記事公開日: 2021年12月22日   
記事更新日: 2022年3月17日

辞めさせたい問題社員!解雇など適法で正しい対応方法を解説

辞めさせたい問題社員!解雇など適法で正しい対応方法を解説
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皆様の介護事業所に、問題行動があり、どれだけ注意をしても態度が改まらない職員や、能力が低かったり、メンタルヘルスの問題で業務に支障を来している職員はいないでしょうか?

近年、このようなさまざまな問題を抱えた社員への対応が問題となり、頭を悩ませている雇用主は後を絶ちません。介護事業所のように、職員同士の関係性が密であり、相互の連携が必要な職場ではなおさら深刻です。

事業所は、雇用する全職員に対して、雇用契約上の安全配慮義務、職場環境配慮義務を負っており、問題のある職員からの反撃を恐れて放置した結果、他の職員に何らかの被害が生じれば、事業所としての責任を免れることはできません。

例えば、問題のある職員への注意指導を特定の職員に任せるうちに、過大な精神的負担から追い詰められ、その結果当該職員が離職してしまうといった事態に至ることも多いです。

そして、さまざまな判断をした結果、問題のある職員を辞めさせざるを得ないとの結論に至ることもあると思います。

しかし、いくら問題を抱えた社員であっても、解雇は容易ではありません。

そこで、問題のある社員への対応で最も重要なことは、事業所全体として、毅然とした態度をとり続けることです、

細やかな注意指導で反省や改善を促し、必要に応じて戒告や譴責などの懲戒処分を重ね、その態度を注視していくことで、最終段階として、退職勧奨(退職勧告)や解雇の選択肢をとることが可能となるのです。

この記事では、辞めさせたい問題のある社員の特徴や具体例を説明し、さらには、実際に当該職員を辞めさせる方法をメリットやデメリットと合わせて解説します。

それでは、見ていきましょう。

 

1.「辞めさせたい社員」のよくある特徴と事例

「辞めさせたい社員」のよくある特徴と事例

「辞めさせたい社員」の特徴は、仕事に対する言動や職場での態度に著しく問題があり、これによって職場全体の業務に支障を来たしたり、他の職員へ悪影響を与える社員であり、かつ、注意指導を尽くしても改善が難しい段階に至った社員です。

通常、注意指導をしているうちに、業務態度が改善されたり、自ら退職していくことも多いですが、会社から退職等に対するなんらかの態度を起こさない限り、退職をしないのが、「辞めさせたい社員」の大きな特徴です。

 

1−1.「辞めさせたい社員」の具体例

「辞めさせたい社員」の際たる例は、仕事に対する言動や職場での態度に著しく問題がある従業員や職員であるモンスター社員や、問題社員です。

例えば、以下のような行動が目立つ職員については、業務に支障を来たし、職場環境を悪化させ、会社としては「辞めてほしい」と考えるようになります。

 

  • 急な欠勤が多い
  • 協調性がない
  • パワーハラスメント(逆パワハラを含む)を行う
  • 能力に欠ける
  • 配偶者や親などが交渉に現れる
  • その他(暴言、居眠り、離席、業務外の行動)

 

また、必要とされる能力に欠ける社員や、ここ近年ではメンタルヘルス問題で業務に支障を来たしている社員などに対して、教育や休職等の制度を利用しても改善しなかった場合に、会社としては辞めてもらわざるを得ないという状況になり得ます。

モンスター社員や問題社員の具体例については、以下の記事でも詳しく説明していますので、合わせてご覧ください。

 

▶︎参照:モンスター社員!特徴と対応方法を事例付きで弁護士が解説【放置厳禁】

▶︎参照:逆パワハラって?判断基準や事例・正しい対処法をわかりやすく解説

▶︎参照:仕事ができない人の放置は厳禁!特徴ごとの対応方法を徹底解説!

 

 

2.「辞めさせたい社員」を放置するとどうなる?

