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諭旨解雇とは?意味や諭旨退職との違い、要件や手続について【事例付き】

諭旨解雇とは?意味や諭旨退職との違い、要件や手続について【事例付き】
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「何度注意をしても全く聞く耳を持たない問題職員がいる」
「職員が飲酒運転で事故を起こして逮捕された。他の職員への影響が心配」
「職員が何日も欠勤していて、連絡さえしてこない状況が続いている」

事業規模が拡大し、雇用する職員の人数が増えてくると、このような職員の悩みも増えてきます。中には、事業所として、注意指導等の様々な措置を講じたにもかかわらず、やはり解雇以外に方法がないという結論を出さざるを得ないこともあります。解雇には、大きく分ければ普通解雇と懲戒解雇の2種類がありますが、懲戒処分としての解雇には、さらに「諭旨解雇」と呼ばれる手続きがあります。

諭旨解雇とは、懲戒解雇よりも1段階軽い手続きであり、懲戒解雇相当の解雇事由があるものの、職員の反省具合やこれまでの功績などを捉えて、まずは職員本人に退職届を出すことを勧告するものです。とはいうものの、懲戒解雇と同様、「解雇権濫用法理」について定めた労働契約法16条による解雇制限を受けますし、無効となった場合の影響は、懲戒解雇と同様です。

そのため、諭旨解雇を検討する際は、そもそも処分を実施できるかどうかの判断基準をはじめ、正しい手順を理解しておくことが必要です。

そこで、この記事では、諭旨解雇の根拠や、諭旨解雇とその他の手続との違いなどを紹介した上で、諭旨解雇を適法に行うために必要な解雇の理由や手続を具体的な事例を元に解説します。そして、最後まで読んでいただくことで、諭旨解雇を選択する際のメリットやデメリットを理解でき、問題のある職員に対する処分の選択肢として、諭旨解雇を有意義に利用することができるようになります。

それでは、見ていきましょう。

 

▶参照:労働契約法16条

(解雇)
第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

参照元:「労働契約法」の条文

 

1.諭旨解雇とは?

諭旨解雇とは?

まずは、諭旨解雇の意味など基礎知識についてわかりやすく解説します。

 

1−1.諭旨解雇は懲戒処分の一種

諭旨解雇とは、懲戒解雇相当の事由がある場合でも、本人に反省が認められる時に、解雇事由に関して本人に説諭し、退職届を提出するよう勧告する手続です(読み方は、「ゆしかいこ」と読みます)。 諭旨解雇となった職員が勧告に応じず、退職届を提出しなかった場合には、懲戒解雇となります。

諭旨解雇は、懲戒処分の1つであり、使用者が従業員の企業秩序違反行為に対して科す制裁罰です。つまり、使用者が、企業の存立と事業の円滑な運営のために必要不可欠な権利として有している「企業秩序を定立し維持する権限」に基づいて、この企業秩序に反する行動をとった労働者に対して与えられる刑罰のようなものです。

懲戒処分というと、懲戒解雇をイメージすることが多いかもしれませんが、懲戒処分には、戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などの様々な程度や効果の処分があり、諭旨解雇は懲戒解雇に次ぐ非常に思い処分となります。

 

1−2.諭旨退職や諭旨免職との違いは?

諭旨解雇と類似する言葉として、.「諭旨退職」や「諭旨免職」という言葉があります。これらは、諭旨解雇を言い換えたもので、意味は同じです。

「諭旨退職」は、諭旨解雇が退職届を提出するよう勧告する手続きであることから、「退職」という言葉を使ったものであり、「諭旨免職」は解雇を免職と言い換えたものです。なお、「諭旨解雇」について、どのような名称を利用していたとしても、その効果は就業規則により異なります。

例えば、勧告に応じて退職届を出した場合に、退職金を得られるかどうかは、各事業所の就業規則により異なります。名称にとらわれず、就業規則の定めをよく確認し、その内容が事業所として意図しない内容である場合には、改訂等を検討するようにしましょう。

 

1−3.諭旨解雇の根拠

諭旨解雇の根拠として、法律上の根拠と就業規則上の根拠についてふれておきます。

 

(1)法律上の根拠

諭旨解雇を含む懲戒処分については、法令上の根拠はありませんが、裁判所は、企業秩序定立権の一環として、当然に使用者が有する権利であると考えています。

 

参考:最高裁 昭和54年10月30日判決

 

・事案の概要:

労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の物的施設を利用して組合活動をしたことが懲戒事由にあたり得るかどうかが問題となった事案。

 

・判例の内容:

労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動にあたらない。

 

▶参照:「最高裁 昭和54年10月30日判決」の判決内容はこちら

 

 

また、労働契約法15条は、使用者が懲戒処分をする権限があることを前提として、以下のような定めをしています。

 

▶参照:労働契約法15条

(懲戒)
第15条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

・参照元:「労働契約法」の条文はこちら

 

 

(2)就業規則上の根拠

しかしながら、裁判所は、懲戒処分については、あらかじめ就業規則に懲戒の種別及び事由を定めておくことが必要であると考えています。これは、懲戒処分が、使用者が従業員に対して課す「制裁罰」であるという観点から、あらかじめその懲戒事由と制裁罰の内容を就業規則に規定し、従業員の予測可能性を確保する必要があるという点にあります。

例えば、懲戒事由については、以下のような規定を置くことが考えられます。

 

▶参考:就業規則の規定例

(1)正当な理由なく、欠勤したとき
(2)正当な理由なく、遅刻、早退もしくは就業時間中無断外出したとき、又は職場を離脱 して業務に支障をきたしたとき
(3)勤務に関する手続き、届出を偽り、又は怠ったとき
(4)業務上の書類、伝票等を改変したとき
(5)報告を疎かにした又は虚偽の申告、届出をし、事業所の正常な運営に支障をきたした とき
(6)業務に対する誠意を欠き、職務怠慢と認められるとき
(7)素行不良で園の秩序又は風紀を乱したとき
(8)就業時間中に許可なく私用を行ったとき
(9)業務上の指示、命令に従わないとき
(10)事業所の運営方針に違背する行為のあったとき
(11)酒酔い運転又は酒気帯び運転をし、検挙されたとき
(12)接客応対態度が悪いとき
(13)不法又は不正の行為をして職員としての体面を汚したとき
(14)事業所内において業務上不必要な火気、凶器その他これに準ずべき危険な物を所持していたとき
(15)タイムカードの打刻、出勤簿の表示を他人に依頼し、又は依頼に応じたとき
(16)事業所の車両を私用に供し、又は他人に使用させたとき
(17)協調性に欠け不当に人を中傷する等、他の職員等とそりの合わないとき
(18)事業所の発行した証明書類を他人に貸与し、又は流用したとき
(19)許可なく事業所の文章、帳簿、その他の書類を部外者に閲覧させ、又はこれに類する  行為のあったとき
(20)規則、通達、通知等に違反し、前各号に準ずる程度の不都合な行為があったとき
(21)過失により業務上の事故又は災害を発生させ、事業所及び利用者に損害を与えたとき
(22)事業所内で暴行、脅迫、傷害、暴言又はこれに類する行為をしたとき
(23)事業所に属するコンピューター、電話(携帯電話を含む)、FAX、インターネッ   ト、電子メールその他の備品を無断で私的に使用したとき
(24)過失により事業所の建物、施設、備品等を汚損、破壊、使用不能の状態等にしたと   き、又はハードディスク等に保存された情報を消去又は使用不能の状態にしたとき
(25)服務規定に違反した場合であって、その事案が軽微なとき
(26)安全衛生規定に違反した場合であって、その事案が軽微なとき
(27)事業所が定める各規定に違反した場合であって、その事案が軽微なとき
(28)法令違反等の不正行為の真偽を確認せず又は公益通報者保護法第3条第3号に規定す  る要件に該当することなく外部通報を行った結果、法人・事業所の信用を害し、損害  を与えたとき
(29)他の職員をして前記各事項に違反するよう教唆し、もしくは煽動したとき
(30)前号までの事項において懲戒した後も、改悛の状が認められなかったり、繰り返した  りして、改善の見込みがないと園が認めたとき
(31)その他前各号に準ずる程度の不都合な行為があったとき

