を遂行するための手段として不適当な言動
  • 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動

 

部下から上司に対する、謂れのない攻撃は、業務上明らかに必要性のない言動です。

そのため、通常の注意指導をする上司に対する一方的な解釈によるパワーハラスメントの主張は、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であると言えるでしょう。

 

(3)「3.労働者の就業環境が害されるものであり」について

当該言動により、労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること。

この時、就業環境が害されていると言えるかどうかは、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準とすることが適当です。

部下の言動により、注意指導をする上司の精神的苦痛が大きくなり、他の職員に対しても、業務上必要な注意指導ができないような状態になったり、精神疾患を発症するような状況になれば、この要件を充すと言えます。

 

このように、逆パワハラも、特別なものと考えず、客観的な事情を元に判断するようにしましょう。

また、厚生労働省の以下のページでも、パワーハラスメントの要件についての詳しい説明がありますので、合わせてご覧ください。

 

▶︎参照:厚生労働省「ハラスメントの定義」

 

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

ここでは、パワーハラスメントの定義への該当性について詳しく説明をしましたが、パワーハラスメントに該当してなければ、事業所として何らの対応もしなくていい、ということではありません。

 

実際に、業務命令や注意指導に合理的な理由なく従わない職員には、当然、更なる注意指導やさらにその先の対応を検討していく必要があります。

 

ここでは、パワーハラスメントには上司から部下に対するものだけではなく、同僚や部下からの言動も含むため、語感に惑わされることなく、事業所として対応を検討しなければならないと言うことを、しっかり理解しておいてください。

 

 

4.逆パワハラのよくある事例【判例付き】

逆パワハラのよくある事例【判例付き】

ここでは、逆パワハラの典型的な特徴をご紹介した上で、実際によくある事例や裁判例などをご紹介いたします。

 

4−1.特徴

逆パワハラも、先に説明したように「パワーハラスメント」の1つです。

その上で、最も典型的な特徴は、部下から上司に対して行なわれるところ、その内容として、上司の「パワーハラスメント」を訴え、これに基づいた様々な要求をするところにあります。

 

4−2.よくある事例

以下では、逆パワハラの典型的な事例を紹介します。

 

(1)注意指導に対する過剰な反応

例えば、業務中に私用のスマートフォンを見ている、他の職員の介助を手伝わない、利用者や利用者家族に挨拶しないなど、日常業務の中で、注意指導をすべき場面は無数にあります。

中には、利用者の送迎に際して本来行うべき見守りをしない、服薬の際に薬を取り違えるなど、利用者の生命身体を直接的に危険に晒すような問題行動もあります。

このような場合には、厳しい注意指導をすることもあって然るべきです。

しかしながら、上司からの注意指導に対して、以下のような過剰な反応をすることがあります。

 

  • 「そんなキツい言い方はパワハラじゃないですか?傷ついたので謝罪して下さい」
  • 「労基署に相談に行きますよ!」
  • 「私は知合いに弁護士がいるので、はやく謝罪しないと弁護士をつけて裁判しますよ!」

 

上司としても、通常の注意をし、このような反応をされることは全く想定していないと思います。

そのため、このような反応をされた時、まずは動揺し、対応に迷うことになると思います。

 

(2)注意指導を原因とする職場放棄、欠勤

中には、反発をするだではなく、

 

  • 「大きな声を出されて傷付いて気分が悪くなったので今日は帰ります。」
  • 「明日、仕事を休んで心療内科を受診します。労基にも行ってきます」

 

などと、実際に業務を離れてしまったり、欠勤をしてしまうというケースもあります。

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

職員が欠勤をする場合、少なくともその期間が一定の日数に渡る場合は、一律に診断書の提出を求める運用をすることをお勧めします。

 

職員の人数が少なく、人的関係が密である場合には、ある程度の信頼関係があることから、職員からの申請のみで、欠勤を認めているケースは多いと思います。

 

しかしながら、職員の人数が増えてくれば、必ずしも管理者の目が届かなくなります。

 

そのような場合に、新たに入社した職員に対してのみ診断書の提出を求めるよう指示すれば、職員によって対応を変えているとして、更なる火種になりかねません。

 

