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退職勧奨が拒否されたら?応じない場合のその後の対応を詳しく解説

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事業所の中で、以下のような相談が寄せられたことはないでしょうか。

 

  • 「問題行動が目立つ同僚がおり、利用者さんともトラブルが多い」
  • 「このままでは信用問題になるし、他の職員も迷惑している」
  • 「できれば辞めさせてほしい」
  • 「あの人を辞めさせてくれないなら、私が辞める」

 

このような職員に対して、まずは任意に退職をしてもらうために、退職勧奨を行うことが考えられます。しかし、退職勧奨をしたものの、職員が拒否してしまったり、断固として応じず断り続けるケースも少なくありません。

退職勧奨はあくまで話合いによるものであり、退職を拒否しているにもかかわらず強引な退職勧奨を続けてしまえば、職員から慰謝料などの損害賠償請求を受けるリスクや、退職の合意に至っていたとしても後から無効と評価されてしまい、職員が職場に復帰してしまうリスクもあります。

そのため、退職勧奨をする際には、「断られたらどうするか」を事前に念頭に置いた上で、進める必要があるのです。

この記事では、「もし退職勧奨を拒否されてしまったら?」という事業所の皆様の悩みを解消するため、退職勧奨拒否の法的な説明を行い、退職勧奨を拒否された後の対応とその方法について、事例等を参照しつつ解説します。最後まで記事を読んでいただければ、退職勧奨を拒否された場合であっても、焦らず冷静に対応することができ、法的なリスクを抑えつつ、職場環境の安定を図ることができます。

それでは、項目ごとに、退職勧奨を拒否した職員への対応を見ていきましょう。

 

1.そもそも退職勧奨について

退職勧奨とは、使用者が雇用する労働者に対し、任意で退職するよう求める手続です。法的な手続きではなく、あくまでも使用者が労働者に対し、退職の意思を確認の上、雇用契約の合意解約の申込みを行い、これに対し承諾を求める手続きになります。一方的な意思表示によって雇用契約を解除する「解雇」とは異なり、強制力があるものではありません。

したがって、職員が退職勧奨に自ら応じなければ、退職させることはできません。

 

▶参考:退職勧奨の進め方については、以下の記事でも解説していますので、ご覧下さい。

退職勧奨とは?具体的な進め方、言い方などを弁護士が解説

 

 

2.職員が退職勧奨を拒否するよくある理由は?

職員が退職勧奨を拒否するよくある理由は?

退職勧奨を拒否する理由については、例えば以下のような理由が考えられます。

 

  • これからも同じ職場で働きたい
  • 再就職が難しくなりそうだから
  • 退職金が少なく、再就職まで生活できるか不安
  • 会社の思い通りになるのが嫌だ

 

拒否の理由は、職員によっても様々です。退職勧奨を行う際は、職員側がなぜ拒否をしているのか、職員側の言い分を意識することで、退職勧奨の手続きをスムーズにできます。

例えば、「退職金が少なく、再就職まで生活できるか不安」という理由であれば、退職金の上乗せや有給の買い取りを実施し、退職に伴い一定の金額を支払うことを条件とすることで、合意に至る可能性もあります。

 

▶参考:退職勧奨の場面での退職金や解決金についての相場や交渉方法については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

退職勧奨での退職金と解決金とは?相場や交渉方法をわかりやすく解説

 

 

3.職員側が退職勧奨を拒否するメリット・デメリットとは?

以下では、職員側が退職勧奨を拒否をするメリットとデメリットについて説明します。

 

3−1.メリット

職員側が退職勧奨を拒否する最大のメリットは、給与面などの労働条件が変更されることなく、今後も同じ職場で働けることにあります。

職員が退職の意向を示さなければ、退職勧奨の手続きを進めることはできません。そうなれば、職員は、事業所が解雇等の強制力ある手段に踏み切らない限り、退職する必要はありませんし、配置転換や降格等の処分がされない限り、今後も同じ労働条件で働くことができます。

また、一旦拒否する姿勢を示すことで、会社側から有利な条件を引き出せる可能性が高まるというメリットもあります。

 

3−2.デメリット

退職勧奨の手続きでは、円満な解決のために、使用者が労働者に対し、退職金の上乗せや再就職先のあっせんなどの条件を付けることがあります。これらの条件は、労働者に「今、退職したほうが良いかも…」と考えるきっかけを与え、退職の意思を引き出すことを目的にしています。そのため、労働者が自発的に退職する場合に比べて、労働者に有利な条件であることが通常です。

しかしながら、退職勧奨を拒否した後、注意指導をしても業務態度に改善が見られないような場合には、解雇手続きが検討される可能性もあります。解雇が法的に有効と判断されるような状況であれば、退職金の上乗せや有給の買い取りなどは当然されず、そもそも退職金が支給されなくなる可能性もあるため、退職勧奨を拒否することで、退職勧奨に応じていれば得られた好条件を棒に振ることになり得ます。

 

4.退職勧奨を拒否された場合のその後対応

退職勧奨を拒否された場合、その後の対応は、慎重に行う必要があります。

なぜなら、近年では、退職勧奨をされる職員側も、退職勧奨の流れ、退職勧奨を拒否するメリットや強引な退職勧奨が違法になることをインターネットなどで調べている可能性が高く、その後の対応を誤れば、損害賠償請求等を受ける可能性があるからです。

以下では、退職勧奨を拒否された場合のその後の対応について、詳しく解説していきます。

 