 

 

2.諭旨解雇と他の手続との違い

諭旨解雇に類する手続きとして、以下の4つなどがあります。

 

  • 1.普通解雇
  • 2.懲戒解雇
  • 3.退職勧奨
  • 4.依願退職

 

ここでは、これらの手続と諭旨解雇との違いについて解説します。

 

2−1.普通解雇との違い

諭旨解雇と普通解雇の大きな違いは、懲戒解雇が従業員への「制裁」を根拠として解雇をするのに対し、普通解雇は、従業員が労働契約の本旨に従った労務を提供しないこと、つまり、債務不履行を理由として労働契約を解約する点にあります。

そのため、普通解雇の解雇理由としては、能力不足、私傷病による心身の疾患、勤労意欲や協調性の欠落等により、職務の遂行に支障を来していることが、内容の主たるものとなります。また、普通解雇の中には、使用者が経営不振などの経営上の理由により、人員削減の手続として行う解雇である整理解雇もあります。この整理解雇は、労働者側の事由を直接の理由とした解雇ではないことが特徴的です。

普通解雇については、以下の記事で詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

 

▶️参考:普通解雇とは?無効とならない手続きを事例付きで弁護士が解説

 

 

2−2.懲戒解雇との違い

懲戒解雇は、諭旨解雇と同様に、懲戒処分の1つであることから、その根拠は従業員への「制裁」にあります。また、懲戒解雇と諭旨解雇の解雇事由は、概ね同じであり、諭旨解雇をするにあたっても、懲戒解雇の解雇事由相当の解雇原因が必要となります。

しかしながら、懲戒解雇が諭旨解雇と大きく異なるのは、諭旨解雇が、懲戒解雇相当の事由がある場合でも、本人に反省が認められる時に、解雇事由に関し本人に説諭し、退職届を提出するよう勧告する手続きであることであるのに対し、懲戒解雇は、このような手続きを挟まずに、一方的に職員を解雇する手続です。そのため、事業所によっては、退職金の支給金額等に違いがあることもあります。

懲戒解雇については、以下の記事で詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

 

▶️参考:懲戒解雇とは?有効になる理由や手続きを事例付きで弁護士が解説

 

 

2−3.退職勧奨との違い

退職勧奨は、事業所などの雇用主が、雇用する職員に対して退職をするよう勧めることであり、あくまで任意に職員の退職を勧める手続であるため、何らの強制力や法的な効果を有するものではありません。

3−2.諭旨解雇を行うことのデメリット」で解説するようなデメリットを回避するために、行われることが多いです。

退職勧奨については、以下の記事で詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

 

▶️参考:退職勧奨とは?具体的な進め方、言い方などを弁護士が解説

 

 

2−4.依願退職との違い

依願退職は、職員が雇用主に対して、退職の意思を表示して退職をすることであり、いわゆる「自主退職」のことを言います。つまり、雇用主側の一方的な解雇や、雇用主側からの働きかけによる退職とは違い、職員自らの希望により、従業員としての地位を喪失するものです。

依願退職に関しては、民法上は2週間前にその予告をしなければならないこととなっています。

 

▶参照:民法626条

(期間の定めのある雇用の解除)
第626条 雇用の期間が五年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
2 前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは三箇月前、労働者であるときは二週間前に、その予告をしなければならない。

・参照元:「民法」の条文はこちら

 

【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】

 

就業規則の中で、職員が退職を予告する時期を「1ヶ月前」とするなど、民法上の規定よりも長い予告期間を設けている場合も多いのではないかと思います。しかしながら、実際にはこのような就業規則上の規定を守らず、退職の意思表示をする職員も多く、このような場合に、何か雇用主側として対抗できないかと相談を受けることもあります。

 

まず、就業規則で、法律よりも長い予告期間を定めていた場合、一般的に民法の規定は任意法規であると考えられているため、就業規則の規定が特約として優先されます。もっとも、就業規則で定めていたからと言って、必ずしも規定が有効なわけではなく、極端に長い予告期間が定められている場合は、公序良俗の観点から無効とされることもあります。(▶️参照:厚生労働省「退職の申出は2週間前までに」(pdf)

 

もっとも、働く気がない職員に対して、「1ヶ月働くように」と強制的に指示をしても、現実的には望ましい働き方は期待できません。特に、介護事業所では、利用者の健康や安全を担っており、職員同士の連携も不可欠です。そのため、職員から退職の申し出があった場合には、就業規則上の規定に固執せず、最低限必要な引継ぎを行うことを最重要事項として、話合いをすることを検討しましょう。

 

 

3.諭旨解雇を行うことのメリットとデメリット

諭旨解雇を選択するにあたっては、事業所側、職員側それぞれのメリットとデメリットをしっかりと把握する必要があります。以下では、諭旨解雇を行うことによって発生するメリットとデメリットを、事業所側、職員側の双方から解説します。

 

3−1.諭旨解雇を行うことのメリット

 

(1)事業所側

諭旨解雇を行う上での一番のメリットは、退職届を出すか否かを職員に選択させる、というプロセスを挟むものの、職員の意思によらず、職員の労働者の地位を失わせることができることです。また、諭旨解雇は懲戒処分の中でも懲戒解雇に次ぐ重い処分であるため、職員を諭旨解雇にすることで、事業所として、懲戒解雇に該当する行為をした職員に対して、厳とした態度を取ることを示すことができ、事業所内の規律を守ることにも繋がります。

 

(2)職員側

職員側にとっては、諭旨解雇を受け入れて退職届を出すか、諭旨解雇を受け入れず懲戒解雇となるかで、やや状況が異なります。具体的には、退職届を出すか、解雇となるかにより、「自己都合」退職となるか、「会社都合」退職となるかが変わり、失業保険給付を受けられる期間が変わります。

労働者は、「自己都合」で退職をした場合には、離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から通算して7日間の待機期間及び2か月の給付制限を経て支給されるところ、解雇は、「会社都合」の退職(特定受給資格者)として、離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から通算して7日間の待機期間を経て支給されます。

すなわち、解雇の場合は、失業保険給付を早く受けることができるため、これがメリットのようにも思え、そうであれば、退職届を出さずに懲戒解雇になった方が良いと考える職員もいるかもしれません。しかしながら、懲戒解雇のように、自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇となった職員は、特定受給資格者の要件を満たさず、「自己都合」退職と同様に給付制限を受けることになります。

 

▶︎参照:ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」

 

 

そのため、退職の勧告を受け入れず、懲戒解雇を受けた方が、職員にとって有利になるかといえば、必ずしもそうではありません。むしろ、勧告に応じて退職届を出した方が、就業規則の定め等にはよりますが、退職金を一定額得られる場合もあります。この場合は、諭旨解雇に応じて退職届を出すことは、職員にとってメリットと言えます。

