記事公開日: 2021年3月22日   
記事更新日: 2021年4月2日

退職勧奨とは?具体的な方法や違法にならないための注意点を弁護士が解説

退職勧奨とは?具体的な方法や違法にならないための注意点を弁護士が解説
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「問題のある職員がいて、何度も注意をしても改善されない。なんとかして辞めてもらえないだろうか・・・。」

「でも解雇をするのは難しいって聞くし、どうしよう?」

そのような悩みを抱えている介護事業所は多いのではないでしょうか?

職員にとって、職を失うことは、生活に直結する大変な出来事です。そのため、労働基準法や労働契約法は、労働者を手厚く保護しており、特に解雇については厳しい規制を設けています。

しかし、事業所は、雇用する全職員に対して、雇用契約上の安全配慮義務を負っており、解雇が難しいからと言って、問題職員を放置したことで他の職員に何らかの被害が生じれば、事業所としての責任を問われかねません。

実際に、職員が上司からのパワーハラスメントを受け、そのことを会社として認識していたにもかかわらず、これを放置したことで、職員が精神疾患を発症したり、不幸にも自殺に至ってしまったことについて、会社の責任が認められるケースはあとを経ちません。

このような問題職員に対して、事業所としては、細やかな注意指導を行い、反省や改善を促す他、懲戒処分として、戒告や譴責などを行いながらその態度を注視することになります。

しかし、多くの場合では、態度が改善されることはありません。

このような場合に、職員を解雇することなく退職してもらう手段が、退職勧奨(退職勧告)です。

この記事では、退職勧奨(退職勧告)について、解雇との違いや手続の方法を説明し、さらには、職員が退職勧奨(退職勧告)を受け入れた場合と拒絶した場合の各手続についても、事例等を紹介しながら解説します。

そして、最後まで読んでいただくことで、違法となるリスクを最小限に抑えながら、問題社員に円滑に退職してもらい、職場環境の安定化、正常化を実現できるようになります。

それでは、見ていきましょう。

 

この記事の目次

1.退職勧奨とは

最初に、「退職勧奨とは」について、その意味の説明をはじめ、退職勧奨と退職勧告の違いについて説明します。

 

1-1.退職勧奨とは

退職勧奨とは、「たいしょくかんしょう」と読み、事業所などの雇用主が、雇用する職員に対して退職をするよう勧めることをいいます。退職勧奨は、あくまで任意に職員の退職を勧める手続であるため、何らの強制力や法的な効果を有するものではありません。

 

1-2.退職勧奨と退職勧告の違い

退職勧奨とは別に、「退職勧告」という言葉が用いられることがあります。

退職勧告も退職勧奨と同様、職員に対して退職を勧めることを指す言葉です。

そこで、この記事では、統一して「退職勧奨」という言葉を用いることにします。

 

2.退職勧奨(退職勧告)と解雇の違い

問題のある職員をやめさせたいと考えた時、一番初めに思い浮かぶのは「解雇」だと思います。

ここでは、退職勧奨と解雇の違いについて解説した上で、退職勧奨をすることの意義について説明します。

 

2-1.退職勧奨と解雇の違いは?

退職勧奨と解雇の最も大きな違いは、強制力の有無です。

具体的には、退職勧奨が、職員に対してあくまで任意での退職を求める手続であるのに対し、解雇は、雇用主からの一方的な意思表示により、職員の労働者としての地位を強制的に失わせる手続きです。

 

2-2.解雇は原則としてNG!

解雇について、労働契約法は以下のように規定しています。

 

▶参考:労働契約法第16条の条文

 

(解雇)

第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

・参照:「労働契約法」の条文はこちら

 

これは、いわゆる「解雇権濫用法理」と呼ばれ、裁判所はこの法理を厳格なものと解しています。

その結果、「解雇は原則として無効」と考えても良いほど、裁判所で解雇が有効であると認められることは少なく、仮に解雇が無効となれば、解雇時からの給与を支払わなければならなくなる他(いわゆる「バックペイ」)、無効な解雇をされたことよる慰謝料まで請求される可能性があるのです。

何より、解雇が無効になることにより、せっかく職場から追い出したはずの問題社員が戻ってきてしまい、事業所内で新たな問題が発生することは目に見えています。

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

「職員を解雇したい!」という相談は、多くの事業所から寄せられていますが、解雇を適法に行うためには、綿密かつ相当な準備の上、適正なプロセスを踏んでいく必要があります。

 

そして、相談を受けたタイミングで、適正な手続が踏まれていることはほとんどなく、もしそのまま解雇してしまえば、無効となる可能性が非常に高いケースが大多数を締めています。

 

事業所としては理不尽さを感じるところかもしれませんが、1人の職員の労働者としての地位を失わせることは、それだけの大事であると心得ておきましょう。

 

その上で、どうしても解雇を検討せざるを得ない場合には、必ず労働問題に強い弁護士に相談してください。

 

2-3.退職勧奨をすることの意義

このように、職員を解雇することは、事業所にとって大きなリスクを伴います。しかし、問題のある職員を放置することによる他の職員に対する影響力も無視できません。

そのような場合に、事業所として、解雇に向けてのプロセスを踏みつつ、並行して行うことができるのが退職勧奨なのです。

具体的には、事業所として、職員に対する注意指導を行う中で、「このような状況を踏まえて、このまま働いていけるか」という観点から、同時に退職勧奨を行うことも考えられます。

また、退職勧奨は、あくまで職員に退職を促すものであることから、一方的な意思表示である解雇と異なり、退職時の条件等を柔軟に提案することも可能で、会社と従業員の双方にメリットのある解決ができる可能性があります。

 

3.どんな時に退職勧奨(退職勧告)をするの?事例付きで解説

退職勧奨をする理由は様々ですが、職員に退職を促したい理由は、大きく分類すると以下の2つのケースに分かれます。

 