4−1.退職勧奨はあくまで任意の手続

1.そもそも退職勧奨について」で解説した通り、退職勧奨はあくまで任意の手続きであり、職員が退職について同意しなければ、退職の手続きを進めることができません。

職員が退職に同意をしないにもかかわらず、強引な退職勧奨を続ければ、違法な退職強要や解雇と評価されて、退職した職員から慰謝料を請求されるリスクがあります。

このような場合、退職勧奨の結果、退職の意思表示がされたとしても、その退職自体も無効になる場合があり、その場合には、当該職員が職場復帰するだけではなく、退職した時点から未払いとなっている給与も全額支払う必要があります(バックペイ)。

したがって使用者側は、退職強要などと評価されないように、退職勧奨後は特に慎重に手続きを進める必要があるのです。

 

▶参考:違法な退職勧奨の事例については、以下の記事でも解説していますのでご覧ください。

退職勧奨が違法となる場合とは?具体例や裁判例をまじえて徹底解説

 

 

4−2.退職勧奨後の対応

退職勧奨を拒否されたにもかかわらず、当該職員に対し、執拗に退職するように迫れば、退職強要と評価され、違法と認定される場合があります。

したがって、退職勧奨を明確に拒否された場合は、原則として、退職勧奨を継続するのではなく、注意指導やその他の処分などの実施を検討することになります。退職勧奨を拒否された後に処分をする際のポイントは、退職勧奨を拒否したことを理由に処分を行ったと評価されないようにすることです。

退職勧奨は任意の手続きであり、これに応じる義務は職員側にはなく、事業所が退職勧奨を拒否したことを理由に職員に対して不利益な扱いをすることは許されません。

退職勧奨を行う職員には、当然、退職を求めるに至った事情(能力不足、勤務態度の不良など)があります。そのため、このような事情に対して注意指導や処分の他、人事権を行使して配置転換をすることは、直ちに違法にはなりません。しかし、退職勧奨を拒否した直後に、特に業務上の必要もないのに遠方の事業所に異動させるなどすれば、「退職勧奨に応じなかったことを理由に左遷した」と評価されかねません。

そこで、退職勧奨を実施する前に、拒否された場合の対応策を検討しておき、退職勧奨が拒否された後の対応が違法な評価を受けることが無いように退職勧奨を進めていくべきです。

具体的な対応方法については、それぞれの項目に分けて詳しく解説していきます。

 

(1)注意指導

退職勧奨が拒否された場合、それにより退職勧奨に至ることとなった原因が解決するわけではありませんので、事業所としては、まずは当該原因を改善させるために注意指導を実施することになります。

注意指導は、退職勧奨が拒否された後に続く他の手続きの前提ともなります。

例えば、職員が労務の提供に問題があり、普通解雇を行う場合、直ちに普通解雇手続きに進むのではなく、まずは職員の問題点に対する注意指導を行う必要があります。普通解雇を有効にするためには、その解雇に「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」(労働契約法第16条)である必要があります。また、減給や降格などの重い懲戒処分の場合も同様の注意指導を経ることが必要であり、懲戒処分の内容ごとに、「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」でなければなりません(労働契約法15条)。

 

▶参考:注意指導をする際の注意点や方法については、以下の記事でも解説をしていますので、あわせてご覧下さい。

問題職員の指導方法とは?正しい手順と注意点などを指導例付きで解説

 

 

(2)懲戒処分(懲戒解雇を除く)

退職勧奨を拒否した職員に、就業規則上の懲戒事由が存在する場合、事業所は退職勧奨の実施に並行して懲戒処分を行うか、退職勧奨に応じなければ懲戒処分を実施せざるを得ない旨を告知することが考えられます。

使用者は、企業内の秩序を維持するための権限を有しており、この権限に基づき、企業秩序を乱すかまたは乱すおそれのある労働者に対し、企業秩序確立のための制裁を課す権限を有しています。

懲戒処分は、使用者が従業員の企業秩序違反行為に対して課す制裁です。懲戒処分といえば、懲戒解雇がイメージしやすいかも知れませんが、他にも、戒告、譴責(けんせき)減給、出勤停止、降格、諭旨解雇などがあります。懲戒処分は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である必要があり(労働契約法第15条)、不相当な懲戒処分は違法無効となり、処分を受けた職員から損害賠償請求を受けるリスクがあります。

 

▶参考:労働契約法第15条の条文

(懲戒)
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

・参照元:「労働契約法」の条文

 

 

(1)注意指導」でも説明した通り、退職勧奨を拒否した職員は、退職勧奨を拒否したことの報復として懲戒処分を受けたと主張し、その効力を争う場合があります。そのため、懲戒事由に該当する事情がある場合は、退職勧奨と並行して懲戒処分を行うか、退職勧奨時に予め予告し、懲戒処分の目的が退職勧奨を拒否したことへの嫌がらせではないことを明白にしておく必要があります。

例えば、懲戒処分に該当する事情があることを退職勧奨時にも指摘し、根拠となる証拠があれば提示して丁寧に説明する方法が考えられます。なお、後で職員から説明を受けていないと主張される可能性もありますので、説明をしたことは記録に残しておきましょう。

他方、退職勧奨時に、懲戒処分を受けるか、退職勧奨に応じるかの選択肢を示すことで、当該議員に対して、二者択一の選択肢を強いることが違法ではないかという問題意識が生じるかもしれません。しかし、この点について、裁判所は、自主退職を行うか懲戒処分の当否を争うかを選択する機会を得られるという意味で、労働者にとっても利益があるという考えを示しています(A病院事件:札幌高裁令和4年10月21日労経速 2505号45頁)。

 

裁判例:A病院事件:札幌高裁令和4年10月21日労経速 2505号45頁

 