 

3−2.諭旨解雇を行うことのデメリット

 

(1)事業所側

事業所側にとって、諭旨解雇をすることの最大のデメリットは、解雇無効のリスクです。後述するように、諭旨解雇は、退職届の提出を勧告する手続ですが、その後に懲戒解雇を予定しており、プロセスをしっかり履践しなければ、無効となってしまいます。解雇が無効になれば、バックペイや慰謝料請求などの危険に晒されることになり、このような事情から、事業所は解雇をできる限り避けるべく、退職勧奨等による解決を図るのです。

また、諭旨解雇の手続きが有効となり、かつ、退職届を提出せずに懲戒解雇となった場合、もう1つのデメリットとして、「会社都合」退職をさせることによる助成金の支給要件への抵触があります。事業所が受けている助成金の支給要件の中には、6ヶ月以内に会社都合による離職者がいないこと、という要件のあるものが多数存在します。助成金の内容や詳しい支給要件は、以下のページをご覧ください。

 

▶︎参照:厚生労働省「平成31年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(詳細版)」(PDF)

 

 

諭旨解雇は、事業所にとってやむに止まれず行う手続ですが、そこで職員が退職届を出すか出さないかは、諭旨解雇の段階では必ずしもはっきりしません。

そして、助成金の受給の可否は事業所運営に影響を与えることが予想されます。そのため、当該職員を最終的に懲戒解雇してでも、労働者としての地位を失わせることが重要と考えるか、助成金の受給を最優先として、退職勧奨等により自主的な退職を求めるかなど、しっかり方針を決めて進めていく必要があります。

 

(2)職員側

職員にとっては、諭旨解雇をされた場合、仮に退職届を提出したとしても、退職金等の関係で、自己都合で退職した場合や普通解雇された場合に比較して不利に扱われる可能性があります。これは、諭旨解雇の「制裁罰」としての性質からですが、自らの正当性を主張している職員であれば、納得がいかず、紛争が再燃することになるでしょう。

また、諭旨解雇をされた場合、再就職の際になかなか再就職が決まらないケースもあります。具体的には、就職活動の際には、採用の際の書類として、履歴書の他、解雇理由証明書等の提出を求められることもあります。そうなれば、当然懲戒解雇の事実やその理由についてもわかることとなってしまい、そのような職員を雇用することには当然躊躇することになるのです。

 

4.諭旨解雇の要件【事例付き】

次に、諭旨解雇の要件として、その判断基準について詳しい事例や判例を紹介しながら解説します。

 

4−1.有効性の判断基準

1−3.諭旨解雇の根拠」の「(1)法律上の根拠」で紹介した通り、労働契約法は、懲戒について以下のように規定しています。

 

▶参照:労働契約法15条

(懲戒)
第15条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

・参照元:「労働契約法」の条文はこちら

 

 

労働契約法が、このような包括的・一般的な規定の仕方をするのみで、具体的な考慮要素を上げていないのは、懲戒処分には、様々な種類があり、その程度も千差万別であることから、一般的な事情を事前に示しておくことが難しいからです。そのため、労働契約法15条や懲戒処分の趣旨からすると、以下のような観点から有効性が判断されることになります。

 

  • 1.就業規則の懲戒規定の有無・就業規則の内容を誓約する旨の書面の有無・規定の合理性
  • 2.企業秩序違反行為があるか
  • 3.懲戒規定で定める懲戒事由に該当するか
  • 4.懲戒権の行使に相当性があるか

 

そのため、就業規則に懲戒事由を定めていたとしても、職員の具体的な行為が企業秩序違反行為に当たらなければ、懲戒処分することはできません。また、懲戒事由に該当する企業秩序違反行為があったとしても、懲戒処分の内容が相当でなければ無効となります。

そして、懲戒処分、さらにはその中でどの懲戒処分を選ぶかは、懲戒事由該当性のみではなく、どのようなプロセスが取られたかという、手続的観点が非常に重要になります。

 

4−2.具体的な解雇理由

ここでは、まずは懲戒事由となり得る具体的な事情について見て行きたいと思います。

 

▶︎参照:解雇理由については、以下の記事も合わせてご覧ください。

具体的な解雇理由から学ぶ!違法にならない解雇の条件や要件とは?

 

 

(1)職務怠慢

介護事業所の職員として、本来行うべき職務を果たさない、例えば、夜間に利用者のナースコールが鳴っているのに無視をする、利用者の送迎の際に必要な声かけをしない、食事介助の際に十分な介助をしないなどといった職務怠慢行為は、企業秩序を大きく乱すものです。

このような行為に対して、通常は口頭注意を行う介護事業所が多いと思いますが、そのような注意指導をしても改善されず繰り返し同様の行為が繰り返されたり、反抗的な態度が取られている場合には、懲戒処分を検討しても良いでしょう。

このような職務怠慢を含めた「仕事ができない人」への対応については、以下の記事でも詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

 

▶参照:仕事ができない人の放置は厳禁!特徴ごとの対応方法を徹底解説!

 

 

(2)素行不良

遅刻、居眠り、業務中の私物のスマートフォンの利用など、日常の素行不良や、注意指導に対する態度が威圧的、反抗的であったり、注意指導を全く聞き入れない態度を繰り返すなどした場合も、懲戒処分の理由となり得ます。いわゆる「モンスター社員」による逆パワハラも、素行不良の類型の1つです。

 

▶参照:「モンスター社員」への対応方法については、以下の記事で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。

モンスター社員!特徴と対応方法を事例付きで弁護士が解説【放置厳禁】

 

また、「逆パワハラ」については、以下の記事でも詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。

逆パワハラとは?判断基準や事例・正しい対処法をわかりやすく解説

 

 

(3)犯罪行為

職員による犯罪行為としては、大きくわけて2種類があり得ます。

 

  • 1.業務に関係する犯罪行為
  • 2.業務外での犯罪行為

 

1.業務に関係する犯罪行為

例えば、事務所のお金を横領する、事業所の備品を盗む、利用者を故意に殴ったり怪我をさせるなど、まさに業務にかかわる犯罪行為は、深刻な懲戒事由として扱う必要があります。

業務に関する犯罪行為として、住居手当や単身赴任手当などの不正受給を理由に行った懲戒解雇が有効となった裁判例として、「KDDI事件(東京地判平成30年5月30日判決労判1192.40)」があります。

※なお、懲戒解雇と諭旨解雇については、いずれも懲戒解雇に相当する解雇事由が必要とされていることから、諭旨解雇を検討するにあたっては、懲戒解雇の事例が参考になります。

 

▶︎参考例:KDDI事件(東京地判平成30年5月30日判決労判1192.40)

3年以上にわたり、「1.住居手当、2.単身赴任手当の不正受給、3.社宅使用料の不正な不払い、4.自宅賃料の不正支払い、5.本人赴任手当の不正受給、6.帰省手当の不正受給等を繰り返し、判明しているだけでも400万円を超える損害を会社に与えた従業員を懲戒解雇としたことに対し、解雇の無効が争われた事案。

●判決の概要:

各不正行為に対して、以下の通りに認定をした上、雇用を継続する前提となる信頼関係を回復困難なほどに毀損する背信行為を複数回行ったとして、懲戒解雇を有効とした。

1.住居手当の不正受給(9か月間、損害額18万円)

