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退職勧奨の場面で言ってはいけないこと3つ!面談時の注意点を解説

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事業所を経営されている皆様の中で、「所属する職員に退職を勧めたいが、どのように勧めて良いかわからない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

退職勧奨は任意の手続きであり、職員が同意さえすれば、解雇のような法律上の制限を受けずに、退職してもらうことができる手続きです。しかし、任意の交渉である反面、なんとかして退職に同意させようと意気込むあまり、職員の人格を非難したり、退職を強要するような発言をしてしまうことがあります。

この場合、職員が一旦は退職の意思を表示したとしても、その後違法な退職勧奨と評価され、退職が無効となるばかりか、後で職員から慰謝料を請求されたり、退職時から現在までの給与の支払い(バックペイ)を請求される可能性があります。

そのため、退職勧奨での円満解決を実現していくにあたり、退職勧奨の面談などの交渉の場面で、言ってはいけない発言を事前に理解しておくことが重要です。

この記事では、退職勧奨における交渉の中で、言ってはいけない発言を具体的な事例付きで紹介し、退職勧奨における適切な発言について解説します。また、万が一言ってはいけない言葉を言ってしまった場合に、どのような法的なリスクがあるかについても、裁判例を踏まえて解説します。

最後まで記事を読んでいただければ、職員との面談に際して、どのような発言をしてはいけないのか、気をつけるべき発言なのかがわかり、円滑に退職勧奨の交渉を進めることができます。また、言ってはいけない発言をしてしまった場合のリスクについても理解でき、事業所内の退職勧奨の方針を検討する際にも役立てることができます。

それでは見ていきましょう。

 

1.最初に退職勧奨について

退職勧奨とは、事業所などの雇用主が、雇用する職員に対して退職をするよう勧めることをいいます。退職勧奨は、任意に職員の退職を勧める手続であるため、解雇とは異なり、法律上のルールや条件があるものではありません。

退職勧奨の際には、事業所側と職員が面談し、その中で、退職を進める理由を説明したり、退職に有利な条件を提示することが一般的です。このような面談時には、職員を退職させたいがあまり、職員に対して不適切な発言をしてしまう場合があります。

退職勧奨の具体的な流れについては、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

 

▶参考:退職勧奨とは?具体的な進め方、言い方などを弁護士が解説

 

 

2.退職勧奨の面談時に対応を誤るとどうなる?

退職勧奨の面談対応を誤ると、以下のようなリスクがあります。

  • 退職してもらえない
  • 一旦は成立した退職勧奨による退職が事後的に無効になる
  • 慰謝料の支払いを請求される

 

順番に詳しく見ていきましょう。

 

2−1.退職してもらえない

退職勧奨のための面談で、職員への対応を誤れば、職員が事業所の対応に反発したり、不信感を抱いて交渉がうまくいかず、そもそも退職に応じてもらえない可能性があります。もっとも、退職勧奨を拒否したことを理由に、職員を不利益に扱うことはできないので、慎重な対応が必要となります。

退職勧奨が拒否された場合の注意点については、以下の記事でも詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

 

▶️参考:退職勧奨が拒否されたら?応じない場合のその後の対応を詳しく解説

 

 

2−2.退職勧奨による退職が無効になる

仮に対象の職員が退職することになったとしても注意が必要です。

退職勧奨は、職員が任意に退職の意思を表示することが前提になります。よって、職員による退職の意思表示が、面談時の心理的な圧迫によるものであったり、退職勧奨が解雇のように強制的に退職となる手続だと誤解したことによるものであると評価された場合は、退職の意思表示や合意が無効になる可能性があります。

退職の意思表示や合意が無効になると、退職の効果が生じないため、職員としての地位が残ったままになります。そうすると、退職時からの賃金を支払わなければなりません(バックペイ)。場合によっては、対象の職員が職場に復帰することもあります。事業所としては、復帰させたくない場合に多額の解決金を提示して再度退職勧奨を実施するような羽目に陥りますので注意が必要です。

 

2−3.慰謝料の請求がされる

退職勧奨を行う事業所側が、職員を退職させようと考えるあまり、面談時に、職員の人格を非難したり、過度に貶めたりするような発言をしてしまうことがあります。その場合、違法な退職勧奨として職員から慰謝料を請求される可能性があります。

 

3.退職勧奨の場面で「言ってはいけないこと3つ」とは?

退職勧奨の場面で「言ってはいけないこと3つ」とは?

この項目では、退職勧奨における具体的なNGワードを紹介しつつ、面談時に職員に対し退職してほしいことをどのように伝えればよいか解説します。

 

3−1.退職勧奨の際に言ってはいけない言葉

以下のような発言は、違法な退職勧奨と評価され、退職の意思表示や合意が無効や取り消しになったり、慰謝料やバックペイを支払わなければならない可能性があります。

 

▶参考:退職勧奨の際に言ってはいけない言葉まとめ

言ってはいけない言葉 内容 参考
職員を罵倒したり侮辱するような人格を否定する言葉
  • 介護のセンスがない。
  • 介護職の人間として失格。
  • 私生活がだらしない。遊んでばかりいないで介護についてもっと勉強しろ。
  • ○○(利用者とトラブルになったなど)はお前のせいだ。
石見交通事件

