記事公開日: 2022年5月25日   
記事更新日: 2022年7月29日

介護事故防止の対策!基本指針やマニュアル作成、勉強会・研修の実施について解説

介護事故防止の対策!基本指針やマニュアル作成、勉強会・研修の実施について解説
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介護事業所にとって、介護事故の発生は、最も恐れている事態の1つである反面、避けられない事態の1つでもあります。

もともと、介護サービスを利用されるのは、身体的な不自由があったり、認知機能の低下により、自らの行動のコントロールが難しい高齢者の方であり、職員の方も、1対1で常に見守りができるわけではありませんし、全く目を離さないことは不可能です。そのため、避けられない事故は確かに存在します。

しかしながら、介護事故の中には、日々の事業所運営の中で気付き、事前に対策をしていれば、防ぐことができた事故も存在します。

そのような場合には、介護事業所としても損害賠償等の責任を負うことになるばかりか、金銭的な面だけではなく、サービス提供に携わっていた職員に刑法上の犯罪が成立したり、行政から介護事業者としての指定の停止や取消しがされるケースもあります。

何より、事業所内での介護事故のインパクトは強く、職員の中には責任を感じて気を病み、精神疾患を発症したり、離職をしてしまうケースもあります。

介護事業所としては、避けられない場合があることを前提としながらも、まずは介護事故を起こさないための防止策を取る必要があるのです。

そこで、この記事では、介護事故の予防の意義や重要性について解説した上で、介護事故を防止するための具体的な対処策を、事故類型や方策毎に詳しく解説します。

そして、この記事を読むことで、事業所が日々の運営の中で行うことができる介護事故防止の対処策や、効果的な研修の方法についても知ることができますので、介護事故防止に取り組む介護事業所の皆さんは、参考にしてみてください。

介護事業所にとって、介護事故の発生は、最も恐れている事態の1つである反面、避けられない事態の1つでもあります。

 

1.介護事故が発生するとどうなる?

介護事故が一度発生すると、介護事業所や職員には、民事、刑事、行政上の様々な責任が発生する他、法的責任以外にも様々な影響が発生します。

以下では、介護事故による様々な影響と、介護事故防止の重要性について解説します。

 

1−1.介護事故発生による法的責任

 

(1)介護事業所が負う責任

介護事業所は、介護事故が発生すると、民事上、行政上の責任を問われる可能性があります。

具体的には、利用者や利用者家族から、安全配慮義務違反により、債務不履行(民法415条1項)や、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を請求される可能性がある他、介護事業所としての指定の効力の一時停止や、指定の全部取消しなどによって、介護事業そのものを運営できなくなる可能性があります。

 

(2)介護職員が負う責任

介護職員は、介護事故が発生すると、介護事業所と同様に、安全配慮義務違反により、債務不履行(民法415条1項)や、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を請求される可能性がある他、刑事上の責任として、業務上過失致死傷罪(刑法211条)が問われる可能性があります。

平成25年には、長野県安曇野(あづみの)市の特別養護老人ホームで、入所者の女性(当時85)にドーナツを与えて窒息死させたとして、准看護師の女性が業務上過失致死の罪(刑法211条)に問われた事件があります。

最終的には、職員が間食の形態を確認せず本件ドーナツを提供したことが刑法上の注意義務に反するとはいえないとして、無罪となりました(東京高裁令和2年 7月28日判決)が、介護事故には、このような裁判に巻き込まれるリスクがあるのです。

 

1−2.介護事故発生による法的責任以外の影響

 

(1)風評被害

介護事故が発生すると、その事故内容や利用者及び利用者家族との関係などによっては、介護事故が発生したことが口コミなどで広がったり、場合によっては報道により法人名、施設名などが広く世間に知れ渡ってしまうことがあります。

そうなった場合、仮に介護事業所にとって防ぐことが難しい事故であった場合でも、「あの施設に入所したら怪我をさせられた」「どんな介護をしているのか、怖くて家族を預けられない」などと、あらぬ噂が立ってしまい、利用者が減少したり、誹謗中傷を受けると言うことがあり得ます。

一度広がってしまった噂を、自分の力だけで収めるのは非常に困難であり、相当な時間や労力が費やされることになります。

 

(2)職員の疲弊

介護事故により、利用者が怪我をしたり亡くなってしまった場合、介護に関わった職員は精神的に非常にショックを受け、責任を感じます。これに、利用者家族への対応や風評被害などが重なると、職員は精神的にも肉体的にも疲弊し、過労や精神疾患の発症の他、離職の可能性もあります。

 

1−3.介護事故予防の重要性

以上のように、介護事故の発生により、利用者や利用者家族へ身体的、精神的な損害を与えることはもちろんですが、介護事業所及び介護職員は様々な影響を受け、これによる経済的、社会的損失は大きくなる可能性があり、さらには廃業に追い込まれる可能性すらあります。

このような介護事故発生の影響に鑑みれば、介護事故を防止することが、介護事業所にとっていかに最優先課題であるかが分かると思います。

もちろん、防ぐことが出来ない事故もありますが、防ぐことの出来る事故を確実に防止することが重要なのです。

なお、介護事故が発生した際のより詳しい解説は、以下の記事でも紹介していますので、併せてご覧ください。

 

▶参考:介護事故が発生したら!原因や対応方法を事例付きで弁護士が解説

 

 

2.介護事故防止に関する法令

介護事故は、利用者の生命、身体に多大な影響を与え得るものであることから、これを防止するために、様々な法整備がされています。

以下では、法令上義務付けられている介護事故防止の措置について説明します。

 

2−1.介護事故状況の記録及び保管の義務

介護事業所は、厚生労働省が各事業類型毎に定める基準に基づいて、サービスの提供により事故が発生した場合には、速やかに市町村、利用者の家族等に連絡を行うとともに、必要な措置を講ずることとされています。

そして、事故の状況や、事故に際して採った処置についての記録を、作成の日から2年間保存しなければなりません。

例えば、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」では、以下のように規定されています。

 

▶参考:「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」の規定例

 

(記録の整備)

第39条 指定訪問介護事業者は、従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録を整備しておかなければならない。