→不作為であり、短期間であって、害意も明確でないため、懲戒事由には該当しない。

2.単身赴任手当の不正受給(3年以上、損害額148万円)

→申請システムにより支給基準を満たさないことを認識できたのに虚偽申告をし、刑事犯にも該当しうるから、懲戒事由に該当する。

3.社宅使用料の不正不払い(3か月間、損害額1万5500円)

→申請システムにより支給基準を満たさないことを認識できたのに虚偽申告をし、刑事犯にも該当しうるから、懲戒事由に該当する。

4.自宅賃料の不正不払い(約3年間、損害額約243万円)

→社宅の返還義務を認識しながら返還せず、故意に会社に損害を与えたから、懲戒事由に該当する。

5.本人赴任手当の不正受給(損害額5万円)

→申請システムにより支給基準を満たさないことを認識できたのに虚偽申告をし、刑事犯にも該当しうるから、懲戒事由に該当する。

6.帰省旅費の不正受給(損害額約16万円)

→支給基準を満たさないことを認識できたのに虚偽申告をし、故意に損害を与えたから懲戒事由に該当する。

 

 

2.業務外での犯罪行為

例えばコンビニで万引きをした、電車内で痴漢行為をした、喧嘩で人を殴って怪我をさせたなど、様々な行為が考えられます。

事業所としては、このような業務外での犯罪行為をした職員が、他の職員や利用者への影響を与えることを恐れ、何らかの措置を講じたいと思うのは自然なことです。

しかしながら、「2.業務外での犯罪行為」の場合は、必ずしも懲戒事由とはなりません。なぜなら、雇用主が懲戒処分ができるのは、雇用主が事業所において、事業所内の秩序を維持する権限を有しているからであり、そのような権限を行使できるのは企業秩序義務違反があった場合に限られるからです。

逆に言えば、もし職員が事業所外で、業務とは関係のない犯罪を行ったとしても、事業所内の秩序に対しては必ずしも悪影響を与える訳ではありません。そのため、企業秩序義務違反に当たらない業務外での犯罪行為に対しては、事業所が何らかの処分ができる立場にはないのです。

以下の事例では、ある市の水道局職員であった原告が、原動機付自転車で酒気帯び運転をして警察に検挙されたことを理由とする懲戒免職処分の有効性が争われましたが、様々な事情を考慮した結果、懲戒免職処分は無効とされています。

 

▶参考例:東京高裁平成27年12月15日判決

この裁判例では、市が当該職員に対して懲戒免職処分をした理由として「当該職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき地方公務員の地位にありながら(地方公務員法30条)、全国的に飲酒運転に対する非難とその撲滅に対する社会的気運が高まり、特に市においては過去の職員による飲酒運転ひき逃げ死亡事故を契機として飲酒運転撲滅に向けて市を挙げて取り組んでいる中にあって、本件非違行為に及んだ」ことが挙げられており、裁判所も、これに対して厳しい懲戒処分をもって対処した市の対応について、理解を示しています。

しかしながら、他方で、「公務員に対する懲戒処分について、懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の上記行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきであって、特に、懲戒処分のうち免職処分は、被懲戒者の公務員たる地位を失わせるという重大な結果を招来するものであるから、懲戒処分としての免職処分を選択するに当たって、非違行為に係る責任や懲戒処分を課すことによる公務秩序維持の必要性と処分による不利益の内容との権衡等の観点から、免職処分を選択することの相当性が基礎付けられているかどうかにつき、慎重な検討を要するものというべきである。」と説明した上で、本件について検討しています。

その結果、以下の「(ア)〜(エ)」などの事情から、本件非違行為に対して停職等ではなく免職をもって臨むことは、非違行為に係る責任や懲戒処分を課すことによる公務秩序維持の必要性と処分による不利益の内容との権衡を欠き、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠くものといわざるを得ないとして、懲戒免職を無効としています。

  • (ア)本件非違行為は飲酒運転行為の中では比較的軽微な態様であり、人的・物的な被害結果も生じていない上、原因、動機ないし経緯において悪質性が著しいとまではいえないこと
  • (イ)当該職員は管理職又は指導的立場にあったわけではないこと
  • (ウ)当該職員は本件非違行為後の警察による検査や事情聴取に素直に応じ、上司にも速やかに本件非違行為の事実を報告するなどして、反省の姿勢を示していること
  • (エ)当該職員に懲戒処分歴はなく、日頃の勤務態度にも問題はなかったこと

 

 

(4)経歴詐称

入社時に経歴を偽ったり、不実の陳述をして採用された職員が、その経歴を詐称していたことがわかった場合、諭旨解雇事由となります。もっとも、仮に経歴を詐称していたとしても、それによって業務に支障がなかった場合は、それ自体は著しい非行とは言えないことから、あくまで「労働契約に基づく義務履行の上で支障を発生させるような重大な経歴詐称」があった場合に、諭旨解雇が可能となリます。

例えば、以下の裁判例では、採用面接時の履歴書にて、「学歴・高等学校卒業、賞罰・なし」と記載をしていた職員が、実は大学中退の学歴、2度にわたって逮捕、勾留され、保釈中であり、かつ、右2件の刑事事件の公判係属中であったことが判明したことから、懲戒解雇とされた事案で、解雇の無効が争われましたが、結論として懲戒解雇が認められています。

 

▶参考例:炭研精工事件(最高裁平成3年9月19日判決労判615-16)

裁判所は、「雇用契約は、継続的な契約関係であって、それは労働者と使用者との相互の信頼関係に基礎を置くものということができるから、使用者が、雇用契約の締結に先立ち、雇用しようとする労働者の経歴等、その労働力の評価と関係のある事項について必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には、労働者は、信義則上、真実を告知すべき義務を負っているというべきである。」とし、特に雇用しようとする労働者が刑事裁判の公判係属中であって、保釈中であるという場合には、保釈が取り消され、あるいは実刑判決を受けて収監されるなどのため勤務することができなくなる蓋然性の有無、公判に出頭することによって欠勤等の影響が生ずるか否か等を判断することは、当該労働者の労働力を評価し、雇用するか否かを決する上で重要な要素となるため、労働者は当然にこれを申告しなければならず、これを秘匿して会社に雇用されたことは、懲戒事由に当たるとして、解雇は有効とされたのです。

 

 

(5)業務命令違反

例えば、正当な理由なく会社が命じる転勤、職種変更、出向等を拒んだ場合、懲戒事由となる場合があります。

配置転換などの人事の問題は、原則として使用者側に裁量権があります。実際に事業者側は、様々な状況を総合的に考慮した上で、人事命令を出しています。それにもかかわらず、職員が相当な理由なくこれを拒否すれば、事業所運営に支障をきたしてしまいます。

一方で、人事命令も無制限に許されるわけではなく、具体的には、人事命令の必要性、対象従業員の選定に係る事情、その他の事情を考慮して、人事権の濫用がないか否かを検討する必要があります。

以下の参考イメージ図のように、片方の皿に従業員側の事情、他方の皿に会社側の事情を乗せた天秤をイメージしてみると、わかりやすいと思います。

 

▶参考イメージ図

従業員側の事情と会社側の事情のバランスの参考イメージ図

 

このような事情を考慮した上で、もし人事命令自体が違法であるとすれば、当然これを拒否したことを理由に行った懲戒解雇、懲戒処分も無効となります。

例えば、以下のような事案があります。

 

▶参考例:国立研究開発法人国立循環器病研究センター事件(大阪地裁平成30年3月7日判決)