  • 理由1:職員側に原因がある場合
  • 理由2:事業所側の理由による場合

 

それぞれの理由ごとに、以下で詳しく説明していきます。

 

理由1:職員側に原因がある場合

職員を雇用する際には、通常事業所側と職員は初対面であり、当然、一緒に働くのは初めてです。

履歴書や面接により、人となりやこれまでの職務経験、資格の有無などは、ある程度は把握できたとしても、限られた情報や時間の中では、すべてを把握することはもちろん不可能です。

そうした場合、雇用を決めたものの、働き始めてから「あれ?思っていたのと違うぞ?」という事態は往々にして発生します。

このような事態が発生しないように、事業所によっては試用期間を設けたり、当初の契約を有期契約としているケースも見られますが、それでもやはり、数ヶ月では職員の動向全てを確認し、判断することは難しい場合がほとんどです。

そのため、以下のような問題に直面することはどうしても避けられません。

 

(1)職員の能力不足

例えば、これまでの職務経験や資格等から、一定の技能や他の職員への教育的立場などを求めて雇用したにもかかわらず、そのような役割が全く果たされない場合や、どれだけ指導をしても、どうしても通常当該事業所で求められる職務能力を充たさない場合があり得ます。

そのため、事業所として、通常割り当てるべき仕事を割り当てることができなかったり、他の職員に負荷がかかってしまうなどして、職務が滞ったり、職場環境が悪化するという事態が頻発するようになると、事業所としても、当該職員の処遇を検討する必要が出てきます。

 

(2)問題社員

退職を促したい、最も多いパターンは問題社員への対応の場面です。

問題社員とは、言動や職務態度等に何らかの問題を有する従業員、職員の総称です。

問題社員の言動によっては、例えば事業所の就業規則上、懲戒事由に該当し、段階を踏んで懲戒処分を行っていくことも考えられますが、それでもなお、解雇のハードルは高く、特に懲戒処分としての極刑である懲戒解雇ができるのは、非常に限られたケースです。

以下では、問題社員による特徴的な行動を3つ説明します。

 

1.欠勤が多い

介護事業所では、特に施設系の事業形態の場合、業務の性質上、シフト制がとられていることが多いと思います。

多くの介護事業所で、職員の数は必ずしも充分とは言えない中、当日や前日に、突然その日の担当の職員が休むとなった場合、人員の確保にかなりの労力を要することは容易に想像できます。

もちろん、突然の体調不良等は避けられないものであり、お互い様です。

しかし、このような突然の欠勤が、同じ職員から月に何度も発生すると、管理者としては当該職員に対して、安心して仕事を割り振ることができなくなります。

このような職員に対して、どれだけ指導をしても欠勤数が減らないような場合、事業所としては、もはやこのような職員に、やめてもらいたいと考えることは自然ではないかと思います。

 

2.協調性がない

介護現場に限らず、どのような職場であっても、他の職員と協力をして業務に取り組むことは当然必要とされる能力です。

しかしながら、職員の中には、このような協調性に欠ける人もいます。

具体的には、以下のような言動です。

 

  • 挨拶をしない。
  • 他の職員を手伝わない。
  • 交代で利用している事務所の備品を、順番を守らずに勝手に持ち出す
  • 他の職員に対して威圧的な態度をとる。
  • シフトの引継の際の情報伝達を怠る。

 

このような言動をとる職員がいる場合、職場の雰囲気が悪くなるばかりか、他の職員に過度な業務上、精神上のストレスが係り、最悪の場合には他の従業員が離職してしまうリスクも考えられます。

事業所としては、このような職員に対して、粘り強い注意指導をすることは不可欠ですが、それでもなお業務態度が改まらない場合、もはやこのような職員には、やめてもらいたいと考えるのではないでしょうか。

 

3.逆パワハラ

近年、業務上の指導をした上司に対して、「今のはパワハラではないのか」「労基署や弁護士に訴える」などと言って、上司の注意指導に応じない「逆パワハラ」が問題となっています。

これは、パワーハラスメントに対する「パワハラかどうかは、受け手がどう感じたかで決まる。被害者がパワハラと感じたらパワハラである」などという誤った理解の横行によるものです。

実際に、厚生労働省が説明をするパワーハラスメントの説明には、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。」とはっきり記載されています。

 

▶参照:「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和2年6月1日適用】」(PDF)

 

このような職員からの逆パワハラにより、注意指導をしている上司が精神的に疲弊し、中には精神疾患を発症してします方もいます。

事業所からの注意指導に従わないばかりか、誤った理解から執拗に責め立ててくる職員に対しては、事業所としても、やめてもらう他ありません。

なお、逆パワハラについては、以下の動画でも詳しく説明していますので、ご覧下さい。

 

 

 

問題社員やモンスター社員の対応方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にご覧ください。

 

▶参照:モンスター社員!特徴と対応方法を事例付きで弁護士が解説【放置厳禁】

 

 

(3)職員による横領などの犯罪行為

職員による犯罪行為としては、大きくわけて2つの犯罪行為があり得ます。

 

  • 1.業務に関係する犯罪行為
  • 2.業務外での犯罪行為

 

1.業務に関係する犯罪行為

例えば、経理のお金を横領する、事業所の備品を盗む、利用者を故意に殴ったり怪我をさせたりするなどの、まさに業務にかかわる犯罪行為です。

このような犯罪行為に対しては、就業規則上、懲戒事由として規定されている事業所も多いと思いますし、比較的強い態度で臨むことも可能です。

 