公益財団法人後藤謝恩会ほか事件など

退職勧奨に応じる以外の選択肢がないかのような言葉
  • 自主退職か、懲戒解雇かの二択しかない。
  • 残っても相応の待遇になる。自分なら辞める。
  • とりあえず辞表をだしてもらわないと面談が終われない。
  • 退職するまで面談する。
富士ゼロックス事件
退職勧奨に応じないことを理由として不利益に扱うことを仄めかす言葉
  • 今日、退職届を出さないなら地方に行ってもらう。
  • (事情がないにもかかわらず)退職勧奨を拒否すれば、多分懲戒解雇だろう。
  • 退職勧奨を拒否して在職しても、してもらう仕事がない。
  • 退職しないなら今後のあなたの扱いを考えざるを得ない。
国鉄九州自動車部事件など

 

次の項目で、それぞれの言葉の問題点を事例付きで詳しく解説します。

 

3−2.職員を罵倒したり侮辱するような人格を否定する言葉

ここでは、「職員を罵倒したり侮辱するような人格を否定する言葉」について、具体的な例をあげながら、なぜ発言してはいけないのか、その理由についてや、正しい言い方などもあわせて解説していきます。

 

(1)具体的な発言内容

  • 介護のセンスがない。
  • 介護職の人間として失格。
  • 私生活がだらしない。遊んでばかりいないで介護についてもっと勉強しろ。
  • ○○(利用者とトラブルになったなど)はお前のせいだ。

 

(2)発言してはいけない理由

上記のような発言は、職員の人格を否定し、名誉感情を侵害するもので、社会通念上相当な限度を超えた違法な退職勧奨と評価される場合があります。このような人格否定や誹謗中傷にあたるような言葉を用いた退職勧奨により、職員に精神的苦痛を負わせたとして、慰謝料を支払わなければならない場合もあります。

また、職員を罵倒するような言動や執拗な退職勧奨を実行すれば、たとえ退職の同意を得られたとしても、職員を畏怖させて無理に退職の意思表示をさせたとして、「強迫」(民法第96条1項)となり、同様に取消される可能性があります(石見交通事件。下記3を参照)。

退職勧奨を行う職員には、能力不足や任務懈怠などの問題があることも多く、退職勧奨の際にはその問題点を指摘し、退職を促すことも考えられます。しかし、殊更に職員の問題点を指摘し、人格を否定することは違法なものと評価される可能性が高いです。そのため、退職勧奨において強い言葉や人格を否定するような表現を使うことは避けるべきです。

 

▶参照:民法第96条1項

(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

・参照元:「民法」の条文

 

 

(3)具体的な事例

職員の人格を否定するような発言が問題となった裁判例を見ていきましょう。なお、下記の裁判例は、発言内容が人格否定や侮辱となるものですが、それに加えて勧奨行為が執拗なものであったり、他の職員にも聞こえるような形で行ったりなど、退職勧奨の態様にも問題があるケースになります。

後述の通り、退職勧奨が違法となるかの判断は、発言内容のみならず、退職勧奨の態様や回数、実施した時間も大きく考慮されます(「4.退職勧奨の場面で注意すべきポイントは?」を参照)。したがって、発言内容のみに気を付ければよいというわけではない点に注意が必要です。

 

1.石見交通事件:(松江地益田支判 昭和44年11月18日)

●事案の概要

職員は、会社幹部3人から懲戒事由に該当しないにもかかわらず懲戒解雇を示唆され、加えて「前科者」「生活能力がない」など繰り返し罵倒されたことを受け、やむなく退職届に署名押印させられたとして、職員が退職の意思表示の取り消しを求めた事案です。

 

●裁判所の判断

裁判所は、使用者側の言動は、「もし職員が退職の意思表示を行わなければ解雇され、社会的にいかなる不利益を被るかわからないものと…畏怖させたうえ、その影響のもとにこれ(退職届の署名押印(筆者追記))を行わせようとする意図を有していたと推認するに充分」であるとして、職員もこれらの言動によって畏怖したとして、退職の意思表示を強迫(民法96条)に基づく取消し及び賃金のバックペイを認めました。また本件では、違法な退職勧奨を理由に合計30万円の損害賠償請求も認められています。

 

▶参照:石見交通事件(松江地益田支判 昭和44年11月18日)の判決内容については、裁判所のホームページを参考にご覧ください。

「石見交通事件(松江地益田支判 昭和44年11月18日)」の判決内容

 

 

2.兵庫県商工会連合会事件:神戸地姫路支判平成24年10月31日労判1066号28頁

●事案の概要

商工会に勤務する職員は、商工会ないし専務理事から執拗な退職勧奨をしており、退職勧奨時の面談において、職員に対し、「管理者の構想から外れている」「ラーメン屋でもしたらどうや」「商工会の権威を失墜させている」などと言われ、精神的苦痛を受けたとして、商工会に対し損害賠償請求を行った事案です。

 

●裁判所の判断

裁判所は、当該専務理事による発言が、職員の名誉感情を不当に害する侮辱的な言辞であったとして、社会通念上相当な限度を超えた違法な退職勧奨であることを認め、その後の転籍命令などの違法性も認定の上、100万円の慰謝料の支払いを認めました。