被告から独立行政法人が運営する病院への異動命令(本件異動命令)を拒否したことを理由として懲戒解雇となった原告が,被告に対し,同解雇は無効であるとして,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた事案。

 

●判決の概要:

被告からの本件異動命令は、転籍出向に該当するにもかかわらず、原告の同意を欠き、人事権の濫用に当たるから、懲戒権の濫用にあたり、懲戒解雇は無効である。

また、仮に原告の同意が不要であったとしても、原告の妻が精神疾患に罹患し、原告の出向によって多大な影響が出ることが推測され、そのことを原告が被告に繰り返し伝えていたこと、人事異動の必要性がさほど高くなかったことなどから、いずれにしても人事権の濫用があると判断した。

・参照:「国立研究開発法人国立循環器病研究センター事件(大阪地裁平成30年3月7日判決)」の判決内容はこちら

 

 

5.諭旨解雇の具体的な手続の流れ

次に、懲戒解雇を実施する際の正しい進め方について説明していきます。以下で具体的な手順ごとに解説していますのでご覧ください。

 

5−1.諭旨解雇におけるプロセスの重要性

諭旨解雇をする場合には、そもそも懲戒事由があるか、そして、懲戒事由があるとして、諭旨解雇の手段を取ることが相当かという2つの面から検討をする必要があります。

懲戒事由によっては、その事由をもって直ちに諭旨解雇の判断ができる場合(事業所内での犯罪行為など)もありますが、多くの場合は、懲戒処分に至らない注意指導からのプロセスを1つ1つ積み重ねていく必要があります。このプロセスを怠れば、仮に懲戒事由があったとしても、諭旨解雇が無効となる可能性が著しく高まります。

ここからは、諭旨解雇の手段を取る場合のプロセスを、順を追って見て行きましょう。

 

5−2.諭旨解雇に至るまでのプロセス

 

(1)粘り強い注意指導

諭旨解雇に至るまでの出発点となるのは、事業所から当該職員への注意指導です。

事業所としては、まずは問題行動を繰り返す職員に対して注意指導し、自らの言動や態度を反省させ、行動の改善を促すことが重要です。注意指導の方法については、口頭、メールやLINE、書面など様々な方法がありますが、いずれの方法を取るにしても、記録を残すことに注力をする必要があります。

注意指導の具体的な方法については、以下の記事の記事で詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

 

▶️参考:問題職員の指導方法とは?正しい手順と注意点などを指導例付きで解説

 

 

(2)懲戒処分

懲戒処分には、戒告や譴責(けんせき)といった、職員への影響が比較的小さいものから、減給、出勤停止、降格処分、諭旨解雇、懲戒解雇といった、職員の地位や労働契約の本質部分に影響のある重い処分まで順番に定められています。

懲戒処分をする際には、これまでに行ってきた注意指導や他の懲戒処分の存在も考慮の上、その内容を決めることになります。そのため、事業所としては、注意指導によっても態度が改まらない職員に対しては、まずは戒告や譴責などの懲戒処分を行い、回数を重ねて行くようにしましょう。このプロセスを丁寧に行わなかった場合、諭旨解雇は無効となる可能性が高くなります。

 

(3)退職勧奨

注意指導や懲戒処分によっても態度が改まらない場合、事業所としては、退職勧奨により、職員の自主的な退職を促すことも考えられます。退職勧奨は、解雇とは異なり、なんらの強制的な手段も伴うものではありませんが、退職時のさまざまな条件の取り決めができるなど、うまく利用ができれば非常に効果的な手段です。

退職勧奨についての具体的な方法や注意点は、以下の記事をご覧ください。

 

▶︎参照:退職勧奨とは?具体的な方法や違法にならないための注意点を弁護士が解説

 

 

5−3.諭旨解雇の際のプロセス

 

(1)本人への弁明の機会の付与

諭旨解雇は、懲戒処分の中でも非常に重い処分であることから、十分な事実の調査は不可欠です。そのため、諭旨解雇を通知する前には、本人からの聴取を含め、しっかりと弁明の機会を与える必要があります。弁明の機会の付与の方法としては、就業規則に規定をおいている場合はこれに従う必要がありますが、例えば、以下のような方法があります。

 

  • 弁明の機会を与える日を決めて呼び出し、その場で話を聞く
  • 期限を決めて書面での弁明を求める

 

(2)諭旨解雇の通知【通知書雛形】

弁明の機会を与えた上で、それでもなお諭旨解雇相当であると考えた場合には、諭旨解雇の通知を出します。

諭旨解雇の通知は、

 

  • 当該職員を諭旨解雇とすること
  • 決められた期限までに退職届を出さなければ、同日付で懲戒解雇となること

 

とともに、その理由を記載します。諭旨解雇の理由は、就業規則上の規定としっかり結びついている必要があり、どのような事実を認定し、解雇事由としているかが明確にわかるように記載をしておく必要があります。

ここでは、利用者を虐待した職員に対する諭旨解雇を前提とした懲戒処分通知書の例を紹介します。

 

5−4.諭旨解雇の通知に対するリアクション

 

(1)退職届を出した場合

諭旨解雇とした職員が、勧告を受けて退職届を提出した場合は、原則としては自主退職と同様の手続を取ることになります。

 

(2)退職届を出さなかった場合

諭旨解雇とした職員が、勧告を拒否して退職届を提出しなかった場合は、懲戒処分通知書記載の日を持って懲戒解雇とします。

この時、すでに懲戒処分通知書で、「貴殿が令和○年○月○日までに退職届を提出しない場合は、同日付をもって貴殿を懲戒解雇します。」と記載をしていることから、別途通知をしなくても、懲戒解雇の効果は発生しますが、手続きの明確化のために、同日付で懲戒解雇となった旨と、今後の退職に関する手続について書面で通知を発しておくのが良いでしょう。

 

5−5.有給休暇の取り扱い

退職届を提出して退職をする場合で、退職届の提出日と退職の効果が発生する日の間に期間がある場合には、その間に有給休暇の申請があれば、応じる必要があります。

なお、退職届を出す場合であっても、懲戒解雇となる場合でも、職員から、取得せずに残った有給休暇について、買取を求められることがあります。しかしながら、事業所側に、有給休暇を買い取る義務はありませんので、これに応じる必要はありません。とはいうものの、例えば勧告に応じて退職届を提出する、という手続きを取るための見返りとして、有給休暇の買取を交渉のカードとすることは可能です。難しい判断とはなりますが、専門家と相談をした上で有効に活用しましょう。

 

5−6.退職金の支払いの有無

 

(1)退職届を出した場合

退職届を提出した場合は、原則として自主退職の手続きを取ることになり、自主退職時の条件に従って退職金を支給することとなります。もっとも、就業規則等で、懲戒処分となった場合の、退職届の減免を規定している場合もあります。

退職金は、これまでの功労に対するねぎらいのほか、賃金の後払い的な性格もあるため、支払いの条件は事業所によって様々です。また、就業規則に定めたからと言って、必ずしも退職金の減免規定が有効となるわけではありません。なぜなら、退職金は、賃金の後払いという性格の面も強く、退職金の減額没収規定が有効に適用できるのは、労働者の従前の勤続の功労を抹消または減殺するほど著しい背信行為がある場合だと考えられるからです。

例えば、先に紹介をしたKDDI事件(東京地裁平成30年5月30日判決労判1192.40)では、就業規則で、懲戒解雇の場合には退職金を支払わない旨の規定があり、使用者は、実際に退職金を支払っていませんでした。

