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能力不足の職員を解雇できる?違法にならない対応方法を判例付きで解説

能力不足の職員を解雇できる?違法にならない対応方法を判例付きで解説
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皆様の介護事業所に、何度注意をしても同じミスや不適切な言動を繰り返すことから、「なんとか辞めさせられないか」と考えているような職員はいませんか?

介護サービスの提供にあたっては、1つのミスが利用者の生命身体に関わる深刻な結果をもたらし得ます。

そして、職員同士の関係性が密であり、相互の連携が必要な介護事業所では、1人の職員がミスを繰り返すことで、ミスのフォローや注意、指導に時間が割かれ、他の職員が疲弊してしまう事態も発生します。

事業所としては、一度雇用した職員に対しては、雇用継続のための重い責任を負っています。そのため、「この人は仕事ができないから」などといった単純な理由からだけでは、解雇をすることは容易ではありません。

また、このような能力不足の職員にも、立場によって様々な事情があり、解雇に向けて気を付けるべきポイントも異なります。

この記事では、能力不足の職員の種類や特徴を説明した上、能力不足の職員を辞めさせる方法として、解雇と退職勧奨を取り上げて、具体的な手続きについて解説します。

また、能力不足の職員を解雇したときに発生し得る問題や、能力不足の職員を放置した場合に事業所が負う責任についても解説します。

それでは、見ていきましょう。

 

1.能力不足の職員を辞めさせることはできるの?

能力不足の職員を辞めさせることはできるの?

そもそも、能力不足を理由に職員を辞めさせることはできるのでしょうか。

 

1−1.能力不足は解雇原因になる!

労働者は、雇用契約に基づいて、債務の本旨に従った債務の履行を行う必要があります。

そのため、能力不足により、「債務の本旨に従った債務の履行」ができない場合、労働者に債務の不履行があるとして、雇用契約を解除する、つまり、解雇ができる場合があります。

 

1−2.能力不足が解雇理由となる場合はどんな時?

解雇は、労働契約法16条により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効となります。

 

▶参考:労働契約法16条

(解雇)
第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

・参照:「労働契約法」の条文

 

 

これを、能力不足による解雇について見ると、「勤務意欲が低く、勤務成績、勤務態度又は業務能率などが不良で、改善の見込みがなく、職員としての職責を果たし得ない場合」で、これによる解雇が社会通念上相当と言える場合には、能力不足による解雇が可能な場合があります。

具体的には「2.能力不足の職員の種類と特徴」で説明します。

 

2.能力不足の職員の種類と特徴

では具体的に、能力不足の職員の種類や特徴を、以下2つに分類して説明します。

 

  • 1.採用方法による分類
  • 2.職種による分類

 

2−1.採用方法による分類

まず、採用方法としては、大きくは「新卒採用」と「中途採用」があります。

 

(1)新卒採用

新卒採用は、社会人経験のない職員を採用することですが、採用時は、通常誰であっても、業務に対して未経験です。

つまり、入社してしばらくの間は、使用者側が求める能力を発揮することは原則として困難であり、そのために研修や指導等を通して、1日でも早く戦力となれるよう教育をしていくことになります。

しかしながら、何度も研修や指導を実施しているにも拘らず、同じ失敗を繰り返したり、求められる業務をこなせないような場合、また、研修をサボったり、指導に聞く耳を持たないような場合には、いくら未経験者であっても、使用者として「これ以上面倒見られない!」ということになります。

 

(2)中途採用

一方、中途採用の場合は、通常は採用時までに培われた経験を活かしてもらうことを目的に採用をします。

そのため、新卒採用の場合と比較して求める能力値も当然高くなり、これに伴い、新卒採用と比較して給与の額も多くなることがあります。

また、能力的にも、最初から経験や技術を持った者を即戦力として採用し、そもそも他の職員を指導してもらう目的で採用する場合もあります。

その場合、採用時に期待していた能力が期待外れであり、改善の余地がないと、採用した目的を果たすことができません。

なお、中途採用の場合でも、前職が全く業態の異なる職種である場合や、経験が浅い場合もあるので、その場合には新卒採用と大きく異なることはありません。

 

