あなたの働く介護事業所の職員の方で、「利用者からの暴言がひどく辛い」「介助中に何度も体を触られて苦痛だ」というような声をあげている方はいませんか?
このような利用者の行為は、カスタマーハラスメント(カスハラ)にあたるかもしれません。
近年カスタマーハラスメントの問題は深刻化しており、厚生労働省においては、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を策定し、事業主に対して顧客等からの著しい迷惑行為に適切に対応できるよう求めています。
介護事業所においても、カスタマーハラスメント対策は急務であり、何らの対策を講じず、問題を放置してしまうと、職員の離職の原因になったり、事業所の職員に対する安全配慮義務違反を理由にして、損害賠償請求をされる恐れもあります。
この記事では、介護事業所におけるカスタマーハラスメント対策の必要性やそのメリット、具体的な対策方法について解説します。また、カスタマーハラスメントを未然に防ぐ方法について解説しますので、今まさにカスタマーハラスメント対策に悩んでいる介護事業所の皆さんは、ぜひ参考にしてください。
それでは、見ていきましょう。
この記事の目次
1.カスタマーハラスメントとは?
カスタマーハラスメントとは、略してカスハラとも呼ばれており、顧客からの要求内容、又は、要求態度が社会通念に照らして著しく不相当であるクレームや 顧客からの迷惑行為のことをいいます。
厚生労働省によって作成された「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によると、次のようなものがカスタマーハラスメント(カスハラ)に当たると述べられています。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
例えば、介護現場におけるカスタマーハラスメントとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 訪問介護サービスにおいて、訪問時間に遅刻したことを理由にコップ等を投げつけられる。
- ヘルパーの容姿をけなしたり悪口を言う。
- 女性職員に対して執拗に交際や関係を迫る。
さらに詳しく介護現場におけるカスハラ事例について知りたい方は、以下の記事で解説していますのであわせてご参照ください。
また、カスタマーハラスメントに関する対応方法など全般的な解説については、以下の記事で詳しく説明していますので、併せてご覧下さい。
2.介護現場におけるカスハラ対策の必要性
これまでの介護現場では、介護サービスの利用者やその家族からの不適切な行為を「ハラスメント」とは捉えず、見過ごすことも少なくありませんでした。
なぜなら、利用者からの不適切な行為があったとしても、「対処できない自分が悪い」「認知症があるのだから仕方がない」などと考え、解決できないものであると認識してしまい、業界全体としてもそれらの行為を問題として考えてこなかったからです。
しかし近年では、社会全体でハラスメントに対する問題意識は急速に高まってきており、企業としてカスタマーハラスメントに対する対策に取り組むことが求められてきています。
それは、カスタマーハラスメントによって、以下のような影響が考えられるからです。順に見ていきましょう。
2−1.職員への心身への影響が大きい
日常的にカスタマーハラスメントにさらされることによる職員の心身の負担は、非常に大きいものがあり、カスハラが原因で健康状態に悪影響が起こることも少なくありません。
「令和2年度 厚生労働省の職場のハラスメントに関する実態調査」によると、顧客等からの迷惑行為を受けて「怒りや不満、不安などを感じた」(67.6%)「仕事に対する意欲が減退した」(46.2%)との回答率が高く、「何度も繰り返し経験した」労働者で「眠れなくなった」(13.8%)「通院したり服薬をした」(8.8%)などの回答も見られ、カスハラが労働者の重大な健康被害に繋がっていることが分かります。
▶参考:「令和2年度 厚生労働省の職場のハラスメントに関する実態調査」のデータ
・出典:「令和2年度 厚生労働省 職場のハラスメントに関する実態調査」85頁(「図表 86 心身への影響(顧客等からの著しい迷惑行為経験頻度別)」)
2−2.職員の離職の原因となる
厚生労働省が、全国の介護事業所のハラスメントの実態把握のための調査を行っており、「訪問介護」や「介護老人福祉施設」などのサービスの種類ごとに様々なアンケート調査を行っています。
その中の「全国の介護施設・事業所へのアンケート調査」によると、介護職員に対し、「ハラスメントを受けて仕事を辞めたいと思ったことの有無」を聞いたところ、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスにおいては、「はい」と回答した人が36.7%にものぼっています(図2-28)。さらに、「ハラスメントを受けて実際に仕事を辞めたことの有無」では、訪問介護サービスにおいて「辞めたことがある」と回答した人は11.6%となっています(図2-29)。
カスハラによって職員が抱えることになる精神的負担は、仕事を続けることが難しいと感じるほど深刻なものであり、離職の大きな要因の一つになることがこの結果からも明らかです。
▶参考:「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究 報告書」の調査データ
・出典:厚生労働省「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究 報告書」(pdf)44頁より抜粋
2−3.事業主としての責任追及の恐れ
介護事業所は、職員に対して安全配慮義務を負っています。従って、事業主として適切な対応をせずにハラスメント行為を放置した場合、被害を受けた職員から責任を追及され安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。