これに対して、裁判所は、使用者に対して、退職金のうち4割の限度で、支払い義務を認めています。

これの他に、「中小企業退職金共済事業」などを利用して退職金の積み立てを行っている場合には、職員本人が積み立てた分については、退職時に支給をしなければならない場合があります。

そのため、退職金の支給時には、事業所の就業規則をよく見直した上、判断に迷った場合は、すぐに労働法に詳しい弁護士に相談するようにしましょう。

 

(2)退職届を出さなかった場合

退職届を出さず、懲戒解雇となった場合には、「懲戒解雇となる者には、その状況を勘案し、退職金の全部または一部を支給しない」というような、就業規則上の規定を置いている事業所は多いのではないかと思います。この場合でも、退職届を出した場合と同様に、必ずしも同規定が有効となるわけでないですし、職員本人が積み立てた分については、退職時に支給をする必要がありますので、注意が必要です。

 

5−7.解雇予告手当の有無

 

(1)退職届を出した場合

退職届を出す場合は、自主退職であることから、解雇予告手当の支給は問題にはなりません。

 

(2)退職届を出さなかった場合

退職届を出さず、懲戒解雇となる場合には、30日前に解雇予告をするか、解雇予告手当を支払うことが労働基準法上義務付けられています(労働基準法20条1項)。

 

▶︎参考:労働基準法20条1項

(解雇の予告)
第20条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
② 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
③ 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

・参照元:「労働基準法」の条文はこちら

 

 

具体的には、諭旨解雇の懲戒処分通知をした日が、懲戒解雇の予告日となるため、この日が30日より前であれば、別途解雇予告手当の支給は不要ですし、30日に満たない場合は、30日に足りない分の解雇予告手当を支払う必要があります。

もっとも、労働基準法第20条第1項但書は、解雇予告の例外として、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」をあげています。

つまり、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合であれば、解雇予告をすることも、解雇予告手当を支払うことも不要となります。そして、このような解雇に当たる場合には、労働基準法第19条2項により、行政官庁の認定を受けなければなりません。これが、労働基準監督署が出す解雇予告除外認定です。

 

▶参考:労働基準法第19条2項

(解雇制限)
第19条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
② 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

・参照元:「労働基準法」の条文はこちら

 

 

この解雇予告除外認定の申請のための書式は、以下の厚生労働省のホームページに掲載されていますので、あわせてご確認下さい。

 

▶︎参照:厚生労働省「解雇予告除外認定の申請のための書式」

 

 

厚生労働省は、事前申出が望ましいとしつつ、事後申請も認める取扱いをしていますが、労働基準監督署によっては、事後申請を受け付けないところもあるようです。そのため、懲戒解雇を円滑に進めるためには、事前に労働基準監督署と調整し、確認をしておきましょう。

 

5−8.諭旨解雇後の手続

 

(1)離職票の作成

退職者は、失業保険の受給申請をするために、「離職票」をハローワークに提出する必要があります。そのため、職員からは、「離職票」を出して欲しいとの請求がされることが多く、職員から「離職票」の交付を請求された場合には、事業所には応じる義務があります(雇用保険法76条3項)。

具体的には、事業所は、ハローワークに対して、職員が被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出します。この「雇用保険被保険者離職証明書」は、3枚1組の複写式となっており、その中に、「離職票」が含まれています。

事業所が、「雇用保険被保険者離職証明書」を作成してハローワークに提出すると、この「離職票」の交付を受けられるため、これを職員に交付し、職員からハローワークに、必要事項を記載の上提出するという流れになります。

なお、離職届の発行を拒むと雇用保険法施行規則第7条に違反することになるため注意が必要です。詳しくは、以下の厚生労働省の「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」も参考にご覧ください。

 

▶︎参照:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」(pdf)

 

 

1.退職届を出した場合

退職届を提出した場合は、あくまで「自己都合」の退職と同様の手続きとなります。

 

2.退職届を出さなかった場合

退職届を提出せず、懲戒解雇となった場合には、「会社都合」の退職として、離職票を発行することになります。なお、諭旨解雇は法律上の規定がないため、「離職理由」については、ハローワークによって記載方法が異なる可能性があります。そのため、離職票の発行にあたっては念の為にハローワークに確認するようにしてください。

 

(2)解雇理由証明書の交付

解雇理由証明書の交付に関しては、退職届を出した場合と出さなかった場合とで手続に変わりはありません。使用者は、労働者から退職の理由について証明書を請求された場合には、遅滞なく交付する必要があります(労働基準法22条1項)。

この、いわゆる「解雇理由証明書」は、解雇や解雇の予告を通知する書面とは異なるもので、事前に発行する必要はありませんが、請求されれば遅滞なく交付する必要があり、もし請求があったにもかかわらず発行しなかった場合には、30万円以下の罰金に処される可能性があります(労働基準法120条1号)。

また、解雇の際に交付する解雇(予告)通知書には特段の決まりはありませんが、解雇理由証明書については、労働者の請求しない事項を記載してはいけないことになっています(労働基準法22条3項)。

労働者から、解雇理由証明書が請求される趣旨としては、解雇に納得ができず、何らかの法的措置を考えている場合の他、新たな雇用先へ提出するために請求をする場合もあります。後者の場合に、労働者にとって不利益な事項が記載されていると、再就職等に支障をきたすことから、不必要な記載はしてはいけないことになっているのです。これに関連して、労働者が解雇の事実のみの記載を請求した場合は、解雇理由を記載してはならないこととされています。

 

▶︎参照:厚生労働省「平成11年1月19日基発45号、第3、2号」

 

 

具体的な解雇理由証明書の記載すべき事項としては、労働基準法22条1項に記載のある「使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由」のうち、労働者が求める事項となります。

 

6.諭旨解雇の公表

ここでは諭旨解雇を実施した際の公表について、注意点や方法などを説明します。

 

6−1.諭旨解雇を公表する趣旨

諭旨解雇をする事業所側の意図としては、事業所内部の秩序維持のため、非行を行う職員に対して厳格な態度を取ることを示すという目的があります。

例えば、利用者から預かった金銭の使い込みや、利用者への虐待、事業所内の金品や備品の窃盗や横領など、事業所内で起きた犯罪行為については、これが刑法上の犯罪に当たる場合には、刑事告訴または刑事告発をすることも、厳格な態度を示す方法です。

しかしながら、刑事告訴については、事実上警察の協力を得られなかったり、立件できる程度の証拠を揃えることは困難なこともあり、奏功しないこともあります。そのような場合に、事業所が自発的に行うことができる制裁が、懲戒処分であり、その中でも諭旨解雇は、労働者としての地位を失わせる処分であり、懲戒解雇に次ぐ非常に重い処分なのです。

 

6−2.諭旨解雇を公表することのリスク

このような事業所内部の秩序維持の観点から、事業所としては、諭旨解雇とした職員の氏名や解雇理由等を細かく公表し、他の職員に知らしめたいと思うかもしれません。中には、事業所として、犯罪行為に対して厳格な態度で臨んでいることを対外的に示すため、事業所が運用するホームページやSNSに掲載したいとの希望をお持ちの場合もあります。しかしながら、諭旨解雇の事実を公表する際に注意すべきなのは、「名誉毀損」との関係です。名誉毀損は、民法、刑法の両方に以下のような定めがあります。

 

▶︎参考:民法709条、723条

(名誉毀損における原状回復)
第723条 他人の名誉を毀き損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