2−2.職種による分類

雇用の時点で、以下のように求められる能力や資質が指定されているような場合があります。

 

  • 一般職として雇用される場合
  • 専門職として雇用される場合
  • 管理職として雇用される場合

 

(1)一般職

ある職員が、特定の業務に関する能力を欠いている場合、この職員が、特に職種が限定されず、事業所内で行われている様々な業務を行う可能性がある職員として雇用されていれば、事業所としては、まずは他の部署へ配置転換をしたり、他の業務を行わせるなど、当該職員が能力を発揮できる場所を探る必要があります。

また、この場合には、何か特定の技能の存在を条件に雇用しているわけではないため、事業所側として、「○○を期待して雇ったのに・・・」と思っても、ただそれだけの理由では解雇はできません。

 

(2)専門職

職員の中には、特定の資格等を活かして働くことを前提に雇用された職員や、特定の部署への配属を前提として雇用された職員がいます。

これらの職員は、雇用時点で、特定の能力の存在を前提に雇用されており、他の職員と比較して、「資格手当」等が別途支払われたり、給与形態が異なることも多いです。

具体的には、ケアマネージャー、看護師、理学療法士などの他、経理・労務担当として社会保険労務士を雇用するなどし、特定の業務を行わせることを契約の目的としている場合があります。

このような職員が、特定の業務を行う能力に欠ける場合、以下の2つの方法が考えられます。

 

1.当初想定した業務とは異なる業務を行う配置転換をする

または

2.想定した業務を履行できない以上、解雇する

 

事業所側としては「1」を提案の上、これを拒否された場合には「2」を行うという流れになります。

雇用主は、解雇を可能な限り回避しなければならない義務を負っているため、本来なら「2」の方法を取りたいところですが、まずは「1」の可能性を探る必要があるのです。

なお、有資格者であっても、契約当初に特段の職種の限定をしていない場合は、一般職と同様の扱いとなります。

 

(3)管理職

職員の中途採用にあたって、当初より管理職となることを想定して職員を雇用する場合があります。

この場合にも、他の職員よりも基本給の額が高かったり、管理者手当が付与されるなど、一般職の職員とは異なる条件で雇用されていることがありますが、専門職と異なり、一般職との線引きが難しい点もあります。

例えば、確かに管理者手当は付与されているものの、その金額が特別の技能を雇用の条件とするほど大きくない場合、管理職として果たすべき役割を果たしていないことのみでは、必ずしも解雇事由にはなりません。

また、管理職の場合には、解雇以外に、配置転換としての実質的な降格と、懲戒処分としての降格を検討する必要があります。

いずれも、降格により給与が減少する場合には、職員に与える影響が大きいため、その必要性や降格をすべき合理的な理由を証明できるよう、証拠収集を行う必要があります。

 

3.能力不足で解雇する前に検討すべき注意点

2.能力不足の職員の種類と特徴」の段落で解説をしたように、能力不足は解雇原因となり得るものの、どのような職員に対しても、「能力不足」で即「解雇」とはなりません。

能力不足を解消するような教育や指導、当該職員が能力を発揮できる部署の検討、配置転換、降格など、解雇を回避するための様々な方法を検討、実施の上、それでも能力不足が解消されず、これにより業務に支障をきたしている場合に、解雇に進むことができるのです。

なお、解雇以外での能力不足の職員に対する対応方法については、以下の記事も合わせてご覧ください。

 

▶︎参照:仕事ができない人の放置は厳禁!特徴ごとの対応方法を徹底解説!

