介護事故は、介護事業所を運営する中で、事業所の皆さんが最も恐れていることの1つです。しかし、利用者の体調や心身の状況、人員の制限から、どうしても避けることができない事故も存在します。
介護事故が発生した場合には、利用者の治療、ご家族への連絡、医療機関との連携など、やるべきことは、たくさんありますが、その中で重要なことの1つが、「報告」です。
介護事故の「報告」は、法令上の義務であると同時に、事故の原因を分析し、今後同じような事故が発生しないように対策をするための起点となるものであり、ただ義務だから、と形式的な「報告」に終始していては、更なる介護事故を招きかねません。
そして、もし同種の事故が起きてしまった場合には、介護事業所としての対策が十分であったか否かを、1度目の事故よりさらに厳しく問われることになります。
この記事では、介護事故が発生した際の「報告」について、その意義や法律上の義務を確認した上、実際に「事故報告書」を作成する手順の他、どのような点に注意をしながら記載内容を検討すればいいかについて解説します。
また、最後まで読むと、発生した介護事故を通じて、「介護事故に強い」事業所を作る方法についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
介護事故報告書の書き方のポイントについては、以下の動画でも解説をしているので、合わせてご覧ください。
▶︎参照:【事故報告書で気を付けること】介護事故後にやるべき記録の残し方とは?
なお、介護事故発生の原因や対応方法、また実際の介護事故発生時には弁護士に相談すべき理由やメリットなどについては、以下の記事で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。
この記事の目次
1.介護事故が発生した際の報告について
介護事故が発生すると、利用者の治療、家族への連絡など、事業所としてやることは山積みです。
しかし、その中で忘れてはいけないのが「報告」です。
ここでは、介護事故が発生した際の「報告」の基礎知識について解説します。
1−1.介護事故の報告義務
介護事業所は、以下の各基準に基づき、サービスの提供により事故が発生した場合には、速やかに市町村、利用者の家族等に連絡を行うとともに、必要な措置を講ずることとされてい ます。
▶参照1:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準
▶参照2:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準
▶参照3:指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準
▶参照5:指定介護療養型医療施設の人員、設備及び運営に関する基準
具体的には、以下のような規定がされています。
▶︎参考:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準
(事故発生時の対応)
第37条 指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により事故が発生した場合は、市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。
2 指定訪問介護事業者は、前項の事故の状況及び事故に際して採った処置について記録しなければならない。
3 指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない。
この規定は、指定訪問介護事業所の例であり、サービス形態によって、文言は若干異なりますが、ほとんど同じ内容の規定が設けられています。
このように、事故について連絡をすることは法令上の義務なのです。
1−2.報告の対象とすべき事故の種類
報告の対象とすべき事故の種類については、各地方公共団体によってやや表現が異なります。
この後にも紹介する「令和3年3月19日付 介護保険最新情報(Vol.943)」でも、報告対象として、以下のように指定されています。
▶参考:報告対象について
○下記の事故については、原則として全て報告すること。
①死亡に至った事故
②医師(施設の勤務医、配置医を含む)の診断を受け投薬、処置等何らかの治療が必要となった事故
○その他の事故の報告については、各自治体の取扱いによるものとすること。
これを受けて、例えば、大阪市では報告すべき事故の対象・種類・範囲として、以下の通りとされています。
▶参考:報告すべき事故の対象
報告すべき事故は、事業者が行う介護保険サービス及び第1号事業(以下、「サービス」という。)提供中の利用者、入所(入院)者(以下、「利用者等」という。)の事故及び サービス提供に関連する利用者等の事故とする。
(1)サービス提供中における死亡事故及び負傷等。(送迎、通院やレクリエーション等での外出時の事故も含む。)
(2)その他サービス提供に関連して発生したと認められる事故で報告が必要と判断されるもの。
ア 震災、風水害及び火災等の災害により、サービスの提供に影響するもの。
イ 感染症及び食中毒については区保健福祉センター保健業務担当(注:各区によって担当名異なる)へ届け出たもの。
ウ 利用者の処遇に影響がある事件等。職員(従業者)の法令違反・個人情報流出・医薬品の事故・行方不明等その他報告が必要と判断されるもの。
▶参考:報告すべき事故の範囲
(1)負傷等については、骨折及び縫合が必要な外傷等により入院及び医療機関受診を要したもの(施設内の医療処置含む)とする。それ以外においても家族等との間でトラブルが生じているか、あるいは生じる可能性があると判断されるもの。
(2)事業者側の過失の有無にかかわらず報告すべき事故の対象に該当するもの。
(3)利用者等が病気等により死亡した場合であっても、死因等に疑義が生じる可能性のあるもの(家族等と紛争が生じる可能性のある場合)。