事業所が「辞めさせたい」と考えている問題社員を放置すると、さまざまな弊害が発生します。

以下で解説します。

 

2−1.職場環境の悪化

問題社員が、事業所において、他の職員に対して暴言を吐くなどのハラスメント行為をしたり、業務中に居眠りや業務と無関係なおしゃべりを繰り返すなどしていると、事業所内の環境が乱れ、事業所全体の雰囲気が悪くなります。

 

2−2.他の職員の疲弊

問題社員の標的となってしまった職員や、そうでなくとも、辞めさせたい職員のせいで職場環境が悪化すれば、その対応に職員は疲弊し、中には精神疾患等を発症する職員が出てくる場合もあります。

このような職員の精神疾患が、事業所が辞めさせたい職員を放置したことが原因であるとなれば、事業所の法的責任は免れません。

 

2−3.他の職員の離職

問題社員の対応に疲弊してしまったり、職場環境が悪化しているにもかかわらず事業所がなんらの措置も取らなければ、職員は「事業所は自分たちを守ってくれない」と考え、事業所に不信感をいただくようになります。

そうなれば、職員に残された選択肢は、離職以外になくなってしまいます。

 

2−4.他の職員からの安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求

そして、職員が、辞めさせたい職員からの攻撃によって精神疾患を発症するなどし、その原因が、事業所の放置にあった場合、職員が離職した後、または事業所には残りながら、安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求してくることもあります。

実際に、問題のある職員からのパワーハラスメント等を放置したことにより、事業所が責任を負うこととなった裁判例もあります。

 

参考判例:
乙山青果ほか事件(名古屋高裁平成29年11月30日判決)

 

事案の概要

この事件は、原告である職員が、上司から、長期間にわたり,いじめ・パワーハラスメントを繰り返し受けていたにもかかわらず、雇用主がこれを放置したことなどから、強い心理的負荷を受けてうつ状態に陥り,自殺するに至ったことを理由として、職員の遺族が雇用主に対して安全配慮義務違反及び雇用主と上司に対して民法709条及び同法715条に基づく損害賠償を請求した事案です。

 

判決結果

裁判所は、上司によるいじめやパワーハラスメントの事実、雇用主がこれを放置した事実を認定し、上司及び雇用主の両方に、遺族からの損害賠償請求を認めました。

 

▶参照:「乙山青果ほか事件(名古屋高裁 平成29年11月30日判決)」の判決内容

 

 

参考判例:
さいたま市(環境局職員)事件(東京高判 平成29年10月26日)

 

事件の概要

この事件は、指導係から暴行を受けるなどのパワーハラスメントを受けていた職員が、雇用主に相談をしていたにも拘らず、事実確認や配置転換を怠ったことにより既往症であったうつ病が悪化して自殺をしたとして、遺族が雇用主に対して安全配慮義務違反及び国家賠償法に基づく損害賠償を請求した事案です。

 

判決結果

裁判所は、雇用主が、指導係による暴力やパワーハラスメントについて相談を受けた時点で適切に対応していれば、うつ病の悪化や自殺は発生しなかったとして、損害賠償請求を認めました。

 

▶参照:「さいたま市(環境局職員)事件(東京高判 平成29年10月26日)」の判決内容

 

 

3.「辞めさせたい社員」への対応方法

具体的に、「辞めさせたい社員」に対してはどのような対応をすれば良いでしょうか。

以下では、「辞めさせたい社員」を具体的に辞めさせる方法について、解説します。

 

3−1.無視や嫌がらせは絶対NG!

まず、絶対に行ってはいけないのが、「辞めさせたい社員」を自ら辞めさせるため、無視をしたり、他の社員と比較して殊更に不利に扱う、仕事を与えないようにして孤立させるなどの嫌がらせを行うことです。

このような職場の行為は、まさに厚生労働省が挙げる「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過少な要求」などのパワーハラスメントに該当し、会社自身が責任を問われることになります。厚生労働省がホームページで公開している、以下の「ハラスメントの類型と種類」も参考にご覧ください。

 

▶︎参照:厚生労働省「ハラスメントの類型と種類」

 

 

仕事を辞めるということは、社員にとっては生活に関わる重大な事柄であり、会社としても安易に行えるものではありません。

以下では、適法に社員に辞めてもらう、または辞めさせる方法について説明します。

 

3−2.退職勧奨

退職勧奨とは、雇用主が、雇用する職員に対して退職をするよう勧めることをいいます。退職勧奨は、あくまで任意に職員の退職を勧める手続であるため、何らの強制力や法的な効果を有するものではありません。

退職勧奨は、解雇とは異なり、なんらの強制的な手段も伴うものではありませんが、退職時のさまざまな条件の取り決めができるなど、うまく利用ができれば非常に効果的な手段です。

退職勧奨については、詳しくは以下の記事をご覧ください。

 