職員の人数や規模に合わせて、運用方法を変えていくことは組織として何らおかしなことではありません。信頼をおいている職員であれば、このような事情も理解をしてくれると思います。

 

 

(3)上司の配置転換や解雇の要求

さらには、管理者などに対して、注意指導をした上司について、

 

  • 「○○さんにパワハラを受けた」
  • 「○○さんがいる職場では働けないので、やめさせて欲しい」
  • 「○○さんを別の施設に移してくれるまで仕事に行けない」

 

などと、配置転換や解雇を求めてくるケースもあります。

このような訴えがあった場合、事業所としては、安全配慮義務の観点から、上司に対する聴取や事実確認をする必要があります。

しかしながら、このような聴取をされること自体が、上司としても強いストレスになることもあり、事業所としては非常に慎重な対応が求められることになります。

 

(4)注意指導を受けたことを、パワハラを受けたとしてSNSに投稿

注意指導を受けた職員の中には、その場で反発をするだけでなく、SNSで事業所を攻撃してくる人もいます。

例えば、SNSに「施設の管理者に突然○○と言われて傷ついた」「○○はパワハラが横行しているブラックな施設だ」などと、注意指導に至った前提事実を全く説明することなく、自らの評価のみに基づいた書き込みがされることで、求人等に影響することがあります。

実際に、面接や内定が決まっていた職員が、その書き込みがされた以後に、面接、内定を辞退した例もあり、事業所としては見過ごせない事態になることもあります。

このような書き込みにより損害が発生した場合には、当然損害賠償を請求することなども可能ですが、SNSは、匿名での書き込みも可能であることから、その書き込みを誰が行ったかがすぐにはわからない場合もあります。

このような場合には、発信者情報開示請求によって、書き込んだ者を特定できる場合があります。

詳しくは、以下の動画をご覧下さい。

 

 

 

(5)労働基準監督署への相談

最近増えているのは、労働基準監督署への相談のケースです。

例えば、職員が、「事業所からパワハラを受けて精神疾患になった。労災だ!」などと主張して欠勤し、その足で労働基準監督署へ相談にいき、その後労働基準監督署から事業所に調査の連絡が入ると言ったケースです。

労働基準監督署は、労働基準法違反等の是正について、調査の上、是正勧告を行いますが、この是正勧告を無視したり、誠実に対応しなかったりすれば、刑事責任を追及される可能性もあります。

労働基準監督署に対しては、もちろん事業所内で保管する資料等をもとに誠実に対応し、説明をすれば、理解してもらえる場合も少なくありません。

また、労働基準監督署は、裁判所ではないことから、例えばパワハラがあったことを「認定」して損害賠償を強制することなどはできません。

しかし、対応をしなければならないこと自体が、事業所にとっては大きな負担にもなります。

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

「職員が労災申請をすると言ってるんだけど、止めた方がいいですか?」

 

こんな相談を、よく耳にします。労災保険制度は、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度です。

 

労災の申告に対し、労働基準監督署が必要な調査を実施し、労災に該当するか否かを認定する、というプロセスを経ます。

 

そして、労働者の傷病に、「業務起因性」があれば、保険給付がされることになります。

 

詳しい手続については、以下のページを参考にして下さい。

 

 

▶︎参照:厚生労働省「労働災害が発生したとき」

 

 

私は、事業所が、職員から労災請求をしたいと言われた場合には、労災の手続を進めれば良いとアドバイスしています。

 

間違っても、労災申請を阻止しようとするなど、「労災隠し」との誹りを受けるような対応をしてはいけません。

 

事業所としては、負担に思われても、必要とされる書類を虚偽なく作成し、労働基準監督署からの聴取等に誠実に応じることが、むしろ労働基準監督署との関係を良好にし、調査等をスムーズに進めることに繋がるのです。

 

 

4−3.裁判例

 

(1)小田急レストランシステム事件(東京地方裁判所平成21年5月20日判決)

 

事案の概要

この事件は、ある職員が精神障害(うつ病)を発症して自殺したことが、業務に起因するものであるとして、その遺族が渋谷労働基準監督署長に対し、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)による遺族補償給付の支給を請求したところ、いずれも支給しない旨の処分を受けたことから、その取消しを求めた事案です。