(4)その他報告が必要と判断されるもの。
▶参考:事故の種類
(1)死亡 :事故死・自殺。
(2)転倒・転落:転倒・転落が原因で負傷し、報告すべき事故の範囲に該当するもの。
(3)急病 :感染症・食中毒については、感染症及び食中毒が発生した場合の届出等についてに該当するもの。
(4)誤嚥・誤飲:食事等誤嚥や異物等の誤飲で報告すべき事故の範囲に該当するもの。
(5)誤薬 :違う薬を飲ませる等(時間や量・もれ等の誤りも含む)したもの。施設内又は主治医等の医師による判断・指示を求めた結果も報告する。
(6)介護ミス :介護場面で誤って利用者に負傷を負わせてしまったもの。
(7)暴力行為 :自傷・他害(利用者同士のトラブルを含む)。
(8)行方不明 :下記のいずれかに該当する場合。
ア 行方不明後速やかに発見できなかった場合。
イ 警察に捜索願を届け出た場合。
(9)法令違反・不祥事等:利用者からの預かり金の横領、個人情報流出等利用者の処遇に影響があるもの。
(10)虐待 :職員(従業者)による虐待を確認したもの。
(11)事業所等の事故(火災等):火事などの発生により利用者に影響を与えたもの。
(12)交通事故 :利用者の処遇に影響があるもの。
(13)その他 :上記のほか、サービスの提供において利用者の処遇に著しく影響を与えたもの。
これらの情報は、各地方自治体のホームページなどに掲載されていますので、一度皆さんが指定を受けている地方自治体のホームページを確認したり、問合せをしてみてください。
1−3.報告者
報告者となるのは、事故が起きた際のサービスを提供していた「事業者」です。
そのため、この後紹介する介護事故報告書でも、報告の主体としての「事業所の概要」を記載することになっています。
1−4.報告先
具体的な報告先は、各地方自治体によって異なります。
例えば、大阪市の場合は、「利用者の居住区の保健福祉センター介護保険担当」が報告先となっています。
報告先についても、指定を受けている各地方自治体のホームページを確認したり、問合せをして確認しておくようにしましょう。
1−5.主な報告の手順
報告の方法としては、報告先に対して、介護事故報告書を提出する方法で行います。
この際の介護事故報告書の書式は、各地方自治体のホームページでも公開されていますが、この後説明する通り、厚生労働省から統一書式が公開されているため、こちらを使用することが望ましいと考えられます。
もっとも、まだ公開されて半年程度しか経過していないこともあるため、介護事故報告書の作成、提出前に報告先の担当者に電話で問合せをし、どの書式を使用するべきかについて確認をしておくことが望ましいです。
また、提出方法についても、厚生労働省は「メール」での提出が望ましいとしていますが、地方自治体によっては、郵送による方法、FAXによる方法でしか対応していない場合や、ホームページ等では公開されていないものの、メールでの提出も可能な場合など、まだ方法が統一されていません。
報告にあたっても、一度問い合わせをされることをお勧めします。
【弁護士 畑山 浩俊からのコメント】
行政というと、「厳しい」「何か処分をされる」「怖い」などといったよくない印象を持っている事業所も多いかもしれません。
しかし、行政も、事業所運営上の事前相談や、書式や報告方法の確認など、適法に手続きを行おうとしている事業所に対して、殊更に勘繰って調査をしたり、責めたりすることはありません。
むしろ、日頃から行政の担当者等との信頼関係を築いておくことで、行政側の態度が軟化することもあります。
わからないことは逐一しっかり確認し、平時から行政との信頼関係を築いておきましょう。
2.介護事故報告書とは?
ここからは、行政への報告の方法である「介護事故報告書」について解説します。
2−1.介護事故報告書とは
介護事故報告書は、介護事故が発生した際に、行政へ報告をするために作成する報告書です。
介護事故報告書の書式は、地方自治体によって異なりますが、主な内容としては、事故の内容、事故発生時の対応、事故発生後の状況、事故原因の分析、再発防止策等について記載し、提出することになっています。
2−2.介護事故報告書を提出しなかったら?
介護事業所は、介護事故の報告義務の他、各基準により、「事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録」を保管する義務も課せられています。
これらの義務に反すると、行政からの指導を受ける他、減算や、悪質であれば、指定の効力停止や指定取消しなどの処分を受ける可能性もあります。
介護事故の報告は、行政としても、事業所を適切に指導し、新たな事故の発生を防止するために必要不可欠な行為です。
それだけ、介護事故には重い責任があることを、事業所としてもしっかり認識し、誠実に対応するようにしましょう。
行政からの指導や、指定の効力停止や指定取消しなどの行政処分については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
2−3.介護事故報告書を作成する意義
介護事故報告書は、先にも説明したように、法令上の「連絡」義務に基づいて提出し、保管する必要があります。
しかし、ただ義務として作成するのではなく、介護事故報告書には、事故の原因を分析し、今後同じような事故が発生しないように対策をするという大きな役割があります。
例えば、同じような事故が、同じ事業所で繰り返し発生しているような場合、先の事故の後、対策がとられていなかったために後の事故が発生したとすれば、事業所は、利用者に対して負っている安全配慮義務違反の責任を免れることはできません。
「書式を適当に埋めておけばいい」という考え方では、将来の介護事故は防止できません。
介護事故報告書の作成を通じて、事業所内の様々な問題を洗い出し、介護事故に強い事業所を目指しましょう。
3.介護事故報告書の作成方法
ここからは、具体的な介護事故報告書の作成方法について説明します。
3−1.厚生労働省の書式を活用しよう!