2 指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供に関する次の各号に掲げる記録を整備し、その完結の日から二年間保存しなければならない。

一 訪問介護計画
二 第十九条第二項に規定する提供した具体的なサービスの内容等の記録
三 第二十六条に規定する市町村への通知に係る記録
四 第三十六条第二項に規定する苦情の内容等の記録
五 第三十七条第二項に規定する事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録

 

・参照元:「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」の条文はこちら

 

 

【弁護士 畑山浩俊のワンポイントアドバイス】

記録の保存期間については、各自治体の条例によって5年などに延長されていることがあります。

 

また、条例上も、厚生労働省の基準と同様に「2年」となっているにもかかわらず、行政から「5年」であると指導されることがあります。

 

事業所として、長い期間にあわせて記録を保管すること自体は問題ないものの、それが義務であるか否かについてはしっかりと確認をしておかないと、行政からの指導が、単なる指導なのか、それとも何らかの法令違反を指摘しているのかがわからず、対応を誤ることも起こりえます。

 

また、契約書の参考書式等で、他の自治体の契約書の書式を利用した結果、当該自治体で定められた保管期間と異なる保管期間を定めてしまう場合もあります。一度、皆さんの自治体に、記録の保管期間と、その根拠規定について問い合わせてみましょう。

 

 

2−2.介護保険施設における安全対策担当者の義務化

令和3年4月の介護報酬改定では、介護保険施設の事故防止体制が強化され、同年10月1日からは義務化されたことから、取り組みが未実施の場合には減算等のペナルティが課されることになりました。

そのうちの1つとして、介護保険施設の運営基準において、事故発生防止等の措置を適切に実施するための担当者、いわゆる「安全対策担当者」を選任することが義務化されました。

 

▶参考:「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」の規定例

 

(事故発生の防止及び発生時の対応)

第35条 指定介護老人福祉施設は、事故の発生又はその再発を防止するため、次の各号に定める措置を講じなければならない。

一 事故が発生した場合の対応、次号に規定する報告の方法等が記載された事故発生の防止のための指針を整備すること。
二 事故が発生した場合又はそれに至る危険性がある事態が生じた場合に、当該事実が報告され、その分析を通じた改善策を従業者に周知徹底する体制を整備すること。
三 事故発生の防止のための委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)及び従業者に対する研修を定期的に行うこと。
四 前三号に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置くこと。

(2項以下省略)

 

・参照元:指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準

 

 

安全対策担当者は、介護保険施設内での事故防止に関する指針の整備、研修の実施、職員への周知徹底など、施設内の安全対策を中心となって行い、介護事故の発生予防や、再発防止の役割を担います。

特に資格は不要であり、介護職と兼務で行うことも問題ありませんが必ず外部での研修を受ける必要があります。

 

2−3.事故発生の防止のための指針の作成

さらに、介護保険施設は、事故防止に関する指針を整備する必要があります。

平成30年度の調査によると、事故発生の防止のための指針を作成している介護老人福祉施設及び地域密着型介護老人福祉施設は、全体の93.8%に及びます。

 

事故発生の防止のための指針を作成状況データ

・参照元:厚生労働省「平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査 (平成30年度調査)(6)介護老人福祉施設における安全・衛生管理体制等の在り方についての調査研究事業 報告書」36頁より抜粋(pdf)

 

もっとも、事故発生の防止のための指針を、定期的に見直している事業所は全体の21%にとどまり、指針を作ったものの、うまく運用が出来ていないことがうかがわれる事業所の多さが垣間見えます。

 

事故発生の防止のための指針を、定期的に見直している事業所調査データ

・参照元:厚生労働省「平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査 (平成30年度調査)(6)介護老人福祉施設における安全・衛生管理体制等の在り方についての調査研究事業 報告書」41頁より抜粋

 

3.介護事故防止のための基本指針

では、介護保険施設で策定が義務付けられる事故発生の防止のための指針は、どのように作成すればよいのでしょうか。

ここでは、指針の意義や定めるべき内容について解説します。

 

3−1.基本指針は何を定めるもの?

介護事故防止に関する基本指針は、安全かつ適切に質の高い介護サービスを提供するために、介護による事故を未然に防ぎ、万が一事故が発生した場合には、速やかな対応と同じ事故を繰り返すことのないよう、介護事業所が組織的に事故防止対策に取り組む、という観点から、作られるものであり、いわば介護事故防止対策の地図のようなイメージのものです。

そのため、事業所によって様々ではありますが、内容は簡潔なものが多く、具体的な対策については、介護事故防止マニュアルで示されることが多いです。

 

3−2.基本指針の内容

では、具体的には、どのような内容を盛り込む必要があるのでしょうか。

 

(1)事故防止に関する基本的考え方

基本指針のスタートは、何故この基本指針を策定したかについて説明することから始まります。

定め方は様々ですが、事業所として、安全且つ適切で質の高い介護保険サービスを提供するために事故を防止することの他、それだけではなく、職員の健康管理、施設の保全など、組織として、総合的且つ計画的な取り組みをしていくことや、そのための職員への指導や知識の習得などに努めていくことが内容となっています。

この部分に、事業所としての思いとして伝えたいことを盛り込むことで、これを見る利用者やそれ以外の方だけでなく、職員にとっても、業務に臨む上での指針になり得ます。

 

(2)介護事故防止のための組織

介護事故の防止に取り組むにあたり、各事業所では事故防止対策委員会を設置し、その構成メンバーの責務や役割分担を明確にする必要があります。

具体的には、設置の目的、事故防止対策委員会の構成員の役職、委員会の開催や委員会の役割について定められていますが、記載方法は各事業所によって様々です。

構成員として、細かく役職を記載している事業所もあれば、施設長以下各施設の主任等、というような曖昧な記載をしている事業所もありますが、各事業所において、役職等の名称の変更や、欠員などがあることも想定すると、ある程度は明確に定めた上で、「施設長が選任するもの」などといった広い定め方をしておくのがよいでしょう。

委員会の開催については、時期や回数、何について検討するかなどを定めます。

委員会の役割としては、マニュアル等の見直し、ヒヤリハット事案や過去の事故の分析、改善策等の収支徹底など、介護事故の防止にかかる全般がその役割となっています。

 