▶︎参考:刑法230条

(名誉毀損)
第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
(2項省略)

 

 

この名誉毀損は、公表した事実が真実であるかどうかに関わらず、具体的な事実を摘示して、これにより社会的評価等が低下すれば、原則としては成立することになります。

例えば、ジャパンビジネスラボ事件(東京高裁令和元.11.28 労判1215.5)では、職員が就業規則違反を行った事実等を、得意先に対してメールで送信するなどしたことについて、会社側に不法行為に基づく損害賠償が認められています。

 

▶︎参照:「ジャパンビジネスラボ事件」の判決内容 

 

 

6−3.具体的な公表方法

このように、ある職員を諭旨解雇にした事実やその内容については、対外的に公表することは控えた方が得策です。

もっとも、虐待事案等では、事業所の公表の有無にかかわらず、マスコミ報道などにより、公的な説明が必要となるケースもあります。その場合には、当該職員の氏名等、プライバシーに関する情報は避け、事業所の処分内容として、諭旨解雇をした事実のみを公表するに留めておきましょう。

なお、事業所として公表をする場合には、以上のような注意をすべきですが、警察や行政の捜査には、当然のことながらしっかり協力をしてください。

また、社内で公表をする限りでは、職員への注意喚起と合わせて、職員を諭旨解雇にしたこととその理由を説明しても問題はないと思います。

もっとも、他の職員から、事業所外に諭旨解雇のことが流布されることがないように、例えば説明文書の最後に「事業所外でみだりに開示しないこと」というような一文を入れておいたり、文書等を交付せず、会議の際に口頭で話すにとどめ、さらにその話した内容を口外しないよう注意を促すようにしましょう。

諭旨解雇を含めた懲戒処分の公表については、このようにデリケートな部分も多いので、公表の際には必ず、弁護士と相談をしながら、その文面や公表方法を、精査しましょう。

 

7.諭旨解雇が違法となったら?

ここでは、万が一諭旨解雇が違法となった場合にどのようなリスクがあるのかを説明した上で、諭旨解雇を検討する場合は必ず弁護士に相談をしたほうがよい理由を解説します。

 

7−1.諭旨解雇が違法となった場合のリスク

諭旨解雇が無効になることにより、次の3つの問題が発生します。

 

  • (1)職員が職場に戻ってくる
  • (2)バックペイの支払い
  • (3)慰謝料の発生

 

以下、順に見ていきます。

 

(1)職員が職場に戻ってくる。

諭旨解雇が無効ということになれば、当該職員は労働者の地位を失っていないことになります。その場合、実は最も恐るべきことは、当該職員が職場に戻ってくることです。事業所として、解雇の判断をした職員が職場に戻って来れば、これによる職場環境の悪化は避けられません。通常は、一度解雇された職場に戻ってくる職員は少ないですが、事業所にとっては最も避けたいことの1つです。

 

(2)バックペイの支払い

諭旨解雇が無効になるということは、職員は労務を提供できる状況であったにもかかわらず、事業所側が理由なく労務提供を拒否していたことになるため、事業所側の賃金の支払い義務は無くなりません。そのため、事業所は解雇をした時以降の賃金を支払わなければならなくなります。

 

(3)慰謝料の発生

さらに、諭旨解雇が違法とされた場合、このような解雇をしたことに対する慰謝料も発生することがあります。特に、その解雇理由が不当なものであった場合、行為の悪質性から慰謝料額が増額される可能性もあります。また、解雇の無効を主張しながら、職場復帰を望まない職員からは、「(2)バックペイの支払い」の相当額を加味した損害賠償請求がされる可能性があるため、事業所としては、職員が職場復帰することは避けられたとしても、結果として紛争が終了するまでの期間の給与相当額を支払わなければならなくなります。

 

7−2.諭旨解雇を検討する場合は必ず弁護士に相談を!

諭旨解雇をするためには、相当の準備や検討が必要であり、1つでもプロセスを誤れば無効となるリスクは高くなります。すなわち、諭旨解雇という選択肢をとるためには、初期対応時からの計画的な準備が必要なのです。

このような時に、すぐに相談ができる労働法に強い弁護士がいることは重要です。

初期対応の段階から弁護士へ相談することで、必要な証拠を揃えていきながらも、プロセスを確実に履践することができます。逆に、これらのプロセスを踏んでいない状況で、すでに職場環境の悪化により、早々に諭旨解雇をしたいという状況で相談をしても、適法に諭旨解雇をするためのアドバイスは難しいことが多いです。事業所として対応が難しくなるよりももっと以前に、取るべき手段がまだ数多く残されているうちに、弁護士に相談することを心がけましょう。

 

8.諭旨解雇に関して弁護士法人かなめの弁護士に相談したい方はこちら

介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!

弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。

 

  • (1)諭旨解雇に至るまでの手続に対する指導、助言
  • (2)諭旨解雇に関する就業規則の策定に対する助言
  • (3)諭旨解雇について職員から争われた場合の法的対応
  • (4)労働判例研究会
  • (5)顧問弁護士サービス「かなめねっと」

 

8−1.諭旨解雇に至るまでの手続に対する指導、助言

職員を解雇するためには、求められるプロセスを確実に踏んでいくことが重要です。特に、諭旨解雇においては、職員の態度によって対応が変わるため、慎重に進める必要があります。

しかしながら、既に事業所内で、当該職員に関する問題が顕在化している場合、このようなプロセスを踏んだ対応が難しく、無効な解雇をしてしまいがちです。

そのため、解雇を検討するかなり初期のタイミングから、専門家の意見を聞き、いざという時のためにプロセスを踏んでおくことが重要なのです。また、早期に相談を受けられれば、証拠の残し方、注意指導をする際の準備などを、計画的にサポートした上、実際に解雇を行うタイミングも含め、指導することが可能です。

弁護士法人かなめでは、このような指導や助言を行いつつ、諭旨解雇を有効に行えるようサポートします。

 

8−2.諭旨解雇に関する就業規則の策定に対する助言

諭旨解雇を含んだ懲戒処分は、就業規則に規定がなければ行うことができません。

皆様の中には、社会保険労務士に就業規則の策定をお願いしている事業所も多いのではないかと思います。もちろん、社会保険労務士が策定した就業規則の内容は、法的には適法かもしれませんが、それだけでは、必ずしも事業所の規模や実態とあった内容となっていない可能性があります。

事業所の実態にあった、使い勝手のいい就業規則を策定し、運用していくためには、社会保険労務士とタッグを組んだ弁護士とも、連携する必要があります。弁護士法人かなめでは、介護事業所の労務管理に精通した弁護士が、社会保険労務士と協力の上、就業規則の策定をサポートします。

 

8−3.諭旨解雇について職員から争われた場合の法的対応

諭旨解雇は、懲戒処分の中でも、懲戒解雇の次に重い処分であって、その性質上、職員から無効の主張がされることを、ある程度織り込み済みで対応をする必要があります。

そのため、事業所としては、諭旨解雇に至るまでの対応の記録の保管や、職員本人からの無効主張への対応、職員が駆け込んだ労働基準監督署からの聴取への対応など、通常業務と異なる事務対応に疲弊してしまいます。

弁護士法人かなめでは、諭旨解雇に至るまでのプロセスからサポートをしていますので、記録の整理の他、労働基準監督署、職員本人との対応、交渉業務をスムーズに代行することができ、事業所の皆様が、安心して本来の業務に専念できる環境作りをサポートできます。