厚生労働省は、「令和3年3月19日付介護保険最新情報(Vol.943)」で、介護保険施設等における事故の報告様式を別紙で公開しました。
具体的には、以下のような別紙です。
※画像は、厚生労働省が公開している介護報告書の書式サンプルです。
これは、「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告」(令和3年12月23日社会保障審議会介護給付費分科会)において、「市町村によって事故報告の基準が様々であることを踏まえ、将来的な事故報告の標準化による情報蓄積と有効活用等の検討に資する観点から、国において報告様式を作成し周知する」とされたことを受けて作成、公開されたものです。
実際に、市町村等により、事故報告書の書式の形式は異なっており、項目等も異なることから、これらを集約しても効果的な分析が難しいと言う事情がありました。
そのため、このような統一書式を公表し、事故報告の標準化による情報蓄積と有効活用等の検討に資する観点から、可能な限りこの書式を利用したり、市町村等で公開されている書式に加えて、この書式の項目を追記することを求めています。なお、統一書式を利用することは現段階では特に義務づけられている訳ではありません。
以下では、この厚生労働省の書式をベースにして、具体的な項目の書き方について解説します。
3−2.介護事故報告書の具体的な作成方法
厚生労働省が指摘するように、介護事故報告書は、市町村等によって書式が異なる他、事業所によってもその書き方や書く分量が異なることが多いです。
また、事業所内であっても、誰が書くかによって書き方や分量が異なる場合もあります。
その原因としては、以下の点が考えられます。
- その項目に具体的に何を書けばいいのかについてイメージが共有できていない。
- 職員によって文章の得手不得手がある。
これらは、以下の点を意識することで、解決することが可能です。
- 書かなければならない項目を具体的に書き出しておき、具体例を示しておく。
- 図や再現写真などを利用する。
- 管理者が添削を行う。
以下では、厚生労働省の公表した書式を元に、記載方法の具体例を紹介します。
ここでは、「特別養護老人ホームに入居中の85歳の利用者Aさん(女性)が、昼食中にご飯を誤嚥した。」という事案を元に、検討していきましょう。
(1)枠外の内容にも注意
まず、細かいところですが、枠外の記載部分も記録として非常に重要です。
厚生労働省の書式では、事故報告書は1回出せば終わりではなく、状況が変化したり、進捗がある都度提出することを想定しています。
そのため、第一報は可能な限り5日以内に提出することを求めていますが、その後に修正や追記があることは織り込み済みですので、1回目の報告で全て網羅的に、報告をしなければならないということではありません。
焦らずに調査や検証を行い、判明した項目を追記していくようにしてください。また、提出日も忘れずに正確に記載するようにしましょう。
提出日を記載しなかったことで、行政への報告の時期や時系列が曖昧になり、発覚した事実との先後関係で隠蔽を疑われるなど予期せぬ事態が発生することがあり得ます。
「行政に提出しているから、日付は行政が証明してくれるだろう」と思うかもしれませんが、行政側も多くの事務処理を行なっており、時には受付印を押す日がズレたり、受領した日を誤って記録したり、場合によっては記録をし忘れるということもあります。
自分の身は自分で守ることが重要です。そのためには、細かいところへの目配せを忘れないようにしてください。
(2)事故状況
まず、ここでは事故状況の程度をチェックするようになっています。
ここは、第一報以降変化する可能性がある部分です。
今回、Aさんは、誤嚥後すぐに職員が対応をし、食べ物を吐き出したことから、事業所の車で病院の外来を受診し、検査の結果特段の異常は見られなかったため、受診後自室で様子を見ることになりました。
そのため「事故状況の程度」には「受診(外来・往診)、自施設で応急処置」にチェックをすることになります。
(3) 事業所の概要
事業所の概要欄で注意すべきことは「事業所(施設)名」「サービス種別」を正確に記載することです。
法人によっては、複数の事業所を運営していることがあり、職員の中には、複数の事業所を兼務している人もいます。
その時、どのサービスの提供中であったかで、報告をする事業所が異なります。
万が一にも、サービス提供中でない事業所名を記載してしまうと、行政からすれば、「この法人は事業所ごとに職員やサービス提供の区別が全くできていないのではないか。そうすると、介護報酬を不正請求している可能性もあるのでは?」と疑われ、別の問題に派生する可能性があります。
十分に注意して下さい。
(4) 対象者
対象者の情報については、事業所に保管する記録を確認すれば正確に記載できる部分ですので、確実に記載するようにしましょう。
(5)事故の概要
ここからが、重要です。
事故の概要では、以下の5つの項目の情報を記載することになっています。
- (1)発生日時
- (2)発生場所
- (3)事故の種別
- (4)発生時状況、事故内容の詳細
- (5)その他特記すべき事項
1.発生日時について
「発生日時」は、可能な限り分単位まで、明確に記載するようにしましょう。
なぜなら、例えば「午前10時頃」と記載をした際、「頃」の感覚は人によって異なります。
具体的には、午前10時頃を、午前9時55分から午前10時5分までの間など、短い間隔でとらえている人もいれば、午前9時40分から午前10時20分までの間など、かなり長い感覚でとらえる人もいるかもしれません。
このように幅のある時間を記載した際、どんな問題が発生し得るでしょうか。
例えば、有料老人ホームを運営している法人が、訪問介護事業所も有している場合、有料老人ホームに居住する利用者について自社の訪問介護を提供していることがあります。
そのような場合、ある職員の作成した事故報告書に、当該有料老人ホームに居住するAさんの事故の発生時間が「午前10時頃」と記載されており、それとは別に、サービス提供記録上残っている同じ職員によるBさんへのサービス提供時間の開始時間が「午前10時から」だったとします。