▶︎参照:退職勧奨とは?具体的な方法や違法にならないための注意点を弁護士が解説

 

 

3−3.解雇

解雇には、大きくは以下の2つがあります。

 

  • (1)普通解雇
  • (2)懲戒解雇

 

(1)普通解雇

普通解雇は、社員が労働契約の本旨に従った労務を提供しないこと、つまり、債務不履行を理由として、雇用主側が一方的な意思表示によって労働契約を解約することを言います。

例えば、職務の遂行に必要な能力を欠いていることや、勤務意欲や勤務成績、勤務態度が不良であり、改善の見込みがないことなどが、社員の労務提供義務に違反することを理由として、普通解雇を行うことになります。

普通解雇は、民法627条、労働基準法20条に規定されていますが、これに加えて、解雇ができない場合についてさまざまな法律で規制がされています。

普通解雇については、詳しくは以下の記事をご覧ください。

 

▶︎参照:普通解雇したい!無効とならない事例や手続きをわかりやすく弁護士が解説

 

 

(2)懲戒解雇

懲戒解雇は、懲戒処分の1つであり、雇用主が社員の企業秩序違反行為に対して科す制裁罰です。

つまり、雇用主が、企業の存立と事業の円滑な運営のために必要不可欠な権利として有している「企業秩序を定立し維持する権限」に基づいて、この企業秩序に反する行動をとった社員に対して与えられる刑罰のようなものです。

例えば、素行不良で事業所の秩序又は風紀を乱し、これが何度注意や他の懲戒処分をしても改善されなかった場合に、懲戒解雇をすることがあります。

懲戒解雇については、詳しくは以下の記事をご覧ください。

 

▶︎参照:​​懲戒解雇したい!有効になる理由や事例・手続きをわかりやすく弁護士が解説

 

 

3−4.雇止め

「雇止め」とは、雇用主が、期間満了後、有期労働契約を更新しないことをいいます。

例えば、「辞めさせたい社員」が有期雇用労働者であった場合には、「雇止め」を検討することになります。

もっとも、契約期間の満了に伴う雇止めは、本来的には違法ではありませんが、契約更新時の状況や雇止めをする理由などによっては無効になることがあるため、雇用主側が自由に行使できるわけではありません。

また、「雇止め」については、平成24年8月10日(公布日)の労働契約法改正において、有期労働契約者の権利の保護のため、一定の不合理な場合について雇止めを認めない「雇止め法理」が法定化されました。

雇止めについては、詳しくは以下の記事をご覧ください。

 

▶︎参照:雇止めしたい!有効と判断される理由や雇止め法理を解説【判例付き】

 

 

3−5.配置転換

配置転換は、雇用主側の人事権の行使として、現在所属する部署や役職と、異なる部署や役職に異動をさせることです。

複数の事業所がある介護事業所などでは、他の事業所に異動をさせたり、別の仕事をさせることで、辞めさせるわけではないものの、辞めさせたい理由を取り除くことができる場合があります。

 

【弁護士 畑山浩俊のコメント】

これらの方法は、選択的なものもあれば、状況に応じて段階的に進めていくべきものもあります。

 

以下でも説明するように、この選択やプロセスは、それぞれのメリット、デメリットを考慮しながら、状況に応じて決定していく必要があります。

 

そのため、事業所の中だけで判断せず、早期に専門家である弁護士に相談するようにしましょう。

 

 

4.対応方法ごとのメリット・デメリット

以下では、各対応方法のメリットとデメリットについて説明します。

 

4−1.退職勧奨

 

(1)メリット

退職勧奨は、あくまで職員自らの退職の意思を引き出すものであることから、法的なリスクを最小限にすることができます。

職員自らの退職の意思表示、または、職員と事業所との間の退職合意の存在により、事後の紛争を回避できることは、退職勧奨の最大のメリットです。

また、一方的な意思表示として行う解雇と異なり、職員の退職時に、様々な取決めをすることも可能です。

例えば、事業所から貸与している制服や備品の返却を約束させたり、適切な引継を実施させるなど、事業所にとってのリスクを最低限に抑えられる可能性があります。

 

(2)デメリット

退職勧奨の最大のデメリットは、あくまで「任意」の手続であることです。

つまり、どれだけ事業所側が退職を促しても、職員が「退職します」と言わない限り、職員の従業員としての地位を失わせることはできません。

そのため、職員が退職を拒否した場合には、やはり解雇等の強制的な手続を検討する必要があります。また、退職勧奨も、方法によっては違法と評価される場合もあるので、注意が必要です。