 

3.公益財団法人後藤謝恩会ほか事件:名古屋高判平成30年9月13日労判1202号138頁)

●事案の概要

美術館に勤務していた元職員は、美術館を経営する上司2名(経営者親族)との面談において、両名から「信頼関係がすべて崩れちゃった」「センスが合わない」「ここの職員としてふさわしくない」「いらない人」「辞表を書いていただく」などと言われ、パワーハラスメントに該当するとして、両名に対し、損害賠償請求を行った事案です。

 

●裁判所の判断

裁判所は、職員との面談における上司らの発言内容が、職場から職員を排除することを示唆するもので、言葉を荒げたり、高圧的な態度を伴うものではないものの、上司2名の地位や発言の内容から、社会通念上相当な限度を超える違法な退職勧奨であると評価し、90万円の慰謝料の支払いを認めました。

 

【弁護士畑山裕俊のワンポイントアドバイス】

 

上記のような発言は、職員に対する指導の場面においても注意が必要です。

 

使用者である事業者には、労働者である職員が安心に働けるよう、すべての職員に対し、職場環境の安全や人格に配慮する義務(職場環境整備義務)があります。つまり、問題職員に対して指導を行うことは、職場環境整備義務から当然に必要ですが、問題職員の人格に配慮し、適切な指導を行う必要もあることになります。なお、最終的に解雇の手続きを実施する際も、適切な指導を行ったことは重要です。

 

上記の裁判例のように、単に職員の能力を咎めるような発言は、職員に対する適切な指導をしたとはいえず、パワーハラスメントに該当する可能性が高いです。職員に対する指導においても、その指導方法や発言内容については細心の注意を払いましょう。

 

▶参考:問題職員への指導方法については、以下の記事でも詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。

 

問題職員の指導方法とは?正しい手順と注意点などを指導例付きで解説

 

(4)正しい言い方の例

退職勧奨のみならず、通常の業務中においても、職員に対して侮辱的な言動を行うことは避けるべきです。職員の問題点を指摘する場合も、「だめだ」「なっていない」「能力不足だ」と抽象的な言い方をするのではなく、何が問題かを出来る限り具体化して伝えるようにしましょう。

問題点を具体化して伝えることができれば、職員が自分の問題点を自覚し、「退職することも仕方ない」と考え、自発的に退職勧奨に応じる可能性もあります。

以下の表に、発言内容の問題点と改善案をまとめましたので、併せてご確認ください。

 

▶参考:「職員を罵倒したり侮辱するような人格を否定する言葉の内容・問題点・改善案」のまとめ一覧

発言内容 問題点 改善案
介護のセンスがない。

 

介護職の人間として失格。

 

私生活がだらしない。遊んでばかりいないで介護についてもっと勉強しろ。

 

・何が問題か分からず、精神的なショックを受ける可能性が高く、損害賠償請求のリスクがある。

 

職員の反発を生み、退職勧奨に応じなくなる。

 

・退職勧奨時において職員の人格を否定し、罵倒するような発言をすれば、職員を強迫したと評価され、退職の意思表や合意が取り消される可能性がある。

 

あなたは、○月○日、○月△日など合計〇回無断欠勤しています。○日時点で上司の○○さんから無断欠勤について注意を受けましたが、その後も〇回の欠勤が続いており、改善したとは言えません。

また、あなたの利用者への接し方や介護業務は、当事業所の求める水準に達していないと考えています。

上司の○○さんから○○時点で、利用者にため口を使ったり、勤務報告書を作成しないことについて注意を受けていますが、注意後の○月○日時点でも、複数の利用者へため口で話したことや、勤務報告書が未提出である旨の報告を受けています。

このようなことから、当事業所では、当事業所の考え方や求める内容とあなたの考え方や働き方には埋めることができない大きな隔たりがあると思います。あなたとしても、意に沿わない指導や注意を受けることは気持ちの良いことではないと思います。退職をされて、あなたの考えに合う職場を探してはどうでしょうか。一度退職を検討してみてください。ちなみにこの話はあくまで提案で、解雇するということではありません。改めて検討の結果を教えてください。

利用者からも評判が悪い。

 

○○(利用者とトラブルになったなど)はお前のせいだ。

 

・クレームをすべて自分のせいにされたと受け止められ、会社への不信感につながる。

 

・一方的な決めつけであった場合、心を閉ざし退職勧奨を拒否される可能性がある。

 

あなたの不適切介護について、何度か報告を受けています。

事業所としては、あなたのケアについて何度か指導をしてきましたが、その後も同様の不適切介護の報告があり、残念ながら改善は見込めないものと考えています。

※報告書など客観的な証拠があれば、提示しながら話をすることが望ましい

不適切介護があったことは事業所としても重く受け止めています。戒告処分以上の懲戒処分も検討せざるを得ないと考えています。

また、虐待と評価される可能性があるので、行政にも通報をする必要があると考えています。ここまでの大事になってしまうと、あなたもこの職場で働き辛くなるのではないでしょうか。心機一転、他の事業所に移籍して一から出直す方があなたにとって良いのではないかと思いますが、あなたはどう思いますか。

 