実際には、当該職員は、午前9時50分頃にAさんの事故に遭遇し、初期対応のみを行なって他の職員に引き継ぎをして、その後午前10時からBさんへのサービスの提供を行っていたかもしれません。
しかし、この記録だけを見ると、サービス提供時間中に他の事故の対応をしていたように見え、この記録を確認した行政の担当者からすれば、サービス提供記録どおりのサービス提供ができていないのではないかとの疑念を抱く可能性もあります。
今回の事例では、特別養護老人ホームの職員による事故の発見なので、このような問題は起きにくいかもしれませんが、行政に要らぬ疑念を抱かせないよう、日頃から、事故発生に限らず何かが発生した際には、しっかり時間を確認する習慣を身に着けましょう。
2.発生場所
厚生労働省の書式では、チェックボックスにチェックを入れて場所を特定する方法がとられています。
これと合わせて、事故のイメージを事故報告書のみからわかりやすくするという観点から、「別紙をつけて事故発生場所を図示する」、「施設内の見取り図に事故の発生場所を「☓(バツ)」印等で指摘する」、「事故現場や事故の再現状況の写真を撮影しておき、写真を貼付する」などの方法が効果的です。
今回の事例では、利用者のAさんは「食堂等共用部」で誤嚥しているで、このチェックボックスにチェックを入れた上で、実際にAさんが座っていた場所や食堂全体の写真を撮影し、「ここに座っていた」などの印をつけておくと、事故のイメージがわきやすくなります。
これは、転倒事故等の場合は特に重要です。
なぜなら、同じ「転倒」であっても、柔らかい絨毯の上での転倒とフローリングでの転倒では状況が大きく変わりますし、転倒した場所が全く何もない場所であるか、テーブルや椅子などの障害物が多い場所であるかによっても、危険度は大きく変わるので、後の検証を有意義なものとするために、現場の状況を保存しておくことは必須だからです。
事故の「発生場所」を具体的にイメージできると、その場所がはらんでいる危険因子にも併せて意識が及ぶことになります。
例えば、転倒した場所を確認すると、「絨毯が一部めくれて足が引っかかりやすくなっていた」、「細かな段差があった」など、職員が通常業務をしている中では気付かない程度のものであっても、利用者にとっては危険な状態となっていたことに気付くこともあります。
事故報告書は、発生してしまった事故を分析することで、以後同じような事故が起きないようにするために重要なツールとなります。
多忙な業務の中でも、ある程度の時間を割いて作成する必要があることを、意識付けるようにしましょう。
3.事故の種別
事故の種別については、該当するものを選択し、チェックするようにしてください。
もし、種別になんらかの説明が必要であれば、チェックボックス以外の内容を記載してはいけない、ということはありませんので、「※」などをつけて注釈を入れたり、別紙で説明することも検討しましょう。
4.発生時状況、事故内容の詳細
事故の「発生状況、事故内容の詳細」は、事故報告書の中で最もウエイトを占めるべき部分であり、可能な限り詳細な記載がされるべき部分です。
「発生状況、事故内容の詳細」として、必ず記載をして欲しい項目は、以下の通りです。
(1)発生を覚知した状況(発見者が事故に気付いた端緒)
(2)事故の態様(目の前で事故が発生した場合は、利用者が何をしていてどのような事故になったかを記載。起こった事故を事後的に覚知した場合は、発見時の様子と利用者から聞き取った事故の状況を記載)
(3)事故発生時(または覚知時)の利用者の状態(顔色、声を掛けたときの様子、怪我をしている場合は怪我の状態等)
(4)現場の状況(壁、床などの状態、障害物等の有無、その場にいた他の利用者やスタッフの数など)
(5)その他
具体的には、今回の事例では以下のような記載をすることになります。
(1)発生を覚知した状況(報告者が事故に気付いた端緒)
1つのテーブルに3名の利用者が座っている状況で、それぞれに食事の介助をしていた。他の利用者が、食べ物をテーブルにこぼしたので、テーブルを拭くためにふきんを取りに行こうと席を離れて戻ってくると、Aさんが激しくむせているのに気がついた。席を離れていた時間は1分にも満たない間であった。
(2)事故の態様(目の前で事故が発生した場合は、利用者が何をしていてどのような事故になったかを記載。起こった事故を事後的に覚知した場合は、発見時の様子と利用者から聞き取った事故の状況を記載)
Aさんは、その時白米を食べていたが、どれぐらいの量を食べたのかははっきりとはわからない。白米を吐き出した後、どうしてむせてしまったのかを尋ねると、「ご飯をたくさん口に入れたら苦しくなった」という趣旨の説明をしていた。
(3)事故発生時(または覚知時)の利用者の状態(顔色、声を掛けたときの様子、怪我をしている場合は怪我の状態等)
激しくむせていたので、慌ててそばに駆け寄って背中を叩くなどすると、口に入っていたものを何度か吐き出した。初めは苦しそうにしていたが、吐き出してからは少しずつ呼吸が落ち着いてきた。
(4)現場の状況(壁、床などの状態、障害物等の有無、その場にいた他の利用者やスタッフの数など)
別のテーブルに、他の職員が1名ずつおり、全部で3名ほどの職員がいる状況であった。それぞれ、3、4名の利用者の食事の介助を行っている状況であったが、別のテーブルで異常があればすぐに対応はできる状況であった。
(5)その他
事故状況については別紙記載の通り。
これらの事項について、書式の中には分類はありませんが、例えば「発生時状況、事故内容詳細」の欄の中にこれらの項目を事前に掲載しておくことで、何を記載すればいいのかがわかりやすくなります。
また、言葉だけではなく、事故状況を図示したり、事故状況を再現し、その様子を写真撮影して別紙で添付するなどしておくと、より状況が把握しやすくなります。
5.その他特記すべき事項
ここには、事故の状況で気になったことを記載する部分ですが、その一例として、「発生日時」と「発見日時」が異なる場合について解説します。
事故の「発生日時」と「発見日時」は異なることがあります。
「発生日時」は、まさに事故が発生した日時であり、「発見日時」は、報告者が事故を発見した日時のことを言います。