 

4−2.普通解雇

 

(1)メリット

普通解雇の一番のメリットは、職員の意思によらず、職員の労働者の地位を失わせることができることです。

そして、職員の債務不履行行為に対して、注意指導だけでなく、普通解雇という毅然とした態度を取ることで、事業所内の規律を守ることにも繋がります。

 

(2)デメリット

普通解雇をすることの最大のデメリットは、解雇無効のリスクです。

普通解雇は、そのプロセス等をしっかり履践しなければ、無効となり、仮に無効となると、バックペイや慰謝料請求などの危険に晒されることになります。

また、普通解雇が有効であるとしても、もう1つのデメリットは、「会社都合」退職をさせることで、助成金の支給要件に抵触する可能性があります。

事業所が受けている助成金の支給要件の中には、6ヶ月以内に会社都合による離職者がいないこと、という要件のあるものが多数存在します。

助成金の内容や詳しい支給要件は、以下のページをご覧ください。

 

▶︎参照:厚生労働省「平成31年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(詳細版)」(PDF)

 

 

4−3.懲戒解雇

 

(1)メリット

懲戒解雇も普通解雇と同様に、職員の意思によらず、職員の労働者の地位を失わせることが1番のメリットです。

また、例えば懲戒解雇を行う理由が、職員による不正行為(利用者に対する虐待、利用者から預かった利用料の横領、事業所のお金の使い込みなど)の場合、これを行った職員を懲戒解雇にすることで、事業所として、不正行為に対して厳とした態度を取ることを示すことができ、事業所内の規律を守ることにも繋がります。

 

(2)デメリット

懲戒解雇も普通解雇と同様に、解雇無効のリスクや助成金の支給要件への抵触の可能性があります。

 

4−4.雇止め

 

(1)メリット

雇止めも解雇と同様に、契約期間の満了を理由に、職員の意思によらず、職員の労働者の地位を失わせることができることが大きなメリットです。

 

(2)デメリット

雇止めも解雇と同様に、雇止めが無効となるリスクを有しています。

雇止めは、本来契約期間満了のみを理由に契約を終了できるものですが、「更新の期待」が発生すると、解雇と同様のプロセスをしっかり履践しなければ、無効となってしまいます。

また、雇止めも、解雇と同様に助成金の支給要件に抵触する可能性があります。

事業所が受けている助成金の支給要件の中には、「対象労働者の雇い入れ日の前後6カ月間に倒産や解雇など特定受給資格者となる離職理由の被保険者数が対象労働者の雇い入れ日における被保険者数の6%を超えていないこと(特定受給資格者となる被保険者が3人以下の場合を除く)」というものがあり、雇止めをされた職員は、条件によっては「特定受給資格者」に当たる可能性があります。

助成金の内容や詳しい支給要件は、以下のページをご覧ください。

 

▶︎参照:厚生労働省「平成31年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(詳細版)」

 

 

4−5.配置転換

 

(1)メリット

配置転換は、先の手続と異なり、労働者の地位を失わせるものではなく、また、ある程度事業所側に裁量があることから、無効になるリスクも少ない点がメリットです。

また、部署や職種の変更など、とり得る方法は多様であり、柔軟に手続を進めることが可能です。

 

(2)デメリット

配置転換も、必ずしも有効となるわけではなく、人事権の濫用と認定された場合には無効となる可能性があります。

また、配置転換によっては、当該職員の地位を失わせるわけではないことから、当該職員の処遇の検討を先送りにすることにもなり、根本的な解決にならない点もデメリットの1つです。

 

5.具体的な手続きの流れ

職員は、労働基準法や労働契約法上、労働者としての地位を保護されています。

そのため、辞めさせたい理由のある職員だからといって、なんらの手続も踏まずに辞めさせることは許されません。

事業所としてとることができる手続を、1つ1つ丁寧に履践していくことが一番の近道です。職員を辞めさせることは、非常に骨の折れる持久戦なのです。

ここからは、実際に問題社員に対してどのように対応すれば良いかについて、方法別に解説します。

 

5−1.まずは粘り強い注意指導を!

まずは粘り強い注意指導を!