3−3.退職勧奨に応じる以外の選択肢がないかのような言葉

次に、「退職勧奨に応じる以外の選択肢がないかのような言葉」について、具体的な例をあげながら、なぜ発言してはいけないのか、その理由についてや、正しい言い方などもあわせて解説していきます。

 

(1)具体的な発言内容

  • 自主退職か、懲戒解雇かの二択しかない。
  • 残っても相応の待遇になる。自分なら辞める。
  • とりあえず辞表をだしてもらわないと面談が終われない。
  • 退職するまで面談する(帰れない)。

 

(2)発言してはいけない理由

上記のような発言は、退職勧奨による退職の意思表示や退職合意が無効になったり、取消しになる可能性が高い言葉です。

退職勧奨は任意の手続きなので、交渉の実施は、職員が明確に退職の拒否をしていないことが前提であり、退職の合意も職員の自由な意思に基づいて行われることが必要になります(日本アイ・ビー・エム事件 第一審判決(東京地裁 平成23年12月28日判決))。

 

▶︎参照:日本アイ・ビー・エム事件 第一審判決(東京地裁 平成23年12月28日判決)

退職勧奨は、勧奨対象となった労働者の自発的な退職意思の形成を働きかけるための説得活動であるが、これに応じるか否かは対象とされた労働者の自由な意思に委ねられるべきものである。

したがって、使用者は、退職勧奨に際して、当該労働者に対してする説得活動について、そのための手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱しない限り、使用者による正当な業務行為としてこれを行い得るものと解するのが相当であり、労働者の自発的な退職意思を形成する本来の目的実現のために社会通念上相当と認められる限度を超えて、当該労働者に対して不当な心理的圧力を加えたり、又は、その名誉感情を不当に害するような言辞を用いたりすることによって、その自由な退職意思の形成を妨げるに足りる不当な行為ないし言動をすることは許されず、そのようなことがされた退職勧奨行為は、もはや、その限度を超えた違法なものとして不法行為を構成することとなる。

・参照元:「日本アイ・ビー・エム事件 第一審判決(東京地裁 平成23年12月28日判決)」の判決内容

 

 

職員が退職勧奨を受け入れるしかないと考え、やむを得ず退職の意思表示をした場合は、自由な意思に基づいて合意したとはいえず、詐欺(民法第96条1項)や錯誤(民法第95条1項)などにより取り消される場合があります。例えば、未確定であるにもかかわらず、今後、必ず懲戒解雇になると職員に伝えれば、「退職勧奨に応じなければ必ず懲戒解雇になる」と職員が誤信し、退職の合意をしたとしても、詐欺や錯誤と評価される可能性があります。

 

▶参照:民法第95条1項・2項、第96条の条文

(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
(3項省略)

 

(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

・参照元:「民法」の条文

 

 

また、任意の手続きであるにもかかわらず、職員が明確に拒否した後も退職勧奨を続ければ、一方的な解雇と評価され、法令上の解雇の制限や(労働契約法第16条)、事業所の就業規則における手続きを行っていないなどとして、違法な解雇として無効になる場合もあります。退職を促すにとどまらず、退職を強制するような言動には気を付けましょう。

 

▶参照:労働契約法第16条の条文

(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

「労働契約法」の条文

 

 

(3)具体的な事例

以下の裁判例は、退職勧奨時の発言により、職員が退職するしかないと誤信したものや、退職勧奨の実施の方法が諭旨解雇と評価されたものになります。詳しく見ていきましょう。

 

1.富士ゼロックス事件(東京地判平成23年3月30日)

●事案の概要

出退勤時刻を虚偽入力したなど問題行動をした職員が、人事担当者らの退職勧奨を受け、退職しなければ懲戒解雇になると誤信し、退職の意思を表示したことについて、動機の錯誤があるとして取消し(なお、この事案当時の民法では錯誤の効果は無効とされていました。)及び雇用契約上の地位に基づくバックペイの支払いを求めた事案です。

 

●裁判所の判断

裁判所は、人事担当者らの「あなたのためを思って人事は言っている。会社に残りたい、これは寝言」「自主退職を申し出るのか、会社から放逐されるのか、決めて欲しい」「懲戒解雇は退職金は支払わない。会社は必ず処置をする。一番重たい結論になる可能性が高い」などの発言を受けて、職員は自主退職しなければ懲戒解雇されるものと信じ、懲戒解雇を避けるために退職の意思表示をしたものであるとして、錯誤を認め退職の意思表示の有効性を否定した上、バックペイとして366万1632円の支払請求を認めました。

 

2.京電工論旨解雇事件(仙台地判平成21年4月23日)

●事案の概要

使用者は、業務において多数の施工ミスをしたことを理由に、職員に対し厳しく強い口調で、「自分のやってきたことの重大さを分かってくれてますか。」「分かってもらっているのであれば,もう私が話したいことは十分おわかりですよね。」などと話し、職員から辞めろということか、退職願いを書けばよいかという質問に対して、「それは自分で考えて下さい。」「退職願じゃないんじゃないですか。退職届ということになるんじゃないでしょうか。」と答えて原告に退職届を提出するよう指示しました。

これに対し職員は、その場で退職届を作成の上提出し退職しましたが、このような退職勧奨は無効であり、不法行為を構成するとして、使用者側に対し訴えを提起した事案です。

 