2.業務外での犯罪行為

例えばコンビニで万引きをした、電車内で痴漢行為をした、喧嘩で人を殴って怪我をさせたなど、様々な行為が考えられます。

もっとも、「2.業務外での犯罪行為」の場合には、必ずしも就業規則上の懲戒事由にはあたりません。

なぜなら、雇用主が懲戒処分ができるのは、雇用主が事業所において、事業所内の秩序を維持する権限を有しているからです。
逆に言えば、もし職員が事業所外で、業務とは関係のない犯罪を行ったとしても、事業所内の秩序に悪影響を与える訳ではなく、これに対して雇用主が何らかの処分ができる立場にはないのです。

しかしながら、他の職員からすると、業務外といえども、犯罪行為を行った職員と一緒に仕事をすることに嫌悪感や不安を感じることは当然です。

犯罪の性質や程度にはよるものの、このような場合には、事業所しても、当該職員の処遇を考えなければなりません。

なお、犯罪行為ではないものの、社内不倫を行う職員に対する懲戒処分について、以下の動画で詳しく説明しているので、ご覧下さい。

 

 

 

(4)職員の精神疾患等

近年、職員の、いわゆる「メンタルヘルス」の問題は深刻です。

例えば、統合失調症、うつ病、適応障害等の精神疾患の既往歴のある職員が、これらの病の再発により業務に支障を来すようになったり、他の職員とのコミュニケーションがうまく取れなくなることがあります。

この精神疾患が、業務に起因して発生するものであった場合は、労災等の問題になりますが、そうではないケースにおいて、休職制度などを利用した後、職場復帰をしてもなお、業務に充分に復帰できる状態ではないケースも多々あります。

このような場合、職員本人に自覚があれば、業務に支障を来すことを理由に自ら退職をすることもあるかもしれません。

しかし、精神疾患の内容によっては、職員本人が、自分が精神疾患を発症していることを認めず、頑なに業務の継続や職場復帰を求めることも往々にしてあります。

事業所としては、客観的に見て業務に支障を来している職員をやめさせたいものの、その病の性質上、解雇をすることに躊躇することもあるかもしれません。

そのような場合に、退職勧奨の手続が有用となります。

 

理由2:事業所側の理由による場合

事業所側の理由による退職勧奨の例としては、経営不振などに伴う人員整理が考えられます。

この場合の退職勧奨は、整理解雇の際に問題となる、解雇回避義務を果たしたかどうかのプロセスにかかわる手続です。

本記事では、主に「職員側に原因がある」場合の退職勧奨を念頭に置いて、解説をしていきます。

 

4.退職勧奨(退職勧告)のメリットとデメリットは?

以下では、退職勧奨のメリットとデメリットを説明します。

 

4-1.退職勧奨のメリット

退職勧奨は、あくまで職員自らの退職の意思を引き出すものであることから、法的なリスクを最小限にすることができます。

職員自らの退職の意思表示、または、職員と事業所との間の退職合意の存在により、事後の紛争を回避できることは、退職勧奨の最大のメリットです。

また、一方的な意思表示として行う解雇と異なり、職員の退職時に、様々な取決めをすることも可能です。

例えば、事業所から貸与している制服や備品の返却を約束させたり、適切な引継を実施させるなど、事業所にとってのリスクを最低限に抑えられる可能性があります。

 

4-2.退職勧奨のデメリット

退職勧奨の最大のデメリットは、あくまで「任意」の手続であることです。

つまり、どれだけ事業所側が退職を促しても、職員が「退職します」と言わない限り、職員の従業員としての地位を失わせることはできません。

そのため、職員が退職を拒否した場合には、やはり解雇等の強制的な手続を検討する必要が出てきてしまうのです。

また、退職勧奨も、方法によっては違法と評価される場合もあるので、注意が必要です。

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

解雇は原則として無効である、と説明をしましたが、もちろん全ての解雇が無効となるわけではありません。

 

丁寧な注意指導を行い、さらにその指導の記録を具体的に残した上で、しっかりと時間をかけ、順を追って手続を進めていくことで、解雇が有効となった例も存在します。

 

職員の解雇を検討する場合には、必ず弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

 

5.退職勧奨(退職勧告)の具体的な方法

退職勧奨(退職勧告)の具体的な方法

以下では、退職勧奨の具体的な方法や注意点を説明します。

 

5-1.退職勧奨の主な手順

退職勧奨のフローは以下の通りです。

 

  • 手順1:事前準備(説明資料など)
  • 手順2:面談
  • 手順3:退職の合意
  • 手順4:退職届の提出及び退職合意書の締結
  • 手順5:退職の手続き

 

退職勧奨をするにあたっては、必ず何らかの理由があるはずです。

まずは、その理由を説明するための資料、例えば、これまでの注意指導の記録や、他の従業員からの聴取メモなどを用意しておきましょう。

その上で、面談は、会議室など、他の職員からは見えない場所で実施をすることが重要です。他の職員も見える場所で面談を実施し、退職勧奨をすると、職員の自尊心を傷付けることにもなりますので、絶対にNGです。

また、退職勧奨により退職をしたのに、後に当該職員から「解雇だった」などと主張され、争われるケースがあります。

そのような事態に備え、面談の様子は必ず録音をとっておきましょう。

なお、録音をしていることは、相手に対して伝える必要はありません。

詳しくは、以下の動画をご覧下さい。

 

 

 

 

5-2.職員との面談時の言い方と注意点

ここからは、面談時の注意点を説明します。

 

(1)職員は録音をしているものと考えて冷静に!