 

 

4.能力不足での解雇が違法になるとどうなる?【裁判例紹介】

ここでは、解雇が違法になり不当解雇と判断されると多額の金銭の支払いを命じられるリスクがある点や、不当解雇と判断されないための重要なポイントの1つ証拠収集について解説していきます。

 

4−1.解雇が違法となった場合のリスク

解雇が無効と判断され不当解雇になることにより、大きくは次の3つの問題が発生します。

 

  • (1)職員が職場に戻ってくる
  • (2)バックペイの支払い
  • (3)慰謝料の発生

 

以下、順に見ていきます。

 

(1)職員が職場に戻ってくる。

解雇が無効になれば、当該職員は労働者の地位を失っていないことになります。その場合、最も恐るべきことは、当該職員が職場に戻ってくることです。

事業所として、解雇の判断をした職員が職場に戻って来れば、これによる職場環境の悪化は避けられません。

通常は、一度解雇された職場に戻ってくる職員は少ないですが、この「職場に戻ってくる」という最悪の事態を回避するため、事業所として多額の和解金を支払わざるを得ない場合もあります。

 

(2)バックペイの支払い

解雇が無効になるということは、職員は労務が提供できる状況であったにもかかわらず、事業所側が理由なく労務提供を拒否していたことになるため、事業所側の賃金の支払い義務は無くなりません。

そのため、事業所は解雇をした時以降の賃金を支払わなければならなくなります。

例えば以下のような事例を考えてみましょう。

 

参考事例
  • 1)月給30万円の無期契約職員(当月20日締め、当月末日払い)
  • 2)令和3年4月30日付で解雇(令和3年5月分からの給与を支払っていない)

 

このような状況で、解雇された職員が、令和3年8月、解雇無効を理由として労働者としての地位確認及びバックペイの支払いを求める訴訟を提起したとします。

解雇無効の裁判は、事実関係の争いなどが多岐に及ぶこともあり、裁判が1年以上続くことも珍しくありません。

この件でも、最終的に判決が確定したのが、令和4年8月31日だったとします。

結果は、解雇が無効とされ、当該職員にはまだ「労働者としての地位がある」との判断がされました。

この時、判決確定時のバックペイの金額は、以下の通りです。

 

令和3年5月分から令和4年8月分までの16か月 ✕ 月給30万円 = 480万円

 

 

しかし、これで終わりではありません。

判決は、当該職員に「労働者としての地位がある」と判断しています。つまり、令和4年9月分以降も、毎月30万円の賃金が発生し続けるのです。

 

(3)慰謝料の発生

さらに、解雇が違法とされた場合、このような解雇をしたことに対する慰謝料も発生し得ます。

特に、その解雇理由が不当なものであった場合、行為の悪質性から慰謝料額が増額される可能性もあります。

 

4−2.証拠収集の重要性

このような状況にならないように、重要なことは証拠収集です。

以下では、解雇に向けて行う証拠収集の方法について解説します。

 

(1)録音

面談や口頭での注意や指導の際に、録音をすることで記録を残すことができます。録音は、相手に了解を得る必要はありません。録音の際の注意点は、以下の動画をご覧ください。

 

 

 

 

【弁護士 畑山浩俊のコメント】

録音は、スマートフォンやICレコーダーで行うことができます。

 

しかしながら、スマートフォンやICレコーダーの種類によっては、端末からの録音データが速やかに取り出せないものもあります。

 

そこでおすすめは、USBが内蔵され、パソコンなどに直接接続できるタイプのICレコーダーです。

 

このタイプのICレコーダーの場合、充電をするのも、データを移すのも、パソコン本体にICレコーダーを直接接続することで、同時に行うことができます。

 

これからICレコーダーを購入予定の事業所のみなさまは、参考にしてみて下さい。

 

 

(2)注意指導の記録

録音ができない場面では、注意指導について、その都度記録を作成するようにしましょう。

具体的には、注意指導した具体的な内容とその日時、注意指導に対する相手方の態度や具体的な発言などを記録しておくことが重要です。記録の方法は問いませんが、できる限り容易でタイムリーに、且つ、バックデートして記録を作成したなどの疑いが少ない方法としては、例えばメールやメッセージにメモをベタ打ちし、そのメモを自分宛に送信しておく方法です。そうすれば、その時間に送信したメモの内容が確定されるため、後日なんらかの紛争に発展した際にも、証拠としての価値が高くなります。