(3)介護事故防止のための職員研修に関する基本指針

介護事故防止には、職員1人1人の知識や経験の取得が不可欠です。

そのため、ここでは、介護事故の防止に取り組むために、どのような計画を立てているかについて記載します。

具体的には、研修プログラムの策定や、定期的な教育に関する指針や頻度などを記載します。

 

(4)介護事故時の報告方法等

介護事故が発生すると、一定規模の事故に対して行政への報告義務が発生することから、注意喚起の意味を含め、その対象となる事故の範囲や報告方法を記載する事業所もあります。

マニュアルに記載する方法もありますが、事故への対応指針として、報告の前提となる事項を記載しておくことも有益です。

 

(5)介護事故時の対応に関する基本指針

ここでは、介護事故時の対応に関する概要を記載します。

大まかに、以下のような内容に関する指針を定めた上で、詳しい内容はマニュアルに譲る、といった記載をすることが多いです。

 

  • ① 利用者への対応
  • ② 事故状況の把握の方法
  • ③ ご家族、ケアマネージャー等関係者への連絡・報告
  • ④ 損害賠償に関する考え方
  • ⑤ 苦情対応

 

なお、「介護事故防止、対応マニュアル」を別途定める、などと記載しながら、実際にはマニュアルを策定していない場合には、実地指導等で指摘や指導を受ける場合がありますので、注意してください。

 

(6)指針の閲覧方法

最後に、指針を作成しても、これが対内、対外問わず公表されていなければ、指針に沿った行動を取ることができません。

そのため、指針の閲覧方法として、施設内への掲示、ホームページへの掲載などによって、内外の閲覧に供する旨を定めます。

 

3−3.各事業所に応じた指針の作成を!

基本指針等を作成する際、インターネット上で公開されている行政や他の介護施設の基本指針を流用する場合があります。

もちろん、基本指針を「1」から順番に作成することはむしろ困難であり、どのような項目についてどのように定めるかを参考にすることは全く問題がありません。

しかしながら、介護事業所によって、人員数、勤務形態などは大きく異なるのであり、それにも拘わらず、他の事業所等の基本指針をそのまま流用した結果、存在しない役職を置いたままにしたり、対応不可能な方針を記載してしまうことは往々にしてあります。

このような、利用する予定のない基本指針を策定しても意味がありません。

事業所としては、他の事業所や行政から公開される指針を参考にしつつ、事業所オリジナルの指針を策定するよう、しっかり中身を精査することが重要なのです。

 

4.介護事故防止マニュアルを作ろう!

介護事故防止のためには、基本指針とは別に「介護事故防止マニュアル」を各事業所で作成し、運用していくことが非常に重要です。

以下では、具体的な「介護事故防止マニュアル」の作成方法、内容や運用方法について解説します。

 

4−1.マニュアルは何を定めるもの?

基本指針は、介護事故防止に関する事業所の方針や対策の概要などを定め、対内、対外を問わず閲覧に供するものでした。

他方、介護事故防止マニュアルは、事業所内において、事故を未然に防ぎ、仮に事故が発生した場合には迅速かつ的確に対応するための具体的な方法を定めるもので、各事業所の種類、規模、設備などの特性に応じて策定される必要があります。

なお、介護事故防止マニュアルに関しても、他の事業所のものを叩き台として利用することは差し支えないものの、指針に比較してよりオリジナル性が求められることに注意が必要です。

 

4−2.マニュアルの内容

では、マニュアルには具体的にどのようなことを記載する必要があるのでしょうか。

以下では、「介護事故防止対応マニュアル作成の手引」を参考に、マニュアルの定め方についてみていきましょう。

 

▶︎参考:福岡県保健医療介護部介護保険課「介護事故防止対応マニュアル作成の手引」(pdf)

 

 

(1)平常時の対応

まず、事故が発生していない平常時だからこそ、対策ができることは多くあります。

具体的には、以下の5つの内容をおさえておきましょう。

 

  • ① 基本的なサービスの提供方法の確立
  • ② 利用者に関する情報の共有
  • ③ 利用者及びその家族とのコミュニケーション
  • ④ 事故防止対応マニュアルの周知徹底等
  • ⑤ 事故防止の具体的な取組み

 

つまり、平常時においては、事故の防止が最優先課題であり、そのために利用者に関する情報をしっかりと共有し、事故を起こしやすいと思われる利用者の対応について検討をしておくことが重要です。

具体的には、認知症を発症していたり、身体的機能が低下した利用者は、介護事故のリスクが高いことから、このような利用者をいかに介護事故から守るか、という点は非常に重要です。

ここで合わせて留意しなければならないのが、介護事故のリスクが高い利用者への身体的拘束です。

身体的拘束は、利用者、利用者家族にとって多大な肉体的、精神的ダメージを与えるもので、利用者の個人としての尊厳を侵害する行為です。そのため、緊急やむを得ない場合を除き、原則として禁止されていることを意識する必要があります。

介護事故を恐れるあまり、利用者が身動きを取れないよう拘束し、これにより肉体的、精神的ダメージを与えてしまった場合、これは事故防止策でもなんでもありません。

マニュアルにおいても、そのことを改めて職員に認識させるよう、身体拘束に関する考え方を記載しておくことが良いでしょう。

なお、身体拘束に関しては、以下の記事でも詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

 

▶︎参考:身体拘束とは?行為の種類や判断基準の三原則、介護現場での実施方法

 

 

これ以外にも、万が一事故が発生した場合の対応として、事故対応のマニュアルを周知しておくことや、利用者家族とより良い関係を築いておくためのコミュニケーションの取り方など、平常時でなければできない対策についても定めておくことが望ましいです。

 

(2)事故発生時の対応

実際に事故が発生した場合には、事故防止対応マニュアルに従って対応をすべく、以下のような内容を定めておくことが重要です。

 

  • ① 利用者の保護
  • ② 関係職員への緊急連絡
  • ③ 関係機関への連絡
  • ④ 利用者の家族に対する連絡と説明
  • ⑤ 被害拡大の防止

 