先ほど、面談の際には必ず録音をとって欲しい旨と、その際に相手の了解は不要であることを説明しました。

しかし、これは逆に言えば、職員側も、事業所側に黙って録音をしている可能性があることを意味します。

近年は、インターネット上でも様々な法的知識を得ることが出来るため、職員の中にも、無断録音が適法であることを知っている方は大勢います。

もし、職員から「録音をしてもいいか」と聞かれた場合には、拒否をしても構いませんが、許可を求めずに録音をしていた場合には、こちらでは録音の有無を知りようがありません。

そのため、録音されているかされていないかを血眼になって確認するより、もとより録音はされているものと考えて、落ち着いて話をすることが重要です。

例えば、職員は、事業所側を怒らせるなどして、声を荒げさせたり、乱暴な言葉を引き出させることを目的に、あえてこちらを苛立たせるような受け答えをする可能性があります。

そのような場合に、売り言葉に買い言葉で「やめてしまえ!」などと言わされてしまうと、相手の思うつぼです。

あくまで、「この会話は録音されているんだ」との意識を持った上で、「そのような態度や発言に対しても、これまで注意してきましたよね?」「このままうちで働き続けても、お互いのためによくないのではないですか」などと、落ち付いて話すことを心掛けましょう。

もちろん、一部だけを切り取れば、声を荒げたり、厳しい言葉を話したりしている場面もあるかも知れませんが、有効な退職勧奨であるか、解雇であるかについては、面談全体のやり取りを加味して判断されます。

仮に、職員が退職勧奨に応じなかったとしても、このような面談時の反省のない態度は、さらなる注意指導の事情となります。

録音されていることを逆手に取り、落ち着いて話すための材料にしましょう。

 

(2)職員への注意指導も併せて行う

退職勧奨の場では、退職勧奨の理由に基づいて、まずは注意指導をすることが重要です。

その注意指導に対して、職員がどのような態度を取るかについても、退職勧奨の方向性に大きくかかわってきます。

例えば、職員の中には、注意指導を真摯に受け止め、しかし、それでもどのように改善すればいいのか分からない、との悩みを打ち明ける人もいるかもしれません。

そのような職員に対しては、例えば「あなたがもっと自分の能力を発揮できる職場はあるのではないか」などと水を向けやすくなり、円滑に退職手続が進むこともあります。

一方、注意指導に対して反抗的な職員の中にも、頑なに退職を拒む人もいれば、「なんでそんなに言われないといけないんだ!ならやめてやる!」と、思わぬ形で退職の意思表示をする人もいます。

退職勧奨をする理由をしっかりと説明し、注意指導を行うことで、職員自身に、事業所においておかれている地位などを理解させることができるのです。

 

(3)その場で退職届を出させるべき?

退職勧奨をし、退職する旨の意思を表明した職員には、すぐに退職届を出させたいと思うのが通常です。

しかし、その場で退職届を出させることにも、メリットとデメリットがあります。

 

1.その場で退職届を出させるメリット

その場で退職届を提出される最大のメリットは、「気が変わらないうちに」手続を進めることにあります。

職員も、面談の場では退職しようと考えていたとしても、一旦家に帰り、家族や友人に話をしたり、インターネットで「退職」等について調べた結果、気が変わって、翌日には「やっぱり退職しません」と意向をひっくり返す可能性があります。

先に退職届を提出させていた場合、職員が一旦家に帰って改めて考えた場合であっても、「そうは言っても、退職届出したしな…」と、事実上意見を翻すことの抑止にもなるのです。

加えて、退職合意書と併せて、職員自らが記載した退職届があることは、職員の退職の意思を基礎付ける際に非常に有効です。

 

2.その場で退職届を出させるデメリット

面談の場で提出させた退職届は、後から、「その場で無理矢理書かされた」「冷静に考えることが出来ない状態で書かされた」などと言われることが往々にしてあります。

このような主張をさせないためにも、録音をとっておく必要があるのですが、録音があったとしても、それでもなお、その日初めて受けた退職勧奨について、その場で退職届が作成されることについて、職員の真意に基づくものかどうか疑義が生じ得るのです。

本人が自発的に退職届を書く場合は別として、そうでなければ、追って退職届を提出させる、又は、退職合意書を後日締結する方法により、職員本人に熟慮期間を与えているという形式をとるようにしましょう。

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

退職勧奨の面談の際に、弁護士に立ち会って欲しい、との要望を受けることがあります。しかしながら、弁護士法人かなめとしては、退職勧奨の際に、弁護士が立ち会うことについては消極的です。

 

なぜなら、あくまで任意での退職を求める場において、法律の専門家が立ち会うことは、職員にとっては大きなプレッシャーになるからです。

 

例え、弁護士がほとんどその場で喋らなかったとしても、何も言わないことは、事業所側の言い分を黙示に追認しているものと捉えられ、職員にとっては、退職しなければ法的に困ったことになるのではないか、との不安を煽る存在となり、脅されているように感じることすらあるのです。

 

このような状況で提出された退職届や、退職の意思表示に疑義がもたれるのは当然です。

 

そのため、退職勧奨は、弁護士からのアドバイスの下、原則として事業所のみで行うことを推奨しているのです。

 

 

5-3.職員へ退職することのメリットを説明する!

職員に対して退職勧奨をし、円滑に退職をしてもらうためには、「今退職すればメリットがある!」と職員に感じてもらうことが重要です。

そこで、以下では退職勧奨時に付与し得るメリットについて説明します。

 

(1)退職金の上乗せ

例えば、当該職員が、勤務期間が短いことから退職金が発生しないか、発生しても少額であった場合、さらには、そもそも事業所に退職金規程がない場合などには、退職をする代わりに、1か月から数か月分の給与相当額を退職金として支払うことがあり得ます。

 

(2)有給の買取り

職員の中には、有給休暇をほとんど利用せず、退職勧奨時に多くの日数を残している場合も少なくありません。

このような場合,会社は残っている有給休暇を買い取る義務はありませんし,有給休暇は、退職時にはもちろん消滅します。

しかし、会社側が交渉のカードとして,有給を買い取ることは法的に問題はありません。

このような場合に、有給の1日あたりの金額を算出し、有給休暇の残日数分を支払うことを提案することで、スムーズな退職に繋げられることもあります。

 

(3)解決金の支払い

退職金や有給休暇の買取りとは別に、例えば数か月分の給与相当額の他、なんらかのまとまった金額を解決金として支払うことで、職員が退職を決意することもあります。

退職を拒否する職員にとっての懸念は、退職により収入がなくなることです。

そのため、例え1か月分であっても、給与相当額が補償されることは、退職をする上での大きなメリットになり得ます。

 

(4)転職の斡旋

退職を拒否する職員にとってのもう一つの懸念は、再就職先が見つからないことです。

もちろん、退職勧奨の理由にはよりますが、場合によっては、再就職先、転職先を斡旋することも有益です。

 

5-4.雇用体系によって方法に違いはある?