例えば、当該事故が、今回のように事故報告をする職員の目の前で発生した場合または発生とほぼ同時に発見した場合には、「発生日時」と「発見日時」は同じ日時となります。
一方、当該事故を見た職員はおらず、事故の結果のみを発見した場合(入居者の居室を訪問すると、利用者が倒れていたような場合)には、事故の「発生日時」と「発見日時」は異なることになります。
この、「発生日時」と「発見日時」の間にどの程度のタイムラグがあるかにより、事業所の管理体制の見直しが必要になる可能性があります。
事故が発生したということは、利用者に身体的危険が及んだと言うことです。それにも拘わらず、事故が長時間に亘って発覚しなかったとすると、利用者の生命・身体に関わるより深刻な結果をもたらしかねません。
特に、施設系のサービスを提供する事業所にとっては、事故の発生から事故の発見までの間は、短時間であることが望ましく、仮にそうでない場合には、なぜ事故の発生と発見との間にタイムラグが発生したかについて、説明、分析をしておく必要があります。
また、「発生日時」については、報告者が事故現場自体を見ていない場合、可能な限り利用者や他の介護職員から聴き取りをして特定をしたいところです。
しかし、利用者が当時のことを覚えていない、または話すことができない状況であり、聴き取りが出来ない、または、聴き取りをしても正確にはわからない場合も十分にあり得ます。
その場合は、例えば最後に利用者の様子を確認した時点(最後にスタッフが介助したり、ナースコールが鳴った時点など)から、発見をするまでの時点を幅のある形で記載する(〇時から〇時の間)など、可能な限り具体的に記載するよう心掛けて下さい。
「発生日時」と「発見日時」が異なる場合、これらを理由と共に記録しておく必要があるもう1つの理由は、実際に行政から、事故状況を尋ねられた場合の備忘録になるからです。
事故後すぐの聞き取りでは、事故を目撃した職員の記憶も新しく、すぐに回答ができるかもしれませんが、実地指導や監査の際に、事故報告書を見て質問されるような場合、事故から聴取までにかなりの期間が経過している可能性があります。
その際に、正確な説明ができなかったり、曖昧な回答になってしまうと、実際には記憶にないだけであっても。行政からは「何か隠し事をしているのか?」と疑いの目を向けられる可能性が高くなるからです。
細かいポイントですが、注意しておきましょう。
実地指導や監査については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にご覧ください。
(6)事故発生時の対応
事故発生時の対応については、注意をして記載すべき点は「発生時の対応」です。
この部分に関しても、何を具体的に記載するかについて、項目を用意しておきましょう。
具体的には、以下のような点を記載してください。
1.発見者がその場で行った行動(抱き起こした、声を掛けて状況を聞いた、外傷等の確認をした、バイタルを計測したなど
2.治療の有無(看護師に診てもらう、医師に診てもらう、病院へ連れて行く、何もしない、など)及びその理由(痛みを訴えたり、外傷があったから病院へ連れて行った、「1」に問題がなかったから医師に診せるのは見送った、など)
3.その他特筆すべきことがあれば記載
これらは、「受診方法」を決定した理由を記載する部分です。
事故が発生した際、実際には適切な対応をしているにも拘わらず、対応状況の記載が不十分であったり、噛み合っていない結果、実際には何を行なったのかがわからない場合があります。
例えば、今回は「誤嚥」事故が問題となっていますが、発生状況として「喉にご飯を詰まらせて激しくむせていた」とあるにもかかわらず、発生時の対応として「経過観察」と書いてあるだけだと、なぜそこで「経過観察」を選択したのか、その判断が正しかったのかどうかがわかりません。
また、ここに判断の理由を記載しておくことで、今後の事故の際の行動指針にもなります。
そこで、この欄において、以下のような記載を残しておきましょう。
1.発見者がその場で行った行動(抱き起こした、声を掛けて状況を聞いた、外傷等の確認をした、バイタルを計測したなど)
気がついてすぐに駆け寄り、「大丈夫ですか」と声をかけながらすぐに背中を叩いて食べ物を吐き出させた。吐き出すのが止まった後、口の中を確認したところ、食べ物は残っていなかった。
2.治療の有無(看護師に診てもらう、医師に診てもらう、病院へ連れて行く、何もしない、など)及びその理由(痛みを訴えたり、外傷があったから病院へ連れて行った、「1」に問題がなかったから医師に診せるのは見送った、など)
食べ物を吐き出した後は落ち着いた様子であったが、喉や気管に残留物があったり肺炎を起こす可能性があると考え、かかりつけ医の診察を受けることにした。
3.その他特筆すべきことがあれば記載
特になし。
受診方法以下の記載については、医療機関を受診した場合は、医師からの所見等について正確に記載するようにしましょう。
「検査、処置等の概要」については、例えば受診後経過観察となった場合、何故そうなったのかを記載しておくことが重要です。
具体的には、以下のように記載をしておくと、何故その時入院させなかったのか、更なる処置をしなかったのかの備忘録になります。
「医師の目視での診察、レントゲン検査を行ったところ、消化管や気管に食べ物の残留物等は見つからず、利用者本人からも体調に関して特段の主訴がなかったため経過観察となった」
(7) 事故発生後の状況
「事故発生後の状況」では、利用者の状況や家族、その他の機関への報告の有無や内容を記載します。
「利用者の状況」に関しては、実際に職員が見た利用者の状況の他、利用者が受け答えができる状況である場合は、質問に対する回答の内容も記載するようにしましょう。
例えば、本件で言えば、以下のように記載しておきましょう。
「食べ物を吐き出した後は、しばらく苦しそうに呼吸をしていたが、徐々に落ち着いた様子だった。その際、「息苦しさや痛みがあるか」尋ねると、「今は苦しくない」などと答えていた。」
次に、「家族等への報告」については、時間帯等によっては、ご家族と連絡が取れない場合もあり、すぐに報告ができない場合もあります。