事故発生時に何より重要なのは、利用者の保護です。事故状況の把握、傷病の程度の判断、これにより救急車の手配など、利用者の安全を確保した上で、それ以外の関係各所への連絡を実施します。

また、感染症の発症など、事故の内容によっては他の利用者へも影響が出る可能性があります。

その場合には、専門機関等の指示を受けながら、利用者の保護と並行して、他の利用者の生命、身体の保護のため、隔離やゾーニングなどを実施したり、原因となったものの早期の除去などが必要となります。

このような対応の流れについて、具体的な事故などを想定しながら定めておくことで、もしもの時に、職員が迷わず行動ができるようになるのです。

 

(3)事故後の対応

事故後に重要なことは、2度と同じ事故を繰り返さないことです。

つまり、再発防止策を確立し、これを実施することが重要となります。

事故対応が終われば、日々の業務の忙しさから、事故の検証を忘れてしまいがちになります。このように、事故後の対応についてもマニュアルに定めておき、これを事前に周知しておくことで、職員が意識を持って事故対応に臨むことができるのです。

 

(4)各事故類型ごとの防止対策

抽象的な対応指針だけでは、実際に発生し得る事故への対策はできません。

そのため、マニュアルにおいては、具体的な事故類型により、対応方法を個別に定めておく必要があります。

詳しくは次の項で説明しますが、転倒・転落、誤飲・異食、感染症、誤嚥、誤薬などの各類型について、それぞれがどのような原因で発生するか、そしてその原因をどのように除去するかという視点で対応をまとめておくことで、職員としても具体的な対策を取ることができます。

そして、各事故類型ごとの防止策は、まさに各事業所の人員の配置状況、施設の設備の特性により大きく変わるものですので、各事業所で意見交換をしながら、より良い対策方法を検討していくことが重要です。

 

4−3.マニュアルは、作成・運用・検証が必要!

マニュアルは、指針に比較してより個別性が求められるため、まずは作成時点で、事業所の特性にいかに併せていくかが重要です。

他の事業所のマニュアルを流用しただけでは、実効性のある対策は不可能です。

そしてマニュアルの作成後は、マニュアルに沿った運用を実際に行い、その方法が適切かどうかを検証する必要があります。

例えば、誤嚥事故防止のために、食事の際の職員の配置や見守りの方法などを定めていたものの、日によって職員の数が異なり、必ずしも必要な員数を確保できなかったり、利用者の増加や要介護度の進行で介助方法が変更となったような場合には、当然これらの配置は見直す必要があります。

マニュアルは、作れば終わりではありません。

マニュアルに沿った運用とその検証、その後の改訂という、いわゆるPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を意識することが、介護事故の防止を進めていくためには必須なのです。

 

5.具体的な介護事故防止策

ここでは、マニュアルを作成するにあたって検討すべき具体的な介護事故の防止策について解説します。

 

5−1.一般的な事故防止策

まず、ここでは以下の事故類型の、一般的な事故防止策について解説します。

 

  • (1)転倒・転落
  • (2)誤飲・異食
  • (3)感染症
  • (4)誤嚥
  • (5)誤薬

 

(1)転倒・転落

介護事業所の利用者は、加齢に伴い、視力、聴力、筋力等が低下し、認知的機能の低下やさまざまな疾患が生じていることがほとんどです。

そのため転倒・転落のリスクは非常に高く、これらを防止するためには、各利用者の心身の状態や生活環境を正しく把握し、これを定期的に見直しながら、利用者の心身の状態を維持・改善するためのリハビリ等を実施していくことが重要です。

そして、低下した能力を補完するための歩行補助具や履き物の利用、歩行時の付添介助の検討、手すりや照明の配置の検討、床の段差解消、サイドレール付きのベッドの導入など、各利用者に応じた対策を進めていきます。

その上で、万が一転倒・転落が発生した場合に、すぐに発見、対応できる環境を作ることも重要です。

例えば、離床センサーを設置し、利用者がベッドから降りようとした場合にセンサーが反応するようにしておくことで、そもそも転倒リスクのある人の場合は付添介助ができますし、仮に転倒や転落をした場合でも、速やかに発見することができます。

 

(2)誤飲・異食

誤飲は、食べ物でないものを飲み込んでしまうこと、異食は、普通ならば食物とされないものを食べてしまうことを言います。

高齢者は、視覚、味覚等の身体機能や判断力の低下、認知症等により、誤飲、異食のリスクが高くなります。

そのため、例えば飲料用のペットボトルに、洗剤等を詰め替えて置いていた場合に、これを誤飲してしまったり、薬のPTP包装シートを誤飲してしまうという事例があり得ます。

事業所としては、そもそも誤飲・異食が発生し得る環境要因を取り除くことが重要です。

例えば、以下のような方法を必要に応じて検討します。

 

  • 薬については可能な限り一包化してもらえるように医師の協力を得る。
  • 食品・薬などの口に入れるものとそれ以外のものを分けて保管する。
  • 食品以外のものを食品用の容器に移し替えないようにする。
  • 利用者の手の届くところに不要なものや危険なものを置かないようにする。

 

また、仮に誤飲・誤食事故が発生した場合には、直ちに利用者の状態や誤飲・誤食したものやその量などを確認し、必要に応じて医療機関を受診します。

異物を飲み込んだとなると、吐き出させたいと考えるのは自然な行動ですが、飲み込んだものによっては、吐き出させることが危険な場合もあります。

そのため、誤飲・誤食事故が発生した場合には、速やかに医師等の指示に従って、応急処置を実施することが重要です。

 

(3)感染症

高齢者は、加齢に伴い、免疫機能や代謝機能、粘膜などの自浄作用が低下するとともに、皮膚組織が萎縮して感染症に罹患しやすい状態になっています。

感染症の対策としては、感染症ごとに、どのような感染源があるか、どのような感染ルートがあるか、どのような人が感染を受けやすいかなどをしっかり把握した上で、感染ルートを遮断することが最も有効な手段です。

たとえば、新型コロナウイルス感染症の場合、以下のような感染ルートが考えられます。

 