1.概要

病院は、所属する従業員が他の病院に対し誹謗中傷などを行っていたことから、当該従業員に対する非違行為を理由とする懲戒処分を検討の上、退職勧奨に応じれば懲戒処分は行わない旨を告知しました。その結果、当該従業員が退職の意思を表示して合意退職しましたが、その後、従業員側が強迫により退職させられたとして、退職の意思表示無効の主張と損害賠償請求を行った事案です。

 

2.結論

裁判所は従業員側の主張を認めず、懲戒処分の対象となる旨を告知した上で行う退職勧奨は、原則として「不法行為を構成するものではない」とし、退職勧奨時の懲戒処分の告知に損害賠償責任は発生しないと判断しました。裁判所は、判断の理由のうち、退職勧奨の違法性について次のように述べています。

 

「解雇事由が存在しないにもかかわらずそれが存在する旨の虚偽の事実を告げて退職を迫り、執拗又は強圧的な態様で退職を求めるなど、社会通念上自由な退職意思の形成を妨げる態様・程度の言動をした場合に当たらなければ、意思決定の自由の侵害があったとはいえず、かえって、当該労働者としては、懲戒処分の当否を争うのか否か、すなわち、懲戒処分を受ける危険にさらされることと自主退職してこれを避けることとの選択をする機会を得られるという利益を享受することができる場合もある」

 

なお、検討未了の懲戒処分や予定されていない懲戒処分を告知して退職勧奨に応じさせることは、違法なものと評価される可能性が高いです。その結果、退職の合意自体が無効となり、事業所が損害賠償責任等の責任を負うことにもなりかねませんので、注意が必要です。

 

▶参考:違法となる退職勧奨については、以下の記事でも解説しておりますので併せてご確認ください。

退職勧奨が違法となる場合とは?具体例や裁判例をまじえて徹底解説

 

 

(3)配置転換

退職勧奨を実施した理由が、当該職員の問題行動や協調性のなさを理由とする事業所の職場環境の悪化などの場合、複数の事業所を有していれば、配置転換を行うことも考えられます。

配置転換(配転)は、使用者の人事権の行使として、通常は使用者側に広い裁量がありますが、どのような配置転換でも許されるわけではなく、業務上の必要性がないか、業務上の必要性がある場合でも、不当な目的・動機や、職員が被る不利益が、職員にとって通常甘受すべき程度を著しく超える場合には権利の濫用として違法となります(▶参考:東亜ペイント事件:最判昭和61年7月14日477号6頁)。

特に、退職勧奨を拒否した後の配置転換は、退職拒否に対する制裁、見せしめとしてされたものであり、不当な目的・動機による配置転換であると評価される可能性がありますので、退職勧奨を拒否した職員に対し配置転換を実施する場合は注意が必要です。

実際に、退職勧奨を拒否した社員に対し配転命令をした際、業務上の必要性が認められず、退職勧奨拒否の嫌がらせとして配転命令を発令したとして、裁判所が配転命令を無効と判断したケースがあります(フジシール事件:大阪地裁判決平成12年8月28日労判793号13頁)。

そのため、事業所としては、適切な人事権が行使されたことを説明できるように、業務上の必要性があること及び不当な目的・動機がなく、職員が被る不利益が、職員にとって通常甘受すべき程度を超えていないことを基礎付ける事情を整理し、それぞれの事情が立証できるような記録(配転先の職場環境が分かる資料、人事の基本方針、人事評価書類など)を残す必要があります。

業務上の必要性の有無は、例えば以下のような事情が認められるかにより判断されます。

 

  • 人材の適切な配置
  • 業務の効率が上昇する
  • 職員の能力向上のため
  • 職員の労働意欲の高揚が見込まれる
  • 事業所の業務運営の円滑化

 

例えば、前記裁判例(フジシール事件:大阪地裁判決平成12年8月28日労判793号13頁)によると、管理職であった労働者をいままで担当していない単純作業の業務に配置転換するなど、配置される部署や労働者の職歴を鑑みて業務上の必要がないと判断されたケースがあります。

また、不当な目的・動機がなく、職員が被る不利益が、職員にとって通常甘受すべき程度を超えていないか否かについては、配置転換の必要性の他、対象職員の選定にかかる事情なども考慮することになります。

そのため、退職勧奨を拒否したことを理由にした配置転換にあたらないためには、退職勧奨を行う職員に対して配置転換が予定されていることを説明しておくことが重要です。なお、雇用契約において職種や勤務地が限定されている場合には、配置転換が制限される可能性があります。配置転換を検討する場合には、事前に雇用契約書の内容を見直しておきましょう。

 

(4)解雇

退職勧奨を拒否された後、注意指導や解雇以外の懲戒処分などを行ったとしても、当該職員の業務状況が改善しない場合には、事業所としては普通解雇や懲戒解雇による強制的な手続きを検討しなければなりません。

解雇が違法となれば、解雇自体が無効となり、職員が職場復帰することに限らず、職員から慰謝料等の請求や、解雇時からの未払給料の支払い(バックペイ)も請求される可能性があります。

退職勧奨を拒否した職員を解雇する場合は、以上の点に注意しながら手続きを進める必要があります。

 

1.普通解雇

普通解雇は、職員が雇用契約の本旨に従った労務の提供をしない場合に認められます。職員が能力不足等の理由により、職員が雇用契約上の労働者の義務を十分に履行できていない場合は普通解雇の検討が考えられます。しかし、普通解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」、解雇自体が違法と評価され無効となります(労働契約法第16条)。

 

▶参考:労働契約法第16条の条文

(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

・参照元:「労働契約法」の条文

 

 

普通解雇が違法か否かの判断は、解雇までに注意指導や懲戒処分などにより、業務の改善を図られているかなどのプロセスを踏んでいるかが重要となります。

具体的には、まずは粘り強い注意指導を行って行動の改善を促し、それでも改善しない場合に軽い懲戒処分である戒告やけん責などを積み重ねた後、それでもなお改善がされない場合には、状況に応じて解雇を決断することになります。