 

(1)有期雇用職員の場合

本記事は、無期雇用契約の職員、すなわち正社員であることを前提としていますが、有期雇用契約の職員についても、退職勧奨の方法については同様です。

もっとも、有期雇用契約の場合は、契約期間の満了による雇止めにより、解雇よりも容易に職員の従業員としての地位を失わせることができる場合もあります。

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

有期雇用契約の場合、契約期間が満了すれば、いつでも雇止めができると考えている事業所もあるかもしれませんが、雇止めについても、契約の更新が繰り返されている場合などに、「更新の期待」が発生していると認められれば、解雇と同様に厳しい規制がかかります。

 

そのため、有期雇用契約の場合も、退職勧奨をすることが有益なケースもあるのです。

 

6.実際に退職をすることになったら?

以下では、退職勧奨により、職員が実際に退職の意思を表明した場合の手続について説明します。

 

6-1.退職合意書を作成する

退職勧奨が奏功して、退職をする場合には、退職をすること以外にも様々な条件を取り決めることがあります。

以下では、退職合意書に記載すべき内容について説明します。

 

(1)退職日を合意する

退職日をいつにするかは、給与をいつまで支払うか、退職金の支払い条件を満たすかなど、様々な場面に影響します。

特に退職金は、雇用主が任意に解決金として支払う様な場合であれば大きな問題はありませんが、中小企業退職金共済などに加盟し、ここから退職金が支払われることになっている場合は、厳格に支払い条件が定められています。

そのため、いつを退職日とするかについては、職員との間でしっかり詰める様にしましょう。

 

(2)退職に伴う条件について合意する

退職に伴い、雇用主が職員に対して何らかの金銭を支払う場合には、その金額や支払い時期、振込先などを明記します。

その他、例えば競業の禁止や、口外禁止条項、お互いに誹謗中傷しないことの取り決めなどを盛り込んでいきます。

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

事業所をやめた職員が、事業所内で得たノウハウ等を利用して、同種の事業を立ち上げたり、他の職員や利用者を引き抜くといった事案をよく耳にします。

 

職員には職業選択の自由(憲法22条)があるため、場所や年数を限定せず、完全に競業を禁止することはできません。しかしながら、退職時に、競業の禁止等について合意をしておけば、抑止力になりますし、適切な範囲であれば実際に競業を禁止することができます。

 

どのような範囲であれば、競業の禁止が許されるかなど、具体的な内容を検討するにあたっては、弁護士からアドバイスを受けるようにしましょう。

 

(3)制服、備品、健康保険書等貸与したものを返還する約束をする

介護事業所では、職員の雇用にあたり、業務中に着用する制服や名札、業務中に利用するタブレットや携帯など、さまざまなものを貸し出します。

これらを、退職した職員に持たせたままにしていると、情報の流出や、事業所の知らないところで、事業所の名前等が入った備品や制服が使用され、思いも寄らない被害が発生する可能性があります。

そこで、退職合意書の中に、事業所から貸与したものを速やかに全て返却することを約束させる方法があります。

例えば、これらの約束守らない限り金銭を支給しない、支給した後の場合は、返金を求めるなど、金銭を支払うことの条件とすることで、実効性を確保できます。

 

(4)清算条項を忘れない!

退職合意書の作成の最後には、必ず以下の条項を入れる様にしましょう。

 

▶参考例:

甲(雇用主)と乙(職員)との間では、本書に定める他、何らの債権債務関係がないことを相互に確認する。

 

これは、合意書に記載されている以外の債務がないことを確認することで、新たな紛争の発生を防ぐ目的があります。

例えば、せっかく解決金を支払って終わりだと思っていたのに、突然、当該職員から、合意時には話題にもならなかった残業代を請求されることがあれば、紛争の一回的解決になりません。

そのため、合意書の最後には必ず、清算条項が入っているか、しっかり確認する様にしましょう。

 

6-2.退職後の手続を説明する

退職合意書を作成し、いざ退職をした後にもさまざまな手続が必要です。

ここでは、退職後の主な手続きの概要を説明します。

 

(1)「会社都合」退職と「自己都合」退職の違いは?

 

1.会社都合の退職とは?

「会社都合」退職とは、解雇の他、職場内でのハラスメント等で失業を余儀なくされた場合など、本人の意思によらない退職のことをいいます。雇用保険上は、「特定受給資格者」と呼ばれています。

 

2.自己都合の退職とは?