▶参考:安全配慮義務違反についての罰則や訴えられたらどうなるか等については、以下の参考記事で詳しく解説していますので併せてご参照ください。
業界は異なりますが、小学校において保護者による教諭に対する理不尽な言動があった際に、当該教諭の管理監督者である校長の不法行為を理由として、市と県に対し、国家賠償法上の損害賠償責任が追及された事例があります。
この事案では、教諭が、校区内で実施される地域防災訓練の会場に向かう途中、自身が担任するクラスの女子児童宅へ参加の呼びかけなどの目的で立ち寄ったところ、本件児童宅の庭で飼育されていた犬に咬まれ、加療約2週間の怪我を負ったのですが、この事故への対応をめぐって本件児童の家族より執拗な抗議を受けた校長が、教諭の意向や説明を無視して本件児童の家族へ謝罪を強要するなどした結果、教諭がうつ病に罹患してしまいました。
裁判所は、校長による対応が不法行為にあたるとして、教諭からの市及び国に対する損害賠償請求を認めました。
▶参考:カスタマーハラスメントに対して不適切な対応をとったことで賠償責任が認められた事例(甲府地裁平成30年11月13日判決)
事案の概要:小学校の教諭である原告が、公務で児童宅へ訪問した際、その家の犬に噛まれて負傷した事件に関して、勤務先の小学校の校長からパワハラを受けてうつ病に罹患し、休業し、精神的苦痛を受けたなどと主張して損害賠償を請求したところ、校長による不法行為が認められた事案。
このように、カスハラを放置し、また、その対応を誤ることにより、事業所における大切な人材を失うリスクにさらされ、その上事業所としての責任も負うこととなります。
施設を運営する事業所は、これまでとは意識を切り替え、今、早急にカスタマーハラスメント対策を講じる必要があるのです。
3.カスタマーハラスメント対策に取り組むメリット
カスタマーハラスメント対策に積極的に取り組むことによって、以下のようなメリットがあると考えられます。
3−1.職員の就労環境の改善につながる
前述したように、繰り返しカスタマーハラスメント行為に遭うことによって、職員の心身は疲弊してしまい、これを放置してしまうと職員の離職にまで発展しかねません。
人材の確保が大切な介護業界において、カスタマーハラスメント対策に積極的に取り組むことは職場環境が改善され、離職者の発生を未然に防ぐことになります。また、事業所としてハラスメント行為に毅然として対応していくという姿勢を示すことは、職員の安心感にもつながります。
3−2.業務改善につながる
カスタマーハラスメント対策をマニュアル化し組織全体で共有することによって、利用者への対応ノウハウを学ぶことができ、問題が起こった際に職員が落ち着いて対応することができるので、組織としての対応もスムーズになります。
カスハラが起こった際には、初期対応が肝心です。初期対応を誤ってしまうと、利用者との関係が悪化してしまったり、さらなるハラスメントを誘発してしまったりすることもあります。カスタマーハラスメント対策をすることによって、ハラスメント行為等の問題が起こった時に、迅速で組織的な対応が可能になります。
3−3.ハラスメントの未然防止につながる
カスタマーハラスメント対策では、利用者やその家族等に対して事業所としてのハラスメント行為に対する姿勢を伝えていくことも大切です。利用者やその家族等に、提供するサービスの目的、範囲やその方法について丁寧に説明することによって、未然にハラスメント行為を防ぐことが期待できます。
4.介護事業所として取り組むべきカスハラ対策の具体的な内容
それでは、具体的に事業所として取り組むべきカスハラ対策について解説していきます。
4−1.厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」をチェック
令和4年2月に、厚生労働省がカスタマーハラスメントの防止対策の一環として、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が作成され、ホームページ上で誰でも閲覧できるようになっています。
マニュアル以外にも、「カスタマーハラスメント対策リーフレット」「カスタマーハラスメント対策啓発ポスター」も同様に作成され、一般に活用することができます。事業所を運営・管理させている方はご一読することをお勧めします。
以下、このマニュアルに記載されている内容も踏まえて、介護事業所におけるカスタマーハラスメントの対策を具体的に解説します。
▶参照:厚生労働省が公開している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」は以下よりご覧いただけます。
4−2.カスタマーハラスメントの基本指針の策定、周知
(1)基本方針の策定
カスタマーハラスメント対策としてまず最初に取り組むべきことは、基本方針の策定です。
これは事業所として、カスタマーハラスメントをどのように捉え、どのような姿勢で対策を行うのかということを明確にする、ということです。そしてその姿勢として求められているのは、「何としても職員を守る」という明確なメッセージです。基本方針を策定するにあたっては、「職員をハラスメントから守る」という事業所としての姿勢が示されるようにしなければなりません。
例えば、基本方針に含める要素としては以下のようなものがあげられます。
- 法人の理念や使命、何のために指針を策定するのかの目的
- カスタマーハラスメントの内容
- カスタマーハラスメントは自社にとって重大な問題である
- カスタマーハラスメントを放置しない
- カスタマーハラスメントから職員を守る
- 職員の人権を尊重する
- 常識の範囲を超えた要求や言動を受けたら周囲に相談してほしい
- カスタマーハラスメントには組織として毅然とした対応をする