これは、退職勧奨を拒否された後も同様であり、退職勧奨の前後で、当該職員にどのような問題行動があり、これに対してどのような注意指導や懲戒処分をしてきたかが重要となります。

そのため、これらの事情を証明できるもの、具体的には、職員に対する指導記録や指導の際に交付した書面やメール、面談時の録音データなどは、確実に作成をし、保管しておきましょう。

 

▶参考:普通解雇については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

普通解雇とは?無効とならない手続きを事例付きで弁護士が解説

 

 

2.懲戒解雇

懲戒解雇は懲戒処分のなかのいわゆる「極刑」にあたり、相当性を判断する際のハードルは、他の懲戒処分に比べて一層高くなります。 また、懲戒の種別と懲戒事由は、就業規則にあらかじめ定めておかなければなりません。懲戒解雇をする場合は、退職勧奨を拒否した職員に、就業規則上の懲戒事由にあたることを事業所側が立証する必要があります。

普通解雇と同様に、退職勧奨を拒否された後に懲戒解雇を行う場合も、より慎重な手続きと、退職勧奨が相当といえる根拠を説明できる資料(職員の問題行動に対する指導記録、メールなど)が必要です。

 

▶参考:懲戒解雇については、以下の記事でも解説していますのでご覧ください。

懲戒解雇とは?有効になる理由や手続きを事例付きで弁護士が解説

 

 

5.退職勧奨を断り続けて応じない場合の注意点

4.退職勧奨を拒否された場合のその後対応」では、退職勧奨を拒否した職員への対応について解説しました。

この項目では、退職勧奨を断固として拒否し、応じない職員へ対応する際の注意すべき点について、より詳しく解説していきます。

 

5−1.感情的にならない、誤解を与えるような言動は避ける

全く退職勧奨に応じない職員は、事業所にとっても悩ましいものです。解雇が有効になるか否かが微妙な職員であれば、事業所としては何とか退職勧奨により退職させたいと考え、躍起になってしまうケースも多いかと思います。

しかし、頑張って退職の意思を引き出せたとしても、長時間にわたり退職するよう迫ったり、侮辱的な言動をとった結果であれば、慰謝料請求のリスクだけではなく、職員による退職の意思表示自体が無効になったり、合意ではなく解雇されたと主張される場合があります。また、事業所が職員に対し退職勧奨に応じるよう、退職の合意を強制することは「強迫」(民法第96条1項)にあたり、意思表示が取り消される可能性があります。

例えば、退職勧奨に消極的な職員に対し、長時間かつ複数回の退職勧奨を実施し、圧迫的な言動を繰り返すケースが考えられます。このような場合、職員が圧迫的な退職勧奨に畏怖して退職の合意をしたとしても、「強迫」にあたり、退職の合意が後に取り消される可能性があります。

 

▶参考:民法第96条の条文

(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

・参照元:「民法」の条文

 

 

また、職員に対し誤解を与えるような言動も避けるべきです。職員が誤解した事情によって退職を決意した場合、退職の意思表示が自由な意思に基づいて行われたものではないと評価され、退職の合意が無効になる可能性があります。

 

裁判例:グローバルマーケティングほか事件(東京地裁令和3年10月14日労判1264号42頁)

 

1.概要

職場での暴力などが問題となった社員に対し、事業所側は、実際には防犯カメラの映像を確認していないにもかかわらず、社員の暴行について「全部録画されているから」「それも映ってます。」「映像を全部分析して、あなたが言ったことも全部暴いて。」「(退職勧奨を)応諾しないのであればもう私が出ているから、就業拒否で自宅待機。で、懲戒解雇」などと述べ、当該社員が、暴行に関する映像が存在するものと誤信し、退職の意思を表示した事案です。

 

2.裁判所の判断

裁判所は、「一連の発言によって在職を諦め,退職条件の交渉に移行したものであり、(中略)原告がその自由な意思に基づいて退職の意思表示をしたと認めることはできない。」と判断しました。退職の意思表示については、雇用主と労働者に交渉力の差があり、退職により生活基盤を喪失するという労働者の不利益が大きいことから、退職の意思表示が自由意思によるものかは、退職の意思表示をした動機やその時の言動が考慮されることになります。

退職勧奨を断り続ける職員と交渉する際、とにかく退職の合意をさせようと考え、事実確認をすることなく退職勧奨で謝った事実を告げ、職員がこの事実によって退職を合意しても、結局無効になる可能性があります。問題となる事実やその証拠を示す際は、裏付けを丁寧に行い、前提の事実関係について虚偽の説明をしたり、誤解を生じさせたりしないよう、退職勧奨時の言動については特に注意しましょう。

 

▶参考:退職勧奨の場面で言ってはいけない言動については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

退職勧奨の場面で言ってはいけないこと3つ!面談時の注意点を解説

 

 

5−2.不相当な処分を告知しない

4−1.退職勧奨はあくまで任意の手続」の「(2)懲戒処分」でも記載した通り、退職勧奨の際に、予定されている懲戒処分を告知しても、直ちに違法にはなりません(A 病院事件:札幌高裁令和4年10月21日労経速 2505号45頁)。しかし、予定されていない懲戒処分を、退職を迫る目的で告知してしまうと、詐欺や強迫(民法第96条1項)に該当し、後に退職の合意が取り消される可能性があります。