問題社員への対応の出発点となるのは、事業所から当該職員への注意指導です。

事業所としては、職員の管理、職場環境の維持のため、問題行動があったり、業務遂行に問題のある職員に対しては、注意指導や教育を行うことで、自らの言動や態度を反省させ、また、経験を積ませるなどして、行動の改善を促すことが重要です。

 

(1)口頭

何らかの問題行動等が見られた際、最も簡易で且つすぐにできる注意指導の方法は、口頭での注意指導です。

注意指導は、問題行動の後すぐに行うことがもっと効果的です。

その理由は、発生した問題行動をすぐに注意せず、時間を置いてから注意すると、よほど客観的な証拠が存在している場合でない限り、「私はそんなことはやっていません」と言い逃れをしたり、実際に本当に忘れている可能性もあるからです。

なお、注意指導の対象となる行為は、必ずしも客観的な証拠が残るものではありません。

このような場合、口頭での注意指導を行った上、その指導の状況を録音しておく、または、指導内容やその際の職員の態度などをタイムリーに記録しておくことで、問題行動をとったことの1つの証拠になります。

 

(2)メール、Line等のチャットツール

最近は、事業所内での連絡方法として、メールやチャットツールを利用している介護事業所も多いと思います。

メールやチャットツールの良いところは、比較的速やかに注意指導ができることと、送った日付、時間、内容が記録され、それに対する相手からの返答内容も同時に記録されることです。

もっとも、チャットツールによっては、過去のやりとりを編集できたり、送信取消し等による証拠隠滅が図られる可能性もあります。

そのため、職員とのやり取りの記録は、スクリーンショットでの保存や、トーク履歴の保存等によって、その都度残しておくようにしましょう。

 

(3)書面

口頭やメール、チャットツール等での注意指導を繰り返しているにもかかわらず、問題行動が改善されないような場合、次の手続を想定し、書面での注意指導を行いましょう。

これまでに口頭やメール等で行ってきた注意指導や、その注意指導の際の態度を含めて改めて注意指導を行います。

書面での注意指導の際には、注意指導の内容の他、当該問題行動が就業規則の服務規律に違反している旨を付け加えておくと、注意指導の理由が明確となります。

具体的には、以下のような記載です。

 

▶参考例:

○年○月○日、利用者の送迎の際に、他の職員が介助の手助けを求めたにもかかわらず、これを無視してすぐに自分の職場に戻ろうとした。その際、近くにいた管理者が、「なぜ手伝わないのか」と注意すると、「助けは不要だと思った」などと反論し、態度を改めなかった(就業規則○条○号)。

 

 

このような注意指導書を交付する際、合わせて、自らの行動の改善点等を検討させて提出するよう指示することも有益です。

実際に提出されれば、職員の態度も明らかになりますし、提出を拒否したとすれば、その態度自体が次の手続への根拠となります。

以下の書式を参考に、改善報告を作成させてみましょう。

 

▶︎参照:「注意指導/改善報告シート」書式テンプレートのダウンロードはこちら

 

 

5−2.配置転換を検討する

注意指導を繰り返しても、業務態度等が改善されない場合には、複数の施設を運用している事業所であれば、別の施設に異動させたり、異なる部署や職種に配置転換することも検討できます。

配置転換は、通常は人事権を有する雇用主側に広い裁量があるので、原則としては有効です。

もっとも、配置転換についても、人事権の濫用となる場合があるため、配置転換の際には、以下の3つ点についてしっかり考慮をする必要があります。

 

  • 配置転換の必要性
  • 対象社員の選定に係る事情
  • その他の事情

 

特に、配置転換によって職務内容等が代わり、給与が下がるような場合は、労働条件の不利益な変更として、職員の同意が必要となり得ることから、注意が必要です。

配置転換の検討方法

 

5−3.懲戒処分を検討する

懲戒処分を検討する

懲戒処分といえば、「懲戒解雇」がイメージしやすいかもしれません。

しかし、懲戒処分には、戒告や譴責(けんせき)といった、職員への影響が比較的小さいものから、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇といった、職員の地位や労働契約の本質部分に影響のある重い処分まで順番に定められています。

職員に懲戒事由があったとしても、これをもって直ちに懲戒解雇をすることはできません。

懲戒処分をする際には、これまでに行ってきた注意指導や他の懲戒処分の存在も考慮の上、その内容を決めることになります。

そのため、事業所としては、注意指導によっても態度が改まらない職員に対しては、まずは戒告や譴責などの懲戒処分を行うようにしましょう。

懲戒処分の前歴を残しておくことで、その後の様々な手続も取りやすくなります。

懲戒処分ごとの詳しい解説については、以下の記事をご覧ください。

 