この事件では、自殺をした職員の部下が、自らの処遇に不満を持ったことから、自殺をした職員を含む上司らに関して、「食券を再利用して売上げを着服している」「金庫から1万5000円を盗んだ」「部下の女性職員に対するセクハラをした」「酒売場倉庫から窃取されたビールを飲んだ」などの訴えを行い(なお、一部の事情については事実も含まれていた。)、自殺をした職員は、この件に対する聴取、始末書作成等に忙殺され、精神的に追い詰められ、結果として死を選ぶこととなってしまったのです。

 

判決結果

裁判所は、この自殺について、業務起因性があったとして、遺族補償給付を認めなかった処分を取り消しました。

 

▶参照:「小田急レストランシステム事件(東京地方裁判所平成21年5月20日判決)」の判決内容

 

 

この事案は、あくまで労災認定にかかる判断であり、具体的に、逆パワハラをした職員の責任を認めたり、これを放置した会社の責任を認めたものではありません。

しかしながら、逆パワハラを放置したり、部下から訴えのみを根拠に配慮のない調査を行うことで、追い詰められ、精神疾患を発症したばかりか、自ら死を選んでしまった痛ましい事件として、参考になります。

 

5.逆パワハラへの対処法について

逆パワハラへの対処法について

次に実際に逆パワハラが発生した際の具体的な対処法について順番に解説していきます。

 

5−1.毅然とした態度で臨む!

事業所として、職員から「パワハラです!訴えますよ」などと強い態度で反発をされた時、思わず怯んでしまうことがあると思います。

ハラスメントへの対応が社会問題となっている中で、弁護士に相談に行く、労基署に相談に行く、訴える、などと言われると、当然、事業所としては当惑しますし、そのような職員に対して、腫れ物に触れるような対応をしたくなるのは当然です。

しかしながら、このような職員を放置することは、他の職員への対応と差を設けることになり、職場の秩序が乱れることは必至ですし、何より、職場環境を良くしたり、業務改善をするために注意指導をした上司の言動を否定することにもなりかねません。

逆パワハラに対しては、事業所として、毅然とした態度で対応することが最も重要なのです。

 

【弁護士  畑山 浩俊からのコメント】

ある職員による言動が逆パワハラに当たるかどうかの判断は、慎重に行う必要があることは言うまでもありません。

 

事業所としては、逆パワハラを訴えられている上司による指導が業務上適切であったかを調査し、例えばその際の状況や言い方などに問題があれば、当該上司の指導を行う必要もあるからです。

 

例えば、元々問題のある職員からの訴えであることだけを持って、逆パワハラであると判断してしまうと、むしろ事業所が、当該職員からの安全配慮義務違反等の訴えを受け、足元を掬われることにもなりかねません。

 

安全配慮義務違反で訴えられるとどうなるのか?については、以下の記事を参考にご覧ください。

 

▶参考:職員への安全配慮義務違反とは?罰則や事例、訴えられた際の対応を解説

 

このような判断に迷う場合には、労働問題に詳しい弁護士に相談することが非常に重要です。いつでも相談ができる窓口を確保することで、初動の段階から、自信を持って職員と接することができるのです。

 

 

5−2.具体的な対応方法

以下では、事業所として、ある職員の言動が逆パワハラであると認定した際の具体的な対応方法について解説します。

 

(1)粘り強い注意指導

逆パワハラをしてくる職員への対応の出発点となるのは、事業所から当該職員への注意指導です。

事業所としては、職員の管理、職場環境の維持のため、まずは逆パワハラをする職員に対して注意指導し、自らの言動や態度を反省させ、行動の改善を促すことが重要です。

 

1.口頭

何らかの問題行動が見られた際、最も簡易で且つすぐにできる注意指導の方法は、口頭での注意指導です。

注意指導は、逆パワハラなどの問題行動を現認してすぐに行うようにして下さい。

なぜなら、問題行動を現認したにもかかわらずその時にはこれを放置し、時間を置いてから注意すると、「あの時何も言わなかったのに急に今なんでそんなことを言うんですか?」「言いがかりです」などと、逆に反撃を受けるだけでなくよほど客観的な証拠が存在している場合でない限り、「私はそんなことはやっていません」と言い逃れをする可能性すらあるからです。