また、懲戒事由が存在するものの、結果として相当ではない懲戒処分を告知してしまっていた場合にも、錯誤(民法第95条)として取り消される場合があります。

例えば、些細な違反事由が存在するのみで、譴責などの軽微な懲戒処分が妥当であるにもかかわらず、極刑である懲戒解雇を予告したようなケースがこれにあたります。下記の裁判例は、懲戒処分ではありませんが、解雇事由に該当しないにもかかわらず、このままでは解雇になると退職勧奨で伝えたケースになります。

 

裁判例:昭和電線電纜事件(横浜地裁川崎支部平成16年5月26日労判878号40頁)

 

1.概要

勤務態度が不良であった社員が退職勧奨に応じて退職合意をしたものの、退職勧奨に応じる意思表示が、退職勧奨に応じなければ解雇処分にされると職員が誤信したものであることから、退職合意が錯誤により無効であると主張した事案です。

 

2.結論

裁判所は、退職を承諾する意思表示には錯誤があり、退職の合意は無効であると判断しました。

その理由として裁判所は、「原告(社員)は、解雇事由が存在しないことを知っていれば、本件退職合意の意思表示をしなかったであろうし、この理は一般人が原告の立場に立った場合も同様であると認められるから、原告の本件退職合意承諾の意思表示には法律行為の要素に錯誤があった」と述べています。

この事例では、対象の社員には確かに他の社員との口論など勤務態度の不良がありましたが、解雇事由とされるほどの重大な非違行為は認められませんでした。それにもかかわらず、使用者が退職勧奨に応じるか解雇されるかの選択を社員に迫ってしまい、退職勧奨に応じなければ解雇されると社員が誤信し、退職の合意をしたことが錯誤と評価されています。

上記の裁判例のように、職員が退職勧奨に応じる意思表示を行うにあたって、退職を決意した事情において誤解がある場合、職員からの退職の意思表示は、錯誤(民法第95条1項)、場合によっては詐欺(民法第96条1項)に該当し、取り消される場合があります。

退職勧奨を断り続ける職員に対して、事業所側も数回の面談を実施し、説得することが考えられます。その際に告知する懲戒処分については、事前に検討を重ねたうえで、その職員に対する処分として相当であることを説明できるように準備する必要があります。

 

5−3.退職勧奨の場面は録音する

退職勧奨を行った職員との面談の様子は、録音することが望ましいです。この録音は、退職勧奨に応じない職員から、「退職を強要された」「解雇された」などと主張された場合、事業所が適切に退職勧奨を行っていたことを立証するために必要です。裁判になった場合でも、退職強要ではななかったことを立証する証拠として裁判所に提出することができます。

なお、録音するにあたって相手方の同意を得る必要があるかについて、弊所においても多く相談が寄せられています。

このとき、退職勧奨時に職員から「録音はしないでほしい」と言われた場合は、発覚後にトラブルになる可能性があるので、記録のために録音することを説明して了解してもらうなど、同意を得る方が望ましい場合もあります。しかし、退職勧奨の場面を録音する際、相手に必ず了承を得なければならないわけではありません。原則として、秘密録音であっても証拠資料として用いることが可能です。

秘密録音の違法性は、録音して証拠化するための必要性と、録音されることの不利益を比較衡量して判断します。一般的に、録音されることの不利益が証拠化の必要性よりも大きいほど、違法となるリスクが高まるものと考えられています。秘匿性の高い審議の内容を録音したり、職場内において同意を得ない録音が禁止されている場合での録音については、違法性が高いと評価され、裁判においても証拠として用いることができない可能性があります。

一方で、退職勧奨時の録音は、職員からの応答や事業所側の説明を記録に残す意味で重要なものですので、録音の必要性は高いといえます。また、個室で退職勧奨の録音を実施すれば、利用者の個人情報や事業所の職務上の秘密(ケアプラン・支援計画に関する情報など)が記録される可能性はほとんどないといえます。

よって、退職勧奨時のやりとりを録音する場合は、他者の声や雑音が入りにくい会議室などで行うことが肝要です。なお、個室で実施する際は、圧迫感がないようにすることが必要です。狭い個室で、事業所側の人間が多ければ、職員に退職するよう無理やり責められたと主張され、退職強要となってしまうリスクがあります。したがって、できれば大きめの個室で、事業所側も勧告を行い交渉を担当する者1名、記録係1名などで実施することが望ましいです。

 

【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】

 

退職勧奨の面談の実施方法によっては、職員から損害賠償請求を受けるリスクもある点に注意が必要です。また、退職勧奨を受けたことは、職員にとって非常にセンシティブなものです。第三者に聴かれてしまうような場所で実施してしまうと、職員の名誉を侵害することにもなりかねません。その場合、後々に職員から、名誉毀損に基づく損害賠償請求を受けるリスクもあります。したがって、上記にもあるように、利用者の方や他の職員に聞かれないよう、介護現場から隔離された個室で退職勧奨を行うことを推奨しています。

 

 

秘密録音の際の注意点については、以下の動画を参考にご覧ください。

 

 

また、退職勧奨を拒否した職員側も録音を行っている可能性があります。職員側が後々に違法な退職勧奨があったことを立証するため、退職勧奨の場面を録音し、証拠固めをすることは考えられます。よって事業所側は、「録音されているかもしれない」という意識をもって、退職勧奨を行うことが必要です。退職勧奨時のふるまいや言動については、細心の注意を払いましょう。

 

6.退職勧奨を断り続けて応じない場合の不利益取扱いの禁止等の注意点

不利益取扱いとは、以下のような行為が該当するとされています。

 

  • 解雇、雇い止めなどの労働契約上の地位の変動に関わるもの
  • 労働者に認められた制度の利用申出やその利用に影響するもの
  • 昇進・降格、移動、配置転換などの人事権に関わるもの
  • 賃金など経済的条件にかかわるもの
  • その他職場でのいじめ・嫌がらせなど、労働者にとって不利益となる様々な行為

