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団体交渉でやってはいけない対応とは?10の項目を徹底解説

団体交渉でやってはいけない対応とは?10の項目を徹底解説
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労働組合から団体交渉の申し入れがなされた場合、労働組合の申入れの内容が不当であったり、取るに足らないものであるとして、深く検討することなく、無視したり、申入れを拒絶したり、これとは正反対に事態を早期に終わらせたいがために要求を全部鵜呑みにしたりしていませんか。

実は、団体交渉については、労働組合法上の特別な規制があり、このような規制に違反すると、紛争が拡大したり、使用者に大きな不利益が生じる可能性があります。そのため、団体交渉に適切に対応し紛争に発展しないようにするためには、ルールを正しく理解しておくことが重要です。

この記事では、上記の観点から、団体交渉でやってはいけないこと10選について、説明します。

なお、本記事では、いわゆる地域ユニオン、合同労組からの団体交渉を念頭に解説します。また、団体交渉の詳しい制度内容や進め方、対応方法などの全般的な解説については、以下の記事で詳しく説明していますので、併せてご覧下さい。

 

▶︎関連情報:団体交渉とは?拒否できるかや進め方・対応方法などについて解説

 

 

1.団体交渉での対応を誤るとどうなる?

最初に、団体交渉においてやってはいけない対応を詳しく説明していくにあたり、団体交渉での対応を誤ってしまうと、どのようなリスクやデメリットがあるのかについて解説しておきます。

結論から説明しますと、団体交渉の対応を誤ると、労働組合法上の不当労働行為と認定されてしまう、損害賠償義務が生じるという法的なリスク、街宣活動等の組合活動がされてしまう、労働組合に交渉の主導権を握られてしまうという事実上のリスクがあります。

労働組合による団体交渉は、団体交渉権という憲法上認められた権利に基づくものです(憲法28条)。

 

▶参照:憲法第28条

憲法第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

・参照元:「日本国憲法」の条文はこちら

 

 

そのため、適法な団体交渉の申入れを正当な理由なく拒むなどの行為は不当労働行為として法律上禁止されています(労働組合法第7条)。

 

▶参照:労働組合法第7条

(不当労働行為)

第7条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。

二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。

四 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第二十七条の十二第一項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

・参照元:「労働組合法」の条文はこちら

 

 

なお、不当労働行為について詳しい解説は、以下の記事をあわせてご参照ください。

 

▶参照:不当労働行為とは?種類ごとにわかりやすく解説【類型ごとの事例付き】

 

 

使用者側がこのような法律上禁止されている行為を行った場合、労働委員会からが、使用者に対して、団体交渉に誠実に応じなかったことがなどが不当労働行為であると認めた旨を記載した文書を労働組合に交付し、又は、事業所への掲示することを命じられたり、裁判所から損害賠償を命じられたりする可能性もあります。

また、使用者側が誠実な対応をしない場合、労働組合が団体交渉権を侵害されたとして、会社付近でビラの配布、街宣活動を行う可能性もあります。

さらに、法律上の規制のない行為であっても、使用者側が対応を誤れば、労働組合側に団体交渉のペースを握られ、交渉上不利な立場に置かれる可能性もあります。

このように、団体交渉においては、団体交渉に関する知識や経験、法的な知識、交渉力が不可欠であり、対応については必ず労働問題に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

 

▶参考:団体交渉を弁護士に依頼するメリットや弁護士の役割、相談しなかった場合のリスクなどについては以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

団体交渉を弁護士に依頼すべきメリットや弁護士費用を解説

 

 

2.団体交渉でやってはいけないこと10選

団体交渉でやってはいけないこと10選

この段落では、団体交渉でやってはいけないこと10選を具体例を交えながら解説します。最初に「団体交渉でやってはいけないこと」として、10の項目を以下で記載しておきます。

 

  • 1.団体交渉申入書の受取を拒否する
  • 2.団体交渉を拒否する
  • 3.団体交渉の申入書を無視する
  • 4.不当労働行為をする
  • 5.労働組合の組合員を特定しようとする
  • 6.労働組合が指定する日時で団体交渉をする
  • 7.労働組合が指定する場所で団体交渉をする
  • 8.団体交渉の出席者の制限をしない
  • 9.労働組合からの要望を全て受け入れる
  • 10.労働組合が出してきた書類に記名押印をする