参考として、粘り強い注意指導や懲戒処分を行い、さらにこれをしっかりと記録していたことにより、その後に行った普通解雇が有効とされた判例として、「前原鎔断事件(大阪地裁 令和2.3.3 労判1233.47)」があります。

 

▶参考:前原鎔断事件(大阪地裁 令和2.3.3 労判1233.47)

「就業状況が著しく不良で就業に適さないあるいはこれに準ずるもの」であるとして普通解雇された原告が、解雇が無効であるとして地位確認、未払賃金及び遅延損害金の支払い等を請求した事案。

 

●判決

原告は、普通解雇までに、複数回の始末書や顛末書の提出、出勤停止を含む3回の懲戒処分、さらには度重なる注意指導を受けており、これにより、「就業状況が著しく不良で就業に適さないあるいはこれに準ずるもの」にあたることは明白であったとして、普通解雇には客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると判断された。

 

注目すべきは、書面として残っている始末書等のほか、被告の上司である主任が、原告について「教育記録」つけており、その中で、伝票に記載された枚数を確認しない、サインを入れ忘れるなど、取引先に対して迷惑をかけるような原告の日々のミスを、日付と共に詳細に記録しており、この「教育記録」に記録されていた事実が、原告の就業状況の不良さを根拠づけるものとして数多く認定されていることです。

 

▶参考:注意指導の記録をはじめ、問題のある職員の指導方法については、以下の記事で具体的な方法や手順を解説していますので、あわせてご参照ください。

問題職員の指導方法とは?正しい手順と注意点などを指導例付きで解説

 

 

【弁護士 畑山浩俊のコメント】

「記録をとってください」とお願いをした際、後で記録を見せてもらうと、例えば「怒鳴られた」「脅迫された」「態度が悪かった」など、記録をとった方の印象がメモされていることがよくあります。

 

法的な手続をとる際、必要となるのは具体的な「事実」です。

 

例えば、「『そんなこともわからんのかボケ』と大きな声で怒鳴られた」「『俺には悪い知合いもいるから、声掛けて来てもらってもいいんやぞ』などと脅迫された」「注意をすると、顔を背けてスマートフォンを操作し始め、『聞いてるのか』と尋ねても返事をしなかった」など、発言内容や行動を、できる限り具体的に記録してください。

 

また記録は、体裁にとらわれず、できる限り記憶の新しいうちに作成するようにしましょう。作成する癖をつけることでだんだん記録をつけることにも慣れていきます。

 

 

5.能力不足の職員を辞めさせる方法

能力不足の職員を辞めさせる方法としては、以下の手続きが考えられます。

 

  • 解雇
  • 雇止め
  • 本採用拒否
  • 退職勧奨

 

なお、辞めさせたい職員への具体的な対応方法や手続きなどについては、以下の記事も併せてご覧ください。

 

▶︎参照:辞めさせたい問題社員!解雇など適法で正しい対応方法を解説

 

 

5−1.解雇

まず、職員を辞めさせる最もわかりやすい方法は、当該職員を解雇することです。

解雇は、職員の、労働者としての地位を失わせる非常に重い手続であり、確実な手続を計画的に実施する必要があります。

 

5−2.雇止め

対象となる職員が有期労働契約の職員であった場合は、解雇ではなく期間満了に伴う雇止めを検討することになります。

もっとも、雇止めも、単に期間が満了すれば雇用契約を終了できるというものではなく、解雇と同様の厳しい基準が用いられる場合があります。

雇止めについての判断基準など、詳しくは以下の記事をご覧ください。

 

▶︎参照:雇止めしたい!有効と判断される理由や雇止め法理を解説【判例付き】

 

 