 

なお、退職勧奨を拒否したことだけではなく、公益通報や妊娠、出産、育児休業等を理由にした不利益取扱いも禁止されています。以下の消費者庁の「解雇その他不利益な取扱いに関するQ&A」ページは、公益通報を理由にした不利益取扱いのものですが、不利益取扱いの具体例が記載されていますので、参考にご覧ください。

 

▶参考:消費者庁「解雇その他不利益な取扱いに関するQ&A」

 

 

繰り返しになりますが、退職勧奨はあくまでも任意の手続きです。職員側が退職勧奨に応じる義務はないため、退職勧奨を断り続けることは不利益取扱いの根拠となるものではありません。したがって、退職勧奨を断り続ける職員に対し、退職勧奨拒否を理由にした不利益取扱いは、通常予定されないものです。

一方で、退職勧奨を拒否したことを理由とせず、退職勧奨の理由となった事情(労務の不提供、勤務不良など)に基づく不利益取扱いについては、事情の性質にもよりますが、職員に対する相応の処分である限り、直ちに違法の評価とはなりません。

よって、退職勧奨を断り続ける職員に対し、不利益取扱いをする場合は、退職勧奨を拒否したこととは別個の処分であることを区別の上、行う必要があります。

退職勧奨時に懲戒処分などが検討され、退職しなければ処分を行うことが予定されている場合は、予め退職勧奨の面談時に告知しておくなど、退職勧奨の拒否とは無関係であることが分かるようにしておきましょう。

 

【弁護士畑山浩俊のワンポイントアドバイス】

 

仮に、職員に不利益取扱いの根拠となる事情があったとしても、特定の理由における不利益的取扱いは、法律上禁止されています。

 

上記にもあるように、妊娠や出産を理由とした解雇やその他の不利益的取り使いについては禁止されており、許されません(男女雇用機会均等法第9条2項、3項)。

 

また、労働基準法は、労働基準監督署などに申告をしたことを理由とする不利益的取扱いを禁止しています(労働基準法第104条2項)。退職勧奨を断り続けている職員は、退職を拒否したことで不利益な扱いを受けていると思い込み、労働基準監督署に駆け込んで、退職強要されたと申告するケースが考えられます。

 

このようなケースにおいて、労働基準監督署へ申告した後に配置転換など不利益的取扱いをする際は、申告を理由に行ったと評価されることがないよう注意が必要です。

 

▶参考:労働基準法第104条2項の条文

 

(監督機関に対する申告)
第百四条 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
② 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

 

・参照元:「労働基準法」の条文

 

 

7.退職勧奨を拒否される場合の対応を弁護士に相談すべき理由

これまでに説明した通り、退職勧奨を拒否した職員への対応を誤ると、損害賠償を請求されたり、退職自体が無効と判断され、賃金の支払義務を負うといった法的リスクが発生します。その他の処分を行う際も、その処分が無効にならないよう注意が必要です。

このような法的リスクを回避するためには、職員に対し適切な退職勧奨や懲戒処分のプロセスを踏むことが必要です。具体的な場面において、何が適切なプロセスであるかを判断するのは非常に困難です。弁護士に相談することで、具体的な場面における適切な対応を検討することができます。

また、弁護士は、退職勧奨を実施する際の注意すべきポイントについての助言(事前対応)が可能です。退職勧奨を拒否された場合の対応(進行中事案の対応)やその後のサポートももちろんのこと、実施済の退職勧奨について、職員側から違法であるとして請求(損害賠償、給料のバックペイ)を受けた場合にもアドバイス(事後対応)をすることが可能ですし、場合によっては代理人として当該職員と直接交渉することも可能です。

 

8.退職勧奨に関して弁護士法人かなめの弁護士に相談したい方はこちら

介護業界に特化した弁護士法人かなめによるサポート内容のご案内!

弁護士法人かなめでは、介護業界に精通した弁護士が、以下のようなサポートを行っています。

 

  • (1)退職勧奨を拒否された場合の対応のサポート
  • (2)人事処分のサポート
  • (3)職員から法的措置を取られた場合の対応
  • (4)団体交渉対応
  • (5)労働基準監督署対応
  • (6)労働判例研究会
  • (7)顧問弁護士サービス「かなめねっと」

 

8−1.退職勧奨を拒否された場合の対応のサポート

退職勧奨は、その行為単体だけではなく、解雇や他の不利益処分等とも密接に関連し、計画的且つ状況に応じた対応が求められます。

したがって、退職勧奨を拒否された場合は、その他の不利益処分にも影響が生じる可能性が高く、拒否後の対応については慎重に行う必要があります。

弁護士法人かなめでは、退職勧奨を拒否された後の対応について、現場の責任者などからの相談を受け、適時に助言をするなど丁寧なサポートを実施することができます。

退職勧奨やその後の処分が違法になるかの判断は難しいものです。そのため、いざ退職勧奨や解雇をしようと考えたタイミングではなく、「この職員は問題多いな…」と感じたタイミングから、専門家の意見を仰いでおくことが重要なのです。

早期に相談を受けられれば、証拠の残し方、実際に退職勧奨をする際の準備、面談時の留意点などを、計画的にサポートできますし、契約内容を見直すタイミングで効果的な指導等ができる可能性もあります。退職勧奨の検討を開始した初動においても、弁護士がサポートする意味は大きいといえます。

 

8−2.人事処分サポート

前述の通り、退職勧奨と不利益処分は密接な関係にあります。退職勧奨を拒否した職員への人事処分は、配置転換や降格など、様々な方法を検討する必要があります。

適切な人事処分がされなければ、処分の効力自体が無効になるばかりか、問題職員から反対に損害賠償請求がされるなどのリスクがあります。よって、不適切な人事処分を未然に防ぐために、処分段階において専門家に助力を依頼することが解決の近道になります。