 

8−4.ご相談方法

 

(1)お問い合わせ方法

まずは、「弁護士との法律相談(有料)※顧問契約締結時は無料」をお問合わせフォームからお問い合わせください。

 

お問い合わせフォームはこちら

 

※法律相談の申込みは、お問合わせフォームからのみ受け付けております。

※法律相談は、「① 弁護士法人かなめにご来所頂いてのご相談」、又は、「② ZOOM面談によるご相談」に限らせて頂き、お電話でのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

※顧問契約を締結していない方からの法律相談の回数は3回までとさせて頂いております。

※介護事業所の経営者側からのご相談に限らせて頂き、他業種の企業様、職員等一般の方からのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

 

 

(2)弁護士との法律相談に必要な「弁護士費用」

  • 1回目:1万円(消費税別)/1時間
  • 2回目以降:2万円(消費税別)/1時間

※相談時間が1時間に満たない場合でも、1時間分の相談料を頂きます。

 

8−4.労働判例研究会

弁護士法人かなめでは、普段の労務管理の参考になる労働判例を取り上げ、わかりやすく解説する労働判例研究研究会を不定期に開催しています。ゼミの中では、参加者の皆様から生の声を聞きながらディスカッションをすることで、事業所に戻ってすぐに使える知識を提供しています。

詳しくは、以下のページをご覧下さい。

 

▶参照:弁護士法人かなめ「労働判例研究会」

 

 

8−5.顧問弁護士サービス「かなめねっと」

弁護士法人かなめでは、「8−1.諭旨解雇に至るまでの手続に対する指導、助言」ないし「8−4.労働判例研究会」のサービスの提供を総合的に行う顧問弁護士サービス「かなめねっと」を運営しています。

具体的には、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入し、事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。

そして、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。現場から直接弁護士に相談できることで、事業所内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。

顧問弁護士サービス「かなめねっと」について詳しくは、以下のサービスページをご覧ください。

 

▶参照:顧問弁護士サービス「かなめねっと」のサービス紹介について

 

 

(1)顧問料(料金体系)について

現在、弁護士法人かなめでは顧問契約サービス「かなめねっと」のご契約のみ受け付けています。

 

顧問料
  • 月額8万円(消費税別)から

※職員の方の人数、事業所の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、お問合せフォームまたはお電話からお問い合わせください。

 

9.まとめ

この記事では、「諭旨解雇」について、その趣旨や特徴の他、普通解雇や懲戒解雇との違い、具体的にどのような場合に諭旨解雇ができるかについて、裁判例を参照しながら事例を紹介しました。また、「諭旨解雇」にあたって、退職届を提出した場合としなかった場合の手続きの違いについてもご紹介しました。

諭旨解雇は懲戒解雇の1つ下の手続きではあるものの、懲戒解雇に匹敵する解雇事由が必要となる懲戒処分であり、職員にとっては決して軽い処分ではありません。また、諭旨解雇を選ぶか、懲戒解雇を選ぶかは、職員のこれまでの功績や態度等を十分に考慮する必要があります。

実際に「諭旨解雇」を進める場合には、なるべく早期に弁護士へ相談するようにして下さい。

 

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介護事業所に特化した法務サービス「かなめねっと」

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「かなめねっと」では、弁護士と介護事業所の関係者様、具体的には、経営者の方だけでなく、現場の責任者の方を含めたチャットグループを作り、日々現場で発生する悩み事をいつでもご相談いただける体制を構築しています。

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介護業界に特化した経営や現場で使える法律セミナー開催情報

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弁護士法人かなめが運営する「かなめねっと」では、日々サポートをさせて頂いている介護事業者様から多様かつ豊富な相談が寄せられています。弁護士法人かなめでは、ここで培った経験とノウハウをもとに、「介護業界に特化した経営や現場で使える法律セミナー」を開催しています。セミナーの講師は、「かなめ介護研究所」の記事の著者で「介護業界に特化した弁護士」の畑山が担当。

介護施設の経営や現場の実戦で活用できるテーマ(「労働問題・労務管理」「クレーム対応」「債権回収」「利用者との契約関連」「介護事故対応」「感染症対応」「行政対応関連」など)を中心としたセミナーです。

弁護士法人かなめでは、「介護業界に特化した弁護士」の集団として、介護業界に関するトラブルの解決を介護事業者様の立場から全力で取り組んで参りました。法律セミナーでは、実際に介護業界に特化した弁護士にしか話せない、経営や現場で役立つ「生の情報」をお届けしますので、是非、最新のセミナー開催情報をチェックしていただき、お気軽にご参加ください。

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介護特化型弁護士による研修講師サービスのご案内

介護特化型弁護士による「かなめ研修講師サービス」 介護特化型弁護士による「かなめ研修講師サービス」

弁護士法人かなめが運営している社会福祉法人・協会団体・自治体向けの介護特化型弁護士による研修講師サービス「かなめ研修講師サービス」です。顧問弁護士として、全国の介護事業所の顧問サポートによる豊富な実績と経験から実践的な現場主義の研修を実現します。

社会福祉法人の研修担当者様へは、「職員の指導、教育によるスキルアップ」「職員の悩みや職場の問題点の洗い出し」「コンプライアンスを強化したい」「組織内での意識の共有」などの目的として、協会団体・自治体の研修担当者様へは、「介護業界のコンプライアンス教育の実施」「介護業界のトレンド、最新事例など知識の共有をしたい」「各団体の所属法人に対して高品質な研修サービスを提供したい」などの目的として最適なサービスです。

主な研修テーマは、「カスタマーハラスメント研修」「各種ハラスメント研修」「高齢者虐待に関する研修」「BCP(事業継続計画)研修」「介護事故に関する研修」「運営指導(実地指導)に関する研修」「各種ヒヤリハット研修」「メンタルヘルスに関する研修」をはじめ、「課題に応じたオリジナル研修」まで、介護事業所が直面する様々な企業法務の問題についてのテーマに対応しております。会場またはオンラインでの研修にご対応しており、全国の社会福祉法人様をはじめ、協会団体・自治体様からご依頼いただいております。

現在、研修講師をお探しのの介護事業者様や協会団体・自治体様は、「かなめ研修講師サービス」のWebサイトを是非ご覧ください。

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この記事を書いた弁護士

介護業界に特化した「弁護士法人かなめ」運営の法律メディア「かなめ介護研究会」

畑山 浩俊はたやま ひろとし

代表弁護士

出身大学:関西大学法学部法律学科卒業/東北大学法科大学院修了(法務博士)。
認知症であった祖父の介護や、企業側の立場で介護事業所の労務事件を担当した経験から、介護事業所での現場の悩みにすぐに対応できる介護事業に精通した弁護士となることを決意。現場に寄り添って問題解決をしていくことで、介護業界をより働きやすい環境にしていくことを目標に、「介護事業所向けのサポート実績日本一」を目指して、フットワークは軽く全国を飛び回る。
介護業界に特化した「弁護士法人かなめ」運営の法律メディア「かなめ介護研究会」

中野 知美なかの ともみ

弁護士

出身大学:香川大学法学部法律学科卒業/大阪大学法科大学院修了(法務博士)。
介護現場からの相談を数多く受けてきた経験を活かし、一般的な法的知識を介護現場に即した「使える」法的知識に落とし込み、わかりやすく説明することをモットーとしている。介護事故、カスタマーハラスメント、労働問題、行政対応など、介護現場で発生する多様な問題に精通している。

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