その場合は、「本人、家族、関係先等への追加対応予定」のところに、以下のように経過を記載しておくとわかりやすい事故報告書になります。
「○年○月○日○時ごろ、キーパーソンの長女に電話連絡をしたが留守電だったため、折り返しを求める留守電を入れた。その後、○時ごろに折り返しがあり、誤嚥事故があったことと、これから病院に連れて行くことについて説明をした」
(8)事故の原因分析
ここからは、第一報の報告以降、追記をしたり細くして行くべき部分です。
括弧書きで「(本人要因、職員要因、環境要因の分析)」との項目がありますので、それぞれについて、以下の順に検討して行くことが重要です。
- 事故に直結した原因
- 事故に直結した原因の原因
1.「本人要因」についてみた時
具体的には、まず「本人要因」についてみた時、事故に直結した原因は、「食べ物を一度にたくさん口に入れたこと」です。
そして、「食べ物を一度にたくさん口に入れたこと」の原因は、「当該利用者は早食いをする傾向があり、飲み込む前に食べ物をたくさん口に入れてしまう癖があった」などと分析ができます。
つまり、このような癖がある利用者であることから、食事介助をする際には、しっかり声かけをする必要があった、ということがわかります。
2.「職員要因」についてみた時
次に、「職員要因」としては、上記のような利用者であるにもかかわらず、「当該利用者の食事中に隣から離れたこと」が事故の直接の原因です。
そして「当該利用者の食事中に隣から離れたこと」の原因は、「他の利用者が食事をこぼしたためにふきんを取りに行ったこと」にありますが、「他の利用者が食事をこぼしたためにふきんを取りに行ったこと」の原因は、「テーブルの上にふきんを置いていなかったこと」などが考えられます。
つまり、職員として、テーブルを離れなければならない状況を作ってしまったことが事故の根本的な原因となっています。
3.「環境要因」についてみた時
さらに、「環境要因」としては、もし他の利用者が食事をこぼすなどした場合に、他の職員が対処できていれば、当該職員は利用者の隣を離れなくてもすみました。
しかしながら、職員は各テーブルに1人で、3、4名の利用者の介助を行っていたため、人員にゆとりがありませんでした。
つまり、「食事介助中に人的な余裕がない」、ということも、事故の原因の1つと言えます。
このように、各要因を分析すると、自ずとどんな対策を取ればいいかが浮き彫りになってきます。
(9) 再発防止策
事故の原因分析が明確にできれば、再発防止策も自ずとはっきりしてきます。
次に考えるべきは、分析した原因が「取り除くことが出来る原因」であるか、「取り除くことが出来ない原因」であるかです。
例えば、「本人要因」である「当該利用者は早食いをする傾向があり、飲み込む前に食べ物をたくさん口に入れてしまう癖があった」という原因については、その癖を直すことは難しく、「取り除くことが出来ない原因」に位置付けられます。また、「他の利用者が食事をこぼすこと」も、「取り除くことが出来ない原因」です。
そこで、「取り除くことが出来ない原因」の存在を前提として、「取り除くことが出来る原因」への対策を考えていくのです。
具体的には、今回の例でいえば、「当該利用者には早食いをしないように声をかけ、さらに、仮に他の利用者が食事をこぼしてもすぐに拭けるように、ふきんをテーブルに置いておく」、「全体のテーブルに補助に入れるよう、食事中に付き添う職員の数を増やす」、というのも対策の1つです。
もっとも、再発防止策は、当然、実現可能なものでなければ意味がありません。
例えば、付き添いの職員を増やすという対策を考えたとしても、付き添える職員の数が充分に確保できなければ、まさに絵に描いた餅です。
そのような場合には、例えば、「机の配置を変えて、全てのスタッフがテーブルにいながら全体を見渡せるようにする」、といった方法も効果的かも知れません。
再発防止策の検討には、第三者の目からのアイデアが必要不可欠です。
例えば、同じような事故を経験したことがある他の職員がいた場合、その際にとった対策により、実際に事故を防止できるようになったか否かを確認することができます。
そして、中には、あまり巧を奏しなかった対策、すなわち、当該対策を取っていたにも拘わらず、同様の事故が発生したという場合もあるでしょう。
これは、当該対策とは別の対策をとる必要があることを示しており、奏功しなかったにも拘わらず同じ対策を繰り返してまた同じ事故が発生すれば、事業所の責任を問われかねません。
また、いろいろな対策を講じてもやはり事故が発生するという場合には、原因を取り除くという視点から、当該事故が発生することを前提とした対策へと考え方をシフトしていく必要がある場合もあります。
いずれにしても、ここでは職員1人だけのアイデアだけでなく、事業所全体で、再発防止策を検討するようにしましょう。
事故原因の分析と、再発防止策を考える上でのイメージは、以下のフローチャートの通りです。
※上の画像は、事故原因の分析と再発防止策を考える上でのフローチャートです。
(10)その他(特記事項)
ここでは、例えば以前にヒヤリハットなどが起きていて、その際にどんな対処をしたかなどを追記しておくと、分析に役立ちます。
【弁護士 畑山 浩俊のコメント】
職員が介護事故報告書を作成してきた後、管理者としては必ず見直しをし、添削をするようにしましょう。
管理者が、直接事故を体験していない場合、介護事故報告書を読んでどういう意味なのかわからなければ、おそらく行政やその他の第三者が読んでも、意味がわからない可能性が高いです。
その時に、「ここはどういうことなの?」、「その後どうなったの?」、「なんでこの動きをしたの?」と質問をし、これに答えさせ、追記をさせるだけでも、介護事故報告書の内容をブラッシュアップすることが出来ます。
第一報を出す段階では、まだ事業所全体で時間をとってじっくりミーティングをする時間は作れないかもしれません。そのため、管理者は介護事故報告書の意義を正しく理解した上で、職員が作った介護事故報告書を、まずはしっかり見直すようにしましょう。
3−3.介護事故報告書の書き方の研修をしよう!