適法な人事処分か否かは、専門的な知識と裁判例の蓄積を参考に判断することができます。専門家に早期に相談をすることにより、十分な検討をすることができ、問題のない人事処分についての検討などのサポートが可能です。

弁護士法人かなめでは、介護事業における労働法務に携わってきた経験、そこで得たノウハウから、介護事業所における人事処分にまつわる労務問題に対し、介護現場の実態に即した適切にサポートをすることができます。

 

8−3.職員から法的措置を取られた場合の対応

職員から、退職勧奨を拒否した職員への指導により損害賠償を被ったという主張や、退職合意が無効であるとの主張について争いがあり、任意の交渉で折り合いがつかなくなった場合、問題職員から労働契約上の地位の確認や人事処分の取り消し、または損害賠償請求訴訟を提起されるケースがあります。

弁護士法人かなめでは、これらの訴訟が法廷闘争となった場合にも、代理人として対応し、訴訟追行させていただきます。

 

(1)ご相談方法

まずは、「弁護士との法律相談(有料)※顧問契約締結時は無料」をお問合わせフォームからお問い合わせください。

 

お問い合わせフォームはこちら

 

※法律相談の申込みは、お問合わせフォームからのみ受け付けております。

※法律相談は、「① 弁護士法人かなめにご来所頂いてのご相談」、又は、「② ZOOM面談によるご相談」に限らせて頂き、お電話でのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

※顧問契約を締結していない方からの法律相談の回数は3回までとさせて頂いております。

※介護事業所の経営者側からのご相談に限らせて頂き、他業種の企業様、職員等一般の方からのご相談はお請けしておりませんので、予めご了承ください。

 

 

(2)弁護士との法律相談に必要な「弁護士費用」

  • 1回目:1万円(消費税別)/1時間
  • 2回目以降:2万円(消費税別)/1時間

※相談時間が1時間に満たない場合でも、1時間分の相談料を頂きます。

 

8−4.団体交渉対応

退職勧奨を拒否した職員が、退職強要を受けたことを協議事項として、労働組合を通じ事業者側に対して団体交渉を行うことが考えられます。

団体交渉は、不当労働行為にならないように配慮しつつ、労働組合に主導権を握らせないように対応する必要があり、会社の実情をも踏まえた迅速かつ臨機応変な対応が求められます。そのため、団体交渉の申入れがあった場合には、すぐに弁護士の意見を仰いでおくことが重要なのです。早期に相談を受けられれば、申入書への初動、団体交渉の進め方等について適切な支援ができる可能性が高まります。

弁護士法人かなめでは、このような団体交渉の初期段階から相談を受け、初動からきめ細やかなサポートをすることで、団体交渉に対して適時に助言をすることができます。また、団体交渉へ同席し、労働組合との交渉をサポートしています。

不当労働行為をすることなく、主導権を握って労働組合と交渉するためには、正確な法的な知識と経験が必要になるため、弁護士のサポートは不可欠です。弁護士が団体交渉の場へ同席することにより、不当な要求を拒絶することができるだけでなく、法的な知識がないことを理由とするトラブルを避けることができます。

 

▶参考:団体交渉のご依頼については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

団体交渉を弁護士に依頼すべきメリットや弁護士費用を解説

 

 

8−5.労働基準監督署対応

「突然労働基準監督署から調査をしたいとの連絡があった」との相談も、弁護士法人かなめがよく受ける相談の1つです。

指導や人事処分を受けた職員が労働基準監督署に駆け込み、法令違反を申告する可能性があります。例えば、退職勧奨を拒否した後に転勤命令を受けた職員は、「退職勧奨を拒否したとたんに左遷された」と主張する可能性があります。

申告が受理されれば、事実関係の調査のために、事業所には労働基準監督官が派遣されます(立ち入り検査)。この立ち入り調査は、予告なしに行われることもあり、就業規則や従業員名簿などの資料関係の提出も求められます。労働基準監督官は、強制捜査や関係者への聴き取りを実施できる強い権限を持っており(労働基準法第101条1項、102条)、調査を拒んだり、虚偽の回答を行えば、30万円以下の罰金が課せられる場合もあります(労働基準法第120条)。したがって、事業所は労働基準監督署からの調査には誠実に対応しなければならず、基本的には拒否することができません。

そこで、退職勧奨を拒否した職員への指導を行うにあたり、労働基準監督署への申告が予見される場合は、立ち入り調査への準備を行っておく必要があります。

弁護士法人かなめでは、これまでに多くの労働基準監督署対応を行っており、事業所が実施に労働基準監督署に対応する際の助言の他、事業所に代わって労働基準監督官に事情を説明したり、労働基準監督署での聞き取り調査に同行するなど、きめ細かなサポートを行っております。

 

8−6.労働判例研究会

弁護士法人かなめでは、顧問先様を対象に、団体交渉をはじめとして、普段の労務管理の参考になる労働判例を取り上げ、わかりやすく解説する労働判例研究会を不定期に開催しています。

研究会の中では、参加者の皆様から生の声を聞きながらディスカッションをすることで、事業所に戻ってすぐに使える知識を提供しています。

 

▶参考:「労働判例研究会」の紹介はこちら

 

 

8−7.顧問弁護士サービス「かなめねっと」

弁護士法人かなめでは、これらのサービスの提供を総合的に行う顧問契約プラン「かなめねっと」を実施しています。

具体的には、トラブルに迅速に対応するためチャットワークを導入し、事業所内で何か問題が発生した場合には、速やかに弁護士へ相談できる関係性を構築しています。そして、弁護士と介護事業所の関係者様でチャットグループを作り、日々の悩み事を、法的問題かどうかを選択せずにまずはご相談頂き、これにより迅速な対応が可能となっています。直接弁護士に相談できることで、事業所内での業務効率が上がり、情報共有にも役立っています。