  • ① 空中に浮遊するウイルスを含むエアロゾルを吸い込むこと(エアロゾル感染)
  • ② ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの露出した粘膜に付着すること(飛沫感染)
  • ③ ウイルスを含む飛沫を直接触ったか、ウイルスが付着したものの表面を触った手指で露出した粘膜を触ること(接触感染)

 

▶︎参考:国立感染症研究所「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について」

 

 

その他の、主な感染症とその感染経路としては、以下のようなものがあります。

 

主な感染症一覧

感染症 主な感染経路 特徴
インフルエンザ 飛沫感染
接触感染
突然の発熱で始まり、悪寒、全身倦怠感、頭痛、腰痛、関節痛など全身症状が現れる。
ノロウイルス 経口感染 手指や食品などを介して、経口で感染し、人の腸管で増殖し、おう吐、下痢、腹痛などを起こす。
ウイルス型肝炎
(B型・C型肝炎)
血液媒介
型感染
血液や体液中に原因となるウイルスが含まれており、その血液が介護従事者等の持つ傷口に接触することで感染する。特に出血の見られない通常介護、日常生活や食器から感染することはほとんどない。自覚症状として全身倦怠感や食欲不振、悪心、おう吐などがあげられる。
MRSA感染症
(メチリシン耐性黄色ブドウ球菌)
接触感染
飛沫感染
メチシリンをはじめ、多くの抗生物質に耐性を持つ黄色ブドウ球菌(MRSA)が原因菌となる感染症で、免疫力が低下した人に感染し、感染後の治療が困難なことが問題視されている。肺炎、腸炎、敗血症などを発症する。
疥癬 接触感染 疥癬虫(ヒゼンダニ)が皮膚角層内に寄生することにより起こる皮膚疾患である。感染後約1か月程度の潜伏期間を経て発症し、激しいかゆみを伴う。
結核 空気感染 肺が主な病巣となる結核菌による感染症で、開放性で咳や痰が激しい患者が感染源となる。過去に感染を受けた人の免疫や体力の低下に伴う再発が介護上問題視されている。

 

感染経路一覧

感染経路 特徴
接触感染 皮膚、粘膜の接触により感染する。介助と介助の間の手洗いや手袋の交換が行われなかった場合に起こりやすい。
飛沫感染 咳やくしゃみなどの飛まつに混入した細菌やウイルスを吸い込むことにより感染する。マスクは有効な予防策である。
空気感染 飛まつの水分が蒸発してできた飛まつ核に付着した病原体が空気中を長時間浮遊し、その核を吸い込むことにより感染する。
経口感染 病原微生物に汚染された水や食物を口にすることにより感染する。
血液媒介
型感染
病原微生物を含む血液に傷のある手で触れた場合や病原菌に汚染された注射針による刺し事故により感染する。日常の家庭生活や食器などからの感染はない。

・参照元:福岡県保健医療介護部介護保険課「介護事故防止対応マニュアル作成の手引」10ページより(pdf)

 

感染症が実際に発生した場合、嘔吐物の処理等が必要となりますが、その対応策は感染症ごとに異なります。

標準感染予防策(スタンダードプリコーション)としては、利用者の血液・体液・分泌液・排泄物は、全て感染源となり得ることや、感染経路で最も多いのが接触感染であることから、感染を防ぐ最も有効な方法は「手洗い」です。

介護職員は、利用者のおむつ交換、入浴介助、食事介助、口腔ケア等に携わることが多く、感染の危険性の高いものに触れる機会が多いということなので、十分な手洗いを心がける必要があります。

また、飛沫感染に対しては、「うがい」やマスクの着用が効果的です。

加えて、職員自身の体調管理も非常に重要です。職員自らが感染源とならないように、事業所としては、日頃から職員の健康状態についても注意深く観察する必要があります。

さらに、感染症の場合、保健所への情報提供が必要な場合もあり、さらには職員への感染なども発生する可能性があるため、あらかじめ「事業継続計画(BCP)」を作成し、職員にも周知しておくことが重要です。

事業継続計画(BCP)については、以下の記事でも解説していますので、併せてご覧ください。

 

▶︎参照:BCP(事業継続計画)とは?介護事業所で義務化!対策と対応方法を詳しく解説

 

 

(4)誤嚥

誤嚥とは、食道から胃に入るべき飲み物や食べ物、あるいは唾液が、正しく嚥下されずに気管に入ってしまうことをいい、高齢者は、加齢による変化や疾患、歯のトラブル、脊椎や姿勢の障害、唾液の減少などによる嚥下機能の低下により、誤嚥しやすくなります。

誤嚥には、肺炎と窒息の2つのリスクがあります。

肺炎は、誤嚥によって口の中の細菌が肺に入り、細菌が増殖することにより発生し、窒息は、空気の通り道である気道のどこかに食物が引っかかることで発生しますが、いずれも、高齢者の命に関わるものです。

そのため、利用者の嚥下状態を把握し、食べ物を食べやすい形にして、姿勢等に気を付けて、食事介助をすることの他、食事の前に嚥下体操をし、口の周囲や首の周りの筋肉を和らげたり、食後の口腔ケアをしっかり行うことも重要です。

例えば、食事やすい姿勢としては、以下のようなものがあります。

 

▶参考:食事しやすい姿勢の例

食事しやすい姿勢の例

 

また、利用者の窒息に気が付いた場合には、以下の方法を取ります。

 

  • ① 口から掻き出すことを試みる
  • ② すぐに続いてもっと奥の気道に入った食物を取る努力(背中を叩く、ハイムリック法を行う)をする。

 

なお、ハイムリック法とは、腹圧を急激に上げて呼気を促し、異物が出ることを期待するもので、救急手技の基本です。

 

▶参考:ハイムリック法の例

ハイムリック法の例

・参照元:福岡県保健医療介護部介護保険課「介護事故防止対応マニュアル作成の手引」13・14ページより(pdf)

 

事業所としては、誤嚥や窒息のリスクを予想し、アセスメント等を通して嚥下障害の程度に応じたプランを立て、緊急時の対応を迅速にできるよう職員間で研修等を実施しておくことが重要です。

 