 

実際に団体交渉の申入れを受けた場面を想像しながら読んでみてください。

それでは、各項目ごとに詳しく見ていきましょう。

 

2−1.団体交渉申入書の受取りを拒否する

ある日突然、労働組合が会社にやってきて、労働組合加入通知書と団体交渉の申入書を交付されることがあります。使用者側としては、寝耳に水であり、申入書の受取りを拒否したり、団体交渉を拒否してしまう可能性があります。

しかし、団体交渉の申入書の受取りを拒否する行為は、団体交渉を拒否するに等しく、「2−2.団体交渉を拒否する」で述べるように不当労働行為とされる可能性がありますので、団体交渉申入書の受取りを拒否すべきではありません。

また、申入書の受取りを拒否すれば、労働組合側が団体交渉によって求める要望がわからないため、使用者側において対応のしようがありません。

なお、労働組合が申込書を持参した上で、その場で団体交渉を開始しようとすることがあります。しかし、使用者側には、団体交渉に誠実に対応する義務はありますが、その場で団体交渉に応じる義務まではありません。そもそも、使用者側としても、団体交渉に誠実に応じるためには事前準備が不可欠です。

したがって、申入書を受け取った場合には、労働組合に対して、内容を確認した上で、改めて連絡する旨だけを伝え、具体的な交渉はしないように心掛けてください。

 

2−2.団体交渉を拒否する

労働組合法は、労働組合から団体交渉の申し入れに対し、使用者が「正当な理由」がなく、団体交渉を拒否することを不当労働行為として列挙しています(労働組合法第7条2号)。

そのため、正当な理由がない限り、原則として、団体交渉を拒否してはいけません。

もちろん、「正当な理由」があれば、団体交渉を拒絶することはできますが、申入れの段階から、団体交渉を拒絶する「正当な理由」があることは極めて稀です。そのため、正当な理由がない限り、原則として、団体交渉を拒否してはいけません。

また、形式的に団体交渉に応じていたとしても、団体交渉における交渉態度が不誠実である場合も、いわゆる不誠実団交として、不当労働行為となります。

したがって、団体交渉の申し入れがあった場合、基本的には誠実に応じる義務があるという前提で対応するようにしましょう。

 

2−3.団体交渉の申入書を無視する

労働組合からの団体交渉の申入書は、郵便やFAXなどで届くことがあります。この労働組合からの団体交渉の申入書を無視してはいけません。

申入書には、労働組合側の要望や団体交渉を希望する日程などが記載されていることが一般的です。このような申入書が届いたにもかかわらず、「一方的に申し入れてきたのだから知ったこっちゃない」などとしてこれを無視し、何らの対応をしなければ、不誠実団交として、不当労働行為となります。

もっとも、申入書記載の要望事項や日程について、すべて応じなければならないというわけではありません。誠実に交渉した結果、組合の要望事項に応じないことは問題なく、また、提示された日程の都合が悪かった場合には、別の日程を提示することも問題はありません。

詳しくは、「2−6.労働組合が指定する日時で団体交渉をする」、「2−7.労働組合が指定する場所で団体交渉をする」で解説しますが、申入書が届いた場合は、まずは団体交渉の日程調整をすることが一般的です。

もっとも、労働組合は、日程調整の段階から団体交渉の主導権を握ろうと試みることが多いです。そのような事態を避けるために、申入書が届いた場合には、すぐに弁護士に相談しましょう。その上で、日程調整などについて記載した回答書を作成して、労働組合に送付するようにしましょう。

 

2−4.その他不当労働行為をする

これまでご説明してきたような「2−1.団体交渉申入書の受取を拒否する」、「2−2.団体交渉を拒否する」、「2−3.団体交渉の申入書を無視する」の他、以下のような対応も不当労働行為となります(労働組合法第7条)。

 

  • 1.労働組合の組合員であること、労働組合に加入し・結成しようとしたこと、または、労働組合の正当な行為をしたことに対して、不利益な取扱いをすること
  • 2.労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること
  • 3.労働組合の結成を妨害したり、組合員に脱退を勧めたりするなど、労働組合の結成又は運営に対して各種の干渉行為を行うこと
  • 4.使用者側が、労働組合の活動について資金援助をすること

 

上記で記載した4つの対応なども、使用者側として行わないように注意してください。

労働組合法第7条の不当労働行為に関しては、以下をご参照ください。

 