(2)職員への周知
事業所としての基本方針が決まったら、職員がその内容について理解できるように周知します。
事業所が職員を守る意識をもち、実効性のある対応フローが作成されていることが分かれば、職員も安心して日々の業務に取り組むことができますし、実際にハラスメント行為があったときにも、落ち着いて対応することができます。
周知の方法として有効なのが、研修の実施です。研修を行うことによって、職員一人一人がカスタマーハラスメントに対する知識を学び、適切な対応方法を身に付けることができます。
詳しくはこの記事の「4−5.職員研修」や以下の記事で詳しく解説していますので、順番にご覧ください。
(3)利用者・家族等への周知
介護現場における職員へのハラスメントの予防のためにも、利用者やその家族等にハラスメントに対する事業所としての姿勢を伝えることも重要です。
ハラスメントが起こる背景には、契約時の説明が不十分であるために、利用者やその家族が支援内容についてよく理解できていないことがあります。
契約時に、どのようなことがハラスメントに当たるのか、ハラスメントが行われた時の対応方法、場合によっては契約解除になることもある旨を丁寧に説明しておくことによって、未然にトラブルになることを防ぐことができます。
利用者や家族等に対する周知の一例が、厚生労働省の作成した「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」に挙げられていますので、ご参考にしてください。
4−3.職員の相談窓口の設置
カスタマーハラスメントへの対応は初期対応が肝心です。いち早くハラスメントの存在を認識し、迅速に対応するために必要なのが、カスタマーハラスメントを受けた職員が相談できる相談窓口です。
相談対応体制の整備は、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」でも推奨されているので、カスタマーハラスメント対策としては大切なポイントとなります。
相談対応者は、カスタマーハラスメントが実際に発生している場合だけでなく、発生の恐れがある場合や、カスタマーハラスメントに該当するかどうかも含めて幅広く相談に応じ、迅速に対応する必要があります。
このような対応を実現するためには、現場の管理者に任せてしまうだけでは十分でない場合もあり、弁護士等の外部関係機関と連携できる体制を構築することも有効になります。
カスタマーハラスメントの相談窓口の設置の方法に関しては、以下の記事や動画で詳しく解説していますので、ご覧ください。
▶参考:カスハラの社内相談窓口の設置について、以下の動画「カスハラ対応における社内相談窓口の設置の必要性とポイントについて」で5つのポイントなどを詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
4−4.対応方法、手順の策定
実際に職員がカスタマーハラスメントを受けた際に適切な対応ができるように、対応方法等を事前に決めておき、対応フローを作成しておきましょう。対応フローの作成やルール作りにあたっては、職員の意見を取り入れながら適宜更新していくことが大切です。
対応フローの作成の仕方としては、ハラスメントを受けた職員、管理者、本部職員など、立場ごとに対応を定める方法、暴言型やセクシャルハラスメント型など、ハラスメント行為別に対応を定める方法等があります。
例えば立場ごとの対応フローを作成する際にポイントとなることを以下に挙げます。
(1)ハラスメントを受けた職員の対応ポイント
- 冷静に落ち着いた声で、ハラスメント行為をやめるように伝える。
- 身の危険を感じたら、サービスを中止し、その場を離れる。
- けがをした場合の受診は健康保険を使わずに労災を使う。
(2)管理者の対応ポイント
- けがをしている場合は受診の指示をする。
- 被害職員の気持ちに配慮し、心身のフォローを行う。
- ハラスメント行為者への事実確認をする。
- 必要に応じて、本部・経営陣等への報告・相談をする。
- ハラスメント対応を記録に残す(録音の指示を出す)。
(3)本部職員・経営陣の対応
- 管理者のハラスメント行為者への対応をサポートする。
- 行政・警察への報告について判断する。
ハラスメントが発生した場合、職員の安全を第一に、即座に対応することが必要になります。例えば、「初動マニュアル」のようなものを事業所として用意しておき、管理者が責任をもって職員とともに対応する体制を整えておくことも有効です。
4−5.職員研修
「4−2.カスタマーハラスメントの基本指針の策定、周知」でお伝えしたように、実際にカスタマーハラスメント行為が起きたときに、適切にかつ迅速に対応するためには、職員に対する研修の実施が有効です。
研修については、可能な限り全員が受講できるような環境を整え、かつ、定期的に実施することが重要です。研修の内容としては、以下のようなものが考えられます。
▶参考:研修内容のテーマ例
1.カスタマーハラスメントについての認識の共有
どういった行為がハラスメントに当たるかの認識を事業所全体で共有します。
2.カスタマーハラスメントの事例
カスタマーハラスメントの具体的な事例を学ぶことによって、カスタマーハラスメントかどうかを判断する基準を身に付け、対応方法を学ぶことができます。
3.カスタマーハラスメントが起こった時の対処法
ハラスメントのパターン別に、ハラスメント発生時の対応方法をケーススタディ等の形式で学ぶとより効果的です。
また、職員に限らず、施設の管理者やカスタマーハラスメントの相談対応者、経営者層等への研修を行うことも重要です。
介護現場でのハラスメント対策は、まず管理者や経営者が「ハラスメントから職員を守る」という意識を持つことから始まります。カスタマーハラスメントの対応には正解があるわけではなく、現場の柔軟な判断が求められるため、現場を管理している管理者や経営者のハラスメントに対する意識がその判断に大きな影響を及ぼします。