▶︎参照:戒告とは?処分の意味や重さ、具体的な内容、通知方法など進め方を解説

 

 

5−4.退職勧奨する

注意指導や懲戒処分によっても態度が改善せず、配置転換も難しいような場合、事業所としては、退職勧奨により、職員の自主的な退職を促します。

 

5−5.解雇する

解雇する

粘り強い注意指導をし、配置転換を検討し、懲戒処分も影響の少ないものから順に行っていき、退職勧奨もしたにもかかわらず、態度が改まることも、自主的に退職をすることもなかった場合、いよいよ解雇を検討せざるを得ない状況となります。

解雇には、「3.「辞めさせたい社員」への対応方法」で説明したように、普通解雇と懲戒解雇があり、いずれについても、裁判所は雇用主側に厳しい態度をとっています。

しかし、ここまでで解説してきたようなプロセスを踏んできた場合、当該職員を解雇できる資料は揃ってきているはずです。

実際に、粘り強い注意指導を続けた末に解雇をした事案で、解雇が有効とされた裁判例として、日本マイクロソフト事件(東京地裁 平成29年12月15日判決 労判1182.54)などが参考になります。

この裁判例では、職員に対する注意指導や、職員に対するモンスター社員の態度がメールのやりとりで残っており、その上で書面での注意指導も行なうなど、解雇にむけたプロセスが確実に履践されており、非常に参考になります。

 

【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】

どのような手続きを取るとしても、重要なことは全ての場面でしっかりと記録を残すことです。

 

メール、SNS、書面でのやりとりは記録として残りやすいですが、面談や口頭での注意の際にも、録音をすることで記録を残すことができます。

 

録音は、相手に了解を得る必要はありません。録音の際の注意点は、以下の動画をご覧ください。

 

▶︎参照動画:【無断録音】こっそり録音することは違法か?

 

▶︎参照動画;【無断録音!】実際にあったミス3選!弁護士が解説します!

 

また、録音ができない場面では、注意指導について、その都度記録を作成するようにしましょう。

 

具体的には、注意指導した具体的な内容とその日時、注意指導に対する相手方の態度や具体的な発言などを記録しておく事が重要です。

 

記録の方法は問いませんが、できる限り容易でタイムリーに、且つ、バックデートして記録を作成したなどの疑いが少ない方法としては、例えばメールやメッセージにメモをベタ打ちし、そのメモを自分宛に送信しておく方法です。

 

そうすれば、その時間に送信したメモの内容が確定されるため、後日なんらかの紛争に発展した際にも、証拠としての価値が高くなります。

 

ぜひ、試してみてください。

 

 

 

5−6.必ず弁護士などの専門家に相談を!

このような職員への対応は、粘り強く、計画的且つ状況に応じた対応が求められます。

1つプロセスを誤ることで、事業所のとる手続が違法になることもありますし、職員の行動が激化することもあり得ます。

そのため、「この職員、何か問題行動が多いな…」と感じたタイミングから、弁護士などの専門家の意見を聞きながら手続を進めることが重要です。

辞めさせたい職員を放置することなく、まずは弁護士に相談しましょう。

 

6.介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!

介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!

弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。

 

  • (1)辞めさせたい職員への対応に対する指導
  • (2)辞めさせたい職員から法的措置を取られた場合の対応
  • (3)労働基準監督署対応
  • (4)弁護士費用について
  • (5)顧問弁護士サービス「かなめねっと」
  • (6)労働判例研究ゼミ

 

 

6−1.辞めさせたい職員への対応に対する指導

辞めさせたい職員との対応は、持久戦となり、粘り強く、計画的且つ状況に応じた対応が求められます。

そのため、既に事業所内で、当該職員が猛威を振るい、持久戦に耐えられなくなってからであれば、このようなプロセスを踏んだ対応ができなくなってしまいます。

そのため、「この職員、何か問題行動が多いな…」と感じたタイミングから、専門家の意見を仰いでおくことが重要なのです。

早期に相談を受けられれば、証拠の残し方、注意指導をする際の準備などを、計画的にサポートできますし、最終的には事業所の代理人として、辞めさせたい職員の対応をすることも可能です。