介護業界に特化した顧問弁護士サービス「かなめねっと」について詳しくは、以下のサービスページをご覧ください。

 

▶︎参考:顧問弁護士サービス「かなめねっと」のサービス紹介はこちら

 

 

また以下の動画でも詳しく説明をしていますので、併せてご覧下さい。

 

▶︎【介護・保育事業の方、必見】チャットで弁護士と繋がろう!!介護保育事業の現場責任者がすぐに弁護士に相談できる「かなめねっと」の紹介動画

 

 

(1)顧問料

●顧問料:月額8万円(消費税別)から

※職員の方の人数、事業所の数、業務量により顧問料の金額は要相談とさせて頂いております。詳しくは、お問合せフォームまたはお電話からお問い合わせください。

 

9.まとめ

この記事では、退職勧奨を拒否した職員への対応について、裁判例と事例を交えつつ、解説しました。

繰り返しになりますが、退職勧奨は任意の手続きです。拒否をされてしまった場合は、その後新たに退職に向けての話し合いをすることは原則として難しくなりますし、場合によっては退職の無効、慰謝料等の支払いをしなければならなくなります。

しかし、初期段階から適切な対応を心がければ、拒否をした職員に対しても冷静に対応することができます。主なポイントは以下の2つです。

 

  • 退職勧奨の意思が明確に表示された後は、退職勧奨を行わない。
  • 退職勧奨を拒否したことと、その他の不利益処分は区別して実施することを意識する

 

事業所側にとっても、退職勧奨に応じない職員に対する不利益処分については、無効となる可能性があり、拒否された職員に対する対応は悩ましいものです。だからこそ、退職勧奨を拒否した職員に対しては、退職勧奨を行う前から適切な指導、不利益処分といえる証拠を残しつつ、丁寧かつ慎重な対応が求められるのです。

職員への対応や証拠固めについては、早期に弁護士に相談し意見を仰ぐことが有益です。後になって職員から訴えを起こされた結果、退職勧奨やその後の拒否の場面における証拠がなく、手続きの適正さを立証することができなければ、会社側の主張が認められる可能性が乏しくなってしまいます。

事実認定・立証活動、書面の作成などは弁護士が日常的に扱っている業務ですので、弁護士に相談するメリットは大きいものです。問題職員への対応に悩んでいる介護事業者の方は、早いうちに弁護士に相談するようにしましょう。

 

10.【関連情報】退職勧奨に関するその他のお役立ち情報

この記事では、「退職勧奨が拒否されたら?応じない場合のその後の対応を詳しく解説」として、退職勧奨の場面での従業員が拒否して応じない場合の対応についてを解説してきましたが、この記事でご紹介していない退職勧奨に関するお役立ち情報も以下でご紹介しておきますので、あわせてご参照ください。

 

退職勧奨での退職は会社都合か自己都合どっち?離職票の書き方などを解説

 

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弁護士法人かなめでは、「介護業界に特化した弁護士」の集団として、介護業界に関するトラブルの解決を介護事業者様の立場から全力で取り組んで参りました。法律セミナーでは、実際に介護業界に特化した弁護士にしか話せない、経営や現場で役立つ「生の情報」をお届けしますので、是非、最新のセミナー開催情報をチェックしていただき、お気軽にご参加ください。

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社会福祉法人の研修担当者様へは、「職員の指導、教育によるスキルアップ」「職員の悩みや職場の問題点の洗い出し」「コンプライアンスを強化したい」「組織内での意識の共有」などの目的として、協会団体・自治体の研修担当者様へは、「介護業界のコンプライアンス教育の実施」「介護業界のトレンド、最新事例など知識の共有をしたい」「各団体の所属法人に対して高品質な研修サービスを提供したい」などの目的として最適なサービスです。

主な研修テーマは、「カスタマーハラスメント研修」「各種ハラスメント研修」「高齢者虐待に関する研修」「BCP(事業継続計画)研修」「介護事故に関する研修」「運営指導(実地指導)に関する研修」「各種ヒヤリハット研修」「メンタルヘルスに関する研修」をはじめ、「課題に応じたオリジナル研修」まで、介護事業所が直面する様々な企業法務の問題についてのテーマに対応しております。会場またはオンラインでの研修にご対応しており、全国の社会福祉法人様をはじめ、協会団体・自治体様からご依頼いただいております。

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この記事を書いた弁護士

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畑山 浩俊はたやま ひろとし

代表弁護士

出身大学:関西大学法学部法律学科卒業/東北大学法科大学院修了(法務博士)。
認知症であった祖父の介護や、企業側の立場で介護事業所の労務事件を担当した経験から、介護事業所での現場の悩みにすぐに対応できる介護事業に精通した弁護士となることを決意。現場に寄り添って問題解決をしていくことで、介護業界をより働きやすい環境にしていくことを目標に、「介護事業所向けのサポート実績日本一」を目指して、フットワークは軽く全国を飛び回る。
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石田 雅大いしだ まさひろ

弁護士

出身大学:関西大学法学部法学政治学科卒業/大阪大学法科大学院修了(法務博士)。
祖父母との同居生活や、障がい者支援の活動に参加した経験から、社会における福祉事業の役割の重要性を実感し、弁護士として法的なサポートを行いたいと思い、弁護士法人かなめに入所。介護事業所からの相談や行政対応を担当し、「働きやすい福祉の現場をあたりまえにする」というミッション実現のために日々奮闘している。

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