▶参照:労働組合法第7条

(不当労働行為)

第7条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。

二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。

四 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第二十七条の十二第一項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

・参照元:「労働組合法」の条文はこちら

 

 

2−5.労働組合の組合員を特定しようとする

労働組合と団体交渉が始まることを契機として、組合員の勧誘活動が活発化することがあります。

このような勧誘活動は公然と行われることも多く、使用者側としては、職員のうち、誰が組合に加入しているかが非常に気になるところです。

しかし、組合員を特定しようとすると、「2−4.その他不当労働行為をする」で説明したように特定された組合員に不利益な扱いをしたり、脱退を働きかけるなどをする意図が推認され、場合によっては、不当労働行為であると主張がなされる可能性があります。

そのため、職員の中で誰が労働組合の組合員として加入しているかを特定しようとする行為は行わないようにしてください。

 

2−6.労働組合が指定する日時で団体交渉をする

労働組合は、使用者側の都合を考慮せず、団体交渉の日時を指定することがあります。

労働組合側は、十分に準備をした上で、団体交渉の申入れをしているので、使用者側も十分に準備をして団体交渉に臨まなければ、労働組合側に主導権を握られてしまう可能性があります。

そのため、使用者側は、必ずしも、指定された日時での団体交渉に応じる必要はありません。

業務の都合、弁護士との相談の都合などを考慮し、指定された日程での団体交渉に応じることが難しいのであれば別の日程を提示して問題ありません。但し、特段理由もないのに1ヶ月も先の日時を指定するような場合には、不誠実な団体交渉として不当労働行為と評価される可能性もあるので注意してください。

また、団体交渉の時間は、最長でも2時間程度を目安に設定するようにしましょう。2時間もあれば、争点は明確になりますし、2時間交渉をしても結論が出ないことはそれ以上交渉しても結論が出ないことが多いです。長時間の団体交渉は、使用者側に何らのメリットがない反面、精神的・肉体的な疲労が蓄積し、長時間の拘束から逃れるために、労働組合の要望に応じてしまいかねないというリスクもあります。

したがって、回答書等の事前に送付する書面において団体交渉の終了時間を明示し、当日の開始前にも改めて終了時間を明示し、団体交渉が無制限に続いてしまわないように対処をする必要があります。そして、終了時間になれば、次回までに検討する内容を確認し、その日の団体交渉を打ち切りましょう。

なお、労働組合が、対象の労働者の勤務時間中の団体交渉を求める場合もありますが、これについては明確に拒絶すべきです。勤務時間中の組合活動については法律上賃金は発生しませんが、賃金の処理の必要が生じますし、勤務時間中の組合活動を認めるという慣行が生じる可能性があるからです。

 

2−7.労働組合が指定する場所で団体交渉をする

労働組合は、会社の会議室や労働組合の事務所での団体交渉を求める場合がありますが、これらの場所で団体交渉をしてはいけません。団体交渉の実施場所についても、労働組合の希望に応じる必要はありませんので、必ず拒絶しましょう。

その理由として、まずは、会社の会議室や労働組合の事務所を利用してしまうと、予定終了時間になっても、打ち切りのきっかけがなく、ずるずると団体交渉が長引いてしまう可能性があります。「2−6.労働組合が指定する日時で団体交渉をする」でも説明したとおり、長時間の団体交渉は使用者側に何らのメリットがありません。

また、会社の会議室において団体交渉を実施する場合、職員だけでなく、外部の組合員が社内に入ってくることになりますし、団体交渉が実施されていることが社内に知れ渡り、職員のモチベーション、モラルの低下をきっかけとする離職などの様々な問題が生じる可能性があります。

このような事態を避けるために、団体交渉においては、外部の貸し会議室を、使用者側の費用負担において用意しましょう。

貸し会議室であれば、終了予定時間になれば打ち切らざるを得ません。費用はかかるものの、団体交渉の実施場所、時間帯、終了時刻を使用者側で決定できるという大きなメリットがありますので、必ず外部の貸し会議室を使用するようにしてください。もっとも、労働組合側が、貸し会議室の費用について、折半することに応じることもありますので、状況によっては、折半の提案をすることも想定しておいてください。

 