●裁判所の判断

裁判所は、当該職員が就業規則上の懲戒事由に該当することを認定した上で、当該職員が自主的に退職届を作成する以外にないとの緊迫した状況に置かれ、不本意ながらやむを得ず退職届を提出するに至ったにすぎず、任意かつ自主的に退職を決断したと評価することは困難であるとして、当該職員の退職は自主退職であるとする使用者側の主張を採用しませんでした。

また、使用者の退職勧奨の実施方法から、職員に説諭の上自発的に退職を促す諭旨解雇にあたるとして、一連の退職に関するやり取りは、懲戒処分として必要とされる手続きを欠き、違法であると判断しています。

 

(4)正しい言い方の例

繰り返しになりますが、退職勧奨は任意の手続きです。退職勧奨の面談では、退職するしかないと思わせるのではなく、適切な条件等を提示の上、「この退職勧奨に応じるほうが得かもしれない」と職員に理解してもらうことが重要になります。

もっとも、退職勧奨に際して、懲戒処分を予告すること自体は、直ちに不法行為を構成するものではありません(参考:A 病院事件:札幌高裁令和4年10月21日労経速 2505号45頁)。裁判所は、自主退職を行うか懲戒処分の当否を争うかを選択する機会を得られることは、職員にとっても利点であるとしています。問題となる懲役処分の告知は、検討未了の懲戒処分の告知や、予定されていない処分との二者択一を迫るものと考えられます。

よって、退職しなければ必ず処分されると受け取られないよう、退職勧奨の理由が職員の問題であり、懲戒処分相当であることが検討未了である場合には、「このままだと懲戒処分がされる可能性がある」とする程度にとどめて告知することが望ましいです。

以下の表に、発言内容の問題点と改善案をまとめましたので、併せてご確認ください。

 

▶参考:「退職勧奨に応じる以外の選択肢がないかのような言葉の内容・問題点・改善案」のまとめ一覧

発言内容 問題点 改善案
自主退職か、懲戒解雇かの二択しかない。

 

残っても、相応の待遇になる。自分なら辞める。

 

懲戒解雇との二者択一を迫るもので、懲戒解雇が有効なるような状況でなければ、詐欺や錯誤により退職の合意が取り消される可能性がある。

 

あなたには、就業規則*条*項に該当する問題行動があり、当事業所としても厳しい懲戒処分の検討を兼用せざるを得ない状況です。今後の処分の可能性を踏まえると、現時点で退職することも選択肢として十分考えられると思います。

あくまでも提案ですが、もし退職をするという選択肢がありえるのであれば、一定の退職金を支払う余地もあります。退職をする意向はあるかを教えてもらえますか。

とりあえず辞表をだしてもらわないと面談が終われない。

 

退職すると言うまで面談する(帰れない)。

・任意の退職勧奨ではなく、退職を強要している。

 

解雇と評価される可能性があり、法令上の制限に違反したり、就業規則上の手続きを経ていなければ、違法な解雇として無効になる。

【退職勧奨面談での説明内容】

今回の面談は、あくまでも当事業所があなたに対して退職について提案するものになります。本日の提案を受けてこの場でお答えすることは難しいと思いますので、次回以降の面談で意向を伺いたいと思います。もし今の段階で質問があればおっしゃってください。

 

【質問への回答が難しい場合】

質問内容はわかりました。こちらとしてもしっかり回答したいと思いますので、次回の面談でお答えしてもよろしいでしょうか。

 

【質問がない場合】

わかりました。○月○日(1週間から2週間程度)にもう一度面談しますので、その時にお考えをきかせいただいてもよろしいでしょうか。

 

【面談を辞めてほしい、具合が悪いの帰りたいと言われた場合】

わかりました。また改めて面談の機会を設けたいと思います。次回の面談は〇月〇日を予定しておりますので、よろしくお願いします。

 

3−4.退職勧奨に応じないことを理由として不利益に扱うことを仄めかす言葉

3つ目は、「退職勧奨に応じないことを理由として不利益に扱うことを仄めかす言葉」について、具体的な例をあげながら、なぜ発言してはいけないのか、その理由についてや、正しい言い方などもあわせて解説していきます。

 

(1)具体的な発言内容

  • 今日、退職届を出さないなら地方に行ってもらう。
  • (事情がないにもかかわらず)退職勧奨を拒否すれば、多分懲戒解雇だろう。
  • 退職勧奨を拒否して在職しても、してもらう仕事がない。
  • 退職しないなら今後のあなたの扱いを考えざるを得ない。

 

(2)発言してはいけない理由

退職勧奨に応じるか否かは、職員が任意に判断して良いことであって応じる義務はありません。したがって、退職勧奨に応じないことのみを理由に不利益な処分を行えば、その不利益処分は違法なものとして無効となる可能性が高いです。そうすると、違法な不利益な取り扱いを告知し、退職の合意をさせたとしても、強迫や詐欺(民法第96条1項)、錯誤(民法第95条1項、2項)と評価され取り消される可能性があります。

また、職員が「退職勧奨を拒否し続ければ、今後も嫌がらせをされるのではないか」と考え、退職を表明する場合があります。しかし、前述の通り、拒否を理由に不利益な取り扱いを仄めかしたことで行った退職の意思表示や合意は無効となる可能性があり、パワーハラスメントに該当して損害賠償を請求されるリスクがあります。