また、「自己都合」退職とは、職員が自らの意思で退職をすることをいいます。雇用保険上は、「一般離職者」と呼ばれています。

 

退職勧奨に応じて退職をする場合は、原則として「会社都合」の退職に当たります。

 

▶︎参照:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」について

 

1.それぞれのメリットとデメリット

事業所側にとっては、退職は自己都合であるに越したことはありません。

例えば、事業所が受けている助成金の支給要件の中には、6ヶ月以内に会社都合による離職者がいないこと、という要件のあるものが多数存在します。

助成金の内容や詳しい支給要件は、以下のページをご覧ください。

 

▶︎参照:厚生労働省「平成31年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(詳細版)」(PDF)について

 

また、職員にとっても、再就職の際、会社都合で退職した旨を履歴書に記載した際に、再就職先が敬遠をし、なかなか再就職が決まらないケースもあります。

もっとも、職員にとっては、失業保険の面では、以下で説明するように、会社都合の場合の方が優遇されることから、やはり会社都合による退職を望みます。

具体的な失業保険の受給の仕方については、以下のハローワークの説明をご覧の上、お近くのハローワークにお問い合わせ下さい。

 

▶︎参照:ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」について

 

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

職員が、会社都合退職を望む大きな理由の1つが、失業保険の受給時期です。

 

自己都合退職の場合、失業保険を受給するまでに、2か月の給付制限を受けることになるため、少しでも早く失業保険を受給しようと思うと、退職理由は会社都合である必要があるのです。

 

もっとも、助成金の関係で、事業所としても、どうしても自己都合退職としてほしい場合もあります。そのような場合、解決金の額等を、この失業保険の受給開始期間を考慮した金額とすることで、職員との合意に至ることができる可能性もあります。

 

なお、給付制限期間は、令和2年10月1日以降、改定されていることから、詳しくは以下のページ又はお近くのハローワークにお問い合わせ下さい。

 

▶︎参照:「給付制限期間」が2か月に短縮されます~ 令和2年10月1日から適用 ~」(PDF)

 

(2)離職票の発行

離職票は、会社都合退職であると自己都合退職であるとにかかわらず、離職に伴い、事業所が発行しなければならない書類です。

詳しくは、以下のページに記入例も合わせて紹介されているので、ご覧下さい。

 

▶︎参照:ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」について

 

(3)失業保険

 

1.会社都合退職の場合

会社都合退職の場合は、離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から通算して7日間の待機期間を経て支給されます。

 

2.自己都合退職の場合

自己都合退職の場合は、離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から通算して7日間の待機期間及び2か月の給付制限を経て支給されます。

 

退職後の手続きについて詳しくは、お近くのハローワークにお問い合わせ下さい。

 

▶参照:全国ハローワーク等所在案内はこちら

 

7,退職勧奨(退職勧告)を拒否されたら?

退職勧奨は、あくまで任意での退職を求める手続です。

そのため、当然、退職を拒否する職員もいます。

以下では、退職勧奨を拒否された場合の注意点等について説明します。

 

7-1.深追いは禁物!

退職勧奨をした際、すぐに「わかりました、退職します。」と素直に応じる職員は、もちろんそう多くありません。

そのため、職員が難色を示した場合でも、事業所側として、退職勧奨をしている理由やその趣旨、退職条件等を丁寧に説明し、退職することが当該職員のためになることなどを粘り強く伝える必要があります。

冷静な話合いをすることにより、初めは抵抗感を示していても、「それなら退職をしてもいいか」と考えを変える職員は少なくありません。

しかし、退職勧奨をした段階で、明確に退職を拒否された場合、その面談の場で、なお執拗に退職を求めるのはNGです。

退職勧奨も、程度が過ぎれば違法となりますし、解雇の意味合いを帯びて行きます。

退職勧奨は、1度しかできないわけではありません。

もし、1度目の面談で、明確に退職をしない旨が表明された場合、その場では注意指導にとどめ、さらに間を置いて、2度目、3度目と、注意指導を加えた粘り強い面談を重ねたり、新たな条件を提示していくことが重要です。

 

7-2.退職勧奨を拒否したことに基づいて不利益な扱いをしてもいいの?

職員が退職勧奨に応じてくれない場合、事業所としては、当該職員になんとか退職をして欲しいあまり、何らかの不利益な取り扱いをしたがる傾向があります。

しかし、退職勧奨があくまで任意の手続であることに鑑みれば、これに応じないことを理由として、不利益な扱いをすることはできません。

もっとも、事業所が職員に対して不利益な処分をするのは、「退職勧奨に応じなかったこと」が原因でなく、これまでの職員の素行や業務態度によるものであることが多いと思います。むしろ、そのような職員の素行等があるからこそ、退職勧奨に至っているのだと思います。

そこで、退職勧奨と、日頃の職員の素行や業務態度に対する不利益な処分については、明確にそのプロセスや説明を分けることを心掛けて下さい。

以下では、各処分について、経るべきプロセスの概要を説明します。

 

(1)降格

降格は、当該事業所での階級等が下がることにより、必然的に役職手当や基本給の引き下げを伴う手続です。

その場合、職員にとってみれば、精神的なダメージのみならず、経済的な不利益に直結する手続となるため、相当に厳格な手続が必要です。

具体的には、まずは事業所の就業規則に、降格処分が可能であることやその降格処分の理由を明記しておく必要があります。

その上で、この降格処分の理由が存在するか否かについて、事業所内で、客観的資料や他の従業員からの聴き取り調査を行い、当該降格処分が人事権の濫用にあたらないかについて、しっかり吟味する必要があるのです。

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

降格処分に限らず、何らかの不利益処分をするにあたっては、客観的資料の存在が不可欠です。具体的には、注意指導に係るやり取りがタイムリーに残っていると、非常に有効です。

 

以前は、面前や電話での注意指導が一般的であり、いざ不利益処分の是非を検討するに当たって、客観的資料はまったく残っていない場合が多々ありました。

 

他方、近年は、メールやビジネス用のSNS等の利用が一般的となり、職員間のやり取りや指示が、日時を明確にした上でしっかりと残るようになりました。

 

いきなり文書で指導をすることが憚られる場合は、普段利用する連絡ツールから注意指導をしたり、口頭で注意指導をした場合は、その内容を確認するように、改めてメールやSNSで内容を伝えることを習慣にしておくと、普段の業務の中で、客観的資料を残して行くことが可能になります。

 

(2)配置転換

配置転換については、通常は、人事権を有する雇用主側に広い裁量があるので、原則としては有効です。

しかし、配置転換も、職員の勤務環境を大きく変えてしまうことがあり、無制限にできるわけではありません。

具体的には、以下の点を考慮して、人事権の濫用がないか否かを検討する必要があります。

 