2−8.団体交渉の出席者の制限をしない

団体交渉を実施するにあたって、合理的な範囲で労働組合側の出席者や人数を制限することは問題ありません。団体交渉は労働者の「代表」又は労働組合の「委任を受けた者」との交渉であるため(労働組合法6条)、その「代表」や「委任を受けた者」が交渉の場に立って交渉ができるのであれば、問題はないからです。

 

▶参照:労働組合法6条

(交渉権限)

第六条 労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。

・参照元:「労働組合法」の条文はこちら

 

 

仮に、出席者や人数を制限しなかった場合、不特定多数の組合員が、団体交渉の場に押し寄せ、やじや怒号が飛び交い、もはや交渉をできるような状況ではなくなってしまう可能性があります。そのような場合には、使用者側の出席者を大勢で非難し、吊るし上げるような団体交渉となる可能性もあります。

人数制限について事前に取り決めをしていない場合、当日制限を求めても、「事前に聞いていなかった」、「人数を制限するのは不当労働行為だ」などといって、大人数での団体交渉がなし崩し的に実施されてもらう可能性があります。

そこで、このような事態を避けるために、回答書を送付する際など、団体交渉の実施前に、出席者の制限について提案を行い、合意を得ておきましょう。使用者側の出席人数にもよりますが、人数は3~5人程度の提案をするのが良いでしょう。

また、「2−7.労働組合が指定する場所で団体交渉をする」でも説明したように、使用者側で会議室等の団体交渉の場を用意するのであれば、多数の人数が入れない会議室を用意することにより、不特定多数の組合員が団体交渉を制限することができます。

万が一、不特定多数の組合員が団体交渉に参加し、正常な交渉ができないような状況になった場合には、まず、団体交渉を一時中断して労働組合側に人員の整理を要求し、それでも改善されない場合にはその日の団体交渉を打ち切ることも検討しましょう。

 

2−9.労働組合からの要望を全て受け入れる

労働組合からの団体交渉に対しては、誠実に交渉をする義務があります。

裁判例では誠実交渉義務について、「使用者は、自己の主張を相手方が理解し、納得することを目指して、誠意をもって団体交渉に当たらなければならず、労働組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示するなどし、また、結局において労働組合の要求に対し譲歩することができないとしても、その論拠を示して反論するなどの努力をすべき義務があるのであって、合意を求める労働組合の努力に対しては、右のような誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する義務があるものと解すべきである。」と判断されています(カール・ツアイス事件 東京地判平成元年9月22日判時 1327号145頁)。

そのため、使用者側からすれば到底応じることができない要望であったとしても、応じることができないと述べるだけでは足りず、資料や根拠などを示して、応じることができない理由を説明する必要があります。

もっとも、このような誠実交渉義務も、使用者側に譲歩を強いるものではなく、労働組合の要望をすべて受け入れる必要はありません。

使用者側で、十分に資料や根拠を示し、労働組合への質問にも十分に答えることにより誠実交渉義務を尽くし、これ以上交渉の余地がないという状況である場合には、交渉決裂として、団体交渉を打ち切ることも可能です。

もっとも、誠実交渉義務を尽くしたといえるかは、法的な判断を伴いますので、団体交渉を打ち切る際には、必ず団体交渉の経験豊富な弁護士など専門家に相談するようにしましょう。

 

2−10.労働組合が出してきた書類に記名押印をする

労働組合が、使用者側に対して、団体交渉の議事録や前提の確認事項を記載した書面を交付し、使用者側の署名押印を求めることがあります。

しかし、安易に労働組合が出してきた書類に署名押印をするのは控えましょう。そもそも、使用者側にこのような署名押印に応じる義務はありませんので、署名押印を拒んでも問題ありません。

また、労働組合と使用者側の連名で書面を作成した場合、労働協約として、就業規則より優先する効力を生じる可能性があります。そのため、仮に署名押印するにしても、一度持ち帰り、内容を精査したうえで署名押印するようにしてください。

また、議事録は、使用者側が誠実交渉義務を果たしていたことを示す根拠資料になります。組合側が作成する議事録では、意図するとしないとにかかわらず、使用者側に有利な内容が反映されない可能性も高いです。

そのため、議事録については、使用者側で確実に作成し、保管するようにしてください。

 

3.団体交渉に関して弁護士法人かなめの弁護士に相談したい方はこちら

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弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。

 