 

【弁護士畑山裕俊のワンポイントアドバイス】

 

職員に問題があり、不利益な取扱いを行うことが法的に認められる場合であっても、退職勧奨を拒否した直後に実施する場合は注意が必要です。退職勧奨を拒否した職員に対し、懲戒処分の懲戒事由や配置転換の業務上の必要性などを十分に説明することなくこれらの処分を行えば、「退職勧奨を拒否したから処分がされた」と評価されかねません。

 

退職勧奨を拒否した職員に対し、配置転換や懲戒処分を実施する場合は、配置転換や懲戒処分の理由があることを丁寧に説明し、なおかつ説明した記録を作成しておくことで、配置転換や懲戒処分と退職勧奨とは無関係であることを証拠として残しておくことが肝要です。

 

▶参考:退職勧奨を拒否した職員への対応については、以下の記事でも解説しておりますので、併せてご覧ください。

 

退職勧奨が拒否されたら?応じない場合のその後の対応を詳しく解説

 

(3)具体的な事例

以下の裁判例は、退職勧奨において不利益な取り扱いをすることを直接仄めかしたケースではないですが、使用者側が労働者に対し退職の合意をさせるために不利益な取り扱いをした点が問題となっており、退職勧奨時の不利益な取り扱いを仄めかす発言の違法性を考える裁判例として参考になりますので、詳しく見ていきましょう。

 

1.国鉄九州自動車部事件(熊本地判八代支昭和52年3月9日労判283号62頁)

●事案の概要

国鉄は、乗合業務に従事する社員に対し退職勧奨をしたものの、当該社員が退職勧奨を明確に拒否したことから、この社員を2日間他の業務に従事させ、その間に強く退職勧奨を行おうと計画しましたが、当該社員がこれを拒否して有給休暇の申請を行ったため、これを理由なく認めず、やむなく出勤した社員に執拗に退職勧奨を行いました。この退職勧奨に疲労した職員が半休の有給休暇を申請したところ、国鉄はこれも認めず、加えて出勤しなかった職員を欠勤扱いにして賃金をカットしました。

当該社員は退職勧奨に応じて退職しましたが、一連の退職勧奨は違法なものであるとして、国鉄に対し損害賠償請求をした事案です。

 

●裁判所の判断

裁判所は、退職勧奨に応じるかどうかについては自由であってその義務がないものであり、国鉄側が退職勧奨のために社員からの有給休暇の申請を合理的理由なく拒否することは、退職勧奨を義務付けることに等しいものであり、当該社員に自発的な退職をしなければ今後も退職勧奨が続くものとして深刻な不安を与えたといえることから、当該退職勧奨は、自由な退職意思の形成を妨げた違法なものであると判断しました。

 

2.広島高判令和4年4月21日、山口地判令和3年9月8日(原審判決)

●事案の概要

山口県警は、不倫や浪費癖などの私生活上の問題行動や、横領問題への関与が疑われる警察官に対し、警察署側が複数回にわたり退職勧奨を行いましたが、当該警官がこれを拒否したため、強い言葉で辞職するよう迫るとともに、自主降格願いを出さなければ在職できないこと、在職する場合は身辺調査を徹底的に行うことを告げました。その後、当該警察官は退職しましたが、退職勧奨において、私生活における不当な介入があり、一連の退職勧奨において退職の強要があったとして、山口県に対し国家賠償請求を行った事案です。

 

●裁判所の判断

裁判所は、任意で行われるべき自主降格を在職の必要条件として提示した行為は、当該警官に自主降格を義務付ける権限がないにもかかわらず、自主退職又は自主降格の二者択一を迫ったものといわざるを得ないとし、当該警官が退職勧奨を拒否し、残留を望んでいるにもかかわらず、自主退職に追い込もうと企図したもので、執拗かつ組織的で悪質性が大きいと評価し、違法な退職勧奨であると判断しました。

 

(4)正しい言い方の例

前述の通り、職員には退職勧奨の面談や交渉に応じる義務はありません。それにもかかわらず、退職をしなければ不利益な取り扱いがされることを告げて退職を迫れば、その後の手続きが円滑に進むことはありません。以下の表に、発言内容の問題点と改善案をまとめましたので、併せてご確認ください。

 

▶参考:「退職勧奨に応じないことを理由として不利益に扱うことを仄めかす言葉の内容・問題点・改善案」のまとめ一覧

発言内容 問題点 改善案
今日、退職届を出さないなら地方に行ってもらう。

 

(事情がないにもかかわらず)退職勧奨を拒否すれば、多分懲戒解雇だろう。

 

その後の不利益的取り扱いが退職勧奨を拒否したことを理由にした不利益な取り扱いであると評価される。例えば、配置転換は不当な目的・動機によるものとして、違法かつ無効となる(参考:フジシール事件)。

 

「退職しなければ」「拒否すれば」というワードは、退職勧奨を拒否したことが不利益な取り扱いの理由であると評価される可能性が高い。

 

【職員が退職しないと返答した場合】

現在の意思はわかりました。理由について伺ってもよろしいでしょうか。

 