5−3.試用期間満了後の本採用拒否

無期労働契約を締結する際には、初めの数ヶ月を「試用期間」とし、試用期間満了後に本採用をする、という制度を導入していることが一般的です。

試用期間は、「解約権留保付きの雇用契約」と言われており、試用期間に、能力不足が発覚した場合には、この留保権を行使して、試用期間から本採用に移る際に本採用を拒否することで労働契約を終了させることが考えられます。

もっとも、試用期間と言っても、雇用契約は締結されているため、本採用拒否は解雇と同じ意味合いを持ちます。

そのため、本採用拒否の際には、解雇事由が必要であることとあわせ、以下のような要件を満たす必要があります。

 

▶参考:本採用拒否に必要な要件

① 企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至つた場合において

② そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合

 

▶︎参照:三菱樹脂事件(最高裁 昭和48年12月12日判決 民集第27巻11号1536頁)

 

 

5−4.退職勧奨

「5−1.解雇」から「5−2.雇止め」「5−3.試用期間満了後の本採用拒否」までの方法とは異なり、職員に自ら退職をしてもらうために、退職勧奨をすることも、能力のない職員を辞めさせるには有効です。

なお、退職勧奨は、任意の退職を求める手続であり、原則としては有効ですが、方法によっては違法になる可能性もあります。

 

6.各方法ごとの具体的な手続の流れ

それでは、退職勧奨と解雇について、具体的な手続の流れを説明します。

 

6−1.退職勧奨

退職勧奨の最も大きなメリットは、あくまで職員自らの退職の意思を引き出すものであることから、法的なリスクを最小限にすることができる点です。また、職員との退職の合意時に、退職以外の様々な取り決めをすることも可能です。

もっとも、最大のデメリットは、退職勧奨はあくまで「任意」の手続であるため、職員が応じなければ進めることができません。

 

(1)具体的な手続

退職勧奨は、以下のような流れで実施します。

 

  • 1.事前準備
  • 2.面談
  • 3.退職の合意
  • 4.退職届の提出及び退職合意書の締結
  • 5.退職の手続き

 

退職勧奨について具体的な手順や注意点など、詳しくは以下の記事を併せてご覧ください。

 

▶︎​​参照:退職勧奨とは?具体的な進め方、言い方などを弁護士が解説

 

 

6−2.解雇

解雇をするメリットは、事業所の一方的な意思表示によって職員の労働者としての地位を失わせることができる点です。

一方、最大のデメリットは、解雇をしたことが違法になる可能性が高い点です。そのため、解雇を行う際には、計画的かつ慎重に進める必要があります。

 

(1)具体的な手続

解雇は、あるだけでは足りず、適正な手続の下で行う必要があります。

具体的には、以下のような段階を踏んで、それでもなお職員が在職する場合に解雇手続に移っていくという流れになります。

 

  • 1.注意指導
  • 2.懲戒処分
  • 3.退職勧奨

 

解雇に関して具体的な方法や事例、手続きなどについて詳しくは、以下の記事を併せてご覧ください。

 

▶︎参照:普通解雇したい!無効とならない事例や手続きをわかりやすく弁護士が解説

▶︎参照:懲戒解雇したい!有効になる理由や事例・手続きをわかりやすく弁護士が解説

 

 

6−3.必ず専門家に相談を!

退職勧奨が、解雇のプロセスの中の一環であるように、職員を辞めさせるという手続は、計画的なプロセスに基づいて実施する必要があります。

解雇が無効になるケースの多くは、このようなプロセスを十分に履践していない場合です。

そして、初期対応を誤ったり、このような職員を放置してしまったことにより、もはや正しいプロセスを踏んで解雇を行うことが困難な状況となっている場合も多々あります。

そこで、職員の解雇などが想定される場合には、初期の段階から必ず弁護士に相談し、計画的にプロセスを踏んでいきましょう。

 

7.能力不足の職員を放置するとどうなる?