  • (1)団体交渉の後方支援(法律相談)
  • (2)団体交渉の出席
  • (3)労働判例研究ゼミ
  • (4)顧問弁護士サービス「かなめねっと」

 

3−1.団体交渉の後方支援(法律相談)

団体交渉は、不当労働行為にならないように配慮しつつ、労働組合に主導権を握らせないように対応する必要があり、会社の実情をも踏まえた迅速かつ臨機応変な対応が求められます。

そのため、団体交渉の申入れがあった場合には、すぐに弁護士の意見を仰いでおくことが重要なのです。早期に相談を受けられれば、申入書への初動、団体交渉の進め方等について適切な支援ができる可能性が高まります。

弁護士法人かなめでは、このような初期段階から相談を受け、初動からきめ細やかなサポートをすることで、団体交渉に対して適時に助言をすることができます。

 

(1)ご相談方法

まずは、「弁護士との法律相談(有料)※顧問契約締結時は無料」をお問合わせフォームからお問い合わせください。

 

お問い合わせフォームはこちら

 

 

※法律相談の申込みは、お問合わせフォームからのみ受け付けております。

※法律相談は、「① 弁護士法人かなめにご来所頂いてのご相談」、又は、「② ZOOM面談によるご相談」に限らせて頂き、お電話でのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

※顧問契約を締結していない方からの法律相談の回数は3回までとさせて頂いております。

※介護事業所の経営者側からのご相談に限らせて頂き、他業種の企業様、職員等一般の方からのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

 

(2)弁護士との法律相談に必要な「弁護士費用」

  • 1回目:1万円(消費税別)/1時間
  • 2回目以降:2万円(消費税別)/1時間

※相談時間が1時間に満たない場合でも、1時間分の相談料を頂きます。

 

3−2.団体交渉の出席

弁護士法人かなめでは、団体交渉へ同席し、労働組合との交渉をサポートしています。

不当労働行為をすることなく、主導権を握って労働組合と交渉するためには、正確な法的な知識と経験が必要になるため、弁護士のサポートは不可欠です。弁護士が団体交渉の場へ同席することにより、不当な要求を拒絶することができるだけでなく、法的な知識がないことを理由とするトラブルを避けることができます。

さらに、弁護士法人かなめは、介護現場の実情を十分に理解しているため、介護現場の実情を踏まえた交渉をすることができ、介護現場の実情を踏まえない要求や議論をはねのけることができます。

具体的には、弁護士法人かなめは、以下のような知識・ノウハウを有しています。

 

  • 介護保険制度及びこれに基づく介護保険サービスの内容
  • 各事業類型について人員基準に基づく人員配置、運営基準上必要とされていることや禁止されていること
  • 介護事業所における各職種の役割や立場
  • 他の介護事業者との比較
  • 介護事業者の運営実態
  • 利用者・入居者との接し方
  • 高齢者虐待防止法などの介護保険法の周辺法令の理解や運用

 

これらに基づき、労働組合側の求める労働条件が実態にあっていないこと、労働組合側の主張が不合理であり、実現可能性が乏しいことなどを具体的に主張することも可能です。

労働組合側は、必ずしも介護事業の実態に明るいわけではなく、介護事業の実態にそぐわない主張を排斥することにより、団体交渉において主導権を握ることが可能になります。また、労働組合との条件交渉にあたっても、介護現場の状況に即した交渉が可能になります。

 

3−3.労働判例研究ゼミ

弁護士法人かなめでは、顧問先様を対象に、退職勧奨をはじめとして、普段の労務管理の参考になる労働判例を取り上げ、わかりやすく解説する労働判例研究ゼミを不定期に開催しています。

ゼミの中では、参加者の皆様から生の声を聞きながらディスカッションをすることで、事業所に戻ってすぐに使える知識を提供しています。

 

3−4.顧問弁護士サービス「かなめねっと」

弁護士法人かなめでは、「団体交渉」ないし「3−3.労働判例研究会」のサービスの提供を総合的に行う顧問契約プラン「かなめねっと」を運営しています。

具体的には、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入し、事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。

そして、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。直接弁護士に相談できることで、事業所内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。

顧問弁護士サービス「かなめねっと」について詳しくは、以下のサービスページをご覧ください。

 

▶︎参考:顧問弁護士サービス「かなめねっと」のサービス紹介はこちら

 

 

また以下の動画でも詳しく説明をしていますので、併せてご覧下さい。

 