弁護士法人かなめでは、このような初期段階から、現場の責任者からの相談を受け、初動からきめ細やかなサポートをすることで、労務問題に対して適時に助言をすることができます。

 

▶参照:サポートに関するご相談方法や弁護士費用については、こちらをご覧ください。

 

 

6−2.辞めさせたい職員から法的措置を取られた場合の対応

弁護士法人かなめでも、「退職した職員が、自主退職したはずなのに、解雇だと主張して裁判を起こしてきた」といったご相談をよく受けます。

このような場合には、実際にどのような面談を実施して退職に至ったのか、退職に至るまでにどんな原因事実が存在しているのかなど、様々な観点からの振り返りや、損害賠償請求等を請求してくる職員への対応が必要となります。

ただでさえ激務の中、このような過去の事実への対応に追われてしまえば、他の職員達も疲弊し、離職等の原因となってしまいます。

弁護士法人かなめでは、このような場合の事実の整理や交渉に、事業所に皆様に代わって取り組むことで、事業所の皆様が、安心して本来の業務に専念できる環境作りをサポートできます。

 

▶参照:サポートに関するご相談方法や弁護士費用については、こちらをご覧ください。

 

 

6−3.労働基準監督署対応

「突然労働基準監督署から調査をしたいとの連絡があった」との相談も、弁護士法人かなめがよく受ける相談の1つです。

事業所としては、突然の聞き取り調査等により、困惑し、十分な準備ができないまま回答などをしてしまい、伝えなければならないことを伝え損ねて事態が悪化するということも珍しくありません。

弁護士法人かなめは、これまでに多くの労働基準監督署対応を行っており、事業所が実際に労働基準監督署に対応する際の助言の他、事業所に変わって労働基準監督官に事情を説明したり、労働基準監督署での聞き取り調査に同行するなど、きめ細やかなサポートをこなっています。

サポートに関するご相談方法や弁護士費用については、こちらをご覧ください。

 

▶参照:サポートに関するご相談方法や弁護士費用については、こちらをご覧ください。

 

 

6−4.弁護士費用について

「(1)辞めさせたい職員への対応に対する指導」「(2)辞めさせたい職員から法的措置を取られた場合の対応」「(3)労働基準監督署対応」など、辞めさせたい問題職員に関するサポートのご相談方法と弁護士費用についてご案内いたします。

 

(1)ご相談方法

まずは、「弁護士との法律相談(有料)※顧問契約締結時は無料」を以下のお問合わせフォームからお問い合わせください。

 

▶参照:お問い合わせフォームはこちら

 

 

※法律相談の申込みは、お問合わせフォームからのみ受け付けおります。

※法律相談は、「①弁護士法人かなめにご来所頂いてのご相談」、又は、「② ZOOM面談によるご相談」に限らせて頂き、お電話でのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

※顧問契約を締結していない方からの法律相談の回数は3回までとさせて頂いております。

※介護事業所の経営者側からのご相談に限らせて頂き、他業種の企業様、職員等一般の方からのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

 

(2)弁護士との法律相談に必要な「弁護士費用」

  • 1回目:1万円(消費税別)/1時間
  • 2回目以降:2万円(消費税別)/1時間

 

※相談時間が1時間に満たない場合でも、1時間分の相談料を頂きます。

 

6−5.顧問弁護士サービス「かなめねっと」

弁護士法人かなめでは、「(1)辞めさせたい職員への対応に対する指導」「(2)辞めさせたい職員から法的措置を取られた場合の対応」「(3)労働基準監督署対応」から、「(6)労働判例研究ゼミ」のサービスを総合的に提供する、顧問弁護士サービス「かなめねっと」を運営しています。

弁護士法人かなめでは、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入し、事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。

具体的には、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。

いつでもご相談いただける体制を構築しています。法律家の視点から利用者様とのトラブルをはじめ、事業所で発生する様々なトラブルなどに対応しています。

直接弁護士に相談できることで、事業所内社内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。

顧問弁護士サービス「かなめねっと」について詳しくは、以下のサービスページをご覧ください。

 

▶参照:顧問弁護士サービス「かなめねっと」について

 

 

また以下の記事や動画でも詳しく説明をしていますので、併せてご覧下さい。

 

▶︎参照:介護施設など介護業界に強い顧問弁護士の選び方や費用の目安などを解説

 

 

 

 

(1)顧問料について

●顧問料:月額8万円(消費税別)〜

 