(5)誤薬

誤薬は、利用者が薬の種類や量、薬を飲む時間や方法を誤って飲むことをいいます。

誤薬は、薬の内容や量によっては利用者の生命身体に重大な危険を及ぼすものでありながら、ヒューマンエラーが起こりやすい事故です。

その原因としては、以下のようなものが考えられます。

 

  • 職員等に薬の危険性に対する意識が低いこと
  • 食事時間はいくつかのケアが重なり、慌ただしい状況にあること
  • 薬の確認が不足していること
  • 薬の取り扱いに関するルールが事業所内で統一されていないこと

 

誤薬をなくすためには、とにかく服用前の確認が不可欠です。

具体的には、例えば「配薬ボックスや薬袋から薬を取り出すとき」「利用者に薬を手渡すとき」「実際に薬を服用する前」などの複数回のタイミングで、その薬が本人のものであるが、薬の量や時間が適切であるかなどを確認するというものです。

このような確認を職員全員に徹底することで、ヒューマンエラーによる誤薬の問題は解決できます。

 

【弁護士 畑山 浩俊のワンポイントアドバイス】

介護事故の種類は多岐に及びますが、注意すべき項目について、チェックリストを作成しておくことも効果的です。

 

参考にした「介護事故防止対応マニュアル作成の手引」でも、平常時と事故発生時において、それぞれ注意すべき項目が整理されていますので、併せて作成の参考にしてください。

 

 

5−2.実際に発生した事故から学ぶことも重要!

一般的な事故への対策を練ることも重要ですが、実際に事業所で発生した事故は、まさに事業所固有の事例となります。

以下では、実際に事業所内で発生した事故を参考に事故防止策を検討する方法について解説します。

 

(1)実際に発生した介護事故は最良の教材!

介護事故は、どれだけ気を付けていても起きてしまう時には起きてしまうものです。

特に1回目の事故は、事業所として全く予測ができず、その結果やむを得ずに起きてしまう事故もあります。

しかしながら、1度目の事故は予測ができなくても、同種の2度目以降の事故は予見・防止し得るはずです。

介護事故は、1つの事業所でそう何度も発生するものではありません。そのため、1度発生した介護事故の事例は、実際にその現場で発生した貴重な教材となります。

 

(2)事故報告書の重要性

事故報告書は、法令上の「連絡」義務に基づいて提出し、保管する必要がある書類です。

しかしながら、事故報告書には、事故状況等を確実に記録し、さらに事故の原因を分析し、今後同じような事故が発生しないように対策をするという大きな役割があります。

例えば,同じような事故が、同じ事業所で繰り返し発生しているような場合、先の事故の後、対策がとられていなかったために後の事故が発生したとすれば、事業所は、利用者に対して負っている安全配慮義務違反の責任を免れることはできません。

「書式を適当に埋めておけばいい」という考え方では、将来の介護事故は防止できません。

事故報告書の作成を通じて、事業所内の様々な問題を洗い出し、再発防止のための対策を練ることが出来るのです。

なお、介護事故の報告義務や、事故報告書の書き方については、以下の記事でも詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

 

▶参照:事故報告は義務!介護事故報告書の書き方など作成方法を解説【書式付き】

 

 

(3)実際の事故から事故防止策を検討する流れ

 

1.事故状況の正確な把握

事故防止策を検討するためには、まずは実際に発生した事故状況を具体的且つ正確に把握することが重要です。

事故日時や場所が曖昧であったり、事故態様や発見時の状況などがはっきりしない状態では、何が事故原因であったのかの検討にたどり着くことができません。

事故状況、事故発生時の対応、事故発生後の状況などを、順序立って記録することで、この後の検証を有意義なものとしていきましょう。

 

2.事故原因の検証

事故状況を正確に把握した後は、事故の原因がなんであったかを具体的に検証していくことが重要です。

事故原因の検証をおろそかにすると、いくら再発防止策を考えても、必ずしも効果的な事故防止には繋がりません。

例えば、転倒事故が発生した場合で、その原因が床が濡れていて滑ってしまったことにあった場合に、「立ち上がる時は必ず職員が付き添う」という再発防止策を立てても、当然利用者1人に対して1人の職員をつけることは難しく、現実的ではありません。

効果的でかつ、直接的に効果を有する再発防止策を導き出すためには、事故の原因をしっかり分析するようにしましょう。

 

3.再発防止策の策定、検証、実施

事故原因の分析ができたら、いよいよこれに対する再発防止策を検討し、作成します。

例えば、先程の転倒事例であれば、原因が床が濡れていたことにあるのであれば、職員が常に床の状況を確認し、すぐに濡れた場所を拭くようにする、その際モップをいつでも出せるように複数の箇所においておくなど、1つの原因から具体的な対応策を順を追って検討するのです。

そして、どこにモップをおけば、効率的かつ速やかに床を掃除できるかを、実際にモップを置いてみて検証をすることで、より効果的な再発防止策を策定していくことになります。

 

5−3.ヒヤリハット事案を利用しよう!

介護事業所の中には、事故報告書と同じように「ヒヤリハット報告書」を作成、保管していることも多いと思います。

ヒヤリハット事案を利用することにより、事故が発生する前から、非常に具体的で且つ実践的な事故防止の検証をすることが出来るようになります。

詳しくは、また別の記事で解説しますので、ここでは、ヒヤリハット事案を利用した介護事故防止対策の方法の概要を説明します。

 

(1)ヒヤリハット事案は事故の卵

介護事故までには至らないものの、ひとつ間違えれば事故になっていたかも知れないような事例、つまり事故の卵のことを、ヒヤリハット事例といいます。

事故が発生すれば、当然のことながら、原因を分析し、再発防止策を考えます。

これを、事故発生前の「ヒヤリハット」の段階で先取りするのが、ヒヤリハット事例の研究です。

結果が発生しなかったからといって、ヒヤリハット事例を漫然と放置すれば、次は重大な介護事故が発生する可能性があります。

ヒヤリハット事例を整理し、事故の場合と同様に分析し、介護事業所内で共有しておくことで、重大な介護事故の防止につながるのです。

またヒヤリハットを活用する上で理解しておくべき考え方にハインリッヒの法則があります。ハインリッヒの法則については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照下さい。