 

(1)顧問料

●顧問料:月額8万円(消費税別)から

※職員の方の人数、事業所の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、お問合せフォームまたはお電話からお問い合わせください。

 

お問い合わせフォームはこちら

 

 

4.まとめ

この記事では、以下のとおり団体交渉においてやってはいけないこと10選について解説しました。

 

  • (1).団体交渉申入書の受取を拒否する
  • (2).団体交渉を拒否する
  • (3).団体交渉の申入書を無視する
  • (4).不当労働行為をする
  • (5).労働組合の組合員を特定しようとする
  • (6).労働組合が指定する日時で団体交渉をする
  • (7).労働組合が指定する場所で団体交渉をする
  • (8).団体交渉の出席者の制限をしない
  • (9).労働組合からの要望を全て受け入れる
  • (10).労働組合が出してきた書類に記名押印をする

 

「(1).団体交渉申入書の受取を拒否する~(5).労働組合の組合員を特定しようとする」は、不当労働行為となる可能性が高い行為であり、不当労働行為と認定されると救済命令が出されたり、損害賠償を命じられるなど、使用者側への法的な不利益が大きくなってしまいます。

また、「(6).労働組合が指定する日時で団体交渉をする~(10).労働組合が出してきた書類に記名押印をする」は、労働組合に交渉の主導権を握られかねない行為です。

いずれについても、使用者側にとって適切な交渉を進めていく上では、決してやってはいけないことです。上記の10選について、しっかりと理解するようにしてください。

団体交渉には、様々なルールを守りつつ、労働組合と交渉を続ける必要がありますので、この記事の内容を参考にしてみてください。

主導的に団体交渉を行うために、弁護士へ依頼することの重要性についても解説していますので、団体交渉の申入れがあった場合には、ぜひ速やかに弁護士に相談して下さい。

 

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社会福祉法人の研修担当者様へは、「職員の指導、教育によるスキルアップ」「職員の悩みや職場の問題点の洗い出し」「コンプライアンスを強化したい」「組織内での意識の共有」などの目的として、協会団体・自治体の研修担当者様へは、「介護業界のコンプライアンス教育の実施」「介護業界のトレンド、最新事例など知識の共有をしたい」「各団体の所属法人に対して高品質な研修サービスを提供したい」などの目的として最適なサービスです。

主な研修テーマは、「カスタマーハラスメント研修」「各種ハラスメント研修」「高齢者虐待に関する研修」「BCP(事業継続計画)研修」「介護事故に関する研修」「運営指導(実地指導)に関する研修」「各種ヒヤリハット研修」「メンタルヘルスに関する研修」をはじめ、「課題に応じたオリジナル研修」まで、介護事業所が直面する様々な企業法務の問題についてのテーマに対応しております。会場またはオンラインでの研修にご対応しており、全国の社会福祉法人様をはじめ、協会団体・自治体様からご依頼いただいております。

現在、研修講師をお探しのの介護事業者様や協会団体・自治体様は、「かなめ研修講師サービス」のWebサイトを是非ご覧ください。

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この記事を書いた弁護士

介護業界に特化した「弁護士法人かなめ」運営の法律メディア「かなめ介護研究会」

畑山 浩俊はたやま ひろとし

代表弁護士

出身大学:関西大学法学部法律学科卒業/東北大学法科大学院修了(法務博士)。
認知症であった祖父の介護や、企業側の立場で介護事業所の労務事件を担当した経験から、介護事業所での現場の悩みにすぐに対応できる介護事業に精通した弁護士となることを決意。現場に寄り添って問題解決をしていくことで、介護業界をより働きやすい環境にしていくことを目標に、「介護事業所向けのサポート実績日本一」を目指して、フットワークは軽く全国を飛び回る。
介護業界に特化した「弁護士法人かなめ」運営の法律メディア「かなめ介護研究会」

米澤 晃よねざわ あきら

副代表弁護士

出身大学:同志社大学法学部法律学科卒業/神戸大学法科大学院卒業(法務博士)。
自称、日本で最も介護現場からの相談を受けている弁護士であり、介護現場の実情を踏まえたうえで、介護現場の多種多様な相談に迅速かつ丁寧に対応している。「働きやすい福祉の現場を、あたりまえ」をミッションに掲げ、日々、全国の介護事業者をサポートしている。

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