能力不足の職員がいる場合、業務に支障をきたす、というデメリット以外にも、取り返しのつかない問題が発生し得ます。

 

7−1.職場環境の悪化

能力不足の職員、特に、自分が仕事ができないことに気付かずにミスを人のせいにしたり、怠惰により仕事をしない職員の場合、他の職員に対して暴言を吐くなどのハラスメント行為をしたり、業務中に居眠りや業務と無関係なおしゃべりを繰り返すなどして、事業所内の環境を乱し、事業所全体の雰囲気が悪くしていきます。

 

7−2.他の職員の疲弊

能力不足の職員がいた場合、そのミスや仕事の遅れを補うため、他の職員の業務が過大になることがあります。

また、「同じ給料をもらっていて、どうして自分がフォローをしないといけないのか」などといった苛立ちや理不尽さを感じ、単純な業務量の増大だけでは測れない精神的ストレスを感じることも容易に想定できます。

さらには、能力不足の職員からのパワハラ、逆パワハラなどの対象となってしまった職員だけでなく、そうでなくとも仕事ができない職員のせいで職場環境が悪化した状況で働くことになれば、職員は疲弊し、中には精神疾患等を発症する職員も出てきます。

 

7−3.他の職員の離職

能力のない職員のフォローや対応に疲弊してしまったり、職場環境が悪化しているにもかかわらず事業所がなんらの措置も取らなければ、他の職員は「事業所は自分たちを守ってくれない」と考えるようになります。

そうなれば、職員に残された選択肢は、離職以外になくなってしまいます。

 

8.介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!

介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!

弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。

 

8−1.サポート内容

 

  • (1)能力不足の職員に対する対応サポート
  • (2)解雇した職員から法的措置を取られた場合の対応
  • (3)労働基準監督署対応

 

(1)能力不足の職員に対する対応サポート

能力不足の職員への対応は、持久戦となることが多く、粘り強く、計画的且つ状況に応じた対応が求められます。

そのため、既に事業所内で、他の職員の方々が持久戦に耐えられない状態になってしまっていれば、このようなプロセスを踏んだ対応ができなくなってしまいます。

そのため、「この職員、何か気になるな…」と感じたタイミングから、専門家の意見を仰いでおくことが重要なのです。

早期に相談を受けていれば、指導方法についての検討や証拠の残し方、実際に注意指導をする際の準備などを、計画的にサポートできますし、最終的には事業所の代理人として、これらの職員に対応をすることも可能です。

弁護士法人かなめでは、このような初期段階から、現場の責任者からの相談を受け、初動からきめ細やかなサポートをすることで、労務問題に対して適時に助言をすることができます。

 

(2)解雇した職員から法的措置を取られた場合の対応

弁護士法人かなめでも、「退職した職員が、自主退職したはずなのに、解雇だと主張して裁判を起こしてきた」といったご相談をよく受けます。

このような場合には、実際にどのような面談を実施して退職に至ったのか、退職に至るまでにどんな原因事実が存在しているのかなど、様々な観点からの振り返りや、損害賠償請求等を請求してくる職員への対応が必要となります。

ただでさえ激務の中、このような過去の事実への対応に追われてしまえば、他の職員達も疲弊し、離職等の原因となってしまいます。

弁護士法人かなめでは、このような場合の事実の整理や交渉に、事業所に皆様に代わって取り組むことで、事業所の皆様が、安心して本来の業務に専念できる環境作りをサポートできます。

 

(3)労働基準監督署対応

「突然労働基準監督署から調査をしたいとの連絡があった」との相談も、弁護士法人かなめがよく受ける相談の1つです。

事業所としては、突然の聞き取り調査等により、困惑し、十分な準備ができないまま回答などをしてしまい、伝えなければならないことを伝え損ねて事態が悪化するということも珍しくありません。

弁護士法人かなめは、これまでに多くの労働基準監督署対応を行っており、事業所が実際に労働基準監督署に対応する際の助言の他、事業所に変わって労働基準監督官に事情を説明したり、労働基準監督署での聞き取り調査に同行するなど、きめ細やかなサポートをこなっています。