このような管理職レベルの研修には、外部の専門家を研修の講師として招く方法も有効です。
弁護士法人かなめでは、介護特化型法律事務所として、これまで数多くのカスハラ研修を実施してきました。カスタマーハラスメント研修について詳しく知りたい方は以下の参考記事をご覧ください。▶参考:介護業界のカスタマーハラスメント研修!必要なカスハラ研修内容や実施方法を解説また、弁護士法人かなめの介護特化型弁護士による「かなめ研修講師サービス」では、研修テーマに「カスタマーハラスメント研修」をご用意していますので、「6−3.カスタマーハラスメント研修の実施」も併せてご参照ください。
4−6.事実関係の正確な把握と事案への対応
(1)事実関係の把握
相談対応者や管理者等が職員からハラスメント行為についての相談を受けた場合、職員から聞き取りを行い、事実関係を整理しましょう。
その時、まずは被害を受けた職員の心身のケアをすることが第一です。場合によっては、時間を置いて気持ちが落ち着いたところで、職員からハラスメント行為が起こった状況の聞き取りを行うようにします。正確に情報を聞き取って事実関係を整理し、利用者やその家族等から受けた行為がハラスメント行為にあたるかどうかを判断しましょう。
一般的な事実関係を整理する流れは以下のとおりです。
- 1.時系列で、起こった状況、事実関係を正確に把握し、理解する。
- 2.利用者やその家族等の求めている内容を把握する。
- 3.利用者やその家族等の要求内容が妥当か検討する。
- 4.利用者やその家族等の要求の手段・態様が社会通念上相当か検討する。
(2)証拠の収集・保全
聞き取りと併せて、初期段階から証拠の収集をしておくことも大切です。
ハラスメントを受けた職員の他にも、一緒に現場にいた職員等がいればその職員からも聴き取りを行い、それらを記録に残しておきます。それに加えて、その現場が防犯カメラに映っていたり、電話が録音されていたりするときは、そういった証拠となるものを保全しておくことも大切です。
身体的暴行を受けている場合は、残っている傷を写真で撮影しておいたり、診断書を取得したりしましょう。
なお、カスタマーハラスメントの場面において、その状況を録音をする際には、相手の同意を得る必要はありません。詳しくは、以下の動画でも詳しく説明していますので、併せてご覧ください。
▶️【無断録音】こっそり録音することは違法か?
▶️【無断録音!】実際にあったミス3選!弁護士が解説します!
(3)あらかじめ策定した手順に則って対応する
起こった事案がカスタマーハラスメントであると判断するに至った場合は、「4−4.対応方法、手順の策定」で決められた手順に沿って対応します。
カスタマーハラスメントは、その態様によっては、刑法上の犯罪になり得ます。場合によっては、警察等への通報も視野に入れて対応するようにしましょう
4−7.職員への配慮
カスタマーハラスメントの被害を受けた職員に対しては、速やかに現場での安全確保や精神面の配慮を行う必要があります。
(1)職員の安全確保
物を投げられる、殴られる等の身体的暴力や、体に触るといったセクハラ行為があった場合は、職員の安全確保を行わなければなりません。そのような場合は、当該職員を行為者から引き離し、担当を交代する等の措置をとるようにしましょう。
また、繰り返し電話がかかってくるような類型の場合、対応窓口を現場の職員ではなく、例えば管理職に一本化したり、本部機能のある事業所であれば本部の職員などに一本化することで、現場の職員のダメージを最小限に抑え、日常業務に支障が生じないように対応することも可能です。
(2)精神面への配慮
カスタマーハラスメントにあった職員には、「大変だったね」「辛かったね」といった声かけをしながら、話を聞くようにしましょう。気持ちが落ち着かない、恐怖から立ち直れないなどのメンタルヘルスの不調の兆候がある場合には、臨床心理士・産業医への相談や、専門の医療機関の受診などを促します。
セクシャルハラスメントを受けた場合には、同姓が話を聞く等、被害態様に合わせた配慮が必要です。
4−8.再発防止のための取組み
カスタマーハラスメントの解決に当たって、発生した事案にただ対応するだけでは、同じことが繰り返される可能性が残ります。再発を防ぐためにも、その原因に応じて再発防止策を検討しましょう。
聞き取りを進め、事実関係の整理をしていくと、ハラスメントの原因がある程度見えてくるかと思います。
例えば、「利用者やその家族が支援のあり方について不満を募らせていたのに、それに気づけていなかった」「その日の利用者の心身の状態が悪く、いつも通りの支援を行っていたが、過剰反応が起きた」などが考えられますが、その他にも考えられる要因は様々です。
なお、利用者の性格傾向や病気を理由にして思考を停止してしまうことは避けてください。そのような考えが、カスハラ行為を助長し、被害を増やしていくことに繋がることを忘れてはなりません。利用者の不適切な行為を減らすための対応の工夫をできる限り考え、再発防止に努めましょう。
事業所内でのハラスメントと違い、カスタマーハラスメント行為の場合、行為者は指示や指導をする関係にはないことから、行為者に対する直接的な措置を講じることは難しいのも事実です。そのため、行為の差止めや契約の解除等にあたっては、専門的な法的知識が必要になることもあります。したがって、再発防止のためには、事業所内での事案の検討・分析に加えて、外部の弁護士との連携や行政との連携等が重要になります。
5.カスタマーハラスメントを未然に防ぐ取組み
カスタマーハラスメントを未然に防ぐことは容易なことではありませんが、以下のようなことに事前に取り組んでおくことによって、カスハラ行為の発生を少しでも減らす効果が期待されます。
順番に見ていきましょう。