なお、注意指導には、もちろん職員の行動の改善を促すという役割がありますが、他にも、必ずしも客観的な証拠が残るものではない職員の言動について、「○○の行動に対して注意指導をした」という形で証拠を残すことで、合わせて、職員の行動をも記録するという役割もあります。

そこで、後述するように、口頭での注意指導を行う際にも、指導の状況を録音しておく、または、指導内容やその際の職員の態度などをタイムリーに記録しておくことで、問題行動をとった証拠を残していきましょう。

 

2.メール、Line等のチャットツール

最近は、事業所内での連絡方法として、メールやチャットツールを利用している介護事業所も多いと思います。

メールやチャットツールの良いところは、比較的速やかに注意指導ができることと、送った日付、時間、内容が記録され、それに対する相手からの返答内容も同時に記録されることです。

口頭で注意指導をした後、確認事項として改めてメールやチャットツールを利用して注意指導をしておくこと有効です。

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

メールやチャットツールは、日付、時間、内容が記録されることから、職員と紛争になった際の「言った言わない」問題には非常に有効です。

 

しかし、これは職員にとっても同様の価値があることを忘れないようにして下さい。

 

例えば、長時間労働を主張する職員が、メールやチャットツールの記録を利用して、時間外に事業所から業務命令や指示があったこと、これに対して対応したことを主張してくることも、当然想定されます。

 

このような事態を防ぐ方法としては、まず時間外にはメールやチャットで送らないことが最も肝要ですが、他にも、業務で利用するメールやチャットは、業務中しか使用しないスマートフォンやタブレットでしか見られないようにする、時間外にどうしても送信しておく必要がある場合にはその旨や、対応が不要であることを明記した上で送るなど、一手間を惜しんではいけません。

 

メールやチャットツールは非常に便利ですが、事業所としては、足元をすくわれることがないよう、その使い方に細心の注意を払う必要があるのです。

 

 

3.書面

口頭やメール、チャットツール等での注意指導を繰り返しているにもかかわらず、職員の問題行動が改善されないような場合、次の手続を想定し、書面での注意指導を行いましょう。

これまでに口頭やメール等で行ってきた注意指導や、その注意指導の際の態度を含めて改めて注意指導を行います。

書面での注意指導の際には、注意指導の内容の他、当該問題行動が就業規則の服務規律に違反している旨を付け加えておくと、注意指導の理由が明確となります。

具体的には、以下のような記載です。

 

▶参考:書面での注意指導の参考例

 

○年○月○日、利用者の食事介助中であるにもかかわらず、スマートフォンを見るなどして利用者の見守りを怠っていたことから、「業務中にスマホを見るのはやめなさい」と注意すると、「見ていない」「注意されて気分が悪くなった」などと言って、態度を改めないばかりか、そのまま離席して控室に帰ってしまった。これは、就業規則○条○号に定める○○に該当する。

 

 

このような注意指導書を交付する際には、これらの注意指導に対し、自らの行動をどう改善するかについて検討させ、期限を決めて提出するよう指示しすることも有益です。

実際に提出されれば、職員の態度も明らかになりますし、提出を拒否したとすれば、その態度自体が次の手続への根拠となります。

 

(2)配置転換を検討する

逆パワハラにより、注意指導をする立場にある上司が疲弊している場合、配置転換をすることは有益です。

これは、逆から見れば、「パワハラを受けている」と主張している職員の立場から見ても、当該上司と距離を置くことが有益な場合もあります。

具体的には、複数の施設を運用している事業所であれば、別の施設に異動させるという方法が考えられます。

配置転換は、通常は人事権を有する雇用主側に広い裁量があるので、原則としては有効ですが、配置転換後の勤務場所や職務内容によっては、当該職員の勤務環境を大きく変えてしまう場合があります。

そのため、配置転換の際には、 配置転換の必要性の他、対象職員の選定にかかる事情、その他の事情を考慮する必要があります。

例えば、配置転換によって職務内容、場所が変わり、通勤時間が著しく長くなったり、体に負担がかかるようになったり、給与が下がるような場合、労働条件の不利益な変更として、職員の同意が必要となり得ることから、注意が必要です。