 

8−2.弁護士費用

まずは、弁護士法人かなめにご相談下さい。

 

  • 1回目:1万円(消費税別)/1時間
  • 2回目以降:2万円(消費税別)/1時間

 

※相談時間が1時間に満たない場合でも、1時間分の相談料を頂きます。

※スポットでの法律相談は、原則として3回までとさせて頂いております。

※法律相談は、「1,弁護士法人かなめにご来所頂いてのご相談」、又は、「2,ZOOM面談によるご相談」に限らせて頂き、お電話でのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

※また、法律相談の申込みは、お問合わせフォームからのみ受け付けおります。

※介護事業所の経営者側からのご相談に限らせて頂き、他業種の企業様、職員等一般の方か らのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

 

ご相談方法

まずは、「弁護士との法律相談(有料)※顧問契約締結時は無料」を以下のお問合わせフォームからお問い合わせください。

 

▶参照:お問い合わせフォームはこちら

 

 

8−3.労働判例研究ゼミ

弁護士法人かなめでは、普段の労務管理の参考になる労働判例を取り上げ、わかりやすく解説する労働判例研究ゼミを不定期に開催しています。

ゼミの中では、参加者の皆様から生の声を聞きながらディスカッションをすることで、事業所に戻ってすぐに使える知識を提供しています。

詳しくは、以下のページをご覧下さい。

 

▶参照:弁護士法人かなめ「労働判例研究ゼミ」開催情報はこちら

 

 

料金

  • 参加者1名につき11,000円

 

※弁護士法人かなめと顧問契約を締結して頂いている企業様は、2名まで参加無料です。(3名以上の場合は、お一人につき1,100円追加)

※顧問先からのご紹介で参加される方は、参加者1名につき5,500円です。

 

8−4.顧問弁護士サービス「かなめねっと」

弁護士法人かなめでは、「8−1」ないし「8−3」のサービスの提供を総合的に行う顧問弁護士契約プラン「かなめねっと」を運営しています。

具体的には、弁護士法人かなめでは、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入しています。事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。

具体的には、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。いつでもご相談いただける体制を構築しています。法律家の視点から利用者様とのトラブルをはじめ、事業所で発生する様々なトラブルなどに対応しています。

直接弁護士に相談できることで、事業所内社内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。

顧問サービス「かなめねっと」について詳しくは、以下のサービスページをご覧ください。

 

▶参照:顧問弁護士サービス「かなめねっと」について

 

 

以下の記事、動画でも詳しく説明をしていますので、併せてご覧下さい。

 

▶︎参照:介護施設など介護業界に強い顧問弁護士の選び方や費用の目安などを解説

 

 

 

顧問料

  • 顧問料:月額8万円(消費税別)から

 

※職員従業員の方の人数、事業所の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、お問合せフォームまたはお電話からお問い合わせください。

 

9.まとめ

この記事では、能力不足の職員の種類や特徴を説明した上、能力不足の職員を辞めさせる方法として、解雇と退職勧奨を取り上げて、具体的な手続きについて解説しました。

また、能力不足の職員を放置した場合に事業所が負う責任の他、能力不足の職員を解雇したときに発生し得る問題についても解説しました。

その中で、職員を解雇するにあたって必要となる証拠収集の方法についても解説していますので、現在解雇等を検討されている事業所の皆様は、参考にしてみてください。

その上で、解雇の手続を実施する場合には、必ず弁護士に相談するようにしてください。

 

「弁護士法人かなめ」のお問い合わせ方法

介護事故、行政対応、労務問題 etc....介護現場で起こる様々なトラブルや悩みについて、専門の弁護士チームへの法律相談は、下記から気軽にお問い合わせください。
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弁護士法人かなめが運営する「かなめねっと」では、日々サポートをさせて頂いている介護事業者様から多様かつ豊富な相談が寄せられています。弁護士法人かなめでは、ここで培った経験とノウハウをもとに、「介護業界に特化した経営や現場で使える法律セミナー」を開催しています。セミナーの講師は、「かなめ介護研究所」の記事の著者で「介護業界に特化した弁護士」の畑山が担当。