  • 配置転換の必要性
  • 対象従業員の選定に係る事情
  • その他の事情

 

片方の皿に従業員側の事情、他方の皿に会社側の事情を乗せた天秤をイメージしてみると、わかりやすいと思います。

 

配置転換における片方の皿に従業員側の事情、他方の皿に会社側の事情を乗せた天秤イメージ

 

参考判例:
北海道・道労委(社会福祉法人札幌明啓院(配転))事件(札幌地判令和元.10.11 労判1218.36)

例えば、ある介護事業所において、介護相談員から介護支援員への配転が、人事権の濫用であるとして、違法とされた事案もあります。

 

(3)仕事を与えない

「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和2年6月1日適用】(以下、参照リンク)」4ページには、パワーハラスメントに該当し得る例として、以下のような具体例が挙げられています。

 

  • ① 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
  • ② 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。

 

もっとも、以下の場合には、パワーハラスメントには該当しないと説明されています。

 

  • ① 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。

 

事業所としては、特定の職員に仕事を与えないことを理由付けるためには、当該職員の能力や勤務態度などから、客観的に見て業務内容や業務量を軽減する必要があることをしっかり説明できる状況である必要があります。

 

▶参照:「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和2年6月1日適用】」(PDF)

 

7-3.粘り強く注意指導をしていくことが重要!

以上のように、職員に対して不利益処分を課すのは、非常に骨が折れる作業です。

事業所としては、事業所からの注意指導に対する当該職員の反省度合いや態度をしっかり注視し、将来的には解雇せざるを得ないことも念頭に置いて、しっかりとプロセスを積み重ねていく必要があります。

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】

裁判所は、労働事件において、近年は特に「プロセス」を重視しています。

 

解雇等、職員にとって不利益な処分をするにあたっては、処分に向けて、計画的かつ丁寧なプロセスを経る必要があり、これを経ていないことで、実際に処分事由があるか否かにかかわらず、当該処分が無効となったケースもあります。

 

例えば、ある法人間での人事異動が、元いた法人での従業員としての地位を失わせた上、異動先の法人で新たな雇用契約を締結する「転籍出向」にあたるものであったにもかかわらず、当該従業員から個別の同意を得なかったことから、その人事移動命令が人事権の濫用に当たるか否かを判断するまでもなく違法であると判断された裁判例もあります。

 

▶参照:「国立研究開発法人国立循環器病研究センター事件(大阪地判平成30年3月7日)」(PDF)

 

 

8.退職勧奨(退職勧奨)が違法となる場合とは?

退職勧奨も、その態様によっては違法と評価されることがあります。

以下では、退職勧奨が違法となる場合や、その際の不利益について説明します。

 

8-1.退職勧奨が違法になると、どんな不利益があるの?

退職勧奨は、その手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱しない限り,使用者による正当な業務行為としてこれを行い得るとされています。

しかし、退職勧奨が違法となってしまうと、せっかく退職をさせられたと思ったのも束の間、実質的に解雇であったとして、労働者としての地位の確認やバックペイを請求されることもありますし、退職勧奨を拒否されていた場合には、職員を辞めさせられないばかりか、パワーハラスメントなどを理由に事業所が損害賠償請求をされる可能性もあります。

 

8-2.退職勧奨が違法となる場合

以下では、退職勧奨が違法となる場合について、代表的なケースを見てみましょう。

 

(1)解雇と同視される場合

退職勧奨が、解雇と同視される場合には、解雇権濫用法理が適用されることになります。

そして、この場合の大きな問題は、事業所としてはあくまで任意且つ適法な手続を行ったと認識していることから、当然、解雇に必要なプロセスは踏んでいません。

具体的には、「退職したらどうか?」など、言葉だけをみれば職員の意向を尋ねるような発言であったとしても、前後の文脈として、退職勧奨に応じなければ、降格などの不利益処分があることを仄めかしている場合や、最終的に職員に退職届等を出させているものの、その場の会話では、「もうやめるしかない」「言うとおりに書いて提出しなさい」などと、実質的には無理矢理退職届を出させているような場合、仮に形式が整っていたとしても違法性は免れません。

 

【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】
クライアントからの労務相談の中で、「とりあえず退職届を出させてたら違法にはならないですよね?」「退職合意書にサインさせたらこっちのものですよね?」などと聞かれることが時々あります。しかし、労働法の世界では、形式が整っているだけでは足りず、実体面が非常に重視されており、特に、解雇など、職員の地位に大きくかかわる事情については、非常に厳しく実体面が見られます。 

職員とのやり取りの中で、合意退職をしたと認識していたにもかかわらず、その後突然弁護士や労働基準監督署から「不当解雇だ」との主張や是正勧告がされるケースが往々にしてあるのは、このような労働法の考え方が影響しているのです。

 

(2)パワハラなどのハラスメントと認定される場合

退職勧奨も、その手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱すれば違法行為となります。

程度問題もありますが、以下のような方法を伴う場合には、退職勧奨がパワーハラスメントに該当する可能性があると考えられます。

 

  • 退職勧奨の際に誹謗中傷をする。
  • 退職勧奨に応じない旨を明確にしているにもかかわらず、短期間に繰り返し退職勧奨を 行う。
  • 他の職員も見ている前で、退職勧奨を行う。
  • 退職勧奨と併せて、業務量を増減させるなどの理由のない嫌がらせをする。

 

8-3.実際に退職勧奨が違法となった裁判例

以下では、実際の裁判で退職勧奨が違法になった判例を紹介します。

 

判例:東京地方裁判所令和2年9月28日判決

産業用機械の制作,販売等の事業を営む株式会社において、1か月のうちに3回、そこで、職員から退職勧奨に応じない旨を明確に回答されているにも拘わらず、その後も2度退職勧奨を行った事案では、形式的に、このような回数や頻度での退職勧奨をしたからといって、直ちに社会通念上相当と認められる範囲を逸脱したものとはいえないとされています。

しかし、退職勧奨に併せて、当該職員を他の職員から孤立させる業務に就かせた上(具体的には、会議室で1人自習をさせていた。)、「生産性のないやつ」でその「給料分,他の社員たちに与えた方がより効率的」などと侮辱的表現を用いて一方的に当該職員を非難する方法で退職勧奨を行ったことについて、当該職員の人格権を侵害する違法行為であるとして、その手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱していると判断されています。

 

9.介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!