ある介護事業所において、介護相談員から介護支援員への配転が、人事権の濫用であるとして、違法とされた事案もあります。【北海道・道労委(社会福祉法人札幌明啓院(配転))事件 (札幌地判令和元.10.11 労判1218.36)】

この事案では、業務内容や昇進等の違いなど、配置転換により当該職員が被る不利益の方が、配置転換の必要性より大きいとされ、人事権の濫用があるとして、配置転換命令が無効とされました。

 

(3)懲戒処分

使用者は、企業の存立と事業の円滑な運営のために必要不可欠な権利として、企業秩序を定立し維持する権限を有しています。

懲戒処分は、使用者が従業員の企業秩序違反行為に対して科す制裁罰です。

懲戒処分といえば、「懲戒解雇」がイメージしやすいかもしれません。

しかしながら、懲戒処分には、戒告や譴責(けんせき)といった、職員への影響が比較的小さいものから、減給出勤停止、降格処分、諭旨解雇懲戒解雇といった、職員の地位や労働契約の本質部分に影響のある重い処分まで順番に定められています。

懲戒処分をする際には、これまでに行ってきた注意指導や他の懲戒処分の存在も考慮の上、その内容を決めることになります。

そのため、事業所としては、注意指導によっても態度が改まらない職員に対しては、まずは戒告や譴責などの懲戒処分を行うようにしましょう。

戒告や譴責などの懲戒処分については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にご覧ください。

 

▶参照:戒告とは?処分の意味や重さ、具体的な内容、通知方法など進め方を解説

 

 

懲戒処分の前歴を残しておくことで、その後の様々な手続も取りやすくなります。

なお、懲戒処分は、就業規則に規定することで初めて行なうことができる処分であることには、注意が必要です。

懲戒処分の理由については、以下の記事にも取り上げていますので、参考にして下さい。

 

▶︎参照:具体的な解雇理由から学ぶ!違法にならない解雇の条件や要件とは?

 

 

5−3.証拠収集の重要性

逆パワハラに対しては、粘り強い注意指導や懲戒処分を重ねることが不可欠です。

そして、逆パワハラの場面では、事業所からの注意指導に対して「パワハラだ!」などと反論をしてくることが想定されることから、このような手続を進めるにあたっては、証拠を残していくことが非常に重要となります。

以下では、すぐに始められる証拠収集の方法について解説します。

 

(1)録音

職員の問題のある言動や、当方からの口頭での注意指導を残すには、録音をしておくことをお勧めします。

録音は、相手の許可を得ずに行うことも可能ですので、常にICレコーダーを持っておいて録音ができる状況を作っておきましょう。

録音については、以下の動画でも詳しく説明しているので、ご覧ください。

 

 

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

顧問先から、職員の問題行動についてご相談を受けた際、「録音があります!」と録音機器を出していただくことがあります。

 

その際、データを移そうとして、以下のような問題点にぶつかることがよくあります。

 

 

●ICレコーダーとパソコン等を繋ぐコードがなく、すぐにデータを移行できない。
●スマートフォンのアプリで録音したが、データの送信の仕方がわからない。

 

 

このような場合、せっかくお打合せに来ていただいたのに、事業所に戻られてデータの移行の方法を調べてから、改めてデータをいただく必要などがあり、2度手間になっています。

 

そこで、録音の際のICレコーダーとしてお勧めしているのは、ICレコーダーそのものにUSBの端子がついており、直接パソコンに接続することで、データ移行や充電も容易なタイプのものです。

 

データ移行が容易にできれば、私達がデータをいただきやすいということもありますが、何より、録音する度に順次パソコンに移していくことで、管理もしやすくなります。

 

これからICレコーダーを購入される方は、参考にしてみて下さい。

 

 

(2)メール、チャット、書面での保存

メールやチャットなどは、対応状況が日時と合わせて記録として残るため、証拠としては有効です。

もっとも、メールやチャットのやりとりを、一部の職員が自らの判断だけで返信してしまうと、後々の対応に支障を来したり、事業所として、逆パワハラの存在に気付けない結果対応が遅れるといった事態が発生し得ます。

そのため、逆パワハラのような、事業所全体として対応が必要な事例では、職員が社用で利用するメールについては、必ず他の管理者等、複数の職員を「CC」に入れてやり取りするようにしましょう。