介護施設の経営や現場の実戦で活用できるテーマ(「労働問題・労務管理」「クレーム対応」「債権回収」「利用者との契約関連」「介護事故対応」「感染症対応」「行政対応関連」など)を中心としたセミナーです。

弁護士法人かなめでは、「介護業界に特化した弁護士」の集団として、介護業界に関するトラブルの解決を介護事業者様の立場から全力で取り組んで参りました。法律セミナーでは、実際に介護業界に特化した弁護士にしか話せない、経営や現場で役立つ「生の情報」をお届けしますので、是非、最新のセミナー開催情報をチェックしていただき、お気軽にご参加ください。

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介護特化型弁護士による研修講師サービスのご案内

介護特化型弁護士による「かなめ研修講師サービス」 介護特化型弁護士による「かなめ研修講師サービス」

弁護士法人かなめが運営している社会福祉法人・協会団体・自治体向けの介護特化型弁護士による研修講師サービス「かなめ研修講師サービス」です。顧問弁護士として、全国の介護事業所の顧問サポートによる豊富な実績と経験から実践的な現場主義の研修を実現します。

社会福祉法人の研修担当者様へは、「職員の指導、教育によるスキルアップ」「職員の悩みや職場の問題点の洗い出し」「コンプライアンスを強化したい」「組織内での意識の共有」などの目的として、協会団体・自治体の研修担当者様へは、「介護業界のコンプライアンス教育の実施」「介護業界のトレンド、最新事例など知識の共有をしたい」「各団体の所属法人に対して高品質な研修サービスを提供したい」などの目的として最適なサービスです。

主な研修テーマは、「カスタマーハラスメント研修」「各種ハラスメント研修」「高齢者虐待に関する研修」「BCP(事業継続計画)研修」「介護事故に関する研修」「運営指導(実地指導)に関する研修」「各種ヒヤリハット研修」「メンタルヘルスに関する研修」をはじめ、「課題に応じたオリジナル研修」まで、介護事業所が直面する様々な企業法務の問題についてのテーマに対応しております。会場またはオンラインでの研修にご対応しており、全国の社会福祉法人様をはじめ、協会団体・自治体様からご依頼いただいております。

現在、研修講師をお探しのの介護事業者様や協会団体・自治体様は、「かなめ研修講師サービス」のWebサイトを是非ご覧ください。

「かなめ研修講師サービス」はこちら

この記事を書いた弁護士

介護業界に特化した「弁護士法人かなめ」運営の法律メディア「かなめ介護研究会」

畑山 浩俊はたやま ひろとし

代表弁護士

出身大学:関西大学法学部法律学科卒業/東北大学法科大学院修了(法務博士)。
認知症であった祖父の介護や、企業側の立場で介護事業所の労務事件を担当した経験から、介護事業所での現場の悩みにすぐに対応できる介護事業に精通した弁護士となることを決意。現場に寄り添って問題解決をしていくことで、介護業界をより働きやすい環境にしていくことを目標に、「介護事業所向けのサポート実績日本一」を目指して、フットワークは軽く全国を飛び回る。
介護業界に特化した「弁護士法人かなめ」運営の法律メディア「かなめ介護研究会」

中野 知美なかの ともみ

弁護士

出身大学:香川大学法学部法律学科卒業/大阪大学法科大学院修了(法務博士)。
介護現場からの相談を数多く受けてきた経験を活かし、一般的な法的知識を介護現場に即した「使える」法的知識に落とし込み、わかりやすく説明することをモットーとしている。介護事故、カスタマーハラスメント、労働問題、行政対応など、介護現場で発生する多様な問題に精通している。

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