① 今後の生活が不安

退職いただけるのであれば、当面の生活資金として、退職金の割り増しを条件にする予定です。また、再就職先のあっせんも検討しています。

 

② 同じ職場で働きたい

意向は承りましたが、事業所としては今後一緒に働くことは難しいと考えています。

在職を希望する場合は、別の事業所へ転勤になる可能性があります。この転勤は、あなたの業務内容を変更することが主な理由です。現在担当されている業務では、残念ながらあなたの能力を発揮することはできないと判断しています。また、利用者とのトラブルも複数報告を受けており、あなたにとっても就業環境を変えた方が良いと考えています。

一方で、あなたによる不適切介護については事業所としても重く受け止めています。今後、戒告処分以上の懲戒処分を実施することも検討しています。

それでも在職を希望するのであれば、我々としても止めることはできませんが、お伝えしたことを含めて一度退職することについて検討いただければと思います。

退職勧奨に応じてもらえるのであれば、退職金の積み増しなどあなたにとって有利な条件も提示できます。次回の面談で、もう一度お考えを聞かせてくれないでしょうか。

※断固として職員が退職勧奨を拒否した場合は、退職勧奨の手続きを続けることが難しくなることに注意が必要

退職勧奨を拒否して在職しても、してもらう仕事はない。

 

退職しないなら今後のあなたの扱いを考えざるを得ない。

職員に対する理由のない不利益的な扱いと評価される。

 

仕事を与えない、出勤しても放置するような措置は、退職を強制させるための手段として位置づけられる可能性があり、損害賠償請求のリスクがある。

 

脅しているように受け止められ、職員の自由な意思を阻害する可能性が高い。

 

4.退職勧奨の場面で注意すべきポイントは?

3.退職勧奨の場面で「言ってはいけないこと3つ」とは?」では、言ってはいけない言葉やその問題点について解説しました。この項目では、退職勧奨時の言動以外にも注意すべきポイントについて説明します。

 

4−1.職員への接し方、面談場所、面談時間に注意する

退職勧奨の面談においては、言動だけではなく、職員への接し方も注意する必要があります。退職勧奨は、対象となる職員の上司や施設管理者が行うことが一般的です。職員にとっては、自分より上の立場の人間から退職を促されるわけですから、面談の実施自体、萎縮効果を持つことは否定できません。

よって、言動以外の職員への接し方や態度により、退職を強要したと評価され、職員が退職の意思表示をしたとしても取り消される可能性も十分にあります。

具体的には、以下のポイントに注意しながら、退職勧奨の面談を実施しましょう。

 

  • 狭い個室で複数人で実施するなど、圧迫面談になっていないか
  • 机をたたいたり、大声を出したりしていないか
  • 長時間(1時間以上)の面談になっていないか
  • 業務時間外に呼び出していないか
  • 職員が拒否しているのに面談を続けていないか

 

退職勧奨の面談の際の言動に気を付けるのはもちろんですが、言動にのみ気を付ければよいというわけではないことに注意が必要です。

 

4−2.面談での会話は録音する

退職勧奨における職員との会話内容は、録音しておくことが望ましいです。退職勧奨をした後に、職員から「退職を強要された」「解雇といわれた」と主張される可能性があります。退職勧奨の面談における録音があれば、仮に裁判になったとしても、退職の強要がなかったことを証明することができます。

録音については、原則として相手方に了承をとる必要はありません。また、対象の職員から録音をするのかと聞かれた場合は、トラブル防止のため、面談の記録として録音すると回答して堂々と録音すれば足ります。

 

▶参考情報:秘密録音については以下の動画でも解説しておりますので、併せてご確認ください。

【無断録音】こっそり録音することは違法か?

 

 

【無断録音!】実際にあったミス3選!弁護士が解説します!

 

 

なお、職員側も、違法な退職勧奨を受けるかもしれないと感じ、秘密録音をしている可能性があります。上記の通り、秘密録音は原則として許容されていますので、退職勧奨における発言や振る舞いは、録音録画がされていると思って面談に臨みましょう。

 

4−3.職員の言い分をしっかり聞く

退職勧奨は「話合い」であり、退職してもらいたいと伝えることはあくまで「お願い」になります。辞めさせようとする意識があると、職員が退職勧奨に反発した場合、だんだんと交渉がエスカレートし、思わず、前述の「言ってはいけない言葉」を言ってしまう可能性もあります。

退職勧奨のメリットの一つとして、退職の合意について自由に条件を付けることが出来ることにあります。そのため、退職勧奨の面談は、職員から退職が可能な条件を聞き出すことが出来る重要な場面になります。よって、職員の言い分にはしっかりと耳を傾け、どのような条件であれば退職をしてくれるか情報取集を行うことが重要になるのです。

 

5.退職勧奨に関して弁護士に相談したい方はこちら

介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!

弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。

 

  • (1)退職勧奨の交渉サポート
  • (2)労働判例研究会
  • (3)顧問サービス「かなめねっと」

 

以下で、順番に説明します。

 

5−1.退職勧奨の交渉サポート

退職勧奨は、その行為単体だけではなく、解雇や他の不利益処分等とも密接に関連し、計画的且つ状況に応じた対応が求められます。前述の通り、退職勧奨における言動によっては、退職の合意が無効になったり、損害賠償請求がされてしまうリスクがあります。退職勧奨の面談においては、対象となる職員がどのような人物であるかを把握の上、入念に準備する必要があります。

そのため、いざ退職勧奨を実施しようとしたタイミングではなく、「この職員、何か問題行動が多いな…」と感じたタイミングから、専門家の意見を仰いでおくことが重要なのです。早期に相談を受けられれば、証拠の残し方、実際に退職勧奨をする際の準備などを、計画的にサポートできますし、契約内容を見直すタイミングで効果的な指導等ができる可能性もあります。

弁護士法人かなめでは、このような初期段階から、現場の責任者からの相談を受け、初動からきめ細やかなサポートをすることで、労務問題に対して適時に助言をすることができます。

 

5−2.労働判例研究会

弁護士法人かなめでは、顧問先様を対象に、退職勧奨の手続きや団体交渉をはじめとして、普段の労務管理の参考になる労働判例を取り上げ、わかりやすく解説する労働判例研究会を不定期に開催しています。

研究会の中では、参加者の皆様から生の声を聞きながらディスカッションをすることで、事業所に戻ってすぐに使える知識を提供しています。

 

▶参考:「労働判例研究会」の紹介はこちら

 

 

5−3.顧問弁護士サービス「かなめねっと」

弁護士法人かなめでは、これらのサービスの提供を総合的に行う顧問契約プラン「かなめねっと」を実施しています。

具体的には、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入し、事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。そして、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。直接弁護士に相談できることで、事業所内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。

介護業界に特化した顧問弁護士サービス「かなめねっと」について詳しくは、以下のサービスページをご覧ください。

 

▶︎参考:顧問弁護士サービス「かなめねっと」のサービス紹介はこちら

 

 

また以下の動画でも詳しく説明をしていますので、併せてご覧下さい。

 

▶︎【介護・保育事業の方、必見】チャットで弁護士と繋がろう!!介護保育事業の現場責任者がすぐに弁護士に相談できる「かなめねっと」の紹介動画

 

 

(1)顧問料

●顧問料:月額8万円(消費税別)から

※職員の方の人数、事業所の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、お問合せフォームまたはお電話からお問い合わせください。

 

6.まとめ

この記事では、退職勧奨の面談における「言ってはいけない言葉」について解説しました。

退職勧奨は解雇手続きの制限を受けることなく、職員との合意により、円満に退職してもらう手続きです。もっとも、とにかく退職させようと考えば、前述した「職員を罵倒したり侮辱するような人格を否定する言葉」、「退職勧奨に応じる以外の選択肢がないかのような言葉」、「退職勧奨に応じないことを理由として不利益に扱うことを仄めかす言葉」を発言してしまい、退職をしてもらうどころか、逆に損害賠償や退職の合意の取消によるバックペイを請求されてしまうことになります。

重要なことは、退職勧奨を行う職員に対しても敬意を持ち、真摯な対応を心がけることです。勧奨を行う職員に対しては、時にはマイナスの感情を抱くことはしかたありませんが、退職勧奨において適切な対応をすることが、問題職員に退職してもらう近道であると心がけ、落ち着いて退職勧奨の面談に臨むようにしてください。

退職勧奨をご検討されている事業者の方や、退職勧奨を実施した事業者の方で、「あのときの発言はよくなかったかも」「今後の退職勧奨の面談が不安」という方は、今回の記事で「言ってはいけない言葉」を確認の上、早期に弁護士に相談するようにしましょう。

 

7.【関連情報】退職勧奨に関するその他のお役立ち情報

この記事では、「退職勧奨の場面で言ってはいけないこと3つ!面談時の注意点を解説」として、退職勧奨の場面で言ってはいけないことについてを解説してきましたが、この記事でご紹介していない退職勧奨に関するお役立ち情報も以下でご紹介しておきますので、あわせてご参照ください。

 

退職勧奨での退職金と解決金とは?相場や交渉方法をわかりやすく解説

退職勧奨が違法となる場合とは?具体例や裁判例をまじえて徹底解説

 

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この記事を書いた弁護士

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畑山 浩俊はたやま ひろとし

代表弁護士

出身大学:関西大学法学部法律学科卒業/東北大学法科大学院修了(法務博士)。
認知症であった祖父の介護や、企業側の立場で介護事業所の労務事件を担当した経験から、介護事業所での現場の悩みにすぐに対応できる介護事業に精通した弁護士となることを決意。現場に寄り添って問題解決をしていくことで、介護業界をより働きやすい環境にしていくことを目標に、「介護事業所向けのサポート実績日本一」を目指して、フットワークは軽く全国を飛び回る。
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石田 雅大いしだ まさひろ

弁護士

出身大学:関西大学法学部法学政治学科卒業/大阪大学法科大学院修了(法務博士)。
祖父母との同居生活や、障がい者支援の活動に参加した経験から、社会における福祉事業の役割の重要性を実感し、弁護士として法的なサポートを行いたいと思い、弁護士法人かなめに入所。介護事業所からの相談や行政対応を担当し、「働きやすい福祉の現場をあたりまえにする」というミッション実現のために日々奮闘している。

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