また、LINEやその他のチャットアプリ等を利用する場合は、送信取消し等により証拠の隠滅が図られる可能性がありますので、トーク履歴を保存したりスクリーンショットをとるなどして保存するようにしましょう。

他にも、突発的な状況で注意指導をする際などには、録音を残すことが難しい場合もあります。

このような場合、例えば、注意指導の記録を、自分宛のメールやチャットに打ち込んで送信しておくと、その日に注意指導をした記録を作成したことが明らかとなるので、証拠として、後から都合のいい事情をメモしたなどと言われなくなります。

または、注意指導をした職員から管理者に報告を上げさせる形でメールを送信させる方法も有効です。

さらに、書面による注意指導を行った場合は、相手方に交付する書面の写しは必ずとっておくようにしましょう。

 

(3)メモの重要性

注意指導については、各注意指導について、録音や書面等の記録を残してくことも重要ですが、継続的に注意指導を行ってきたことがわかるよう、誰がいつ、どのような形で注意指導したかが一目瞭然となるように、メモや記録をつけておくことも有効です。

例えば、エクセルファイル等を利用し、

 

  • 1.日付
  • 2.注意指導をした職員
  • 3.場所
  • 4.注意指導の内容
  • 5.注意指導に対する職員の態度
  • 6.注意指導の方法(メール、電話、口頭他)

 

などを、簡単に記録しておき、各注意指導の証拠と照合できるようにしておくのです。

このような整理をすることは、証拠を残すことと合わせ、事業所としての職員の管理体制が一目瞭然となり、管理者の間での情報共有にも利用できます。

 

【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】

 

メモをとる場合、どのようにとればいいのかわからない、という相談を受けることがよくあります。

 

重要なことは、形式に捕われず、必要な情報をとにかくメモすることです。

 

パソコンを開いて、メモを作ることが手間であれば、日付を書いたノートに手書きで書き込んだり、スマホのメモ機能、先に解説をした自分宛のチャットなどを利用して、項目だけでも記載をすれば問題ありません。

 

注意すべきことは、できる限り、こちらが話した内容、相手が話した内容や行動を、評価を交えずそのままメモすること、この1点です。

 

自分でメモをしてみることで、だんだんメモを取ることに慣れ、どうすれば効率よくメモが取れるかなども自ずとわかってくると思います。

 

まずは、メモを取る習慣をつけていきましょう。

 

 

6.逆パワハラの放置は厳禁!

逆パワハラの放置は厳禁!

逆パワハラが発生した際、問題の対応を職員同士に任せっきりにしたり、日常の業務が忙しいからといって問題の先送りをしたりするなど、放置することは厳禁です。

以下では、問題を放置したことにより発生する影響を説明した上で、職場での意識作りの重要性や、現場の職員や管理者の声が直接顧問弁護士に伝わるような相談窓口を設置することの重要性について解説いたします。

 

6−1.放置することによる影響

逆パワハラは、事業所にとっては非常に扱いにくい職員の問題行動の1つです。できれば穏便にやり過ごしたいと思われるのも無理はありません。

しかしながら、逆パワハラを放置することによる問題は計り知れません。

以下で、その影響について解説します。

 

(1)逆パワハラの更なる激化

職員に対して、「パワハラです」と訴えれば注意が甘くなる、と思わせてしまうと、声をかけたり、視線を送るだけでも「監視している」などと主張し、通常の業務遂行にすら支障をきたす事態になりかねません。

最終的には、当該職員には、誰も何も指摘ができない、という最悪のケースに陥ることも想定されます。

 

(2)注意指導する上司の精神的負担

注意指導をする立場にある職員に、逆パワハラを行う職員との対応を任せ続けると、メンタル不調を訴え、うつ病等の精神疾患を発症するおそれが高まります。

さらには、十分な調査や検討をすることなく、当該職員に「パワーハラスメントの訴えが来ているから、気を付けるように」などと一方的に注意すれば、職場環境をよくし、業務改善を図ろうとしている職員の言動を踏み躙ることにもなり、更なる精神状態の悪化が容易に想像され、休職に追い込まれることもあります。

 