 

▶参考:ハインリッヒの法則とは?介護事故やヒヤリハット事案の活用法をわかりやすく解説

 

 

(2)ヒヤリハット事案に基づく事故防止策の検討の流れ

 

1.ヒヤリハット事案の収集

ヒヤリハット事案の分析にあたっては、出来るだけ多くの事案を収集することで、より精密で具体的な気付きを分析することが出来ます。

そこで、まずは職員に対して、ちょっとしたことであっても、情報として共有することの重要性を意識付け、事案をより多く収集することが重要です。

例えば、ヒヤリハットの記録方法として、必要事項を記載するための用紙を準備し、手書き又はパソコンを利用して記載していくという方法もありますが、日々の忙しい業務の中で、1日に多数発生するヒヤリハット事例をすべて記録してくのは手間ですし、ハードルが高いかもしれません。

そこで、弁護士法人かなめでは、ヒヤリハットを音声で記録できるアプリ「うさみさん」を運用しており、これを利用すれば、スマホやタブレットに話しかけるだけで、現場で起こったヒヤリ(気づき)をその場でデータ化することができます。

 

▶参考:気づき共有システム「うさみさん」について詳しくはこちら

 

 

【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】
ヒヤリハット事案については、できる限り多くの事例を集められる方がよいため、報告や記録化は可能な限り簡便なものとする必要があります。

 

もっとも、簡便な記録の場合、他の人が記録を閲覧したり、時間が経過したりした場合には、それが具体的にどのようなヒヤリハット事案であったのかがわからない場合もあり得ます。

 

そこで、定期的に、ヒヤリハット事例の検討会を行うなど、記憶の新しいうちに、職員自身が経験した事案を報告できるような機会を持つことが重要となります。

 

 

2.ヒヤリハット事案の分析

ヒヤリハット事案の対象となった利用者、事案が起きた日時や場所などを収集し整理することで、どのような時間帯に、どのような場所で事故リスクが高まっているかを分析することが可能です。

加えて、このヒヤリハット事案がどのような事故に繋がり得たか、そしてその原因がどこにあったかを、事故報告書を作成する際と同様に順序立てて検証をしていくことで、実際に事故が起こる前に、事故を疑似体験し、注意を喚起することができます。

例えば、利用者が食堂などで、杖を持たずに立ち上がった際、転倒しそうになったところをすぐに職員が駆け寄って支えたため、実際には転倒しなかったというような場合、その原因としては、以下のような様々なものが考えられます。

 

  • 食事を終えていたにもかかわらず、職員がそれに気付かず放置してしまったことで、利用者が先に立ち上がってしまった。
  • 杖がすぐ見えるところに置かれていなかった。
  • 食堂の床が、食事の際に食べ物や飲み物がこぼれていたことで滑りやすくなっていた。

 

このような原因を分析することで、その後の事故を防止する方法の検討が実のあるものになるのです。

 

3.事故防止策の策定、検証、実施

ヒヤリハット事案が発生した原因を突き止めれば、後はこのヒヤリハットを、いかに実際の事故に繋がらないよう対策をするかについて、検証していくことになります。

例えば、食堂で転倒をしかけたという先ほどの事例の場合、それぞれの原因によって対策は異なります。

例えば、食事を終えたことに気付かなかったという場合には、事前に各利用者の食事のスピード等をある程度把握しておき、気を配るように注意することなどが事故防止策につながりますし、杖を忘れてしまっているような事案の場合には、立ち上がろうとするときに必ず目に入る位置に杖を置けるようにする、足元が滑りやすくなっていた場合には、気付いた時点で速やかにモップ等でふき取るようにするなど、それぞれに対策が異なることがわかります。

このような具体的な事故防止策を策定した後は、これを実践した上、検証を行います。

例えば、杖を置く位置をどうするか、床をふくためのモップをどこにおいておくかなどを調整し、どこに置けば最も効率よく対応できるかを検証します。

その検証結果を、定期的な報告会などで報告することで、各職員の意識付けにもなり、意見交換により、よりよい意見も出てくる可能性があります。

このような試行錯誤を繰り返して行くことで、介護事故の発生を最小限に食い止められる、介護事故に強い事業所を築いて行きましょう。

 

【弁護士 畑山 浩俊のワンポイントアドバイス】
弁護士法人かなめでは、介護事業所の方々と共に、実際に生じた事例、裁判例を元にゼミ形式で勉強する機会を設け、定期的に開催しています。

 

実際に介護事業所の現場から得た「気づき」を参加者で共有し、それぞれの参加者の介護事業所の現場にフィードバックができる機会として、ご好評を頂いています。

 

ヒヤリハット研究会の詳細は、以下のページからご確認下さい。

 

▶参考:「ヒヤリハット研究会」についてはこちら

 

 

6.介護事故防止勉強会、研修を実施しよう!

介護事故防止勉強会、研修を実施しよう!

介護事故の防止は、日々の事業所の取り組みにかかっています。

以下では、介護事故防止のための勉強会や研修について、その意義や方法について解説します。

 

6−1.介護事故防止勉強会、研修の意義

介護事故は、日々の事業所運営の中でいつでも発生し得るものであり、職員の1人1人は、その対応経験などにかかわらず直面する可能性があります。

そして、介護事故の防止に関するさまざまな方策は、知ることですぐに実践でき、さらにこれを職員間でブラッシュアップさせることで、より効果的なものになります。

そのため、介護事故防止勉強会を実施したり、研修を受けることによって、職員1人1人が知識を習得し、より良い介護サービスを提供することができるようになります。

 

6−2.社内での介護事故防止勉強会、研修

社内では、一般的なさまざまな事故について、その予防や対策を検討することのほか、実際に起こった事故やヒヤリハット事案についての原因分析、再発防止策の検討をすることが重要です。

例えば、職員1人1人が、記憶の新しいうちに、これらの勉強会で事例を報告し、職員全員でディスカッションすることで、職員それぞれが当事者意識を持って、介護事故防止のための業務に臨むことができます。

 