5−1.カスタマーハラスメント指針の外部への周知
(1)契約時の説明
「4−2.カスタマーハラスメントの基本指針の策定、周知」の「(3)利用者・家族等への周知」の解説の通り、カスハラを未然に防ぐためには、利用者やその家族にハラスメントについての事業所としての姿勢や基本指針を伝えることが重要です。
伝えるタイミングとして一番相手に伝わりやすく、効果的なのは、最初に契約をする時です。利用者やその家族等の中には、どのような行為がハラスメントにあたるのかを分かっていないケースも少なくありません。
最初にハラスメントに対しての理解を得ておくことによって、利用者も事業所に対して求めて良いこと、求めることができないことの線引きがしやすくなり、ハラスメントの未然防止にも繋がります。
一方で、ハラスメント行為等による著しい迷惑行為があった場合には、契約を解除する場合もあるということも伝える必要があります。具体的な契約内容の整備の仕方やその説明の方法については次項で解説します。
(2)掲示物での周知
介護現場での職員へのハラスメントが全国的に問題になっていること、厚生労働省もハラスメントを防止する取組みを進めていること等は、施設内のポスター等でも啓発が可能です。
厚生労働省のホームページに利用できるリーフレットやポスターが紹介されていますので、そちらもご活用下さい。
1.厚生労働省「カスタマーハラスメント対策リーフレット」
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策リーフレット」は以下よりご覧いただけます。
2.厚生労働省「カスタマーハラスメント対策啓発ポスター」
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策啓発ポスター」は以下よりご覧いただけます。
(3)ホームページでの周知
弁護士法人かなめでは、カスタマーハラスメント指針を策定した際、それをホームページに掲載することをお勧めしています。昨今、利用者やその家族は、事業所の利用にあたってホームページを閲覧することが多いことから、指針をホームページに掲載しておくことは事前の周知に繋がります。また、法人として、カスタマーハラスメントに対して毅然と立ち向かうことの姿勢をより強く示すことが可能になります。さらに、求職者へのアピールポイントにもなります。
前述したとおり、介護現場で働く職員の多くは、カスタマーハラスメントの被害に遭った経験を有しており、中にはそれが理由で離職した人がいます。離職した人々にヒアリングを実施したところ、カスタマーハラスメントそのものが辛かったから、という点はもちろんあるのですが、それよりも多かった声は「職場が守ってくれなかった」というものでした。
一旦離職した人たちも、介護現場に再度戻ってきたいという気持ちから求職活動をしていることがあります。そのような人たちがホームページに掲載されているカスタマーハラスメント指針を閲覧した際、「このような事業所があるのか」「しっかりと対策している事業所で働きたい」という気持ちになり、求人応募してくるケースがあります。
実際に我々弁護士法人かなめが顧問サポートしている事業所に対し、カスタマーハラスメント指針の策定支援をしたところ、ホームページを見て求人応募してきた人が複数名現れたことがあります。これは経営者としても、我々弁護士としても思わぬ副次的効果でした。
5−2.利用者との契約書内容及びその説明の工夫
どんな業態の事業者であっても、利用者や利用者家族との関係は、利用契約を締結するところから始まります。
そのため、契約条項を工夫した上、しっかりと説明をしておくことで、利用者や利用者家族との間でカスタマーハラスメントの火種を事前に除去することができますし、クレームになりそうな場合にも、契約条項を利用してスムーズに対応できることがあります。
注意すべき点は多岐に渡りますが、ここでは、特に注意をすべき点についてご紹介します。
(1)介護事故発生時の対応
皆さんが利用されている利用契約書には、通常、事故発生時における損害賠償責任の規定が定められています。また、その対応に関して「速やかに」損害を賠償する、というような文言が入っている利用契約書をお使いの事業所も多いのではないでしょうか。
もちろん、事業所に責任のある事故が発生すれば、遅滞なく損害を賠償をすることは必要です。
もっとも、介護事故が発生した場合、必ずしもすぐに損害額が確定するわけではありません。具体的には、治療に時間がかかるケースでは、治療が終了しない限り、治療費の総額や慰謝料の金額は定まりませんし、介護事故には原因の調査等も必要なため、実際に賠償がされる時期と、利用者や利用者家族が考える「速やかに」との間には、どうしても差が出てきます。
そうであれば、「速やかに」という、誤解を生むような文言は初めから削っておく方が、あらぬ紛争を招きません。また、介護事故が発生した場合、介護事業所は、加入している任意保険を利用して賠償することになります。しかし、介護事故後の利用者や利用者家族は、当然のことながら平常心ではないことも多く、「なんで保険を利用するんだ」と憤り、クレームにつながることがよくあります。
この時、利用契約書の中で、事前に任意保険を利用することを告知し、協力をお願いする旨をしっかり説明しておくことで、実際に事故が発生した場合の説明がスムーズにできます。
具体的には、以下のような規定です。
▶参考規定例:
第○条(損害賠償)
1 事業者の責めに帰すべき事由により、利用者に損害が生じた場合、事業者はこれを賠償する責任を負います。
2 事業者は、民間企業の提供する損害賠償責任保険に加入しています。前項規定の賠償に相当する可能性がある場合は、利用者又は利用者家族に当該保険の調査等の手続にご協力いただく場合があります。
(2)文書の写しの交付