経験をしたことがないことを行うにあたって、職員はとても不安になり、作業をするにも時間がかかります。
事故は、事業所の中でそう何度も発生するものではありませんので、起きた事故が初めての事故だという職員も多いのではないかと思います。
そんな時のために、介護事故報告書の書き方について、事業所内で研修を行っておくことをお勧めします。
職員全員が、介護事故報告書の意義や、その作成にあたってのポイント、注意点を学んでおくことで、いざ事故が発生した場合に、職員同士が相談し合いながら、自信をもって報告書を作成することが可能です。
そして、介護事故報告書作成の流れを学ぶことは、日頃発生するヒヤリハットやその他の問題への対処方法の検討にも役立ちます。
職員全体のレベルアップのため、定期的な研修を行うようにしましょう。
【弁護士 畑山 浩俊のコメント】
介護事故報告書の書き方の研修は、事業所内で知識やノウハウを共有することと同時に、客観的な目線から指摘や指導を受けることが非常に有効です。
例えば、介護事故報告書を法的な観点から精査できる弁護士などの専門家による研修を受けることで、自分たちでは気付くことができなかった視点に気付くこともできます。
事業所内での定期的な研修の他、外部講師へ研修を依頼することも、検討してみて下さい。
4.介護事故報告書を活用しよう!
4−1.介護事故報告書は事故防止対策のための重要な教材
介護事故は、どれだけ気を付けていても起きてしまう時には起きてしまうものです。
特に1回目の事故は、事業所として全く予測ができず、その結果やむを得ずに起きてしまう事故もあります。
しかし、もし同種の事故が繰り返し起きる場合、それはやむを得ない事故ではなく、事業所の責任です。1度目は予測ができなくても、2度目以降は予見・防止し得るはずだからです。
事故報告書は、どの事業所も作成をすると思いますが、行政に報告をしてそれで終わりとするのではなく、再発防止について事業所を上げて取り組む必要があるのです。
介護事故は、1つの事業所でそう何度も発生するものではありません。そのため、1度発生した介護事故の事例は、貴重な教材となります。
介護事故防止の対策については、以下の記事で詳しく解説していますのでこちらもあわせてご参照ください。
4−2.介護事故報告書を使った研修方法
具体的には、作成された事故報告書を基に、事故の原因や今後の対策を実際に事故を体験した職員だけでなく、当該事業所の職員全員で共有し、検討する必要があります。
例えば、ある利用者が誤嚥事故を起こした後、その原因の所在としては以下などが考えられます。
- 当該利用者の嚥下能力が低下しており、従来提供していた食材では誤嚥が起きてしまう状況となっていた。
- 本来提供しなければならない食材と異なる食材を提供していた。
- もともと口に食べ物を詰め込む傾向があり、見守りが必要であったが、職員が少なく、常に見守りができない状況であった。
「この中のどれが問題だったのか」、または、「複合的な問題だったのか」などについて、充分に検討していなければまた同じ利用者、又は別の利用者に誤嚥事故が起きてしまうかもしれません。
これらについてしっかりと原因を検討した上、さらに発展的には、例えば、
- 今回は近くに職員がいたからすぐに対処できたけど、もし職員が他の利用者の介助中ですぐに誤嚥に気づかなかったら、どうなっていただろうか。
- 今回はすぐに食べ物を吐き出したけど、吐き出さなかった場合の次の手段について、事業所内で周知できていただろうか。
など、実際に発生した事故とは異なるケースを想定して分析を行うと、よりイメージが湧きやすくなり、今後の事故の発生を防ぐことができるようになります。
日々の日常業務の中で時間を取ることは難しいかもしれませんが、定期的なミーティングを行っている事業所は多いと思いますので、その中で少しずつでもテーマを決めて研修をしていきましょう。
そして、これだけの研修をしてもなお、同種の事故が発生した場合には、別の対策を検討することを忘れてはいけません。
確認と改善を続けることで、事故に強い事業所を作っていきましょう。
【弁護士 畑山 浩俊のコメント】
実際に発生した介護事故を題材に研修を行うときの注意点としては、その当事者となった職員を責めたり、批判したりしないことです。
もちろん、その事故が発生した直接の原因は、当該職員にあったとしても、その更に先にある原因は、事業所の人員配置や労働環境、教育体制の問題であることが多いです。
そのため、研修の際には、進行をする管理者や担当者が、「この研修は、これから事業所で介護事故の発生を防止したり、事故発生時に迅速に対応ができるようになるために、みんなでその対策を考えていく目的で行うので、誰に責任があるかを考えるものではない」という趣旨を明確に職員に伝え、議論が特定の職員を責めるような方向に進みそうになった場合は、しっかりと軌道修正をしていく必要があります。
気を遣って誰も意見を言えないのでは意味がありませんが、一緒に働く職員同士が良好な関係を築くことは、自由闊達な議論をする土台になります。
管理者はこのことをしっかり意識して、研修を実施していきましょう。
5.介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!
弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。
- (1)介護事故報告書の書き方についての研修の実施
- (2)介護事故報告書を使った研修の実施
- (3)顧問弁護士サービス「かなめねっと」
- (4)料金体系
以下で、順番に説明します。
5−1.介護事故報告書の書き方についての研修の実施
弁護士法人かなめでは、この記事で解説した介護事故報告書の書き方を、具体例を元に研修します。
職員それぞれが、介護事故報告書の書き方を学ぶことで、実際に介護事故が発生した際には、職員が意見交換をしながら、介護事故の原因や今後の防止策を検討し、有意義な介護事故報告書を作成することができるようになります。
5−2.介護事故報告書を使った研修の実施
弁護士法人かなめでは、実際に作成されている介護事故報告書の活用方法について、研修を行います。
事業所内で行う検討会に加え、弁護士の視点から、実際に起こった介護事故の法的な問題や、類似事例を紹介することで、同様の事例だけでなく、様々な事例に対する対策を検討し、注意を喚起することができます。
5−3.顧問弁護士サービス「かなめねっと」
弁護士法人かなめではさまざまな「5−1」及び「5−2」をはじめとして総合的なサービスを提供する顧問弁護士契約プラン「かなめねっと」を運営しています。
弁護士法人かなめでは、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入し、事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。
具体的には、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂くことで、迅速な対応が可能となっています。
法律家の視点から、利用者様とのトラブルをはじめ、事業所で発生する様々なトラブルなどに対応しています。
直接弁護士に相談できることで、事業所内社内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。
顧問サービス「かなめねっと」について詳しくは、以下のサービスページをご覧ください。
以下の記事、動画でも詳しく説明をしていますので、併せてご覧下さい。
5−4.弁護士費用
また、弁護士法人かなめの弁護士費用は、以下の通りです。
(1)顧問料
- 月額8万円(消費税別)から
※職員従業員の方の人数、事業所の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、お問合せフォームまたはお電話からお問い合わせください。
(2)法律相談料
- 1回目:1万円(消費税別)/1時間
- 2回目以降:2万円(消費税別)/1時間
※相談時間が1時間に満たない場合でも、1時間分の相談料を頂きます。
※スポットでの法律相談は、原則として3回までとさせて頂いております。
※法律相談は、「1.弁護士法人かなめにご来所頂いてのご相談」、又は、「2.ZOOM面談によるご相談」に限らせて頂き、お電話でのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。
※また、法律相談の申込みは、お問合わせフォームからのみ受け付けおります。
※介護事業所の経営者側からのご相談に限らせて頂き、他業種の企業様、職員等一般の方か らのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。
6.まとめ
この記事では、介護事故が発生した際の「報告」について、その意義や法律上の義務を確認した上、実際に「事故報告書」を作成する手順を、厚生労働省の書式に沿って、どのような点に注意をしながら記載すればいいかについて解説しました。
また、発生した介護事故を通じて、「介護事故に強い」事業所を作るための研修の方法等についても解説しているので、経営者、管理者の方は是非参考にしてみてください。
そして、これらの研修は、事業所内だけでなく、弁護士などの専門家の意見を取り入れながら行うことで、より実をあげることが出来ます。
介護事故に強い事業所を育てたい、と悩む経営者、管理者の方は、是非1度、弁護士に相談してみましょう。
なお最後に、介護事故に関連するその他のお役立ち情報も以下で紹介しておきますので、参考にご覧ください。
「弁護士法人かなめ」のお問い合わせ方法
介護事故、行政対応、労務問題 etc....介護現場で起こる様々なトラブルや悩みについて、専門の弁護士チームへの法律相談は、下記から気軽にお問い合わせください。
「受付時間 午前9:00~午後5:00(土日祝除く)」内にお電話頂くか、メールフォーム(24時間受付中)よりお問合せ下さい。
介護事業所に特化した法務サービス「かなめねっと」のご案内
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「かなめねっと」では、弁護士と介護事業所の関係者様、具体的には、経営者の方だけでなく、現場の責任者の方を含めたチャットグループを作り、日々現場で発生する悩み事をいつでもご相談いただける体制を構築しています。
法律家の視点から利用者様とのトラブルをはじめ、事業所で発生する様々なトラブルなどに対応します。 現場から直接、弁護士に相談できることで、社内調整や伝言ゲームが不要になり、業務効率がアップします!
介護業界に特化した経営や現場で使える法律セミナー開催情報
弁護士法人かなめが運営する「かなめねっと」では、日々サポートをさせて頂いている介護事業者様から多様かつ豊富な相談が寄せられています。弁護士法人かなめでは、ここで培った経験とノウハウをもとに、「介護業界に特化した経営や現場で使える法律セミナー」を開催しています。セミナーの講師は、「かなめ介護研究所」の記事の著者で「介護業界に特化した弁護士」の畑山が担当。
介護施設の経営や現場の実戦で活用できるテーマ(「労働問題・労務管理」「クレーム対応」「債権回収」「利用者との契約関連」「介護事故対応」「感染症対応」「行政対応関連」など)を中心としたセミナーです。
弁護士法人かなめでは、「介護業界に特化した弁護士」の集団として、介護業界に関するトラブルの解決を介護事業者様の立場から全力で取り組んで参りました。法律セミナーでは、実際に介護業界に特化した弁護士にしか話せない、経営や現場で役立つ「生の情報」をお届けしますので、是非、最新のセミナー開催情報をチェックしていただき、お気軽にご参加ください。
介護特化型弁護士による研修講師サービスのご案内
弁護士法人かなめが運営している社会福祉法人・協会団体・自治体向けの介護特化型弁護士による研修講師サービス「かなめ研修講師サービス」です。顧問弁護士として、全国の介護事業所の顧問サポートによる豊富な実績と経験から実践的な現場主義の研修を実現します。
社会福祉法人の研修担当者様へは、「職員の指導、教育によるスキルアップ」「職員の悩みや職場の問題点の洗い出し」「コンプライアンスを強化したい」「組織内での意識の共有」などの目的として、協会団体・自治体の研修担当者様へは、「介護業界のコンプライアンス教育の実施」「介護業界のトレンド、最新事例など知識の共有をしたい」「各団体の所属法人に対して高品質な研修サービスを提供したい」などの目的として最適なサービスです。
主な研修テーマは、「カスタマーハラスメント研修」「各種ハラスメント研修」「高齢者虐待に関する研修」「BCP(事業継続計画)研修」「介護事故に関する研修」「運営指導(実地指導)に関する研修」「各種ヒヤリハット研修」「メンタルヘルスに関する研修」をはじめ、「課題に応じたオリジナル研修」まで、介護事業所が直面する様々な企業法務の問題についてのテーマに対応しております。会場またはオンラインでの研修にご対応しており、全国の社会福祉法人様をはじめ、協会団体・自治体様からご依頼いただいております。
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