6−3.弁護士への介護事故防止研修の依頼がおすすめ

社内での検討会のほか、弁護士による介護事故防止研修もおすすめです。

弁護士は、法律の専門家であることから、これまでの裁判で、介護事故においてどのような場合いどのような責任が認められたのか、これによる損害賠償額がいくらになるのかなど、介護事故が発生した際の事業所への影響などを、法的な立場からアドバイスすることができます。

介護事故関連の相談を弁護士にすべき理由やメリットなどについて、以下の記事で詳しく解説していますのでこちらも参考にご覧ください。

 

▶参考:弁護士に介護事故を相談すべき理由やメリット、サポート内容を解説

 

 

【弁護士 畑山 浩俊のワンポイントアドバイス】

弁護士法人かなめでも、「ヒヤリハット研究会」という形で介護事故等を防止するための研修会を実施していますが、出席をいただいた事業所の皆様からは、「介護事故の発生に関して、介護職員がどのような行動をとったか、どのような原因で損害賠償が認められたかなど、具体的な裁判例をもとに説明を受けられ他のでわかりやすかった」、「1つの事例から、派生してさまざまなケースについて検討できてよかった」などと、好評の声をいただいております。

 

弁護士法人かなめの「ヒヤリハット研究会」について詳しくは以下をご参照ください。

 

▶参考:「ヒヤリハット研究会」についてはこちら

 

 

7.弁護士法人かなめによる介護事故防止に関するサポート内容のご案内

介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!

弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。

 

  • (1)介護事故防止研修の実施
  • (2)ヒヤリハット研究会の実施
  • (3)実際に介護事故が発生した場合の対応サポート
  • (4)顧問弁護士サービス「かなめねっと」

 

7−1.介護事故防止研修の実施

弁護士法人かなめでは、次の「ヒヤリハット研究会」の他にも、個別の事業所を対象として介護事故防止研修を実施しています。

裁判例や各事業所で実際に起きた事故を題材として、介護事故防止のための方策を、事業所の皆さんと一緒に考えていきます。

詳しくは以下のページもご覧ください。

 

▶︎参考:介護事業所向け研修のご依頼について

 

 

7−2.ヒヤリハット研究会の実施

弁護士法人かなめでは、介護事業所の方々と共に、実際に生じた事例、裁判例を元にゼミ形式で勉強する機会を設け、定期的に開催しています。

実際に介護事業所の現場から得た「気づき」を参加者で共有し、それぞれの参加者の介護事業所の現場にフィードバックができる機会として、ご好評を頂いています。

ヒヤリハット研究会について詳しくは、以下のページをご覧下さい。

 

弁護士法人かなめの「ヒヤリハット研究会」についてはこちらから

 

 

7−3.実際に介護事故が発生した場合の対応サポート

実際に介護事故が発生すると、利用者家族への対応や、法的責任の追及、事故報告書の作成、保険対応等のさまざまな問題が同時に発生し、初動を誤ることで、取り返しのつかないことになることもあります。

弁護士法人かなめでは、事故発生のその時から、職員の皆様と一丸となって、必要な対応を検討し、アドバイスをすることができます。

また、例えば利用者や利用者家族から、損害賠償の請求をされた場合には、交渉のサポートの他、実際に代理人として窓口となることも可能です。

 

7−4.弁護士費用

弁護士法人かなめへの法律相談料は以下の通りです。

 

  • 1回目:1万円(消費税別)/1時間
  • 2回目以降:2万円(消費税別)/1時間

 

※相談時間が1時間に満たない場合でも、1時間分の相談料を頂きます。

※スポットでの法律相談は、原則として3回までとさせて頂いております。

※法律相談は、「1,弁護士法人かなめにご来所頂いてのご相談」、又は、「2,ZOOM面談によるご相談」に限らせて頂き、お電話でのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

※また、法律相談や研修依頼のお申込みは、お問合わせフォームからのみ受け付けしております。

 

弁護士法人かなめの「お問い合わせフォーム」はこちら

 

 

※介護事業所の経営者側からのご相談に限らせて頂き、他業種の企業様、職員等一般の方か らのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

 

7−5.顧問弁護士サービス「かなめねっと」

弁護士法人かなめでは、顧問弁護士サービス「かなめねっと」を運営しています。

具体的には、弁護士法人かなめでは、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入しています。事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。

具体的には、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。いつでもご相談いただける体制を構築しています。法律家の視点から利用者様とのトラブルをはじめ、事業所で発生する様々なトラブルなどに対応しています。

直接弁護士に相談できることで、事業所内社内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。

顧問弁護士サービス「かなめねっと」について詳しくは、以下のサービスページをご覧ください。

 

▶参考:顧問弁護士サービス「かなめねっと」について

 

 

以下の記事、動画でも詳しく説明をしていますので、併せてご覧下さい。

 

▶︎参照:介護施設など介護業界に強い顧問弁護士の選び方や費用の目安などを解説

 

 

 

 

(1)顧問料

 

  • 顧問料:月額8万円(消費税別)から

 

※職員従業員の方の人数、事業所の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、お問合せフォームまたはお電話からお問い合わせください。

 

8.まとめ

この記事では、介護事故の予防の意義や重要性について解説した上で、介護事故を防止するための具体的な対処策を、事故類型や方策毎に詳しく解説しました。

そして、この記事を読むことで、事業所が日々の運営の中で行うことができる介護事故防止の対処策や、効果的な研修の方法についても知ることができますので、介護事故防止に取り組む介護事業所の皆さんは、参考にしてみてください。

介護事故防止は、介護事業所に非常に重要な命題です。弁護士などの専門家のサポートを受けながら、介護事故に強い事業所を育てていきましょう。

 

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この記事を書いた弁護士

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畑山 浩俊はたやま ひろとし

代表弁護士

出身大学:関西大学法学部法律学科卒業/東北大学法科大学院修了(法務博士)。
認知症であった祖父の介護や、企業側の立場で介護事業所の労務事件を担当した経験から、介護事業所での現場の悩みにすぐに対応できる介護事業に精通した弁護士となることを決意。現場に寄り添って問題解決をしていくことで、介護業界をより働きやすい環境にしていくことを目標に、「介護事業所向けのサポート実績日本一」を目指して、フットワークは軽く全国を飛び回る。

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