※職員従業員の方の人数、事業所の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、「お問合せフォーム」またはお電話からお問い合わせください。

 

6−6.労働判例研究ゼミ

弁護士法人かなめでは、普段の労務管理の参考になる労働判例を取り上げ、わかりやすく解説する労働判例研究ゼミを不定期に開催しています。

ゼミの中では、参加者の皆様から生の声を聞きながらディスカッションをすることで、事業所に戻ってすぐに使える知識を提供しています。

詳しくは、以下のページをご覧下さい。

 

▶参照:弁護士法人かなめ「労働判例研究ゼミ」開催情報はこちら

 

 

7.まとめ

この記事では、辞めさせたい問題社員について、その特徴や具体例の他、問題社員を放置した場合の事業所の責任についても紹介しました。

また、辞めさせたい問題社員への具体的な対応の流れとして、以下の5つのポイントをご紹介しました。

 

  • 1.粘り強い注意指導
  • 2.配置転換を検討する
  • 3.懲戒処分を検討する
  • 4.退職勧奨する
  • 5.解雇する

 

さらには、各対応のメリットやデメリットについても紹介しておりますので、辞めさせたい問題社員への対応に悩んでいる事業所の方は参考にしてみて下さい。

その上で、なるべく早期に弁護士へ相談するようにして下さい。

 

「弁護士法人かなめ」のお問い合わせ方法

介護事故、行政対応、労務問題 etc....介護現場で起こる様々なトラブルや悩みについて、専門の弁護士チームへの法律相談は、下記から気軽にお問い合わせください。
「受付時間 午前9:00~午後5:00(土日祝除く)」内にお電話頂くか、メールフォーム(24時間受付中)よりお問合せ下さい。

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介護業界に特化した経営や現場で使える法律セミナー開催情報

介護業界に特化した「弁護士法人かなめ」運営の法律メディア「かなめ介護研究会」

弁護士法人かなめが運営する「かなめねっと」では、日々サポートをさせて頂いている介護事業者様から多様かつ豊富な相談が寄せられています。弁護士法人かなめでは、ここで培った経験とノウハウをもとに、「介護業界に特化した経営や現場で使える法律セミナー」を開催しています。セミナーの講師は、「かなめ介護研究所」の記事の著者で「介護業界に特化した弁護士」の畑山が担当。

介護施設の経営や現場の実戦で活用できるテーマ(「労働問題・労務管理」「クレーム対応」「債権回収」「利用者との契約関連」「介護事故対応」「感染症対応」「行政対応関連」など)を中心としたセミナーです。

弁護士法人かなめでは、「介護業界に特化した弁護士」の集団として、介護業界に関するトラブルの解決を介護事業者様の立場から全力で取り組んで参りました。法律セミナーでは、実際に介護業界に特化した弁護士にしか話せない、経営や現場で役立つ「生の情報」をお届けしますので、是非、最新のセミナー開催情報をチェックしていただき、お気軽にご参加ください。

最新の法律セミナー開催情報はこちら

介護事業所に特化した法務サービス「かなめねっと」のご案内

介護事業所に特化した法務サービス「かなめねっと」

弁護士法人かなめではトラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入しています。他にはない対応力で依頼者様にご好評いただいています。

「かなめねっと」では、弁護士と介護事業所の関係者様、具体的には、経営者の方だけでなく、現場の責任者の方を含めたチャットグループを作り、日々現場で発生する悩み事をいつでもご相談いただける体制を構築しています。

法律家の視点から利用者様とのトラブルをはじめ、事業所で発生する様々なトラブルなどに対応します。 現場から直接、弁護士に相談できることで、社内調整や伝言ゲームが不要になり、業務効率がアップします!

「かなめねっと」のサービス紹介はこちら

この記事を書いた弁護士

介護業界に特化した「弁護士法人かなめ」運営の法律メディア「かなめ介護研究会」

畑山 浩俊はたやま ひろとし

代表弁護士

出身大学:関西大学法学部法律学科卒業/東北大学法科大学院修了(法務博士)。
認知症であった祖父の介護や、企業側の立場で介護事業所の労務事件を担当した経験から、介護事業所での現場の悩みにすぐに対応できる介護事業に精通した弁護士となることを決意。現場に寄り添って問題解決をしていくことで、介護業界をより働きやすい環境にしていくことを目標に、「介護事業所向けのサポート実績日本一」を目指して、フットワークは軽く全国を飛び回る。

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