(3)職場環境の悪化に伴う離職

もし事業所が、逆パワハラを行う職員を放置し、逆に注意指導をする職員を注意したり、指導を任せっきりにしてしまえば、職員としては、自分を守ってくれない事業所に対する信頼を失ってしまいます。

そうなれば、離職の可能性が高まり、人材不足の介護業界においては大きな痛手となります。やる気のある職員が離職していくと、残った職員はさらに疲弊していき、悪循環に陥るのです。

 

6−2.職場での意識作りの重要性

このように、事業所としては、過度に逆パワハラを恐れて放置することで、業務に必要な注意指導ができなくなることは決してあってはいけません。

このような事態に陥らないようにするためには、対象となる職員に対する注意指導も重要ですが、日頃から事業所全体として、ハラスメントに関する研修を行ったり、職場環境をより良いものにしていくための、職員同士の意識の共有等が不可欠です。

例えば、定期的に行う会議や研修の中で、職場全体として、どのような意識で業務に取り組むべきかについてしっかりと意見交換をするなど、形だけではない対策を取る必要があるのです。

理念の共有は、組織において非常に重要です。

このような日頃の積み重ねにより、考え方や方針が異なる職員は自然に淘汰されていきます。

 

6−3.逆パワハラの相談窓口の重要性

逆パワハラへ対応は、逆パワハラかどうかの判断の時点から、慎重な調査や一貫した行動をとることが重要です。

そのため、「これって逆パワハラなんじゃないか?」と疑問を感じた段階で、すぐに相談をできるよう、顧問弁護士との日々の繋がりを密にしておくことが必要です。

また、実際に逆パワハラを受けている現場の職員からの相談の際、例えば経営者等の決裁を仰がなければならないとすると、相談すること自体を躊躇したり、相談までに時間がかかってしまうケースがあり得ます。

そのため、現場の職員、管理者の声が直接顧問弁護士に伝わるような相談窓口を設置することが望ましいです。

 

7.介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!

介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!

弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。

 

  • (1)逆パワハラをする職員への対応に対する指導
  • (2)逆パワハラをする職員へ法的措置を取る場合の手続代行
  • (3)労働基準監督署対応
  • (4)職場環境作りに対する助言
  • (5)労働判例研究ゼミ
  • (6)顧問サービス「かなめねっと」

 

以下で、説明をしていきます。

 

7−1.逆パワハラをする職員への対応に対する指導

逆パワハラをする職員に対しては、粘り強い注意指導継続していくことが重要です。

しかしながら、注意指導の方針や、最終的な着地点が見えなければ、事業所としても、どの程度の注意指導をいつまで続けていけばいいのかわからず、途中で息切れをしてしまいます。

そのため、逆パワハラを行う職員への対応は、かなり初期のタイミングから、専門家の意見を仰ぎながら、目標を定めて計画的に行う必要があるのです。

早期に相談を受けられれば、目標の策定やその目標へのプロセスについて説明をした上、証拠の残し方、注意指導をする際の準備などを、計画的にサポートすることが可能です。

 

7−2.逆パワハラをする職員へ法的措置を取る場合の手続代行

逆パワハラが激化した結果、対象となる職員がSNSへ誹謗中傷を書き込み、事業所の評価を低下させるなど、事業所としてなんらかの法的措置を検討しなければならない事態も発生し得ます。

しかし、先に説明をした通り、SNSへ書込みをした人物の特定等は手続としても複雑であり、事業所のみで対応するのは時間や手間がかかります。

弁護士法人かなめでは、この様な法的措置にも精通した弁護士を揃えており、煩雑な法的手続を代行することができるので、事業所は本来の業務に集中することができます。

 

7−3.労働基準監督署対応

逆パワハラを行う職員は、自らが「パワハラを受けた」として労働基準監督署へ駆け込むことがあります。

「突然労働基準監督署から調査をしたいとの連絡があった」との相談も、弁護士法人かなめがよく受ける相談の1つです。

事業所としては、突然の聞き取り調査等により、困惑し、十分な準備ができないまま回答してしまい、伝えなければならないことを伝え損ねて事態が悪化するということも珍しくありません。