サービス提供記録、利用記録は、保管期間が定められており、これらの文書について、利用者や利用者家族から見せてほしいと言われたり(閲覧)、コピーが欲しい(謄写)と言われた場合、事業所としては対応をしなければなりません。
とはいうものの、利用者や利用者家族からの無制限な閲覧や謄写を認める必要はなく、その方法や範囲を、合理的に定めることが可能です。
例えば、以下のような点に着目して、条項を定めてみましょう。
- 文書の閲覧や謄写を求めることができる利用者家族の範囲を絞る
- 文書の閲覧や謄写を求めることができる時間帯を絞る
- 謄写の際の費用を定める
具体的には、以下のような規定です。
▶参考規定例:
第○条(利用記録等の閲覧・謄写)
利用者及びその家族(2親等までの血族に限ります。)は、事業者に対し、事業者の運営に支障がない限りで、サービス提供記録の閲覧・謄写を求めることができます。ただし、謄写に関しては、事業者は、利用者及びその家族に対して、実費相当額(白黒コピー:1枚○円、カラーコピー:1枚○円)を請求できるものとします。
【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】
利用者や利用者家族に対して、費用を請求することに対して抵抗感を持つ事業所の方も多いかと思います。
もっとも、利用記録等の謄写に関していえば、執拗に、大量の資料の謄写を求めるなど、それだけでカスタマーハラスメントとなり得るようなケースにも直面しかねません。
この時、利用契約書等になんらの記載もないにもかかわらず、「謄写には費用をいただきます」と伝えても、既に要求が苛烈になりつつある状況の中では、火に油を注ぐような結果となり、さらに状況を悪化させることにもなりかねません。
契約書は、このような事態に備えるために必要であり、費用を請求できる旨の規定を定めておくことで、堂々と「費用をいただかなければ謄写には応じられません」と説明することができます。
皆さんの事業所でも、利用契約書の文言を見直してみましょう。
(3)解除事由の明確化
あらかじめ、ハラスメント行為が発生した場合のことを想定し、契約の解除になる可能性のある行為を具体的に契約書に記載しておくことで、介護事業所としては、この文言を理由に行為の中止を通知したり、「このような行為が続く場合には、契約を解除せざるを得なくなります」と説明をし、行為の改善を促すことができます。
そして、契約書上の規定に従い、具体的なカスハラ行為の中止を求めていくことで、サービス提供を継続できない正当な理由を基礎付ける事情ともなっていきます。
以下に、契約書の記載事項のポイントを解説します。
1.契約解除事由の対象者に利用者家族やその関係者が含まれることを明確にする
通常、介護サービスの契約を締結するのは事業所と利用者個人となります。したがって、利用者の家族が原因となるハラスメント行為は、利用者自身の行動に何ら問題がない場合、利用者との契約の解除事由とはならないことになってしまいます。
介護現場におけるカスタマーハラスメントでは、利用者が加害者になるケースももちろんありますが、利用者には全く問題は無いものの、その家族がカスタマーハラスメントの加害者になっているケースもあります。このような事態にも備えておく必要があります。
例えば、契約書に記載される内容が次のようになっているとします。
(※甲:利用者、乙:法人)
(乙の解除権)
第⚪︎条 乙は、甲が次の各号に該当する場合には、3週間以上の予告期間をもってこの契約を解除することができます。
一 甲が正当な理由なく、第6条記載の利用料の支払いを3ヵ月以上滞納したとき
二 甲の行動が、他の利用者の生命または健康に重大な影響を及ぼすおそれがあり、乙において十分な介護を尽くしてもこれを防止できないとき
三 甲が重大な自傷行為を繰り返すなど、自殺をするおそれが極めて大きく、乙において十分な介護をつくしてもこれを防止できないとき
四 甲が故意に法令違反その他重大な秩序破壊行為をなし、改善の見込みがないとき
このような記載であると、利用者の家族による行為によって介護サービスの提供が困難になった時に、契約の解釈に疑義が生じ、カスハラ行為の中止を求めるにあたって相手に反論の余地を与えてしまうことになりかねません。「甲」に家族等も含むという解釈もありえるかもしれませんが、契約書には「甲又はその家族等」などと明記しておいた方が、後の家族等によるハラスメント行為の抑止力にもなると考えられます。
2.解除事由となる行為を明確にする
契約書には、契約解除の可能性がある行為を、できるだけ明記しておくようにしましょう。内容については、サービス内容によっても様々ですが、例えば、以下のような視点から、条項を検討することが有益です。
- 禁止したい利用者の行為を明確にする
- 誰に対する行為を禁止するかを明確にする
併せて、どのような行為がカスタマーハラスメントに該当するかということをあらかじめ分かりやすく列記したリーフレット等を準備し、それに沿って説明するとより理解が得やすいでしょう。
これらを踏まえ、以下のような条項をお勧めしています。
▶参考規定例:
第⚪︎条(契約の解除)
事業者は、利用者、利用者家族及びその関係者が、故意又は過失により、事業者又は事業者の従業員もしくは他の利用者等の生命、身体、財物、信用等を傷つけ、又は著しい不信行為を行うことなどによって、本契約を継続しがたい重大な事情を生じさせた場合、事業者は利用契約を解除することができる。
【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】
ハラスメント防止を意識した文言を契約書に記載しておくことで、利用者やその家族からのハラスメント行為の抑止効果が期待できます。
しかしながら、介護事業所は、介護保険法令の趣旨に沿ってサービスを提供していますので、正当な理由なくして、利用者との契約の解除はできません。また、利用者との契約解除は、利用者が被る生活上の不利益が非常に大きいため、解除事由として規定している行為に該当する行為があったからといって、簡単に解除の判断ができるものではないことが前提です。