介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!

弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。

 

  • (1)退職勧奨に関する手続の指導
  • (2)退職勧奨が違法であることに基づいて請求をされた場合の対応
  • (3)労働判例研究会
  • (4)顧問サービス「かなめねっと」

 

以下で、順番に説明します。

 

9−1.退職勧奨に関する手続の指導

退職勧奨は、その行為単体だけではなく、解雇や他の不利益処分等とも密接に関連し、計画的且つ状況に応じた対応が求められます。

そのため、いざ退職勧奨や解雇をしようと考えたタイミングではなく、「この職員、何か問題行動が多いな…」と感じたタイミングから、専門家の意見を仰いでおくことが重要なのです。

早期に相談を受けられれば、証拠の残し方、実際に退職勧奨をする際の準備などを、計画的にサポートできますし、契約内容を見直すタイミングで効果的な指導等ができる可能性もあります。

弁護士法人かなめでは、このような初期段階から、現場の責任者からの相談を受け、初動からきめ細やかなサポートをすることで、労務問題に対して適時に助言をすることができます。

 

9−2.退職勧奨が違法であることに基づいて請求をされた場合の対応

弁護士法人かなめでも、「退職した職員が、自主退職したはずなのに、解雇だと主張されている」といったご相談をよく受けます。

このような場合には、実際にどのような面談を実施して退職に至ったのか、退職勧奨をすることとなった原因事実が実際に存在しているかどうかなど、様々な観点からの振り返りや、損害賠償請求等を請求してくる職員への対応が必要となります。

ただでさえ激務の中、このような過去の事実への対応に追われてしまえば、他の職員達も疲弊し、離職等の原因となってしまいます。

弁護士法人かなめでは、このような場合の事実の整理や交渉に、事業所に皆様に代わって取り組むことで、事業所の皆様が、安心して本来の業務に専念できる環境作りをサポートできます。

 

9−3.労働判例研究会

弁護士法人かなめでは、普段の労務管理の参考になる労働判例を取り上げ、わかりやすく解説する労働判例研究ゼミを不定期に開催しています。

ゼミの中では、参加者の皆様から生の声を聞きながらディスカッションをすることで、事業所に戻ってすぐに使える知識を提供しています。

詳しくは、以下のページをご覧下さい。

 

▶参照:弁護士法人かなめ「労働判例研究会」開催情報はこちら

 

9−4.顧問サービス「かなめねっと」

弁護士法人かなめでは、「9−1」ないし「9−3」のサービスの提供を総合的に行う顧問契約プラン「かなめねっと」を運営しています。

具体的には、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入し、事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。

そして、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。

直接弁護士に相談できることで、事業所内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。

 

▶参照:「かなめねっと」のサービス紹介はこちら

 

9−5.料金体系

現在、弁護士法人かなめでは顧問契約サービス「かなめねっと」のみのご契約のみ受け付けています。

 

(1)顧問料

  • 月額5万円(消費税別)から

 

※職員の方の人数、事業所の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、お問合せフォームまたはお電話からお問い合わせください。

 

また、弁護士法人かなめへの法律相談料は以下の通りです。

 

(2)法律相談料

  • 1回目:1万円(消費税別)/1時間
  • 2回目以降:2万円(消費税別)/1時間

 

※相談時間が1時間に満たない場合でも、1時間分の相談料を頂きます。

※法律相談は、「1,弁護士法人かなめにご来所頂いてのご相談」、又は、「2,ZOOM面談によるご相談」に限らせて頂き、お電話でのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承くださ い。

※また、法律相談の申込みは、お問合わせフォームからのみ受け付けおります。

※介護事業所の経営者側からのご相談に限らせて頂き、他業種の企業様、職員等一般の方か らのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

 

10.まとめ

この記事では、「退職勧奨」について、解雇との違いや手続の方法を説明し、さらには、職員が退職勧奨を受け入れた場合と拒絶した場合の各手続についても紹介しました。

また、「退職勧奨」により職員が退職する場合の退職合意書の内容として、以下の4つのポイントをご紹介しました。

 

  • 1.退職日を合意する
  • 2.退職に伴う条件について合意する
  • 3.制服、備品、健康保険書等貸与したものを返還する約束をする
  • 4.清算条項を忘れない!

 

さらには、退職勧奨が違法となった場合の問題点や、退職勧奨に応じないことを理由に不利益処分をすることに対する問題点についても照会しておりますので、問題のある職員に対する処遇等についてご検討されている事業所の方は参考にしてみて下さい。

その上で、なるべく早期に弁護士へ相談するようにして下さい。

 

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この記事を書いた弁護士

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畑山 浩俊はたやま ひろとし

代表弁護士

出身大学:関西大学法学部法律学科卒業/東北大学法科大学院修了(法務博士)。
認知症であった祖父の介護や、企業側の立場で介護事業所の労務事件を担当した経験から、介護事業所での現場の悩みにすぐに対応できる介護事業に精通した弁護士となることを決意。現場に寄り添って問題解決をしていくことで、介護業界をより働きやすい環境にしていくことを目標に、「介護事業所向けのサポート実績日本一」を目指して、フットワークは軽く全国を飛び回る。

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