弁護士法人かなめは、これまでに多くの労働基準監督署対応を行っており、事業所が実際に労働基準監督署に対応する際の助言の他、事業所に変わって労働基準監督官に事情を説明したり、労働基準監督署での聞き取り調査に同行するなど、きめ細やかなサポートをこなっています。

 

7−4.職場環境作りに対する助言

事業所として、過度に逆パワハラを恐れ、業務に必要な注意指導ができなくなることは決してあってはいけません。

このような事態に陥らないようにするためには、対象となる職員に対する注意指導も重要ですが、日頃から事業所全体として、ハラスメントに関する研修を行ったり、職場環境をより良いものにしていくための、職員同士の意識の共有等が不可欠です。

弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、オンライン又は事業所に直接出向く方法で、オンラインでの研修を実施しているほか、ルール作りのお手伝いもしています。

 

7−5.労働判例研究ゼミ

弁護士法人かなめでは、普段の労務管理の参考になる労働判例を取り上げ、わかりやすく解説する労働判例研究ゼミを不定期に開催しています。

ゼミの中では、参加者の皆様から生の声を聞きながらディスカッションをすることで、事業所に戻ってすぐに使える知識を提供しています。

詳しくは、以下のページをご覧下さい。

 

▶参照:弁護士法人かなめ「労働判例研究ゼミ」開催情報はこちら

 

 

7−6.顧問弁護士サービス「かなめねっと」

弁護士法人かなめでは、「7−1」、「7−5」のサービスの提供を含めた総合的なサービス提供を行う顧問契約プラン「かなめねっと」を運営しています。

具体的には、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入し、事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。

そして、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。

現場から直接弁護士に相談できることで、事業所内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。

 

▶参照:顧問弁護士サービス「かなめねっと」のサービス紹介はこちら

 

 

7−7.弁護士費用

また、弁護士法人かなめの弁護士費用は以下の通りです。

 

(1)顧問料

  • 月額8万円(消費税別)から

 

※職員の方の人数、事業所の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、お問合せフォームまたはお電話からお問い合わせください。

 

(2)法律相談料

  • 1回目:1万円(消費税別)/1時間
  • 2回目以降:2万円(消費税別)/1時間

 

※相談時間が1時間に満たない場合でも、1時間分の相談料を頂きます。

※法律相談は、「1,弁護士法人かなめにご来所頂いてのご相談」、又は、「2,ZOOM面談によるご相」に限らせて頂き、お電話でのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

※また、法律相談の申込みは、お問合わせフォームからのみ受け付けおります。

※介護事業所の経営者側からのご相談に限らせて頂き、他業種の企業様、職員等一般の方からのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

 

8.まとめ

この記事では、「逆パワハラ」について、その定義や現状を詳しく解説した上で、具体的な事例と合わせて対応方法についても解説しました。

また、逆パワハラを放置することの問題点として、

 

  • (1)逆パワハラの更なる激化
  • (2)注意指導をする上司の精神的負担
  • (3)職場環境の悪化による離職

 

についても解説しました。

さらには、実際に逆パワハラへの注意指導についての記録の残し方についても詳しく解説していますので、日々の事業所運営の中に取り入れてみて下さい。

その上で、「逆パワハラでは?」と思ったら、その判断の段階から、速やかに弁護士へ相談するようにして下さい。

 

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この記事を書いた弁護士

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畑山 浩俊はたやま ひろとし

代表弁護士

出身大学:関西大学法学部法律学科卒業/東北大学法科大学院修了(法務博士)。
認知症であった祖父の介護や、企業側の立場で介護事業所の労務事件を担当した経験から、介護事業所での現場の悩みにすぐに対応できる介護事業に精通した弁護士となることを決意。現場に寄り添って問題解決をしていくことで、介護業界をより働きやすい環境にしていくことを目標に、「介護事業所向けのサポート実績日本一」を目指して、フットワークは軽く全国を飛び回る。
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中野 知美なかの ともみ

弁護士

出身大学:香川大学法学部法律学科卒業/大阪大学法科大学院修了(法務博士)。
介護現場からの相談を数多く受けてきた経験を活かし、一般的な法的知識を介護現場に即した「使える」法的知識に落とし込み、わかりやすく説明することをモットーとしている。介護事故、カスタマーハラスメント、労働問題、行政対応など、介護現場で発生する多様な問題に精通している。

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