もっとも、具体的なカスハラ行為を定めておくことで、事業所としても現場の職員としても、利用者や利用者家族に対して堂々と説明をすることができるという大きなメリットがあります。そして、事業所としては、「カスハラ行為を許さない」という強い意思表示にもなり、現場の職員の方も、安心して日々の業務に打ち込むことができるのです。 事業所として、解除条項をしっかりと定めることには、解除をしやすくする、ということ以上に、大きな意義があるのです。
6.カスハラ対策・予防の相談について「弁護士法人かなめ」の弁護士に相談したい方はこちら
弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。
- (1)カスタマーハラスメント指針の策定
- (2)契約書のリーガルチェック
- (3)カスタマーハラスメント研修の実施
- (4)実際のカスタマーハラスメント事案への対応
- (5)顧問弁護士サービス「かなめねっと」
以下で、順番に説明します。
6−1.カスタマーハラスメント指針の策定
カスハラ対策で最初に取り組むべきことは、カスタマーハラスメントへの基本方針の策定です。事業所内だけで話合い、策定に取り組むことも可能ですが、第三者的視点や法的な観点を取り入れるという意味でも、弁護士に策定の協力を依頼することには意義があります。
弁護士法人かなめでは、介護現場のカスハラ事案への対応経験の豊富な弁護士が、カスタマーハラスメント指針の策定のサポートをします。
6−2.契約書のリーガルチェック
カスタマーハラスメントを未然に防止する観点からも、利用者と締結する契約書の記載内容にはいくつかのポイントがあります。
弁護士法人かなめでは、契約書内容のリーガルチェックや、あらかじめ記載しておくべき文言について、これまでの経験に基づいた的確なアドバイスをすることができます。
▶参考:契約書のリーガルチェックの必要性について詳しくは以下の記事で解説していますのでご参照ください。
6−3.カスタマーハラスメント研修の実施
弁護士法人かなめでは、カスタマーハラスメントについてその実態、原因から対処方法、予防策まで、介護事業所がカスハラに対応していくために必要な知識を身に付けられる「かなめ研修講師サービス」を実施しています。
カスタマーハラスメントの研修など弁護士による研修サービスについて詳しくは、以下のホームページをご覧ください。
6−4.実際のカスタマーハラスメント事案への対応
実際にカスタマーハラスメント事案が発生した場合は、迅速でかつ適切な初期の対応が肝心です。初期対応を誤り、不適切な対応をしてしまうと、利用者やその家族との関係性を悪化させてしまったり、さらなるハラスメント行為を誘発させてしまう可能性もあります。
弁護士法人かなめでは、職員からカスタマーハラスメント行為かもしれない、といった事案が発生した場合、初期の段階から相談を受けて、事案に合った助言をすることができます。
6−5.ご相談方法と弁護士費用について
カスハラ対策に関して弁護士法人かなめに法律相談していただく際の相談方法と弁護士費用についてご案内します。
(1)ご相談方法
まずは、「弁護士との法律相談(有料)※顧問契約締結時は無料」をお問合わせフォームからお問い合わせください。
※法律相談の申込みは、お問合わせフォームからのみ受け付けております。
※法律相談は、「① 弁護士法人かなめにご来所頂いてのご相談」、又は、「② ZOOM面談によるご相談」に限らせて頂き、お電話でのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。
※顧問契約を締結していない方からの法律相談の回数は3回までとさせて頂いております。
※介護事業所の経営者側からのご相談に限らせて頂き、他業種の企業様、職員等一般の方からのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。
(2)弁護士との法律相談に必要な「弁護士費用」
- 1回目:1万円(消費税別)/1時間
- 2回目以降:2万円(消費税別)/1時間
※相談時間が1時間に満たない場合でも、1時間分の相談料を頂きます。
6−5.顧問弁護士サービス「かなめねっと」
弁護士法人かなめでは、顧問弁護士サービス「かなめねっと」を運営しています。
具体的には、弁護士法人かなめでは、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入しています。事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。
具体的には、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。いつでもご相談いただける体制を構築しています。法律家の視点から利用者様とのトラブルをはじめ、事業所で発生する様々なトラブルなどに対応しています。
直接弁護士に相談できることで、事業所内社内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。
顧問弁護士サービス「かなめねっと」について詳しくは、以下のサービスページをご覧ください。
また以下の動画でも詳しく説明をしていますので、併せてご覧下さい。
▶︎【介護・保育事業の方、必見】チャットで弁護士と繋がろう!!介護保育事業の現場責任者がすぐに弁護士に相談できる「かなめねっと」の紹介動画
7.まとめ
この記事では、カスハラ対策として、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を踏まえながら、介護事業所におけるカスタマーハラスメント対策の必要性と、取り組むメリット、その具体的な策定方法や内容について解説しました。
介護事業所として取り組むべきカスハラ対策の要点としては、以下について解説しました。
- ① カスタマーハラスメントの基本指針の策定、周知
- ② 職員の相談窓口の設置
- ③ カスタマーハラスメントへの具体的対応方法、手順の策定
- ④ 職員研修
- ⑤ 事実関係の正確な把握と事案への対応
- ⑥ 職員への配慮
- ⑦ 再発防止のための取組み
いずれも事業所一丸となり、協力をして取り組む必要があります。
また、カスタマーハラスメントを防止するための取り組みについても解説しました。具体的には、以下について解説しました。
- ① カスタマーハラスメント指針の外部への周知
- ② 利用者との契約書内容及びその説明の工夫
事業所において、事前にしっかりと話し合って指針を示し、これを開示しておくことが、利用者との間の信頼関係をより強固なものにすることにも繋がります。
事業所の職員が安心して働くことができる職場を作りたい方は、この記事の内容を参考にして、カスタマーハラスメントへの対策を強化してください。カスタマーハラスメント事案は、その行為の種類も多岐に渡り、原因となる要因も様々であるため、事案によっては事業所だけで対応することが困難な場合もあります。対応に困ったことがあれば、事業所だけで問題を抱え込まず、専門的知識のある弁護士に速やかに相談しましょう。
8.【関連情報】カスハラに関するその他のお役立ち情報
この記事では、「カスハラ対策!カスタマーハラスメントのマニュアルや指針策定、防止策を解説」として、介護業界におけるカスハラ対策や防止策についてを解説してきましたが、この記事でご紹介していないカスタマーハラスメントに関するお役立ち情報も以下でご紹介しておきますので、あわせてご参照ください。
・介護現場でのカスタマーハラスメント(カスハラ)を訴える!具体的な方法を解説
・カスタマーハラスメントの相談窓口の整備・開設方法を弁護士が解説
・理不尽なクレームとは?介護施設のモンスタークレーマーの対応方法
・非がない場合のクレーム対応!謝らないのはOK?対処法を例文付きで解説
「弁護士法人かなめ」のお問い合わせ方法
介護事故、行政対応、労務問題 etc....介護現場で起こる様々なトラブルや悩みについて、専門の弁護士チームへの法律相談は、下記から気軽にお問い合わせください。
「受付時間 午前9:00~午後5:00(土日祝除く)」内にお電話頂くか、メールフォーム(24時間受付中)よりお問合せ下さい。
介護事業所に特化した法務サービス「かなめねっと」のご案内
弁護士法人かなめではトラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入しています。他にはない対応力で依頼者様にご好評いただいています。
「かなめねっと」では、弁護士と介護事業所の関係者様、具体的には、経営者の方だけでなく、現場の責任者の方を含めたチャットグループを作り、日々現場で発生する悩み事をいつでもご相談いただける体制を構築しています。
法律家の視点から利用者様とのトラブルをはじめ、事業所で発生する様々なトラブルなどに対応します。 現場から直接、弁護士に相談できることで、社内調整や伝言ゲームが不要になり、業務効率がアップします!
介護業界に特化した経営や現場で使える法律セミナー開催情報
弁護士法人かなめが運営する「かなめねっと」では、日々サポートをさせて頂いている介護事業者様から多様かつ豊富な相談が寄せられています。弁護士法人かなめでは、ここで培った経験とノウハウをもとに、「介護業界に特化した経営や現場で使える法律セミナー」を開催しています。セミナーの講師は、「かなめ介護研究所」の記事の著者で「介護業界に特化した弁護士」の畑山が担当。
介護施設の経営や現場の実戦で活用できるテーマ(「労働問題・労務管理」「クレーム対応」「債権回収」「利用者との契約関連」「介護事故対応」「感染症対応」「行政対応関連」など)を中心としたセミナーです。
弁護士法人かなめでは、「介護業界に特化した弁護士」の集団として、介護業界に関するトラブルの解決を介護事業者様の立場から全力で取り組んで参りました。法律セミナーでは、実際に介護業界に特化した弁護士にしか話せない、経営や現場で役立つ「生の情報」をお届けしますので、是非、最新のセミナー開催情報をチェックしていただき、お気軽にご参加ください。
介護特化型弁護士による研修講師サービスのご案内
弁護士法人かなめが運営している社会福祉法人・協会団体・自治体向けの介護特化型弁護士による研修講師サービス「かなめ研修講師サービス」です。顧問弁護士として、全国の介護事業所の顧問サポートによる豊富な実績と経験から実践的な現場主義の研修を実現します。
社会福祉法人の研修担当者様へは、「職員の指導、教育によるスキルアップ」「職員の悩みや職場の問題点の洗い出し」「コンプライアンスを強化したい」「組織内での意識の共有」などの目的として、協会団体・自治体の研修担当者様へは、「介護業界のコンプライアンス教育の実施」「介護業界のトレンド、最新事例など知識の共有をしたい」「各団体の所属法人に対して高品質な研修サービスを提供したい」などの目的として最適なサービスです。
主な研修テーマは、「カスタマーハラスメント研修」「各種ハラスメント研修」「高齢者虐待に関する研修」「BCP(事業継続計画)研修」「介護事故に関する研修」「運営指導(実地指導)に関する研修」「各種ヒヤリハット研修」「メンタルヘルスに関する研修」をはじめ、「課題に応じたオリジナル研修」まで、介護事業所が直面する様々な企業法務の問題についてのテーマに対応しております。会場またはオンラインでの研修にご対応しており、全国の社会福祉法人様をはじめ、協会団体・自治体様からご依頼いただいております。
現在、研修講師をお探しのの介護事業者様や協会団体・自治体様は、「かなめ研修講師サービス」のWebサイトを是非ご覧ください。